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少し夜道を散歩しないか
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「おお! サン! カニバル軍に参加することになったんだって? 中々アツいじゃないか!」
カニバル軍の一員として働くことになったが、宿が見つかっていないサン。そんな彼は、ここジャカルの家に泊めてもらうことになった。息子のジャックを救ってくれた礼として、シェドがジャカルに自分を泊めるよう指示したのだ。
「ああ、そうなんだ。これからよろしく。それと宿貸してくれてありがとう。助かるよ」
彼の熱血にテンションを合わせるのは大変だが、実際宿があることはとてもありがたい。寝袋等の荷物は一応リュックには入っているが、やはり雨風が凌げるかどうかでは、睡眠の質に雲泥の差がでる。
サンが感謝の気持ちをジャカルに伝えていると、2人にジャックから声がかかった。
「2人とも、もうご飯の準備できたよ。そろそろ食べよう」
そうして出来立てのスープの匂いがふわりとサンの鼻に入ってくる。
ジャカルの妻、すなわちジャックの母は、どうやら数年前に亡くなったらしい。そのため、父親が仕事の時は、息子のジャックが簡単に夕食の準備をしているそうだ。8歳という若さで大したものである。
「おう、ありがとう、ジャック! そうだな、サンも旅の途中で疲れているだろうし、そろそろ飯にしようか!」
そうして、3人で食卓を囲み、夕食を取るサンたち。こうしてみるとサンは、ついフォレスでのスアロたちとの夕食の時を思い出してしまう。まだ、旅に出たばかりなのにホームシックになるわけにもいくまい。サンは、ふと込み上げる懐かしさを振り払いながらも、ジャカルやジャックと束の間の団欒を楽しんだ。
「なあ、サン。少し夜道を散歩しないか?」
ジャカルからそんな提案をされたのは、夜も更け、ジャックがすっかり寝静まった頃だった。
「ああ、別に構わないよ」
もちろん、サンには特にその提案を断る理由もない。何か、息子に聞かれたくない話でもあるのだろう。そんなことを思いながら、サンはジャカルと共に外へと繰り出した。
サンが旅に出た日、スアロやクラウと見上げた夜空には満月が出ていたが、今日は少しだけかけていた。しかし、それでも十分過ぎるほどの月光の下で、ジャカルはサンに言葉を呟く。
「ありがとな。サン。この家に泊まってくれて。ジャックは、若いうちに母親を亡くして俺と二人暮らしだったから、家族が増えたようで喜んでいたよ」
「いやいや、俺こそありがとう。すごく楽しかったよ。仲良いんだな。二人はとても」
サンは、心の底から感謝の言葉を口にする。楽しかった。それはサンにとって紛れもない本音だった。ジャックとジャカルはとても仲睦まじくて、見てるこっちが本当に幸せな気分になるようだった。もし、自分に家族がいたらこんな感じなのかなと、サンにはもう叶わぬ想像さえ、頭に思い描いてしまったぐらいだ。
ジャカルは、そんなサンの言葉に微笑みながらも、その後に少しだけ神妙な面持ちを浮かべる。
「ありがとう。あ、そうだ。サンは知っているか。君が所属することになる部隊の話を。どうやら君はシェド隊に所属することになるらしい。だから俺と同じ部隊だ」
「あ、そうなのか。それはまだきいてなかったな」
シェド隊、カニバル国の少数精鋭部隊だったか。サンにとって自分がその少数精鋭に部隊に、入る自信があるわけではないが、シェドの勧誘によってカニバル軍に入ることになったのだから、彼の目の届くところに置いておきたいと思えば、その配属にも納得できる。
特に驚きをもたらすことのないサンに、ジャカルは続ける。
「シェド隊は、カニバル軍の切り札とも言える少数精鋭部隊だからな。私も、日々その重荷を感じているよ。ネクとシェド隊長ほど才能に富んでいるわけじゃないから必死で独学で技を磨いて頑張った。ほんとはシェド隊長に教えを乞いたかったんだが、あの人は感覚派だから教えるのに向いていなくてね」
その時何となく、サンは彼が自分をわざわざ野外に連れ出した理由がわかった気がした。シェドは、サンに対して言葉を続ける。
「だから、サンが入ると聞いた時は驚いたよ。確かにウガイを一人で倒したのは、誇るべき功績だが、別に誰かがそれをみたわけじゃない。後、シェド隊長とも手合わせをしたと聞くが、それで君の強さを理解できるのはシェド隊長だけだ」
手合わせ、手合わせってなってるのか? サンは思わずその言葉に反応する。まあ自分が許したことを掘り返したいわけではないが、一応、腹に穴を開けられた身である。あの戦闘を手合わせという言葉で片付けられるのは、少々収まりが悪いが。
しかし、そんなサンのモヤモヤとした感情は、次のジャカルの一言ですぐに頭を過ぎ去っていくことになった。彼は、サンに対してこう言ったのだ。
