17 / 46
第17話 時坂杏奈と聖両剣
しおりを挟む
【登場人物】
時坂杏奈……二十三歳。無職。勇者。
ジン=レイ……二十四歳。ユーレリア神教ワルダラット支部所属の神務官。
ピーちゃん……巨大ヒヨコ。パルフェという、馬に並ぶポピュラーな乗り物。
「なんていうの? わたしもほら、勇者としてね、認められたっていうか」
杏奈は何も無い空を見ながら、ドヤ顔をしてみせた。
『待っていたぞ。聖武器の力を試してやる。かかってこい』
杏奈とジンが宝物殿から出ると、正面にディアボロスが立っていた。
杏奈が吹っ飛ばした右腕が、完全に再生している。
「ご指名のようですので、行ってきます」
「ほい、いってらっさい」
杏奈に見送られたジンがディアボロスに向かって歩きながら、
体に沿って両剣を回し始める。
最初はブンブン重い音がしていたのが、スピードが乗ったからか、段々、ヒュンヒュン軽い音に変わっていく。
それに伴い、両剣の白色の発光が強くなってくる。
慣らし運転が終わったのか、ジンはディアボロスの前で、ビシっと動きを止めた。
武闘家だけあって、一分の隙も無い。
「ユーレリア神教神務官、ジン=レイ、行かせていただきます」
『我が炎の拳を受けて消し炭になれ。炎熱拳!』
ディアボロスの炎を帯びた拳の連打がジンを襲う。
ジンが両剣をグルグル回しながら、その攻撃を全て受け切る。
ディアボロスの直線攻撃とジンの回転攻撃。
ディアボロスの拳も、ジンの剣先も、あまりに早すぎて見えない。
どれだけの速度で撃ち合っているのか、既に目で追えないレベルだ。
「おぉ、凄い凄い。ジンってば、あんなに強かったんだ」
宝物殿の入り口に座って観戦していた杏奈が、思わず感嘆の声をあげる。
「いや、息子はあんな動き出来なかった。聖武器によって身体能力が強化されてるのでしょう。女神の加護です」
「息子? あぁ、あなたたち、親子だったの。言われてみりゃ、よく似てるわね」
神儀官のロン=レイが杏奈の隣に座る。
「どう? 勝てそう?」
「あの様子なら勝てるでしょう。ただ……その後が大変でしょうな」
「え? どういうこと?」
『おのれ、ちょこまかと。これで終わりにしてやる! 巨拳!』
ディアボロスが左腕を前に、右拳を後ろに思いっきり引く。
右腕の筋肉があり得ないほど盛り上がり、血管が浮かぶ。
これだ。
杏奈もこれで、百メートル吹っ飛ばされた。
ジンは、聖武器による女神の加護が付いたとはいえ、防御力は一般人に毛の生えた程度だ。
杏奈の無敵防御には遠く及ばない。
まともに当たれば、内臓破裂程度では済まないだろう。
必殺の右拳が来る!
だが。
ディアボロスの左腕がゆっくりずれ、その場に落ちた。
その場にいた全員の視線が集まる。
ディアボロスの二の腕から先が綺麗に切れ、その場に落ちている。
次の瞬間、切れた断面から勢いよく血が噴き出した。
赤い。
デーモンも血は赤いらしい。
『なんだこれはぁぁぁぁ!』
ディアボロスが右手で左の二の腕を押さえながら絶叫する。
「隙を見せてくれてありがとうございます。でも、まだまだ行きますよ!」
ジンは聖両剣の回転を止めずに、ディアボロスの懐に飛び込んだ。
次の瞬間、ジンの動きが残像と化した。
デーモンの肉体をも切り裂く聖なる刃が、カマイタチを纏い、ディアボロスの体をズタズタに切り刻む。
まるで竜巻だ。
『がぁぁぁぁあ! ただの人間ごときにぃぃぃ!』
体をズタズタに引き裂かれたディアボロスが、その場にゆっくり倒れた。
その動きに合わせ、ジンの動きも遅くなり、ゆっくり止まった。
さすがに疲れたのか、荒い息を吐いている。
「あいてててててて」
人間業で無いレベルの動きを強いられたからか、身体が悲鳴をあげているようだ。
思わず拍手をしようとした杏奈の動きが止まる。
ゆっくりとだが、ディアボロスが起き上がろうとしている。
杏奈の攻撃からも、ゆっくりとだが再生した。
ジンの攻撃による傷も、時間を掛ければ再生するだろう。
ジンは、というと、よほど消耗したのか、まだ動けずにいる。
杏奈は立ち上がり、スリングショットをセットした。
腰袋に右手を突っ込んで、そこに鉄球が入ってないことに気付く。
そうだった。
リロードしないといけないんだった。
背中に背負ったリュックを下ろそうとして、肩紐が無いことに気付いた。
リュックが無い。
ディアボロスのメガトンパンチを食らったときに、どこかに吹っ飛んだらしい。
ヤバい。
何か球の代わりを探さなくては。
幸い、杏奈の装備しているスリングショットは、鉄球以外も発射出来る。
極端な話、そこらへんに落ちている小石だって飛ばせる。
だが、残念ながら、この近辺に小石は落ちていなかった。
杏奈はキョロキョロ辺りを見回した。
あった、あれだ!
