俺は猫であり父である

佐倉さつき

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第2章 俺は天才?

発表会(6)

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「オトー!どこなのー?オトー!」
俺を探す声が家中に響いている。
バタバタバタバタ・・・バタン!
「もう、時間がないのに!どこに行ったのかしら?」
近づいてくる妻の声に、俺はより一層体を小さくして丸くなった。

今日は、学習発表会の当日。
妻は、俺をケージの中に入れて学校に向かおうとしている。
「もう、遅れちゃうわ。急いで出なくちゃ。」
よし!これで俺も妻と一緒に学校に行って、明莉の劇が見れるぞ。
ふわっと体が浮く感覚がして、体が揺れる。
「ううん⁉なんかカバンが重い。何か余計な物でも入れたままにしていたかしら?」
そして、カバンに入ってくる妻の手・・・
「キャー‼」
妻の叫び声とともに、俺の体は空中に投げ出された。
やばい、見つかってしまった。
「なんでオトがカバンの中にいるの⁉」
こうして俺は妻につかまり、ケージの中に入れられた。
あと、もう少しだったのに・・・



明莉の劇は、そろそろかな?
明莉は、台詞を全部言うことができるだろうか?
緊張して台詞を忘れたりしませんように・・・
俺は、ケージの中で立ったり座ったりを繰り返していた。


寝ていたら時間があっという間に過ぎて、妻と明莉が帰ってくるかもしれない。
そう思って目を瞑ってみるが、俺の意識はどんどん冴えていくばかり。
胸がドキドキしたり、ざわついたりして、一睡もできなかった。


明莉の劇は、無事に終わっただろうか?
明莉は笑顔で帰ってくるだろうか?
もし、うまくいかなくて泣きながら帰ってきたら・・・


ガチャ。
「ただいまー!」
帰ってきた‼
「ミャウ―!ミャウミャウ―!(おかえりー!どうだった?)」
俺はケージの柵にしがみついて、しっぽを大きくふって明莉に呼びかけた。
「オト、どうしたの?」
明莉が驚いた顔で俺の方を見た。
「あら、一人で寂しかったのかしら?私も明莉も帰ってきたから、もう大丈夫よ。」
違う!そうじゃない!俺は、明莉の劇が気になるんだ‼
俺の気持ちを全く理解していない妻の話が続く。
「今朝、学校に行こうとしたら、オトがいなくてね。オトをケージの中に入れるのをあきらめて学校に行こうとしたら、バックの中にいたの。なんか重いなと思って、バックの中に手を入れたら、モワモワっとしたものが手にあたって、心臓がとまりそうだったわ。」
「えー⁉そんなことがあったの⁉ダメじゃない、オト。ママを困らせたら。」
妻を困らせるつもりはなかったんだ。
明莉の劇が見たかったんだ‼
「ミャウ、ミャウ―(劇は?うまくできたのか?)」
俺は、ケージを揺らしてアピールを繰り返すが、なかなか二人には伝わらない。

「オト、着替えてくるから待っててね。」
そう言うと、明莉はリビングを出ていった。
「私も着替えて、お昼を作らなきゃ。」
明莉に続いて、妻も出ていく。

誰か、俺に明莉の劇のことを教えてくれ‼

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