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「・・・でも、悪い事ばっかじゃないんですよ?」

「そうなの?」

「うん」



先に気まずい沈黙を破ったのは結ちゃんだった。そんで幽霊も悪い事ばかりじゃない、なんて言う。

何かな、と思って耳を傾ける



「例えばね~・・・『裂』とか」

「え?」

「・・・ほら、私って苗字呼びだったじゃないですか、あいつのこと。前も恥ずかしくって呼べなくて。だから・・・バレずに下の名前呼べるんですよ。」



あはは、と力なく少し自嘲するように結ちゃんが笑う。笑ってる割に、泣きそうで。

俺もつられて切なくなった。



「・・・ねぇ、結ちゃん」

「何?」

「もしも・・・・・・もしもの話、なんだけど

「・・・あ、中山さん!ストップ」



言いかけた言葉を止められて、何事かと思えば蛇口を止める音がした。裂の片付けが終わった合図だ。

そうすれば、裂もこっちの部屋に戻ってくるだろうし、結ちゃんとのお話も一旦これまで。

そして予想通りに裂が部屋に入ってくる。

同時に俺は、1つ言葉を飲み込んだ。




(「もし、未練が叶ったら結ちゃんは成仏しちゃうの?」・・・とか)



もし仮に、それを聞いて

「そうだよ」なんて返事が返ってきたら

俺はどうするつもりだったんだろ
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