杏奈は宝物庫に置いてあった、金色の女神像に目をつけた。
全長、二メートルもある女神像だが、右手に剣を、左手に皿を持っている。
その左手の皿に、虹色の玉がいくつも乗っている。
スリングショット用の鉄球よりやや大きいが、発射出来ないサイズではない。
杏奈は虹玉を一個、むんずと掴んだ。
玉には、なにやら字が書いてあるが、気にしない。
スリングショットにセットする。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』
「ちょ、ダメです! それは!」
杏奈の頭の中と横とで、同時に声がした。
が、杏奈は気にせず、玉を発射した。
「ジン! 避けなさい!」
ジンが疲れ切った目を杏奈に向けた。
一瞬で状況を悟り、慌ててその場に伏せる。
虹玉は、まばゆい光を発しながら飛び、ディアボロスに命中した。
次の瞬間、一際大きな光を放った。
光が薄れて消えたとき、そこには何も無かった。
まるで、空間ごと切り取られたかのように、ディアボロスの姿は消えていた。
「あぁ、なんてことしてくれたんですか」
「なによ、神儀官。息子を助けたのよ? お礼を言われるならともかく、抗議される謂れはないわ」
神官長ロン=レイが恨めしそうな顔をする。
「さっきの玉、何だか分かりますか?」
「知らない。なんなの?」
杏奈の軽い返答に、ロンが深いため息を返す。
「遥かな昔。ここヴァンダリーアの創世紀の話です」
「長くなる?」
杏奈の軽口に、ロンがジト目で返す。
杏奈は首をすくめた。
「女神ユーレリアと魔神アークザインによる覇権争いがありました。女神が勝てば、地上はヒトのものとなり、魔神が勝てば、地上は魔族のものとなる、そんな争いでした。戦いは一ヶ月続きましたが、結果としては女神が勝ち、地上は無事、ヒトが暮らす地となりました。魔族は、わずかな痕跡を残すのみで、そのほとんどが地下、魔界に潜むこととなりました。この戦を創世戦争と呼びます。この創世戦争で女神の使徒として戦った勇者が、十人いましたが、彼らは死した後、その功績を認められ、女神によって、神の末席に加えられることとなりました。女神像は世界中に数多ありますが、デザインはどれもほぼ同じです。右手に持った剣が、女神が魔神と戦ったときに使用した剣を。そして左手で持った皿に乗った虹色の玉。古代ヴァンダリーア語で名前が彫ってありますが、これが勇者を現しているのです」
最初、ポカンとしていた杏奈の顔が、みるみるうちに青く変わっていく。
「えっと、つまり、なに? 神像を弾丸として使っちゃった、みたいな話?」
ロンが重々しくうなずく。
「ヤバイじゃん、天罰くだっちゃうじゃん。あ、でも、当たったのはさっきのディアボロスだから、天罰くだるとしたらディアボロスの方? なら……いいのかな?」
「いいわけないでしょ!」
「でも、おかげで息子さん、助かったのよ? ならいいんじゃない?」
「いや、それとこれとは……」
「こう考えるのよ。今代の勇者であるわたしに、先輩勇者が力を貸してくれたのよ。うん、そうよ。だからあんなに強かったのね。でも、これ程の威力なら、ボス戦で大活躍してくれそうね。よし、勇者の名において、この虹玉、接収します。ありがたく思うように」
言うが早いが、杏奈は、カラになっていた腰袋に勝手に残りの虹玉を入れ始めた。
「ちょちょちょちょ! 杏奈さん、わたしの話、聞いてました?」
神儀官ロン=レイが、呆れた顔をした。
それから二日後、杏奈と神務官ジン=レイは、ワルダラット城に向かっていた。
