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まずは一番傷の深いところから。
上腕から前腕にかけて四本の深い傷が走り、血で真っ赤に濡れていて傷の深さを物語っていた。
「ひどい……」
生まれてこの方、こんなひどい傷を見たことがなかったのでひどく躊躇ってしまう。が、そんな事も言っていられないので早く手当しないと!
まずは傷口を洗い流さないとね。恐らく魔獣の爪にやられたのであろう、菌が繁殖して化膿してしまう。
「うっ……!!」
痛みで呻く隊長さんをフレドリックさんに押さえてもらい、水魔法で傷口を洗い、止血剤を塗り込む。
「取り敢えず止血はしたけど、それにしてもひどい熱ね。これも何とかしないと」
アイテムボックスからエキナセアの抗ウイルス薬とエルダーフラワーの解熱剤、グローブの鎮痛剤を取り出し調合する。
「頭を高くして支えて貰えますか?」
そうフレドリックさんに頼み体を起こし支えてもらう。
「飲んで下さい」
そう言い、隊長さんの口元へ容器を近づけ口の中へ注ぎ入れる。
何度もむせ返りながらではあったが、何とか飲むことが出来てほっとする。
「あなたの手当もしますからこちらへ」
次はフレドリックに向かい、テーブルの椅子を引き、座るように促す。
「すいません。お願いします」
素直に座るフレドリックさんをよく見ると、頭にまで棘が刺さっていた。
「ごめんなさいね、自衛とはいえこんな目に遭わせてしまって。何も聞くなとは言ったけど、気になりますよね……他言しないで頂けるのなら別に構わないですけどね」
そう苦笑いを向けた。
「ははは、もう、さっきから気になって気になって」
と弱々しく笑った。
「まずは全身の棘、抜きましょうね」
ピンセットを持つと頭の先からつま先まで所々に刺さった棘を抜いていく。
「あの花の事を聞いていいですか? 初めて見る花でしたので、その、動きますし、気になって」
棘抜きをされながら気になっていただろうあのバラのことを聞いてきた。
「それが私にもよく分からないんですけど、何だか意志を持っているようなんです。あ、あの花はバラと言って私が種から育てた花です。苗の時からこう、ウネウネと動き出して」
そう説明していくとフレドリックさんは思い当たりがあるのかひとつ頷いた。
「もしかしたら精霊が宿っているのかもしれませんね。時々あるんですよ」
精霊! なかなかファンタジーな存在ね。随分と手荒い精霊だけど。
「そうなんですか。最初動いている苗を見た時は悲鳴を上げそうでしたよ。はい、棘抜き完了」
くすりと笑いながらその時の様子を伝えた。
「他に怪我しているところありませんか? 痛みのあるところとかは?」
「いえ、私は大丈夫です。隊長が、助けてくれたので……」
フレドリックさんは心配そうに隊長さんを見ながら答える。
隊長さんの様子を見に行くと、息は荒く熱もまだ下がりきってはいないようだ。さて……どうするか。
アレを試してみる?でも人に対して使った事ないしな……でも、一か八か。
両手を隊長さんの上腕と前腕に向け魔力を込める。集中だ、もっと、もっと! 目を閉じ傷を癒すイメージで魔力を上げていく。
すると、手のひらが暖かくなるのと同時にごっそりと魔力が持っていかれる。大丈夫、平気。なんてったって魔力∞だもんね。
目を開くと、傷口は柔らかな光に包まれどんどん塞がっていく。
「もう少し、もう少しよ。」
と、そこでフレドリックさんに止められた。
「もう十分です! 魔力を抑えてください! あなたが死んでしまう!!」
止められて気付いたが、額からは汗が流れ出しポタポタと顎の先から落ちていた。
「あんなに大量の魔力を使ったら死んでしまいますよ! いくら隊長を助けてくれる為とは言え無謀すぎます!!」
あれ、私なんか怒られてる?
