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1.終わりの始まり

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後宮、即ち皇帝や王などの后妃が住まう場所。

本来ならば静かで落ち着き、走るなど以ての他な男子禁制の女性の花園。

しかしその花園は今人々が走り、そこかしこから女性の悲鳴が聞こえ、美しく飾ってあったであろう花は地面に散ってしまっているという有りえないことが現実としてが起こっているのだ。

多くの宦官や内侍、女官が往復しているのは後宮の中でも最も美しく最も秀麗な皇后、白羽が住む宮である。白羽の周りで慌ただしく働く女官を見て白羽は、その光景が不思議でたまらなかった。

「(なんでこんな大事になってるの?少し具合が悪いだけなのだけれど…)」

白羽はぼーっとしながら自分の脳内に過去が映像のように流れているのを他人事のように見つめていた。

まず初めに白羽が後宮に入ったのは13の歳の頃であった。
周りの子供が15~16歳で後宮入りしたのには少し変わった理由があった。

1つ目は白羽の親である白煉が後宮に深く関わっている人物であり、幼い頃から先代皇帝、皇后と親交があったこと。
2つ目は僅か11歳にして秀才だと言われる程の知識量があったからである。

「(1つ目はまぁ良いとして…問題は2つ目よ…わたし別に頭がいいってわけじゃないんだけど……ただもう何年も前にやったものだから身についてるだけで……)」
 
そう、驚くべきことに白羽は一度事故によって死に今の白羽の形に生まれ変わったのである。 

「(嫌本当にさ…、大人びてるとか言われてるけどそれは人生二度目だから比較的落ち着けてるだけで…はぁ…)」

「白羽姉様ぁ…?」
「っ!どうしたの凛灯?」
「白羽姉様は私をおいていったりしないですよね…?」「…。」

涙ぐみながらそう言って白羽の手を握るのは淑妃である凛灯、その後ろで心配そうにこちらを見ているのは徳妃である張麗華。
どちらも白羽の異母妹であり、白羽の教え子でもある。

「大丈夫よ、少し体調が良くないだけ、ちゃんと寝ていれば治るわ(軽い発熱、喉の痛み、腹痛、頭痛、これだけ症状があるっていうことは多分これって鄧艾病よね…、感染するようなものじゃないけどここは日本じゃないし年代も違う…治る方法は…無い、でも二人には心配かけさせないようにしないと…)」

「っ、本当ですか…?本当に本当?」
「ふふっ、本当に大丈夫よあの方が帰ってくるまで倒れるわけにはいかないもの…」
「!そうですよ、倒れちゃだめなのですから、すぐに直さないと!白羽姉様は寝ててください!」そう言って凛灯と、張麗華は侍女に引っ張られながらも自分の宮に帰っていった。

「凛灯様にあそこまで言われてしまってはきちんと寝ないといけませんね、」
「冬麗…そうね…」お付きの侍女にそう言われては仕方がないとベットから起こしていた体をゆっくりと倒そうとした。

(っ…?何かしら…視界が…回る…?)
「白羽様?白羽様!何方か!白羽様が!」
(すごく…眠いわ…何かしら…冬麗が何か…呼んで…)


白羽が後宮に入ってから早5年と10ヶ月、皇帝である蒼矢が、白羽の生誕プレゼントを買いに行くと言って2ヶ月と一週間で生誕祭が行われるはずであった彼女は僅か19歳という若さでこの世を去ったのであった。




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次回作は明日投稿いたします~

後日談とキャラクター設定等を書こうかと思っております。
今しばらくお待ち下さいませ(*˘︶˘*).。.:*♡
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