魔族の襲撃で焼け落ちた本山の瓦礫撤去をしていたので、出立に時間が掛かってしまったが、ようやく首都に行ける。
神殿で早馬を出したらしく、ワルダラットに、すでに話は行っているそうだ。
曰く、今代の勇者が現れたと。
ワルダラットに着いたら、王様と話をして、四天王の塔攻略法を練らなくてはならない。
「そういえばその両剣、なんて名前なの?」
ピーちゃんの背に揺られながら、ジンが背負った棒を見て言う。
「名前はありません。無銘なんです。そうだ。杏奈さん、名付けてくれませんか?」
「わたしが? あ、そう。じゃあ……疾風迅雷ってのはどう? 聖両剣『疾風迅雷』」
「疾風迅雷ですか。不思議な語感だ。どういう意味ですか?」
「疾い風や激しい雷って意味で、まぁ、嵐ってとこね。ディアボロス戦で、ジンの動きが嵐みたいに見えたから」
「いいですね、それ」
ジンは、馬を歩ませながら、杏奈に向かって満足気に笑った。
時坂杏奈……二十三歳。無職。勇者。
ジン=レイ……二十四歳。ユーレリア神教ワルダラット支部所属の神務官。
ピーちゃん……巨大ヒヨコ。パルフェという、馬に並ぶポピュラーな乗り物。
「なんていうの? わたしもほら、勇者としてね、認められたっていうか」
杏奈は何も無い空を見ながら、ドヤ顔をしてみせた。
『待っていたぞ。聖武器の力を試してやる。かかってこい』
杏奈とジンが宝物殿から出ると、正面にディアボロスが立っていた。
杏奈が吹っ飛ばした右腕が、完全に再生している。
「ご指名のようですので、行ってきます」
「ほい、いってらっさい」
杏奈に見送られたジンがディアボロスに向かって歩きながら、
体に沿って両剣を回し始める。
最初はブンブン重い音がしていたのが、スピードが乗ったからか、段々、ヒュンヒュン軽い音に変わっていく。
それに伴い、両剣の白色の発光が強くなってくる。
慣らし運転が終わったのか、ジンはディアボロスの前で、ビシっと動きを止めた。
武闘家だけあって、一分の隙も無い。
「ユーレリア神教神務官、ジン=レイ、行かせていただきます」
『我が炎の拳を受けて消し炭になれ。炎熱拳!』
ディアボロスの炎を帯びた拳の連打がジンを襲う。
ジンが両剣をグルグル回しながら、その攻撃を全て受け切る。
ディアボロスの直線攻撃とジンの回転攻撃。
ディアボロスの拳も、ジンの剣先も、あまりに早すぎて見えない。
どれだけの速度で撃ち合っているのか、既に目で追えないレベルだ。
「おぉ、凄い凄い。ジンってば、あんなに強かったんだ」
宝物殿の入り口に座って観戦していた杏奈が、思わず感嘆の声をあげる。
「いや、息子はあんな動き出来なかった。聖武器によって身体能力が強化されてるのでしょう。女神の加護です」
「息子? あぁ、あなたたち、親子だったの。言われてみりゃ、よく似てるわね」
神儀官のロン=レイが杏奈の隣に座る。
「どう? 勝てそう?」
「あの様子なら勝てるでしょう。ただ……その後が大変でしょうな」
「え? どういうこと?」
『おのれ、ちょこまかと。これで終わりにしてやる! 巨拳!』
ディアボロスが左腕を前に、右拳を後ろに思いっきり引く。
右腕の筋肉があり得ないほど盛り上がり、血管が浮かぶ。
これだ。
杏奈もこれで、百メートル吹っ飛ばされた。
ジンは、聖武器による女神の加護が付いたとはいえ、防御力は一般人に毛の生えた程度だ。
杏奈の無敵防御には遠く及ばない。
まともに当たれば、内臓破裂程度では済まないだろう。
必殺の右拳が来る!
