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海辺での出会い編
1、海
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『どうかしたのかい、少年?』
海の香り。
打ち寄せる波の音。
ジリジリと肌を焼く、夏の日差し。
どこまでも広がっている海を背に、彼女は長い黒髪を潮風になびかせて、大人らしい妖艶な顔で笑った。
その大きな胸と尻を強調するような、水着の中でも露出の多いビキニを着ている。
視線を向けられ少年と呼ばれた男、大原 海は呆けたように口を開け、彼女に見惚れていた。
時は少し遡る――。
*
成人を迎えた大学生、海には幼馴染が二人いる。
小学生からの同級生である男の智樹と、女の明里だ。
この三人は、何をするのも一緒で、同じ大学へ進学している今も仲が良かった。
だが、そんな三人の関係にも変化が訪れる。
『俺たち付き合うことになったんだ――』
夏に入って少し経った、ある日。
智樹は恥ずかしそうに、いつも調子の良さそうな顔を照れくさい笑みに変え、明里の肩を抱いた。
「ふーん、やっと付き合う気になったんだ?」
報告を受けた海は、呆れたようにため息をつき、肩をすくめた。
「おい、やっと……って何だよ!?」
「だって、ずっと前から明里のこと好きだったじゃん。明里もわかってただろ……?」
いつも明るい雰囲気の明里に、ジットリとした目を向けて、同意を求める。
「本当にね。私がこの時をどれほど待ったことか……」
彼女は遠い目をして、冗談を言う。
――実に幸せそうだった。
海はいつか、こんな日が来ることを恐れていた。
智樹と明里が、昔から両想いだったのは、彼自身よく知っている。
だが、二人が付き合い始めれば、カップル一組と男一人。
二人と海の距離感が一歩、遠いものになってしまうのは、避けられないだろう。
そうなると、もうこれまでのように、三人ではいられない。
幸い、海は二人に友情を感じてはいたものの、どちらかと恋人になりたいなどとは、思ったことはなかった。
智樹は、おおらかで優しい性格をしていて、明里はいるだけで、雰囲気が明るくなるような人間だ。
二人に比べ、海は心根は優しいが、少しひねくれていて、不器用なところがある。
その為、友人も多くはなく、まして、異性との浮いた話とは縁遠かった。
智樹は口を開く。
「それで、今度三人で海に行かないか?」
「はぁ? カップルの間に俺一人いるなんて、邪魔でしかないだろ? 明里はそれでいいのかよ?」
海が投げかけた視線を、明里は笑って受け止めた。
「いつも通りでいいじゃない。三人でいきましょっ!」
「でもなぁ……」
海にとっては、三人の関係は大事にしたい。
だが、自分を気遣うあまり、優しい二人の時間を奪うのは気が引けた。
「なっ? 明里もこう言ってるんだし……」
「はぁ……、わかったよ」
智樹に頼み込まれ、しぶしぶ海は、二人と共に夏の海へ行くこととなった。
海の香り。
打ち寄せる波の音。
ジリジリと肌を焼く、夏の日差し。
どこまでも広がっている海を背に、彼女は長い黒髪を潮風になびかせて、大人らしい妖艶な顔で笑った。
その大きな胸と尻を強調するような、水着の中でも露出の多いビキニを着ている。
視線を向けられ少年と呼ばれた男、大原 海は呆けたように口を開け、彼女に見惚れていた。
時は少し遡る――。
*
成人を迎えた大学生、海には幼馴染が二人いる。
小学生からの同級生である男の智樹と、女の明里だ。
この三人は、何をするのも一緒で、同じ大学へ進学している今も仲が良かった。
だが、そんな三人の関係にも変化が訪れる。
『俺たち付き合うことになったんだ――』
夏に入って少し経った、ある日。
智樹は恥ずかしそうに、いつも調子の良さそうな顔を照れくさい笑みに変え、明里の肩を抱いた。
「ふーん、やっと付き合う気になったんだ?」
報告を受けた海は、呆れたようにため息をつき、肩をすくめた。
「おい、やっと……って何だよ!?」
「だって、ずっと前から明里のこと好きだったじゃん。明里もわかってただろ……?」
いつも明るい雰囲気の明里に、ジットリとした目を向けて、同意を求める。
「本当にね。私がこの時をどれほど待ったことか……」
彼女は遠い目をして、冗談を言う。
――実に幸せそうだった。
海はいつか、こんな日が来ることを恐れていた。
智樹と明里が、昔から両想いだったのは、彼自身よく知っている。
だが、二人が付き合い始めれば、カップル一組と男一人。
二人と海の距離感が一歩、遠いものになってしまうのは、避けられないだろう。
そうなると、もうこれまでのように、三人ではいられない。
幸い、海は二人に友情を感じてはいたものの、どちらかと恋人になりたいなどとは、思ったことはなかった。
智樹は、おおらかで優しい性格をしていて、明里はいるだけで、雰囲気が明るくなるような人間だ。
二人に比べ、海は心根は優しいが、少しひねくれていて、不器用なところがある。
その為、友人も多くはなく、まして、異性との浮いた話とは縁遠かった。
智樹は口を開く。
「それで、今度三人で海に行かないか?」
「はぁ? カップルの間に俺一人いるなんて、邪魔でしかないだろ? 明里はそれでいいのかよ?」
海が投げかけた視線を、明里は笑って受け止めた。
「いつも通りでいいじゃない。三人でいきましょっ!」
「でもなぁ……」
海にとっては、三人の関係は大事にしたい。
だが、自分を気遣うあまり、優しい二人の時間を奪うのは気が引けた。
「なっ? 明里もこう言ってるんだし……」
「はぁ……、わかったよ」
智樹に頼み込まれ、しぶしぶ海は、二人と共に夏の海へ行くこととなった。
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