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「・・・ただいま」



当然、あの日からおかえりと返ってくる言葉はない。

その事実を知った当日よりはまだ落ち着いたけど、俺自身、結の死をあんまり受け入れられてない。

だって、信じられるわけないだろう。

こんなどっかの3流のドラマみたいな展開なんて・・・。

「今日、また試合してきた。・・・お前、好きだったよな・・・・・・見せてやりたいよ。きっと、お前も面白いって思うチームだよ」


「・・・今度お前の本、見てみようかな。・・・俺も・・・自分でなんとかしないとだもんな」

「・・・ただいま・・・あっつ」

「うわ、すごい汗だね。おかえりー」

「もう蝉鳴いてたわ・・・るっせぇ。サークルの方でも中山さんがうるさかった。・・・なぁ、元気?・・・俺も、俺なりに頑張ってるぞ」



「・・・ただいま」

「おかえり、今日はどうだった?」

「今日は教授に雑用頼まれた。俺、助手とかでもなく普通の生徒なのにな・・・で、その帰りに中山さん達に会っちゃってさ・・・。ジュース貰った。・・・すき焼き味の。・・・・・・踏んだり蹴ったりって、まさにこんな感じなんだろうなって思った・・・」


それ結が死んだ事を認めたくない俺はバカの一つ覚えのように、毎日同じことを繰り返す。

本当は結がいてくれて、聞いていてくれる。そんなありもしないことに期待を寄せ、その日あったことを呟く。

いつか “ おかえり ” って、そう返事が返ってくるんじゃないかって俺はまだ期待してるんだ。

それでも



「ちゃんと話したいんだけど。結のバカ・・・」



返ってくるのは返事ではない。

自分がしている事への虚しさと



「・・・クッソ」



部屋に響く自分の嗚咽だけだった。

~後書き~
明日、友人が書いてくれた結ちゃんのイラストアップします。
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