プロミネンス【旅立ちの章】

笹原うずら

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お前らが勝つ確率は一分たりともありはしないぞ

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「あっぐぁぁぁぁぁ!!」

 ふと、シェドの耳に、叫び声のようなものが聞こえた。紛れもないサンの声。あいつは一体何をしているんだ。

カメレオンたちの攻撃を防ぎながら、シェドは、サンのことを気遣う。

「おい! なんだサン! 何をしている?」
「シェド!」

 するとそこには、二本の足で勇ましく立ち上がるサンの姿があった。血清を使ったのか。これでゲッコウのところに間に合うだろう。自分の計画の通りにことが運びそうで安堵するシェド。そんな彼に、サンが声をかける。

「これ! 受け取って!」

大きく振りかぶり、こちらへ向かって物を投げるサン。それはカメレオンたちの間を器用にすり抜け、シェドの手に届く。

 ――なんだ? あいつ、何を渡した?

 自身の手のひらを開き、受け取った物を確認するサン。するとそこには血清があった。おかしい。フェニックスの炎で回復できるのは外傷だけ。ウイルスや毒などの体の内側からの攻撃には働かせることができないはず。

 その時、考えるのも恐ろしいある推測が、シェドの頭を駆け抜ける。

 ――いや、回復したんじゃない。あいつは毒に侵された部分を破壊し差し替えたんだ。

 言葉にすること自体は簡単だ。しかし、これは端的に言えば、いらない部分を焼き尽くし、故意に欠損させて新たに再生させたということ。

 コブラの毒は神経毒。すなわち毒に侵されるのは神経だ。つまりサンは、自らの神経を体内で直接焼いたということになる。一体どれ程の痛みが、彼を襲ったというのか。

 ――普通こんな男1人助けるためにそんなことしないだろ。全く肝の座ったやつだ。

 サンはすでに、ネクたちを追いかけて走っていった。おそらく血清を打った自分なら助太刀をしなくても大丈夫だと判断したのだろう。それなら隊長としてその判断を正解に導いてやらなければな、とシェドは不敵に笑う。

 シェドが何かを受け取ったのを確認し、それを叩き落とそうとするカメレオン。しかし、そんな彼らの攻撃を交わし、シェドは自らに血清を打つ。

 スーッと手足の痺れが消え、鋭敏な獣の五感の感覚も戻ってくる。流石毒のスペシャリスト、ネクが開発した血清だ。すぐにでも英気がみなぎってくる。

「馬鹿な? 血清ですか? この毒は、レプタリアの猛毒部隊が調合したコブラ毒だと言うのに!? 一体どれ程のレベルの高い医師がそちらにいるのですか?」

 みるみるうちに調子を取り戻し、再び暴れ出すシェドに対し、カレオンは怯えながらに問いただす。

 シェドは、そんな彼の問いに不適な笑みを浮かべ、言葉を返す。

「悪いな。うちにはなんでもできる諜報屋がいるんで。さて、やろうか。もうお前らが勝つ確率は一分たりともありはしないぞ?」
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