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「・・・てか、中山さん」

「ん~?」

「いつまでいるんですか」

「え?んー・・・裂が『帰ってください』って言うまで?」

「今すぐ帰れ、ください」

「おっとー、速い。流石に傷つく」



暫く話してて、急にそんな事聞かれるもんだから、ちょーっとからかってみようかな?って思ったら返り討ち。いやぁ歪みなく裂だわ。

壁の時計に目をやると、確かに来てから数時間が経っていて。まぁ、確かに今日はそろそろ帰ろうかな。電車の時間とか調べないと。

不機嫌そうな裂を尻目に「よっこらしょ!」なんて言いながら立ち上がる。


「まぁー、でも裂の課題の邪魔とかしたくないしね。そろそろ帰ろうかナ!裂たちの学年って、この時期に大きいレポート系の課題出るでしょ?」

「・・・知ってたんなら、とっとと帰ってくださいよ。俺、最近それやってて寝不足なんですけど」

「や~裂の照れ隠しかな?って思って」

「・・・・・・」

「その絶対零度の眼差しやめて!?」



裂と話しつつ、チラッと天井の方を見る。そこには、つまらなそうに浮いている結ちゃんがいた。足をふわふわ前後に振りながら、何か言いたげな目でこっちを見てて。

まぁ、自分で言うのもあれだけど、俺って結ちゃんの話し相手だからさ。多分いなくなると暇なんだと思う。ごめんね。

立ち上がって、椅子にかけてた肩掛けカバンを手に取る。あー、俺も帰って勉強しないと。



「じゃあ、お邪魔しま────」



そういえば俺にも課題出てたんだっけ、とか帰り際に嫌な事を思い出す。あの教授は面倒くさい。

急にテンションが下がって、苦々しい思いで裂に声をかけようとした。なのに



「・・・え?」



頭上から結ちゃんの声がする。戸惑いとか、疑問とか。そんなんじゃなくて、単に反射的に出たような声。

でも俺は、そんな事気にする間もなくて。

だってさ



「ちょ・・・・・・待っ、裂!?」



ついさっきまで話していた裂が、後ろで倒れてたんだもん。
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