30 / 39
30
しおりを挟む
これが夢だったら。
結ちゃんが死んでしまって幽霊になったのも、裂が結ちゃんのことが見えないのも、そんな2人の様子を俺が見てるのも。
全部全部、夢ならば。
誰も不幸にならないで済む、所謂ハッピーエンドなのに・・・・・・でも世の中そんなに甘くない。残念なことに、全て現実なんだ。
でも今の裂にそれを言って、果たしてどれだけを理解してもらえるか。でも、今の裂がいつも通りじゃないのなんて、一目瞭然だ。
「・・・・・・ごめん」
不意に、そんな声が耳に届く。
その弱々しい声の主は、目の前の裂。さっき伸ばした腕を、再び結ちゃんに向かって伸ばす。案の定突き抜けてしまう手を、何度も何度も結ちゃんに伸ばすのだ。
それが何の謝罪かは、俺にはわからない。そこは俺が入っていけない領域だ。
でも、結ちゃんは裂の意図を理解したらしく、目を大きく見開いた。そしてさっきからずっと目に張っていた薄い膜の正体である大粒の涙がぽろぽろと溢れ始めた。
「・・・・・・私もッ、ごめ・・・・・・し・・・の、原・・・酷いこと、言っ」
「泣くなよ・・・俺も、謝ろうと思って、あの日帰ったら、お前いなくて・・・もう帰ってきてくれないのかと思ってたぁ」
ついさっきまで、双方一方通行だった2人の会話。今はちゃんと成り立ってる。結ちゃんの裂には聞こえないはずの声が聞こえているのだ。裂が結ちゃんの声聞いて、答えてる。
本来当たり前であるべきそれが、酷く奇跡的なやりとりなんだ、あの2人にとっては。
結ちゃんが死んでしまって幽霊になったのも、裂が結ちゃんのことが見えないのも、そんな2人の様子を俺が見てるのも。
全部全部、夢ならば。
誰も不幸にならないで済む、所謂ハッピーエンドなのに・・・・・・でも世の中そんなに甘くない。残念なことに、全て現実なんだ。
でも今の裂にそれを言って、果たしてどれだけを理解してもらえるか。でも、今の裂がいつも通りじゃないのなんて、一目瞭然だ。
「・・・・・・ごめん」
不意に、そんな声が耳に届く。
その弱々しい声の主は、目の前の裂。さっき伸ばした腕を、再び結ちゃんに向かって伸ばす。案の定突き抜けてしまう手を、何度も何度も結ちゃんに伸ばすのだ。
それが何の謝罪かは、俺にはわからない。そこは俺が入っていけない領域だ。
でも、結ちゃんは裂の意図を理解したらしく、目を大きく見開いた。そしてさっきからずっと目に張っていた薄い膜の正体である大粒の涙がぽろぽろと溢れ始めた。
「・・・・・・私もッ、ごめ・・・・・・し・・・の、原・・・酷いこと、言っ」
「泣くなよ・・・俺も、謝ろうと思って、あの日帰ったら、お前いなくて・・・もう帰ってきてくれないのかと思ってたぁ」
ついさっきまで、双方一方通行だった2人の会話。今はちゃんと成り立ってる。結ちゃんの裂には聞こえないはずの声が聞こえているのだ。裂が結ちゃんの声聞いて、答えてる。
本来当たり前であるべきそれが、酷く奇跡的なやりとりなんだ、あの2人にとっては。
0
あなたにおすすめの小説
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる