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第三話
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それからしばらく課題のプリントを二人でこなしていたわけだが、その間に幸知の身体に少しずつ異変が起こりだす。プリントにペンを走らせるだけでも腕が重い。
(どうしよう耳鳴りしてきた、頭がぼうっとしてぐらぐらと眩暈までする。これは少し危ないかもしれない)
気分の悪さも相まって冷や汗までかきだした幸知、ついに耐え切れずペンを置いてその手で口元をそっと抑えた。
「なに、幸知」
「気持ち悪い、血の気が引いてる」
「まじかよ、外行くか? 保健室まだ空いてるぞ」
「い、いい……少し休んだら、治まると思うから」
「来い、ここに寝ろ」
久賀野は動けなくなった幸知の肩を支えて、自分の膝の上に寝かせた。幸知は遠慮する余裕もなく、されるがままに膝枕。そのまま黙って目を閉じた。
「少し休んどけ、汗酷いぞ」
「は、吐いたら……ごめん」
「べつにいいけど」
ついに外では雨が降り出した。空も暗くなり、しばらく帰るには傘が必要になるだろう。バスケ部は再び体育館に消え、廊下は無音。
久賀野は膝の上の幸知の腕に触れた、骨の感触しかないようなあまりに痩せた腕だった。夏前にして、冷たい。体温維持もままならないか。
「お前もさあ、そろそろそれなりの病院行く時期だよな。こんなに痩せて苦しいだろう」
「……」
「最近ますます顔色悪いぞ、今日も昼飯食わなかったよな。あまり良いことじゃないぜ」
その言葉に幸知は思うことがある。ならばがむしゃらに太ればいいのか?
(それでもし、僕が……)
「……僕が、もしもあの人みたいになってしまったら、誰が僕を救ってくれるの」
「あの人?」
「なんでもない……」
(少なくとも僕はそんな自分が許せないし認められない。だけどそれは僕の、僕の家庭における非常に個人的な事情だ。少なくとも久賀野には関係ないから)
「なんだ、俺にはよくわからないが……俺はお前ともっと一緒にいたいんだよ」
「僕といたらファミレスにずっといけないままだよ、食べられないから」
「それな、いつか一緒に食べられたらいいのになあ。美味いものっていっぱいあるぜ」
「……そう言うのは、許されない気がする。好き放題食べたら僕は」
「なあ幸知、お前を縛っているのは、誰だ?」
(……僕を産んで育てているうちに、いつの間にか僕が忌まわしい存在になった人)
(どうしよう耳鳴りしてきた、頭がぼうっとしてぐらぐらと眩暈までする。これは少し危ないかもしれない)
気分の悪さも相まって冷や汗までかきだした幸知、ついに耐え切れずペンを置いてその手で口元をそっと抑えた。
「なに、幸知」
「気持ち悪い、血の気が引いてる」
「まじかよ、外行くか? 保健室まだ空いてるぞ」
「い、いい……少し休んだら、治まると思うから」
「来い、ここに寝ろ」
久賀野は動けなくなった幸知の肩を支えて、自分の膝の上に寝かせた。幸知は遠慮する余裕もなく、されるがままに膝枕。そのまま黙って目を閉じた。
「少し休んどけ、汗酷いぞ」
「は、吐いたら……ごめん」
「べつにいいけど」
ついに外では雨が降り出した。空も暗くなり、しばらく帰るには傘が必要になるだろう。バスケ部は再び体育館に消え、廊下は無音。
久賀野は膝の上の幸知の腕に触れた、骨の感触しかないようなあまりに痩せた腕だった。夏前にして、冷たい。体温維持もままならないか。
「お前もさあ、そろそろそれなりの病院行く時期だよな。こんなに痩せて苦しいだろう」
「……」
「最近ますます顔色悪いぞ、今日も昼飯食わなかったよな。あまり良いことじゃないぜ」
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(それでもし、僕が……)
「……僕が、もしもあの人みたいになってしまったら、誰が僕を救ってくれるの」
「あの人?」
「なんでもない……」
(少なくとも僕はそんな自分が許せないし認められない。だけどそれは僕の、僕の家庭における非常に個人的な事情だ。少なくとも久賀野には関係ないから)
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「僕といたらファミレスにずっといけないままだよ、食べられないから」
「それな、いつか一緒に食べられたらいいのになあ。美味いものっていっぱいあるぜ」
「……そう言うのは、許されない気がする。好き放題食べたら僕は」
「なあ幸知、お前を縛っているのは、誰だ?」
(……僕を産んで育てているうちに、いつの間にか僕が忌まわしい存在になった人)
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