プロミネンス~~獣人だらけの世界にいるけどやっぱり炎が最強です~~

笹原うずら

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研がれし剣は継がれゆく

サンのそういう運命は変えられないと思うんだ

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「え? あの化け物は0号じゃなかったの?」

 シェドとユニの話の最中、サンはそう言葉を漏らした。日も沈み、星も出てくる時刻(最もここシーラには日も星もないのだが)、ネクとサンは、0号との戦いから戻ったシェドたちにその時起こったことを聞いていたのだ。

「全然違いましたよ! 体に刃の一本たりとも生えてなかったですし、それどころかそれらしき化物は、0号と戦ってくれたんですからね。本当に、あの化け物がいなかったらどうなってたか」

『まあ、お前が暴走しなきゃ、刃の怪物がいなくても、安全に逃げられたと思うがな』

 シェドは、さも大変そうに0号との戦いを話す彼を冷たい目で流し見る。ただまあ彼も彼なりに0号の強さをしっかりと伝えようとしていることもわかっていたので、シェドは、特にユニの態度に突っ込むことはせず、話に加わる。

「結局刃の怪物の方の正体は分からなかったけどな。ただ、まあなんだ。あまり敵って感じはしなかったよ。あいつは」
「そっか。……あー……なるほど。……じゃあ、一つ納得したかもしれない」

 サンは、シェドの言葉を受けて、自分の体を眺めるようにしてそう呟いた。ネクはそんなサンに問いかける。

「……何に納得したの? サン」
「いや、なんかさ、一回相手に斬りかかられた時、結構体勢崩したけど、なんかガードが間に合ったんだ。もしかしたら俺の武器にしか攻撃するつもりがなかったのかもな。最初の一撃も、俺が防いじゃっただけで、当てるつもりはなかったのかも」

「まあサンがそう思うなら、敵じゃないと確定していい気がしますね」
「……サンは一応直感でディー君の正体も見抜いてるから、信用して良いかもね」

「……いや別に俺は敵意検知機じゃないんだけどな」

 まあとにもかくにも、あの刃の怪物がそれほど悪いやつじゃないと知ることができたのは、大きな成果だろう。そんな中ネクは、シェドとユニに対して言葉を紡ぐ。

「……でも話を聞く感じ、その0号って改造獣人は、随分強そうだね」
「そうですね。本当にすごく強い獣人でした。ちゃんと作戦考えていかなきゃ、シェドとサンと僕でも、全然負けちゃう可能性はあります」
「本当に話を聞く限り凄そうだよな。それで、どうするんだよ。明日はどんな作戦で、0号と戦うんだ?」

  するとユニは、どこか不安そうな顔をしてシェドを見た。全くそんな顔をしたら気づかれるだろうに。シェドはユニを呆れたような目で見ながらも、ユニと言葉を代わる。

「それなんだがな。今日はもう休んで、明日の朝作戦を立てないか? 敵に受けた傷もあるし、今日は疲労でいい案が出ないような気がするんだ」

「……え?」

「そうだよな。シェドたちは俺よりもずっと大変な戦いをしてきたんだもんな。わかったよ。0号がそんな強敵なら、倒してからすぐにラキュラの城に向かうのは大変そうだし、明日中に倒せたらそれで良いよ」
「ありがとう、悪いな」

 シェドの発言に違和感を覚えるネクの呟きは、2人の体を気遣うサンには、聞こえていなかった。それからシェドが簡単にネクとサンに0号の特徴を教えていく中で、ネクは察知する。シェドがどうして作戦を立てるタイミングを朝に設定したのかを。しかし、ネクはそれをこの場で口にすることはせずに、静かにシェドの0号に対する説明に耳を傾けるのだった。
  
 それから彼らは宿の食堂で夕飯をとり、就寝までの時間それぞれの時を過ごした。サンとユニは日課のランニングに出かけ、シェドは体にダメージを受けたために、部屋でネクに看病してもらうことになった。

「……はい、これで大丈夫だよ。明日には治ると思う」

 シェドの体に包帯をまき、そう言葉をこぼすネク。幸いにして(シェドがそうなるよう調節したのだが)傷は浅い。明日にはほとんど回復しているだろう。ネクは続ける。

「……とにかく、今日はもう寝た方がいい。私もさ、邪魔にならないよう自分の部屋に戻るから」
「ああ、ありがとな」

 そう言葉を残すと、ネクはゆっくりと立ち上がった。その顔には、どこか後ろめたさが残っている。シェドは、それを感じると、内心でため息をつき、ネクに尋ねた。

「なあ、ネク」
「……何? シェド」
「俺に聞かないのか? 何でサンにナマズラ長老から聞いたことを隠すのかを」

 するとネクは、シェドに寂しそうな笑みを浮かべた。きっとそれはサンに嘘を付かなければいけないことに対する彼女の感情。ネクは、ゆっくりとシェドに問う。

「……理由、聞いてほしいの?」
「……いや、そういうわけじゃないけど」
「……でしょ?」

 ネクはそう言葉を発すると、少し俯き何かを考えるようにした。そしてその後顔を上げシェドに言葉を返す。

「…‥シェド。ちゃんと分かってるよ。シェドがさ、私じゃ考えもしないことを色々考えて、その結論になってるんだって。それに、私たちはカニバルの戦争で正しさはけっして一つじゃないことを知った。だからこそさ、シェドのことを間違っているとも思わない」
「そうか」

 ネクの答えにシェドは少し驚く。確かにネクはカニバル軍にいた頃は、自分の行動を基本的に受容してくれていた。しかし、今はサンとの関係も大きく異なるし、まして戦争のように、選択一つで生じる死人の数が劇的に変わるわけでもない。だからこそ、この自分の考えには最初は反対すると思っていたが。

「……でもね、シェド」

 するとネクは彼にそのように話を切り出した。そしてそのまま続ける。

「……サンは、多分、シェドの言う通りにはならない」
「それは俺にもわかるよ、ネク」
「……ううん、違う。私が言いたいのはね、サンがシェドとは違う行動を取るとか、そういうことじゃないの」

 ネクの言葉にシェドは首を傾げた。そんな彼にネクは自身の口を開く。頭の中に、戦争の重責に押しつぶされそうになっていたシェドを解き放った、あのサンの姿を思い浮かべて。

「……きっとね。サンはね、誰かが何をしたって、結局全ての人を助けることになっちゃうと思うんだ。もしさ、今回シェドの思う通りになってシーラの人が傷付いたらシェドも傷つく。でもね、サンはそんなシェドさえ守るんだよ。きっと、よほどのことがないとさ、サンのそういう運命は曲げられないと思うんだ」

 そう、サンにそんな力を感じたから、あの日あの時、戦いから身を引こうとするサンを呼び止めたのだ。そう考えると随分と自分勝手なことをしたように思えるが、それほどまでにサンという男が放つ光は、強く、輝かしかった。

 シェドは、ネクの話を聞くと、ボーッと窓の外を眺めるようにした。そして彼は、ネクには何を考えているのか予想もつかないような顔で小さく、呟く。

「そうだな。………確かにそれは、そうかもしれないな」
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