2 / 4
僕の彼女
しおりを挟む
「…で?どうだったんだ?」
明るい配色でポップな雰囲気の女性向けスイーツ店の一角に、この店に似合わぬ学ラン姿の男子高校生が可愛いケーキを囲んで固まっていた。明らかに場違いだと言わんばかりに他の女性客から向けられる視線が痛い。
しかし一年もすれば、それも慣れた。
目の前で新作のチョコレートケーキにフォークを入れながら、ケーキにも劣らない青春の甘い恋愛話の結果を聞いてくるこの甘党は、本当にケーキだけでは甘さが足りないらしい。
「それがさーー」
「フラれたか。だよなぁ。なんて言ったって、クラスのミステリアス無口ナンバーワンの瀬田さんだもんな。まぁ、相手が悪かった。いい女は他にもいるし…あ、C組の田中なんてどうだ?あいつ彼氏と別れたばっかだからチャンスだーー」
「付き合うことになったよ」
ポロ…とケーキの飾りが海斗のフォークから落ちた。
「…え?」
「いやだから、告白、成功したって」
「…ええええぇぇ!?嘘だろぉぉおお!?」
突然あげた海斗の叫び声に店中の視線がこちらに集まる。即座に店員が駆けつけてきては「他のお客様のご迷惑となりますので…」と注意が入る。硬直している海斗の代わりに「すみません」と謝り、店は再びざわめきを取り戻す。
「…いや、まさか、本当に付き合うとはな…お兄さん驚きだわ」
「なんだよ、悪いか」
「そんなこと思ってたら、最初に相談された時にやめとけって言うだろうよ。…で、なんて言われたんだ?」
興味津々に身を乗り出して聞いてくるあたり、本当にこう言う話が好きなのだと改めて実感する。
こんなスイーツ店に入って恋愛話するなんて、こいつは本当に男に生まれて正解だったのだろうか。
「好きです、付き合ってくださいって言ったら…実は私もずっと前から好きでしたって…両思いだったんだよ…!」
「へーっ!そりゃ奇跡だわ。お前みたいなのに好きでいてくれる奴なんているんだな」
「うん、お前結構失礼なこと言ってるぞ、いくら僕でも傷つくぞ」
「悪りぃ悪りぃ」
そう言って先ほど落とした飾りを机からヒョイっと摘み上げると、口へ放り込む彼をなぜか憎めない。
「デートとか、どうするか決めてんの?」
「え?いや、まだそんな急にーー」
「家デートはまだ早いからやめておけ。嫌われる可能性大だ」
「瀬田さん、何か好きなものとか無いかなぁ」
怪しい予感がしたので、家デートのことはスルーして流れを変える。
しかし、彼女の好きなもの、趣味…彼氏でありながら彼女のことを何も知らない。
本当、先ほども海斗が言ってたように付き合えたのは奇跡だ。クラスでも謎に包まれた彼女の素性を少しずつだが見ることもできる…だが、そんなことをして嫌われないだろうか。無口というくらいだから、自分のことをあまり知られたくない人間なのかもしれない。
「必要以上の詮索はしないほうがいい。ヅカヅカと他人に踏み入られるのが苦手なタイプと見た」
そう言ってケーキとセットでついてきた紅茶を優雅に飲む海斗は僕にとって恋愛の先輩だ。彼が言うのだから、まず間違いはないだろう。
「さりげなく聞くくらいがちょうど良いだろうから…そうだな。日常会話にさりげな~く聞いてくしかないだろうな」
「そうだよなぁ」
「まぁ、安心しろ。クラスの奴には俺から言っておく。二人のことは邪魔しないようにってな」
クラスには物好きが必ずいるものだ。そんな人たちをゾロゾロと引き連れていけば、彼女はきっと逃げ出してしまう。誰も彼女のことを深くは知らない。ただ静かにいるだけの存在が急にクラスの異性と話し始めたら周りは驚くだろう。
海斗は所謂、クラスのムードメーカーだ。誰をも嫌うことがない、彼は皆から慕われている。彼が言えば、皆も聞くだろう。
「すまん、頼んだ」
「任せとけって」
そう言って海斗はロールケーキを追加注文した。
もちろん、恋愛相談料としての僕のおごりだ。
明るい配色でポップな雰囲気の女性向けスイーツ店の一角に、この店に似合わぬ学ラン姿の男子高校生が可愛いケーキを囲んで固まっていた。明らかに場違いだと言わんばかりに他の女性客から向けられる視線が痛い。
しかし一年もすれば、それも慣れた。
目の前で新作のチョコレートケーキにフォークを入れながら、ケーキにも劣らない青春の甘い恋愛話の結果を聞いてくるこの甘党は、本当にケーキだけでは甘さが足りないらしい。
「それがさーー」