「ちょっと疲れますけど、全然平気ですよ? ほら」
なんて事ないよ、と立ち上がり汗を拭いた。
「あ、あなたは……。そんな、まさか?」
狼狽えるフレドリックさんはまずは放っておいて、まずは隊長さんだ。
「あ~ぁ、途中で止めるから中途半端に治っちゃったじゃない。もぅ、傷跡がこんなにくっきり」
もう一度手をかざしてみたが、途中で止めたからなのかそれ以上は治らないような気がした。
「無理ね、まぁ傷口が塞がったから、まずは良かったでいいのかな。うん、熱も下がってるし、息も穏やかになったわね。」
隊長さんの額に手のひらを乗せ熱を測ると、大分下がっているようだった。
「あなたの棘の痕も治しましょうか? そのままじゃ痛いでしょ?」
ポカンとした顔で立っていたフレドリックさんに声をかける。
「あ、いや、私は大丈夫です。それより、あの、今の魔法は……治癒魔法、でしょうか?」
「ええ。でも、さっき飲ませた薬の効果を最大限に生かすための魔法。と言った方がいいのかな? 薬の効果をなるべく早く出したかったから」
私が使った魔法は光属性から派生した聖属性魔法。この一週間で密かに細々と魔法の練習を重ねていたのだ。
「ははははは……」
どさり、と椅子に座り眉を下げまた弱々しく笑った。
「さて……体泥だらけですよ。家の中が汚れるので、シャワー浴びてきてください。お風呂もすぐに入れるので遠慮なさらずどうぞ」
遠慮されると困るのでわざと、「家の中が汚れる」と言いシャワーを勧めた。
「何から何まですみません」
「いいえ、タオルはバスルームに置いてあるものを使ってください。脱いだ服は洗ってすぐ乾かしますので、籠の中に入れて置いてください」
「いや、さすがにそこまでしてもらうのは……」
「問答無用、口答えしない」
ズバリと言うと、フレドリックさんは苦笑いをしながらバスルームへ向かった。
シャワーの音が聞こえたので、脱衣所へ服を取りに行く。いつもはバスルームで洗濯しているが、今は使用中なのでカバードポーチへ出て水魔法を使い、手作りの石鹸で洗濯する。
「あとは、乾かすだけね」
次は極限まで抑えた火魔法を右手で、風魔法を左手で発動し、服を乾かしていく。風に揺られながらハンガーにかけられた服はどんどん乾いて、五分ほどで完全に乾いた。
服をもって脱衣所に向かい、フレドリックさんがまだバスルームにいることを確認し、声をかけた。
「フレドリックさん、乾かした服置いておきますね」
「えっ! もう洗濯してくれたんですか?」
驚きの声がしたが、「ごゆっくり」と、そう言って脱衣所を後にした。
上腕から前腕にかけて四本の深い傷が走り、血で真っ赤に濡れていて傷の深さを物語っていた。
「ひどい……」
生まれてこの方、こんなひどい傷を見たことがなかったのでひどく躊躇ってしまう。が、そんな事も言っていられないので早く手当しないと!
まずは傷口を洗い流さないとね。恐らく魔獣の爪にやられたのであろう、菌が繁殖して化膿してしまう。
「うっ……!!」
痛みで呻く隊長さんをフレドリックさんに押さえてもらい、水魔法で傷口を洗い、止血剤を塗り込む。
「取り敢えず止血はしたけど、それにしてもひどい熱ね。これも何とかしないと」
アイテムボックスからエキナセアの抗ウイルス薬とエルダーフラワーの解熱剤、グローブの鎮痛剤を取り出し調合する。
「頭を高くして支えて貰えますか?」
そうフレドリックさんに頼み体を起こし支えてもらう。
「飲んで下さい」
そう言い、隊長さんの口元へ容器を近づけ口の中へ注ぎ入れる。
何度もむせ返りながらではあったが、何とか飲むことが出来てほっとする。
「あなたの手当もしますからこちらへ」
次はフレドリックに向かい、テーブルの椅子を引き、座るように促す。
「すいません。お願いします」
素直に座るフレドリックさんをよく見ると、頭にまで棘が刺さっていた。
「ごめんなさいね、自衛とはいえこんな目に遭わせてしまって。何も聞くなとは言ったけど、気になりますよね……他言しないで頂けるのなら別に構わないですけどね」
そう苦笑いを向けた。
「ははは、もう、さっきから気になって気になって」
と弱々しく笑った。
「まずは全身の棘、抜きましょうね」
ピンセットを持つと頭の先からつま先まで所々に刺さった棘を抜いていく。
「あの花の事を聞いていいですか? 初めて見る花でしたので、その、動きますし、気になって」
棘抜きをされながら気になっていただろうあのバラのことを聞いてきた。
