俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第1章 俺は子猫であり弟?

過保護(2)

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猫を飼ったことがない俺は、子猫がどんなふうに一日を過ごすのか、知識がない。
今の俺の生活は、基本的には食べると寝るの繰り返しだが、明莉が遊んでくれる時には体を動かしている。
不摂生なのかな。
明莉や妻に心配をかけるといけないので、俺のために用意してくれた猫用のおもちゃのボールを転がして遊んでみる。

妻も明莉も、過保護なくらい俺のことを大切にしてくれている。 
ペットショップでも、動物病院でも、猫の飼い方について熱心に聞いていた。
疑問に思ったことがあれば、すぐにネットで調べている。
俺に合う餌を用意し、食べる量をきちんと量って出してくれる。
おもちゃも子猫用の物を用意し、おもちゃの与え方や遊び方まで調べていた。
俺は安心して、二人がしてくれる通りにしている。
だが、それ以外のことは知識がなくて わからない。
どうしたらいいかわからないが、とりあえず元気であることをアピールしてみる。

妻も明莉も、心配性だ。
いや、正確には「心配性になってしまった」と言った方が正しいのかもしれない。
今も明莉は、お義母さんに俺の元気がないと言われて、口では強がっているけど、心の中では気にしているに違いない。

妻がいない時、明莉が俺の背中を撫でながら言った。
「オト、オトは急にいなくなったりしないでね。」と。
明莉がいない時、妻は俺を抱っこして言った。
「オト、あなたは長生きしないとダメよ。」と。
そして、明莉は妻の前では決してそんなこと言わないし、妻も明莉がいる時には言わない。

二人が心配性になった原因は、俺にある気がしてならない。
「心配しなくても大丈夫だよ」と伝えることができたらいいのに・・・

明莉とお義母さんがおやつを食べている横で、俺はボールと戯れ続けた。
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