セブン・クラウン・アーティスト

沢山一咲

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僕の彼女

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「…で?どうだったんだ?」
 明るい配色でポップな雰囲気の女性向けスイーツ店の一角に、この店に似合わぬ学ラン姿の男子高校生が可愛いケーキを囲んで固まっていた。明らかに場違いだと言わんばかりに他の女性客から向けられる視線が痛い。
 しかし一年もすれば、それも慣れた。
 目の前で新作のチョコレートケーキにフォークを入れながら、ケーキにも劣らない青春の甘い恋愛話の結果を聞いてくるこの甘党は、本当にケーキだけでは甘さが足りないらしい。
「それがさーー」
「フラれたか。だよなぁ。なんて言ったって、クラスのミステリアス無口ナンバーワンの瀬田さんだもんな。まぁ、相手が悪かった。いい女は他にもいるし…あ、C組の田中なんてどうだ?あいつ彼氏と別れたばっかだからチャンスだーー」
「付き合うことになったよ」
 ポロ…とケーキの飾りが海斗のフォークから落ちた。
「…え?」
「いやだから、告白、成功したって」
「…ええええぇぇ!?嘘だろぉぉおお!?」
 突然あげた海斗の叫び声に店中の視線がこちらに集まる。即座に店員が駆けつけてきては「他のお客様のご迷惑となりますので…」と注意が入る。硬直している海斗の代わりに「すみません」と謝り、店は再びざわめきを取り戻す。
「…いや、まさか、本当に付き合うとはな…お兄さん驚きだわ」
「なんだよ、悪いか」
「そんなこと思ってたら、最初に相談された時にやめとけって言うだろうよ。…で、なんて言われたんだ?」
 興味津々に身を乗り出して聞いてくるあたり、本当にこう言う話が好きなのだと改めて実感する。
 こんなスイーツ店に入って恋愛話するなんて、こいつは本当に男に生まれて正解だったのだろうか。
「好きです、付き合ってくださいって言ったら…実は私もずっと前から好きでしたって…両思いだったんだよ…!」
「へーっ!そりゃ奇跡だわ。お前みたいなのに好きでいてくれる奴なんているんだな」
「うん、お前結構失礼なこと言ってるぞ、いくら僕でも傷つくぞ」
「悪りぃ悪りぃ」
 そう言って先ほど落とした飾りを机からヒョイっと摘み上げると、口へ放り込む彼をなぜか憎めない。
「デートとか、どうするか決めてんの?」
「え?いや、まだそんな急にーー」
「家デートはまだ早いからやめておけ。嫌われる可能性大だ」
「瀬田さん、何か好きなものとか無いかなぁ」
 怪しい予感がしたので、家デートのことはスルーして流れを変える。
 しかし、彼女の好きなもの、趣味…彼氏でありながら彼女のことを何も知らない。
 本当、先ほども海斗が言ってたように付き合えたのは奇跡だ。クラスでも謎に包まれた彼女の素性を少しずつだが見ることもできる…だが、そんなことをして嫌われないだろうか。無口というくらいだから、自分のことをあまり知られたくない人間なのかもしれない。
「必要以上の詮索はしないほうがいい。ヅカヅカと他人に踏み入られるのが苦手なタイプと見た」
 そう言ってケーキとセットでついてきた紅茶を優雅に飲む海斗は僕にとって恋愛の先輩だ。彼が言うのだから、まず間違いはないだろう。
「さりげなく聞くくらいがちょうど良いだろうから…そうだな。日常会話にさりげな~く聞いてくしかないだろうな」
「そうだよなぁ」
「まぁ、安心しろ。クラスの奴には俺から言っておく。二人のことは邪魔しないようにってな」
 クラスには物好きが必ずいるものだ。そんな人たちをゾロゾロと引き連れていけば、彼女はきっと逃げ出してしまう。誰も彼女のことを深くは知らない。ただ静かにいるだけの存在が急にクラスの異性と話し始めたら周りは驚くだろう。
 海斗は所謂、クラスのムードメーカーだ。誰をも嫌うことがない、彼は皆から慕われている。彼が言えば、皆も聞くだろう。
「すまん、頼んだ」
「任せとけって」
 そう言って海斗はロールケーキを追加注文した。
 もちろん、恋愛相談料としての僕のおごりだ。
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