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前回に引き続き中山side

薄っすらと目を開いた裂が、少し顔を傾けて俺を視界に入れた・・・いや、俺達・・と言った方が正しいのかもしれない。



「中山さん・・・と、結?」



その言葉は、あり得るはずもない。裂が「結」、なんて。今まで一度だってこんな事はなかった。だって



(・・・・・・裂は、結ちゃんが見えないはずなのに・・・)



そんな裂の呟きを聞いて、俺と結ちゃんは、そろって目を見開いた。

何度も言うけど、どうしても信じられなくて。

初めのうちは何かの間違いだと思ってた。結ちゃんも小さく「・・・あは、裂ったら寝ぼけてるんだ」なんて悲しそうに笑う。


それでも、それは違った。



「結・・・だぁ・・・」



ぼーっとした表情だった裂が嬉し泣きしそうな、見ているだけでこちらも泣きたくなるような切ない表情をする。

倒れたというのもあり、やっぱ本調子じゃないっぽくて、普段の裂ならありえないほど間延びした語尾。

そして弱々しく、裂の右腕が伸ばされた。




その手は




「・・・・・・っ・・・・・・おかえりぃ」



泣きそうな声とともに、結ちゃんの頬を掠めた。

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