「なあ、サン。少し、俺とも手合わせしてくれないか?」
カニバル軍の一員として働くことになったが、宿が見つかっていないサン。そんな彼は、ここジャカルの家に泊めてもらうことになった。息子のジャックを救ってくれた礼として、シェドがジャカルに自分を泊めるよう指示したのだ。
「ああ、そうなんだ。これからよろしく。それと宿貸してくれてありがとう。助かるよ」
彼の熱血にテンションを合わせるのは大変だが、実際宿があることはとてもありがたい。寝袋等の荷物は一応リュックには入っているが、やはり雨風が凌げるかどうかでは、睡眠の質に雲泥の差がでる。
サンが感謝の気持ちをジャカルに伝えていると、2人にジャックから声がかかった。
「2人とも、もうご飯の準備できたよ。そろそろ食べよう」
そうして出来立てのスープの匂いがふわりとサンの鼻に入ってくる。
ジャカルの妻、すなわちジャックの母は、どうやら数年前に亡くなったらしい。そのため、父親が仕事の時は、息子のジャックが簡単に夕食の準備をしているそうだ。8歳という若さで大したものである。
「おう、ありがとう、ジャック! そうだな、サンも旅の途中で疲れているだろうし、そろそろ飯にしようか!」
そうして、3人で食卓を囲み、夕食を取るサンたち。こうしてみるとサンは、ついフォレスでのスアロたちとの夕食の時を思い出してしまう。まだ、旅に出たばかりなのにホームシックになるわけにもいくまい。サンは、ふと込み上げる懐かしさを振り払いながらも、ジャカルやジャックと束の間の団欒を楽しんだ。
「なあ、サン。少し夜道を散歩しないか?」
ジャカルからそんな提案をされたのは、夜も更け、ジャックがすっかり寝静まった頃だった。
「ああ、別に構わないよ」
もちろん、サンには特にその提案を断る理由もない。何か、息子に聞かれたくない話でもあるのだろう。そんなことを思いながら、サンはジャカルと共に外へと繰り出した。
サンが旅に出た日、スアロやクラウと見上げた夜空には満月が出ていたが、今日は少しだけかけていた。しかし、それでも十分過ぎるほどの月光の下で、ジャカルはサンに言葉を呟く。
「ありがとな。サン。この家に泊まってくれて。ジャックは、若いうちに母親を亡くして俺と二人暮らしだったから、家族が増えたようで喜んでいたよ」
「いやいや、俺こそありがとう。すごく楽しかったよ。仲良いんだな。二人はとても」
サンは、心の底から感謝の言葉を口にする。楽しかった。それはサンにとって紛れもない本音だった。ジャックとジャカルはとても仲睦まじくて、見てるこっちが本当に幸せな気分になるようだった。もし、自分に家族がいたらこんな感じなのかなと、サンにはもう叶わぬ想像さえ、頭に思い描いてしまったぐらいだ。
ジャカルは、そんなサンの言葉に微笑みながらも、その後に少しだけ神妙な面持ちを浮かべる。
「ありがとう。あ、そうだ。サンは知っているか。君が所属することになる部隊の話を。どうやら君はシェド隊に所属することになるらしい。だから俺と同じ部隊だ」
「あ、そうなのか。それはまだきいてなかったな」
シェド隊、カニバル国の少数精鋭部隊だったか。サンにとって自分がその少数精鋭に部隊に、入る自信があるわけではないが、シェドの勧誘によってカニバル軍に入ることになったのだから、彼の目の届くところに置いておきたいと思えば、その配属にも納得できる。
特に驚きをもたらすことのないサンに、ジャカルは続ける。
「シェド隊は、カニバル軍の切り札とも言える少数精鋭部隊だからな。私も、日々その重荷を感じているよ。ネクとシェド隊長ほど才能に富んでいるわけじゃないから必死で独学で技を磨いて頑張った。ほんとはシェド隊長に教えを乞いたかったんだが、あの人は感覚派だから教えるのに向いていなくてね」
その時何となく、サンは彼が自分をわざわざ野外に連れ出した理由がわかった気がした。シェドは、サンに対して言葉を続ける。
「だから、サンが入ると聞いた時は驚いたよ。確かにウガイを一人で倒したのは、誇るべき功績だが、別に誰かがそれをみたわけじゃない。後、シェド隊長とも手合わせをしたと聞くが、それで君の強さを理解できるのはシェド隊長だけだ」
手合わせ、手合わせってなってるのか? サンは思わずその言葉に反応する。まあ自分が許したことを掘り返したいわけではないが、一応、腹に穴を開けられた身である。あの戦闘を手合わせという言葉で片付けられるのは、少々収まりが悪いが。
しかし、そんなサンのモヤモヤとした感情は、次のジャカルの一言ですぐに頭を過ぎ去っていくことになった。彼は、サンに対してこう言ったのだ。
「なあ、サン。少し、俺とも手合わせしてくれないか?」
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