【R-18】ヒトリノ海

右折坊太郎

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海辺での出会い編

3、寂しさ

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「――なるほど、そんなことが……」
 女性は、海の話を聞き終えた。

 彼が話した内容は、二人の幼馴染みがいること。
 三人で過ごす時間は楽しいが、その二人が付き合い始めたこと。
 幼馴染みとして、二人の幸せを願っているが、邪魔者にはなりたくないということを伝えた。

「それで、二人を置いてここに来たんです。今頃、楽しい時間を過ごしてくれてるといいんですけど……」
「ふーん、優しいんだぁ?」
「べ、別に……」

 女性は悪戯っぽい笑みを、海に向けた。

 彼は気恥ずかしさに顔を背け、こう続ける。
「そ、それよりお姉さんの話を聞かせてくださいよ……。どうして、こんなところで、ビール飲んでるんですか?」

「そうねぇ……。本当は、ここに彼氏と来る予定だったの。そのために、新しい水着も買ったし、彼に相応しい人間になるように、自分を磨いてきた――つもりだった」

 彼女から笑顔は消え、視線を海原の遠くへと向ける。

「彼、年上の人だったんだけど、半年ぐらい前に、職場で昇進してね。忙しくなっちゃって。それから、すれ違いが多くなっちゃった。デートの回数も減って、お互い不満をぶつけ合うようになって、喧嘩が増えた。昔はとっても優しくて、喧嘩するなんて考えられなかった。そんな人じゃ、なかったのに……」

 缶ビールを持つ手に力が入り、彼女は視線を落とす。

「それで、五日前。別れてくれって言われちゃった。職場の同僚の人と、イイ感じになって、付き合うことになったらしくて……。私も、彼の気持ちが離れていってたのは、とっくに分かってた。だから――別れたの」

 大きな波が押し寄せ、付近の岩場に叩きつけられ、飛沫を上げる。

「それで、ここに来たってワケ。仕事も休みだし、折角、新しい水着も買ったのに、勿体なかったから。綺麗な海を見たら、気分も晴れるかと思ったし。あわよくば――新しい恋でも見つからないかなぁ……って」

 悲し気な顔で彼女は、彼に笑いかけた。

 話しを聞き終えた海は、
「それで、景色を眺めながら独りぼっちで、お酒を飲んでたんですね?」と茶化す。

「いいじゃない、別に。誰かに迷惑かけてるわけじゃないしぃ!」

「俺は、迷惑してますけどね……」
「むぅ……」

 むくれる彼女に、海は小さく笑って、こう言った。
「――その水着、にっ……似合ってますよ」

「――ッっ!?」

 突然のセリフに、お姉さんの顔が一気に赤くなる。

「そ、そう……?」

「え、えぇ……」
 こういうことに慣れてないのか、海の口調はぎこちない。

 それでも女性は、彼の気持ちが嬉しかったのか、照れながらも笑顔になる。

「本当……?」
 彼女は海の胸板に、そっと身体を押し付ける。

 大きな胸が柔らかく潰れ、女性特有の感触に、海の頭は熱くなってしまう。

「ちょ、ちょっと……っ!?」
「ちゃんと見ないと、わからないでしょう? ホラ、もっと見て……っ」
 一層強く胸を押し付け、谷間が深くなる。

 海の視線は、彼女の胸元に吸い込まれる。
 柔肌が眩しく映り、水着を見るどころの話ではない。

「そっ、そんなに近いと、何も見えないですってッ!!」
「えぇー? 何も見えないってことは、ないんじゃない? バッチリ見えてるものがあるでしょ? ほれほれぇ~っ!♡」

 彼女は、海がドキドキしていることを察しつつ、意図的に胸を押し付けて、彼を煽る。
「うっ、うぅ……っ!」

 柔らかな、胸の感触。
 潮風に紛れ、香水の香りだろうか、彼女から甘く良い匂いが漂ってくる。

 海は、ひねくれてはいるのものの、男子として性欲がないわけではない。
 オトコの身体はメスの接近により、我慢しようとも自然と反応してしまい、勃起してしまう。

「あぁっ……♡」
 当然、密着していた彼女には、悟られてしまう。
 大きく硬くなった男性器が水着越しに、彼女のお腹を押し上げていた。

「――~~っッッ」
 海は自制の効かない肉体を恨めしく思いながら、顔を赤らめている。

 その反応が、かえって彼女は嬉しかったのか、ニンマリとした笑みになった。

「可愛いねぇ……♡ 私もムラムラしてきちゃった♡」
 彼女は、何度もグイグイと身体を押し付ける。

 そのまま、こう続ける。

「もしかしたら、少年の幼馴染み二人も――今頃、何処かでシちゃってるかもねぇ?」
「っ!?」

 海の脳裏に浮かぶ、イメージ。

 親友とも呼べる男女二人が、一糸まとわぬ姿で、本能のまま腰を振り、交尾に耽る姿。

 興奮と共に、自身も同じように肉欲に溺れたいという気持ちが、沸々と湧き出す。

 女性は、海の硬くなった肉棒を、胸で押して刺激する。

「ねぇ少年、お姉さんと気持ちいいこと……シてみない?」
「……っ!? そのっ……俺、初めてなんですけど……っ」

 言い辛そうに、女性を直視出来ずにいる海。

 『初めて』という単語を聞いた時、女性の表情がサッと変わった。

 彼女の中にあった、初体験の思い出が蘇ってしまう。
 
 両想いになって、最も愛する人と結ばれる幸福と、温もりに満ちた過去が。

(そっか……、そうよね)
 女性の表情は、発情したものから一瞬にして冷め、硬い笑みを浮かべてしまっていた。

「――ごめんなさい。初体験って大事だものね……。私、寂しいからって貴方に甘えてたわ。勢いに任せて、なんてダメ。やっぱり、少年はもっと若くて好きな人と――」

 くっついていた、身体が離れていく。

 ――だが、彼女の手を、海は力強く掴んだ。

「待ってください。ここで、止めるなんて無責任なんじゃないですか……?」
「そ、それはそうよね……ごめんなさ――」

「それに、俺の気持ちを……勝手に決めつけないでください」

 海の左手が、彼女の手を離すまいと、力が込められた。

「俺もお姉さんと……シたいです」
「でもっ! 私は寂しさを埋めるために貴方を――」

「それでも、いいじゃないですか。俺だって……寂しいんです。だったら、寂しい者同士、一緒にいればいいじゃないですか」

 海はただ、穏やかに笑った。

 海は理解していた。
 彼女が、人の優しさや温もりに飢えていることに。

 失恋したショックから、何かにすがっていないと、自分を保つことが出来ないのだと。

 彼の優しさに、彼女は涙を浮かべる。
「本当に、いいの……?」

「はい。そのっ……お姉さん、綺麗だし……話しやすいし……。この機会を逃すと俺、一生童貞のまま人生終わるかもしれないし……」
 
 海は小声で、言い訳を並べ立てていく。

 彼女の目から涙が溢れ、頬を伝う。

 海のそんな不器用な言い方に、彼女はクスクスと笑いながら、流れる涙をその細い指で拭った。

 彼女の胸に、海への愛しさが芽生え、惹かれていく。
「それじゃあ、少年。お姉さんと忘れられないような初体験、シよっか……?♡」

 これまで曇っていた彼女の瞳が、妖しく光り輝いていた――。
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