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03.

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「清祓君、白音君。」

居なくなった社員の文の仕事を片付けているとそう後ろから声が掛けられた。

社長だ。

俺が会社に入ったときにピンとまっすぐ伸びていた背中は今やもう何キロもあるダンベルを乗せられているかのように丸められて、健康そのものだった体もボロボロに、顔にもクマができていた。

「社長!?こんな時間にどうされたんですか!?」時刻は夜1時とうに回った頃だった。

「リモートで仕事をやってくれている物が居るとはいえ君達も大変だろう。負担をかけさせてしまって申し訳ない…」そう言って頭を下げた社長に慌てて二人で顔をあげるように声をかける。

「社長のせいじゃないですよ、それに此れは誰が悪いとか無いですし…」

「しかし…残業をさせてしまって…」

「社長~、悩みこみすぎですって、ほら、明後日にはリモートでですけど別の会社のヘルプが入るんでしょう?其れまでなんて楽勝~ですよ、な?咲心」

「あぁ、其れに社長が頑張っているのも皆知ってるんで、喜んで手伝ってくれますよ」

「二人共…本当に済まない!ありがとう!明日の朝は二人に何か買ってこよう!」

頭を下げたあとそう言った社長に此方も頭が下がる。

何処かのブラック会社の社長と違って内の社長は優しいのだ。おまけに人柄もいいと来た。

俺達はこの会社を一生やめられないだろう。と言うよりやめろと言われても絶対に止めない。

電話がかかってきたのか慌てた様子で部屋の外に出ていった社長の後ろ姿を見て俺達はどちらともなく

「今は大変だけど会社と社長の為だ。もうちょっとだけ頑張ろ、」

「だな、後少しで此方の書類終わるわ。そっち渡して」

「あいよ~、ありがと」「何いってんだよ俺等は二人でひとりだろ?」

「やべ、お前が男じゃ無かったら惚れてた」
「惚れてたって何だよww」

「いやまじ、こう、心臓がトゥクンってなった。」
「wwwリアルに言うの止めろよ、そんな事言ったってクッキー位しか出てこねーぞ(笑)」

「ちゃんと出てきたww咲心の手作りクッキー!上手いんだよな~やっぱり性別間違えてね?」
「間違えてね~よ!!」

ブラックと聞くと皆心配そうな顔を向けてきたり退職を進めるけど、俺はこの会社を選んだことを公開はしてない。

先輩や同僚が消えてく謎の事件は確かに怖いと思うけど、優しくて頼りがいのある社長がいて、仲良しで済まないくらい気の合う同僚がいて、リモートだけど仕事はバリバリにやってくれる後輩とかが居るからな。
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