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とりあえず、すれ違いにならないようにスマホが入っているはずの鞄を持ってきた。けれど、運悪くも入っていなかった。

鞄の中には財布とハンカチしか入ってなかった。

それを苦々しく思いながらも、少し急な坂を駆け下りて、心当たりのありそうな場所を探す。

何箇所か回ったけど、篠原は一向に見つからず会えなくて・・・。

ねぇどこ行ったの?

とても複雑な構造をした町中を走る。坂は急だし、住宅が密集してるから壁も多い。当然、見渡しが悪い。

もう探しにくいじゃない。それに危ないよ、こんな道。今度役所に届けてやる。

ほら、今だって車が急ブレーキを踏む音がする。

でもそんな事、今はどうでもいい。篠原にごめんって謝りたい、会いたいよ・・・篠原。






「ねぇ、どこ・・・?」


結局、あの日

私は彼を見つけることは出来なかった。

気付いたら、私は家にいたのだ。

そして遅くに



「ただいま」

と篠原が帰ってきた。

「おかえり」

と返すが、彼は疑問の声を上げた。

「・・・え?」



────そう、あの日からだ。

私は彼に「ただいま」って言われるのが辛くなった。
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