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篠原は、あの日から溜め込んでいたものを吐き出すように泣き続けた。

真横にいるのに、こんなに近くにいるのに、励まして抱きしめたいのに私は何もしてあげられない。



「結、お前なんでいないの」

「いるってば、隣に」

「・・・俺、嫌だよ。返事がない “ ただいま ” なんて。俺は帰ってきてるよ・・・なぁ、ただいまってば」

「うん、おかえり・・・」

「それか、せめてッ」

「・・・篠原?」

「・・・・・・・・・・・・結・・・」



また話し続けた彼は、せめての先を言わずにしばらく間をおいて、私の名前を呟いた。

それも気になったけど、それ以上に “ 返事がないただいま ” というのが、私の胸を抉った。

私からすれば “ 返事のできないただいま ” は、篠原にとっての “ 返事がないただいま ” になるんだ。



「・・・・・・何?篠原」

「結」

「うん、何・・・?」

「結」

「・・・うん」

「結・・・」



大学の方で、私の方が授業コマ的に早く返ってくることが多くて。

今となって思うに、 “ ただいま ” が篠原の言葉で “ おかえり ” が私の言葉だった。

それが、今では叶わないやり取りで。



「ただいま・・・結」

「・・・おか、え・・・り篠原」







たかが挨拶同然のそれだけを伝えたいのに

お互いに

「ただいま」って

それすらを伝えられなくなってしまった。




これは、そんな2人の・・・いや

1人の未練を持った人間と、1人の未練を持った幽霊の話



~後書き~
こんばんは。実はですね、今日大学のオープンキャンパスに行ってきました!!自分の目指している大学を見学し、さらに行きたいという気持ちでいっぱいになって帰ってきました。大学目指して頑張るぞい!!


あ、結ちゃんのイラストを添付しておきます。祐翔の友人のみゃーが下絵をかいて祐翔が色塗りしたものです。みゃーよありがとう!!
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