「フラれたか。だよなぁ。なんて言ったって、クラスのミステリアス無口ナンバーワンの瀬田さんだもんな。まぁ、相手が悪かった。いい女は他にもいるし…あ、C組の田中なんてどうだ?あいつ彼氏と別れたばっかだからチャンスだーー」
「付き合うことになったよ」
ポロ…とケーキの飾りが海斗のフォークから落ちた。
「…え?」
「いやだから、告白、成功したって」
「…ええええぇぇ!?嘘だろぉぉおお!?」
突然あげた海斗の叫び声に店中の視線がこちらに集まる。即座に店員が駆けつけてきては「他のお客様のご迷惑となりますので…」と注意が入る。硬直している海斗の代わりに「すみません」と謝り、店は再びざわめきを取り戻す。
「…いや、まさか、本当に付き合うとはな…お兄さん驚きだわ」
「なんだよ、悪いか」
「そんなこと思ってたら、最初に相談された時にやめとけって言うだろうよ。…で、なんて言われたんだ?」
興味津々に身を乗り出して聞いてくるあたり、本当にこう言う話が好きなのだと改めて実感する。
こんなスイーツ店に入って恋愛話するなんて、こいつは本当に男に生まれて正解だったのだろうか。
「好きです、付き合ってくださいって言ったら…実は私もずっと前から好きでしたって…両思いだったんだよ…!」
「へーっ!そりゃ奇跡だわ。お前みたいなのに好きでいてくれる奴なんているんだな」
「うん、お前結構失礼なこと言ってるぞ、いくら僕でも傷つくぞ」
「悪りぃ悪りぃ」
そう言って先ほど落とした飾りを机からヒョイっと摘み上げると、口へ放り込む彼をなぜか憎めない。
「デートとか、どうするか決めてんの?」
「え?いや、まだそんな急にーー」
「家デートはまだ早いからやめておけ。嫌われる可能性大だ」
「瀬田さん、何か好きなものとか無いかなぁ」
怪しい予感がしたので、家デートのことはスルーして流れを変える。
しかし、彼女の好きなもの、趣味…彼氏でありながら彼女のことを何も知らない。
本当、先ほども海斗が言ってたように付き合えたのは奇跡だ。クラスでも謎に包まれた彼女の素性を少しずつだが見ることもできる…だが、そんなことをして嫌われないだろうか。無口というくらいだから、自分のことをあまり知られたくない人間なのかもしれない。
「必要以上の詮索はしないほうがいい。ヅカヅカと他人に踏み入られるのが苦手なタイプと見た」
そう言ってケーキとセットでついてきた紅茶を優雅に飲む海斗は僕にとって恋愛の先輩だ。彼が言うのだから、まず間違いはないだろう。
「さりげなく聞くくらいがちょうど良いだろうから…そうだな。日常会話にさりげな~く聞いてくしかないだろうな」
「そうだよなぁ」
「まぁ、安心しろ。クラスの奴には俺から言っておく。二人のことは邪魔しないようにってな」
クラスには物好きが必ずいるものだ。そんな人たちをゾロゾロと引き連れていけば、彼女はきっと逃げ出してしまう。誰も彼女のことを深くは知らない。ただ静かにいるだけの存在が急にクラスの異性と話し始めたら周りは驚くだろう。
海斗は所謂、クラスのムードメーカーだ。誰をも嫌うことがない、彼は皆から慕われている。彼が言えば、皆も聞くだろう。
「すまん、頼んだ」
「任せとけって」
そう言って海斗はロールケーキを追加注文した。
もちろん、恋愛相談料としての僕のおごりだ。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが
akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。
毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。
そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。
数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。
平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、
幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。
笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。
気づけば心を奪われる――
幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる