灰欠けの世界

霜山 蛍

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灰欠けの世界

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 気が付けば、私は其処に居た。全てが灰欠けで、世界と呼ぶには余りにも粗末なものであった。にも拘わらず、不思議とそれがこの世界の全てであるのだと何処か腑に落ちた。
 徐に周囲を回視してみれば、覚えのある街並みであり、けれどそこに人影は一人として見当たらなかった。だというのに嘗て感じた匂いだとか、喧騒だとかが引切り無しに私を襲い来る。——パン屋だのの確実に食欲をそそる香り、車両の静かな或いは五月蠅い混ぜこぜの音、烏のあざ笑うかのような鳴き声。然れどもそれらの存在はどこにもないのである。匂いを発している店も、車両も、烏も、ただ漠然と私に感じうる情報だけを発し、けれどその存在を認識させてはくれないで居た。加えて言えば、それが私なのかすらも危うく感じていた。一人称視点の視界は確かに私のものであるのに、何故だかこれは誰か別の存在の視界なのではないかと、即ち私は私ではないのかと思えてきた。
 それだというのに私は冷静で、平静で、また沈静であった。まるで最初から世界はこうであったかのように、否、最初からこうであったのだと私は認識した。従い特段沸き起こる感情はなく、むしろ最初からそんなものはないのだと確信した。
 私の視界が確かなものかを確認すべく、視線を掌に注ぎ、握ったり、結んだり、あるいは指の一本一本の存在を確かめるように動かしたりしてみれば、確かにそこには鮮明では無いにせよ、意思通りの動きが視界に映り、ようやく私が私であると確証を得られた。けれど掌に視界を注いでいると、映り込む背景は朧げで、画質の悪いカメラでとった写真のようであった。ならばと視界を地面に注げば今度は掌が朧げで、輪郭すら認識できないでいた。やがて興味を失ったように視界を上げると、街並みは画質の悪い映像のように映り込み、けれど一つに焦点を絞れば高画質カメラのようにくっきりと映り込む。つまりは私に認識できるのは大まかな全体か、細かな一点だけであり、奇妙でありながらも、そういうものだと特段の疑問も抱かずに歩き出した。
 歩けば足音がなるのが自然であり、またこの状況においてもそれは健在でいた。然れどそれは私の意識がそこにある時のみの現象で、意識の外に追いやるとそれは存在を隠し、かわりに足音に鳴りを潜めていた世界の音が再開を始める。要するに、意識すれば欲しい情報を世界が私に語りかけ、また私が関心を忘却すれば世界も私を忘却する。けれど世界が語るのは多くなく、また私が忘却を忘却できる存在も多くは無い。灰欠けの世界は、正しく私の世界なのである。
 世界は一部を映しはせずとも、しかし音は生きていた。音だけは変化に富んでおり、そこには確かに乖離された、或いは忘却された息吹があり、妙な孤独を感じずにはいられない。過ぎ行く駆動音も、蝉の規則正しい輪唱も、そこには確かに見えない生命が存在しているのである。けれどその何れもが唯のノイズであり、AMラジオ宛らに感じた。
 内容の分からない電光掲示板、空の灰色を反射する眼鏡屋の店先に並ぶ様々な眼鏡、道路にこびり付いた鳥の糞。その何れもが灰欠けであり、より一層の孤独を私につきつけた。
 私の歩いているのは車道の中心であった。即ち音は常に前から、後ろからと私を置き去りにし、それが更なる孤独を私に突きつけるのである。
 歩けども歩けども風景に変化はなく、ともすれば私は歩いている気になっているだけで、実は徹頭徹尾、静止を保持していたのではないかと疑ってみた。然れど意識すれば確かに足音は健在で、ならばこれはそういうものなのだと納得した。  
 そうして幾分の間自分のノイズ混じりの足音に耳を傾けながら歩くと、ようやくの変化が顔をだした。一体どこでどう景色が移り変わったのか、視界には先の街並みの影はなく、見覚えのある踏切あった。やけに現実味のあるその踏切は、共湯陸前浜街道踏切、そんな名前が、二つの道路標識の下に記されていた。
 振り向けば景色は朧げで、認識を拒絶されているようであり、ならばと私は踏切に再度の視線を向けると、それは異様なほどにハッキリと映り込んだ。
「誠不思議かな」
 始めて表にした声は確かに私のものであり、どこか久しい感覚が胸をよぎった。
 その踏切の遮断機は降りており、けれど鋼鉄の乗り物の到来を示す音も、光もそこにはなかった。そうして私は暫くぼうっと降りた遮断機を眺めていた。そこに意味はなく、また感情もなく、道路標識のように、ただそこに在り続けているのみに過ぎなかった。
 照りつける日差しは額に汗をつくり、かと思うと吹き付ける風が耳に痛む。暑いのだか寒いのだか、終ぞその感覚が麻痺を始めた頃、私の視界を唐突な鋼鉄の乗り物が数分間横切って行き、更なる冷風を浴びせかけた。
 思わず身震いして視線を足元に移すと、私は自分が裸足であることにようやく気がついた。然れどそこに痛みはなく、視界から得られる情報は唯の事実のみだけであった。
 微かな、ノイズ混じりの轟音を聞き流し、ようやっと静寂が訪れると、今度は別の音が私の耳に入り込んだ。
「もう、会えないのね」
 ――女性の声だ。
 視線を上げると、相変わらず遮断機の降りたの踏切の向こうで、一人の女性が立ちすくんでいた。黒い長髪が特徴的な女性は、確かに私にとって見覚えのある存在であった。しかしどんなに注視しようと顔つきは判別できず、それでいて誰なのかわかるような気がした。友人か、知人か、或いは恋人か、妻か。分からずとも分かった、分かったけれど分からない、そんな気がしたのである。
 女性の声はやけにハッキリとしたものであった。そこにはノイズなんてものはなく、また懐かしさを覚えた。
 何時の間にか踏切の音が、ノイズ混じりで背景に溶け出していた。
「悲しいわ、私」
 再びの女性の声を合図に、溶け出した踏切の音が輪郭を顕にし始めた。けれどノイズは健在であり、それがどうにも鬱陶しく感じられて仕方が無かった。先までそうでもなかった環境音の一つが、意識一つで雑音へと代わり果てたのである。意識の外へ外へと忘却を試みても、それが逆に鮮明に焼きついて仕方がない。
 けれど環境音以上に女性の事を思うことはなく、私は宛ら他人事であった。だというのに、私はやけに彼女の事が気になった。
「さようなら、愛しい人」
 その女性の言葉を最後に、降りた遮断機の中を鋼鉄の乗り物が再び横切っていった。それはガタンゴトンなどという雑多な表現で事足りるものではなく、表現のしようのない、奇妙な、それでいて耳障りな音を立て、私の視界を、私とその女性の間を横切っていったのである。
 耳鳴りとも取れたそれは、私の聴覚の輪郭を歪め、そうして幾分かの後に姿を消し去った。私は確かにその光景を見たはずなのに、その鋼鉄の乗り物が左か、或いは右か、どちらから来たのかを理解できないでいた。
 そうして姿を表した向こうの景色、そこにその女性の姿はなかった。いくら周囲を回視しようが、振り返ろうが、どこにも見当たらなかった。まるで最初からそこには誰も居なかったように、はなから無音であったかのように、静寂そのものであった・
 
 私の世界は清潔な一室と、そこから見える外の風景のみであった。清潔なカーテンに仕切られた四人部屋の一角、左奥の窓際が、私の全てであった。窓から見えるのは殺風景な景色であり、楓の枝先と、様変わりする空と、そこに生きる生命のみであった。鳥が羽休めの為に枝先を何度か確かめ、そうしてゆっくりと着地する。枝はその度に重みで僅かに沈み、けれど確かに受け止め、鳥にとっての地面となる。鳥は忙しなく毛づくろいだの、首を動かしたりだのしており、そこには確かに生命を感じさせていた。私はそんな光景を、異国事であるかのように眺め、私が死んでいるのか生きているのかをその度に自分に問うのであった。
 清潔な純白のシーツに身を沈め、掛布団を腰のあたりまでにかけ、唯ぼうっと外の世界を眺めていると、いつの間にか時間を忘れてしまう。それが私にとっての毎日であり、癖――或いは日課であった。
 けれど私が特に興味を惹かれたのは、風に戦ぐ楓でも、そこに止まる鳥でも、そこを根城とする虫でもなかった。雲である。もっと言えば、空である。早朝に起きれば東雲が、或いは薄明かりが。昼になれば変動する雲や鮮明な青が。夕方になればこの世の終わりのような夕日や黄昏が。そうして夜には星空や月明かりが。私はそういうのに特に惹かれたのである。だからか、雨の日は特に憂鬱であった。そうなると、私は決まって備え付けの小型テレビを付けるのであった。消音にして、遅れてやってくる字幕とともに、ニュースだとかを見るのである。しかし、そこに映る光景もまた、私にとっては異国事でしかないのであった。
 そうやって時間に好きに歩ませると、いつも大体同じ時間帯に女性がやって来る。そして、私もそれを時計を見ずともう時期くる、もう時期くるとどこか察していたのであった。外は昨晩から続く雨で陰鬱としており、雑音を撒き散らすかのように雨音が沈黙を許さないでいた。窓に遮断された音は、それでもなお雑音を防ぎきれず、結果として室内も雑音にまみれてしまっていた。外の楓は鮮明な緑を描いており、しかしそこに来る鳥の姿はまるで見られなかった。
「定期巡回の時間ですよ」
 どうやらテレビの動く光に目を集中させているだけでも、時間というものは過ぎ去っていくものらしかった。一人の女性が、何やら桃色のクリップボードとペンを片手に、私と異国を仕切る国境――即ちカーテンを無造作に開いてきたのである。しかし私が特に返事をすることはなく、それもまた日常的なやりとりの一つであった。
「調子はどうですか?」
 彼女は私の返答など聞かずとも、己の職務だけを果たすのでる。それもまた日常的なやり取りであり、もはや私たちの間において、必要以上の会話というものは不必要であった。しかし聞かれたからには答えるのが筋であり、そもそもこれは必要な会話なのである。ならば私は「問題無い」、と極めて簡潔に言葉を発した。
「分かりました」 彼女もまた、極めて簡潔に返事を返した。 
 ところが彼女も一応は職務であり、多少の責任はあるのだろう。それだけに留まらず、私を軽く観察するような動作で、左の手の甲と繋がった、液体を通す軟体の水道管や、私の見ていたテレビなどを軽く確認すると、「失礼しました、それではまた」と言って早々に立ち去っていった。
 私の世界に異国から訪問者が現れるのは、朝昼夕の三食の飯時と、昼間二回の定期巡回のみであり、宛ら私は鎖国状態であった。しかし私はこの退屈な日々を私なりに楽しんでいるのであり、例えいつ国が滅びようと、私は等に構わないという気でいた。それは覚悟ができているだとか、そういう事ではなく、言わばある種の諦観のようなものであった。
 そうして彼女は自らが開いた私の国境を閉じ、同室の他の人の元へと移動した。私は再びテレビに集中した。その中の動く光は私だけを置き去りに、余りにも膨大な情報を一度に伝えていた。それでもやっぱり私は、どこか他人事であった。

 鋼鉄の乗り物が景色を横切った後で、私はしばし俯き、呆然としていた。けれど不思議なことに、疑問こそ浮かべど、そこに困惑の色はなかった。ただうわ言のように、彼女は誰だ、彼女は誰だと心中で呟くのである。けれどそれを紐解こうなどという意思は皆無であり、思考は迷宮で、解は暗闇である。
 やがてどこか諦めたように真正面を覗くと、いつの間にやら遮断機は上がりきっておいり、しかしやはりそんなことに一々の疑問も感じることなく、私は歩き始めた。線路は陽光を反射しているらしく、薄らと眩しさこそ感じるが、しかしそれも灰欠けにて気にならない。軽く目を細めこそするものの、かと言って視覚に影響を及ぼす程でもなく、極めて弱々しいものであった。
 私がそんな灰欠けの線路を跨ぎ、やがて遮断機の向こうへとやってくると、再びの景色の転換が私を襲った。そこには見えていた朧げな覚えのある風景から、全く覚えのない風景へと変化していたのである。
 ――バラの花畑。灰欠けの世界に策それは、自然黒ずんでおり、ともすれば不気味な光景であった。しかし香りは豊かなもので、それは私を満ち足りた気分へと誘ってくれる。加えて一輪一輪がよく見れば、陽光に照らされ、私とは違い、生き生きとしていた。
「綺麗だ」
 それは心からの感想であり、私はそれ以外の言葉が見つからなかった。けれど私は必要以上に視界を左右に振ることなく、その花畑を奥へ奥へと歩きだした。灰欠けの薔薇はどこまでも咲き誇っており、私の歩く小道だけを残して、その存在感を主張する。
 私は灰欠けの薔薇に目もくれる事なく、ただただ歩き続けた。そのペースは短調であったはずなのに、余りにも徐行で、また先までそうでもなかったのに、足が他者のものなったかのように言うことを聞かないでいた。千鳥足で進む私は、どこか気分も悪いようでいた。頭はぼうっとし始め、視界はただ虚空を捉ええる。意識して聞いていた足音も消え失せており、私の意識は散漫とし始めた。それでも尚歩みを止めることはなく、永遠とも思わせるこの灰欠けの薔薇の花畑を行くのである。そこに明確な目的は無く、また理由も無い。何故、と問われれば、それはまだ私が歩くことができるからだ、としか答えようがない。即ち、可能だからこそ、先に行くのだと。最早そこに立ち止まるなどという選択の余地は無く、はなから念頭に無かった。
 何程歩いただろうか、数刻歩いたようにも思えるし、そうじゃないとも思える。この世界に置いて、時間とはひどく曖昧なもので、定義を剥奪されたものであった。即ち時間を気にする必要はないのだが、私は自分の限界に気づき始めていた。
「もう時期、私は終わりかな」
 そんな予感が私を襲った。けれどそれは、とっくに受け入れているものでもあった。
 最早歩いているのか、歩かされているのかわからないままに、歩いている感覚すらもうしないながら歩いていた。匂いはしない。足音もどんなに意識しようが聞こえない。だというのに恐怖は訪れなかった。私にあるのは諦観のみであり、ならば後は受け入れるのみであった。
「綺麗だ」
 もう一度、この景色を確認するかの如く先と同じ言葉を呟くと、しかし最早私の呂律が回らないのか、うまく発音できた気にならなかった。気にならなかった、と言うのは即ち、既に私自身の言葉すらも聞き取れていないからである。であれば、この後に待ち受ける事というのは薄々予想できていた。
「綺麗だ、綺麗だ」
 私はこの景色を記憶に留める為に、再度呟いた。灰欠けとはいえ、バラの花畑は私にとっては美しく、綺麗で、それでいて綺麗なのだと。回らない呂律で、何度も何度も呟いた。
 やがて視界すらも霞み、どうやら私は小道を逸れてしまったらしかった。美しい、綺麗な灰欠けの薔薇を、知らず知らずの内に踏みつける私であるが、しかしそこに罪悪感が生じる余地はなく、代わりに薄れていた記憶が、時を思い出したかのように鮮明に遡り始めた。三年前、五年前、七年前、十年前、二十年前――私は、寸分の間に数刻を旅しているようであった。そしてその記憶の中に、確かに先の女性の存在を見つけ出すことができた。一番近い記憶で、一番身近な記憶で、その存在は悲しげに私を見つめていた。
 私は満足であった。最後にその、最愛の存在を思い出せたことが。私の全てが消滅しようと、感情こそは最期まで健在であったことが。私は幸福なままに、夢へと旅立てることが。
「綺麗だ」
 今私が見ているのものは、景色か、記憶か。真っ暗な視界には焼き付けられた色とりどりの薔薇の花畑が、真っ白になった脳裏には最愛の存在が浮かび上がり、実像を描き出した。実像は虚像であり、けれど実像であった。
「綺麗だ」
 虚像のみを映す瞳はけれど鮮明で、私の世界はそこにあった。パン屋だのの確実に食欲をそそる香り、車両の静かな或いは五月蠅い混ぜこぜの音、烏のあざ笑うかのような鳴き声。確かにその存在は私に直接存在を示しており、そこに欠けなど存在していなかった。 
 現実は夢で、けれど夢もまた現実で、しかし夢は更なる夢を見せるのである。
「――綺麗だ」
 その声は空言で、しかし確かに声は重複していた。もうなにも聞こえない癖に、私はその声が確かなものであるように感じられた。

 そうしてそれから間もなくして彼は夢の中で、永劫の夢の中へと、その身とその意識とを沈めていった。
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