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海辺での出会い編
2、独り
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そして、日が経ち、三人は予定していた通り、夏の海に来た。
日差しは強く、夏特有のじっとりとした暑さで、場は満ちている。
そんな中、ビーチは海水浴に来た大勢の人々で、賑わっていた。
水着に着替えた三人は、少し浜辺で砂遊びやビーチボールをした後、ビーチパラソルの下で休むこととなる。
今は明里が飲み物を買いに席を立ち、男二人がその場に残されていた。
今しかないと思った海は、智樹に声をかける。
「そしたら、俺ひとりでブラついてくるから……明里と上手くやれよ」
「ちょっと待てって! どうして、そうなんだよ?」
突然の海の発言に、智樹は動揺している。
海は、こう続ける。
「折角の海だろ? 恋人になったんだから、二人っきりの思い出くらい作らないと、勿体ないと思わないか? 俺はもう遊んだから、充分満足した」
「で、でもよぉ……」
「俺のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど、それでお前らが我慢するのは、見てらんないんだよ。俺はナンパにでも行ってくる。じゃあな!」
智樹の返事も待たず、海は立ち上がると、傘の陰から抜け出し、一人走り去っていく。
「アイツ……ナンパなんか、絶対しない癖に……」
取り残された智樹は、快晴の空を見上げながら、明里が戻ってくるのをじっと待つのだった――。
*
あれから一人、海はナンパをするでもなく、浜辺を歩いていた。
周囲には、仲の良い男友達同士のグループや、はしゃいでいる女性達。
寄り添うように並んで歩く、カップル達の姿があった。
そんな群れの中を歩く海は、酷く寂しい気分になった。
(これでいいんだ。アイツらには、幸せになって欲しいからな……)
足取りは重く、ビーチの喧噪から逃げるように、人気のない方へ歩いていく。
(どっか、落ち着ける場所は――)
しばらく砂浜を歩き、岩場を越え、すれ違う人も随分といなくなった。
そして、歩みを進めていく内に――人影が目に入った。
人のいない砂浜に座り、物憂げに、じっと海を見つめる一人の女性。
黒い長髪が海風に流され、なびいている。
右手には缶ビールを持ち、時折口に運んでは、チビチビと飲んでいる。
プロポーションに自信があるのか、布面積の少ないビキニを着て、彼女は黄昏ていた。
年齢は、海の少し上ぐらいだろうか。
大人らしい、色香を纏っているその女性から、海は目を離せず、見惚れてしまっていた。
すると、彼女は海の視線に気づいたのか、彼へと振り向く。
――そして、『どうかしたのかい、少年?』と笑った。
*
そして、時間は現在に至る――。
「いえ、その……邪魔してすいません」
ふと我に返り、敬語で謝罪しながら、軽く頭を下げる。
「別にいいの。こっちこそ、楽しい海でこんなショボくれたお姉さんがいたら、迷惑よね……」
笑った彼女だが、その表情にはどこか影があり、海は胸を痛める。
「いや、そんなことはない……です」
こんな浜辺で、孤独を感じさせる彼女に、彼は親近感からそう言った。
「あらぁ? もしかして、少年もお姉さんと同じ、ブルーな気分だったり?」
「まぁ、……そんなとこです。あと、俺、少年じゃなくて大学生です」
「あぁ、ごめんごめん。可愛らしい顔してたから。でも、私からすれば、大学生も子どもみたいなものよ。アハハっ!」
彼女は、楽しそうに笑った。
一目見た時は、クールな人かと海は思ったが、そんなことはなさそうで、結構、愉快な人のようだ。
「それで、少年? 君はどうしてブルーな気分なの?」
彼女の瞳が少しだけ、輝いて見えた。
海は多少面倒だとは思いながらも、興味を惹かれ、彼女の側に腰を降ろす。
