純白のレゾン

雨水林檎

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子守唄うたって

04

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 ただいま、の声に返事はなかった。しかし靴はちゃんとあるしリビングからテレビのステレオ音がする。午後八時前、今日は門限を守っているじゃないか無垢。

「無垢、ただいま。お腹空いただろう?」
「少し、……米炊いておいたから」
「ありがとう、今夜は昨日の肉じゃがの残りと……魚の干物でも焼こうか」
「相変わらず年寄りくさいメニューだよなぁ」
「健康を考えているんだよ」

 賑やかなテレビ番組、警察ドキュメンタリー。意外とバラエティ番組よりもこういう番組の方を無垢は好んで観ている。中には実在の人物の暗い過去を描いたシーンもあって、うっかり観てしまうと私の左手首が疼く。

「無垢、食事の時テレビは……」
「別にいいじゃん、小学生じゃないんだし」

 私は中学生の無垢を知らなかった。ちょうどその頃今の高校に就職をして実家を離れることになって、必死で別れの日の無垢の涙をこらえる顔を今でも覚えている。無垢の入学式、初めての制服姿を見てやりたかったが……。

『心中未遂』

 テレビ番組のナレーターの語ったその単語を私の耳が拾う。瞬間ごくり、と息を飲み込んだ。
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