「それが私にもよく分からないんですけど、何だか意志を持っているようなんです。あ、あの花はバラと言って私が種から育てた花です。苗の時からこう、ウネウネと動き出して」
そう説明していくとフレドリックさんは思い当たりがあるのかひとつ頷いた。
「もしかしたら精霊が宿っているのかもしれませんね。時々あるんですよ」
精霊! なかなかファンタジーな存在ね。随分と手荒い精霊だけど。
「そうなんですか。最初動いている苗を見た時は悲鳴を上げそうでしたよ。はい、棘抜き完了」
くすりと笑いながらその時の様子を伝えた。
「他に怪我しているところありませんか? 痛みのあるところとかは?」
「いえ、私は大丈夫です。隊長が、助けてくれたので……」
フレドリックさんは心配そうに隊長さんを見ながら答える。
隊長さんの様子を見に行くと、息は荒く熱もまだ下がりきってはいないようだ。さて……どうするか。
アレを試してみる?でも人に対して使った事ないしな……でも、一か八か。
両手を隊長さんの上腕と前腕に向け魔力を込める。集中だ、もっと、もっと! 目を閉じ傷を癒すイメージで魔力を上げていく。
すると、手のひらが暖かくなるのと同時にごっそりと魔力が持っていかれる。大丈夫、平気。なんてったって魔力∞だもんね。
目を開くと、傷口は柔らかな光に包まれどんどん塞がっていく。
「もう少し、もう少しよ。」
と、そこでフレドリックさんに止められた。
「もう十分です! 魔力を抑えてください! あなたが死んでしまう!!」
止められて気付いたが、額からは汗が流れ出しポタポタと顎の先から落ちていた。
「あんなに大量の魔力を使ったら死んでしまいますよ! いくら隊長を助けてくれる為とは言え無謀すぎます!!」
あれ、私なんか怒られてる?
「ちょっと疲れますけど、全然平気ですよ? ほら」
なんて事ないよ、と立ち上がり汗を拭いた。
「あ、あなたは……。そんな、まさか?」
狼狽えるフレドリックさんはまずは放っておいて、まずは隊長さんだ。
「あ~ぁ、途中で止めるから中途半端に治っちゃったじゃない。もぅ、傷跡がこんなにくっきり」
もう一度手をかざしてみたが、途中で止めたからなのかそれ以上は治らないような気がした。
「無理ね、まぁ傷口が塞がったから、まずは良かったでいいのかな。うん、熱も下がってるし、息も穏やかになったわね。」
隊長さんの額に手のひらを乗せ熱を測ると、大分下がっているようだった。
「あなたの棘の痕も治しましょうか? そのままじゃ痛いでしょ?」
ポカンとした顔で立っていたフレドリックさんに声をかける。
「あ、いや、私は大丈夫です。それより、あの、今の魔法は……治癒魔法、でしょうか?」
「ええ。でも、さっき飲ませた薬の効果を最大限に生かすための魔法。と言った方がいいのかな? 薬の効果をなるべく早く出したかったから」
私が使った魔法は光属性から派生した聖属性魔法。この一週間で密かに細々と魔法の練習を重ねていたのだ。
「ははははは……」
どさり、と椅子に座り眉を下げまた弱々しく笑った。
「さて……体泥だらけですよ。家の中が汚れるので、シャワー浴びてきてください。お風呂もすぐに入れるので遠慮なさらずどうぞ」
遠慮されると困るのでわざと、「家の中が汚れる」と言いシャワーを勧めた。
「何から何まですみません」
「いいえ、タオルはバスルームに置いてあるものを使ってください。脱いだ服は洗ってすぐ乾かしますので、籠の中に入れて置いてください」
「いや、さすがにそこまでしてもらうのは……」
「問答無用、口答えしない」
ズバリと言うと、フレドリックさんは苦笑いをしながらバスルームへ向かった。
シャワーの音が聞こえたので、脱衣所へ服を取りに行く。いつもはバスルームで洗濯しているが、今は使用中なのでカバードポーチへ出て水魔法を使い、手作りの石鹸で洗濯する。
「あとは、乾かすだけね」
次は極限まで抑えた火魔法を右手で、風魔法を左手で発動し、服を乾かしていく。風に揺られながらハンガーにかけられた服はどんどん乾いて、五分ほどで完全に乾いた。
服をもって脱衣所に向かい、フレドリックさんがまだバスルームにいることを確認し、声をかけた。
「フレドリックさん、乾かした服置いておきますね」
「えっ! もう洗濯してくれたんですか?」
驚きの声がしたが、「ごゆっくり」と、そう言って脱衣所を後にした。
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