「実は――」
彼は、誰かに自分の気持ちを吐き出したかったのだろう。
一度息を大きく吐き出し、気分を落ち着けると、語りだす――。
日差しは強く、夏特有のじっとりとした暑さで、場は満ちている。
そんな中、ビーチは海水浴に来た大勢の人々で、賑わっていた。
水着に着替えた三人は、少し浜辺で砂遊びやビーチボールをした後、ビーチパラソルの下で休むこととなる。
今は明里が飲み物を買いに席を立ち、男二人がその場に残されていた。
今しかないと思った海は、智樹に声をかける。
「そしたら、俺ひとりでブラついてくるから……明里と上手くやれよ」
「ちょっと待てって! どうして、そうなんだよ?」
突然の海の発言に、智樹は動揺している。
海は、こう続ける。
「折角の海だろ? 恋人になったんだから、二人っきりの思い出くらい作らないと、勿体ないと思わないか? 俺はもう遊んだから、充分満足した」
「で、でもよぉ……」
「俺のことを気遣ってくれるのは嬉しいけど、それでお前らが我慢するのは、見てらんないんだよ。俺はナンパにでも行ってくる。じゃあな!」
智樹の返事も待たず、海は立ち上がると、傘の陰から抜け出し、一人走り去っていく。
「アイツ……ナンパなんか、絶対しない癖に……」
取り残された智樹は、快晴の空を見上げながら、明里が戻ってくるのをじっと待つのだった――。
*
あれから一人、海はナンパをするでもなく、浜辺を歩いていた。
周囲には、仲の良い男友達同士のグループや、はしゃいでいる女性達。
寄り添うように並んで歩く、カップル達の姿があった。
そんな群れの中を歩く海は、酷く寂しい気分になった。
(これでいいんだ。アイツらには、幸せになって欲しいからな……)
足取りは重く、ビーチの喧噪から逃げるように、人気のない方へ歩いていく。
(どっか、落ち着ける場所は――)
しばらく砂浜を歩き、岩場を越え、すれ違う人も随分といなくなった。
そして、歩みを進めていく内に――人影が目に入った。
人のいない砂浜に座り、物憂げに、じっと海を見つめる一人の女性。
黒い長髪が海風に流され、なびいている。
右手には缶ビールを持ち、時折口に運んでは、チビチビと飲んでいる。
プロポーションに自信があるのか、布面積の少ないビキニを着て、彼女は黄昏ていた。
年齢は、海の少し上ぐらいだろうか。
大人らしい、色香を纏っているその女性から、海は目を離せず、見惚れてしまっていた。
すると、彼女は海の視線に気づいたのか、彼へと振り向く。
――そして、『どうかしたのかい、少年?』と笑った。
*
そして、時間は現在に至る――。
「いえ、その……邪魔してすいません」
ふと我に返り、敬語で謝罪しながら、軽く頭を下げる。
「別にいいの。こっちこそ、楽しい海でこんなショボくれたお姉さんがいたら、迷惑よね……」
笑った彼女だが、その表情にはどこか影があり、海は胸を痛める。
「いや、そんなことはない……です」
こんな浜辺で、孤独を感じさせる彼女に、彼は親近感からそう言った。
「あらぁ? もしかして、少年もお姉さんと同じ、ブルーな気分だったり?」
「まぁ、……そんなとこです。あと、俺、少年じゃなくて大学生です」
「あぁ、ごめんごめん。可愛らしい顔してたから。でも、私からすれば、大学生も子どもみたいなものよ。アハハっ!」
彼女は、楽しそうに笑った。
一目見た時は、クールな人かと海は思ったが、そんなことはなさそうで、結構、愉快な人のようだ。
「それで、少年? 君はどうしてブルーな気分なの?」
彼女の瞳が少しだけ、輝いて見えた。
海は多少面倒だとは思いながらも、興味を惹かれ、彼女の側に腰を降ろす。
「実は――」
彼は、誰かに自分の気持ちを吐き出したかったのだろう。
一度息を大きく吐き出し、気分を落ち着けると、語りだす――。
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