だが。
ディアボロスの左腕がゆっくりずれ、その場に落ちた。
その場にいた全員の視線が集まる。
ディアボロスの二の腕から先が綺麗に切れ、その場に落ちている。
次の瞬間、切れた断面から勢いよく血が噴き出した。
赤い。
デーモンも血は赤いらしい。
『なんだこれはぁぁぁぁ!』
ディアボロスが右手で左の二の腕を押さえながら絶叫する。
「隙を見せてくれてありがとうございます。でも、まだまだ行きますよ!」
ジンは聖両剣の回転を止めずに、ディアボロスの懐に飛び込んだ。
次の瞬間、ジンの動きが残像と化した。
デーモンの肉体をも切り裂く聖なる刃が、カマイタチを纏い、ディアボロスの体をズタズタに切り刻む。
まるで竜巻だ。
『がぁぁぁぁあ! ただの人間ごときにぃぃぃ!』
体をズタズタに引き裂かれたディアボロスが、その場にゆっくり倒れた。
その動きに合わせ、ジンの動きも遅くなり、ゆっくり止まった。
さすがに疲れたのか、荒い息を吐いている。
「あいてててててて」
人間業で無いレベルの動きを強いられたからか、身体が悲鳴をあげているようだ。
思わず拍手をしようとした杏奈の動きが止まる。
ゆっくりとだが、ディアボロスが起き上がろうとしている。
杏奈の攻撃からも、ゆっくりとだが再生した。
ジンの攻撃による傷も、時間を掛ければ再生するだろう。
ジンは、というと、よほど消耗したのか、まだ動けずにいる。
杏奈は立ち上がり、スリングショットをセットした。
腰袋に右手を突っ込んで、そこに鉄球が入ってないことに気付く。
そうだった。
リロードしないといけないんだった。
背中に背負ったリュックを下ろそうとして、肩紐が無いことに気付いた。
リュックが無い。
ディアボロスのメガトンパンチを食らったときに、どこかに吹っ飛んだらしい。
ヤバい。
何か球の代わりを探さなくては。
幸い、杏奈の装備しているスリングショットは、鉄球以外も発射出来る。
極端な話、そこらへんに落ちている小石だって飛ばせる。
だが、残念ながら、この近辺に小石は落ちていなかった。
杏奈はキョロキョロ辺りを見回した。
あった、あれだ!
杏奈は宝物庫に置いてあった、金色の女神像に目をつけた。
全長、二メートルもある女神像だが、右手に剣を、左手に皿を持っている。
その左手の皿に、虹色の玉がいくつも乗っている。
スリングショット用の鉄球よりやや大きいが、発射出来ないサイズではない。
杏奈は虹玉を一個、むんずと掴んだ。
玉には、なにやら字が書いてあるが、気にしない。
スリングショットにセットする。
『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!』
「ちょ、ダメです! それは!」
杏奈の頭の中と横とで、同時に声がした。
が、杏奈は気にせず、玉を発射した。
「ジン! 避けなさい!」
ジンが疲れ切った目を杏奈に向けた。
一瞬で状況を悟り、慌ててその場に伏せる。
虹玉は、まばゆい光を発しながら飛び、ディアボロスに命中した。
次の瞬間、一際大きな光を放った。
光が薄れて消えたとき、そこには何も無かった。
まるで、空間ごと切り取られたかのように、ディアボロスの姿は消えていた。
「あぁ、なんてことしてくれたんですか」
「なによ、神儀官。息子を助けたのよ? お礼を言われるならともかく、抗議される謂れはないわ」
神官長ロン=レイが恨めしそうな顔をする。
「さっきの玉、何だか分かりますか?」
「知らない。なんなの?」
杏奈の軽い返答に、ロンが深いため息を返す。
「遥かな昔。ここヴァンダリーアの創世紀の話です」
「長くなる?」
杏奈の軽口に、ロンがジト目で返す。
杏奈は首をすくめた。
「女神ユーレリアと魔神アークザインによる覇権争いがありました。女神が勝てば、地上はヒトのものとなり、魔神が勝てば、地上は魔族のものとなる、そんな争いでした。戦いは一ヶ月続きましたが、結果としては女神が勝ち、地上は無事、ヒトが暮らす地となりました。魔族は、わずかな痕跡を残すのみで、そのほとんどが地下、魔界に潜むこととなりました。この戦を創世戦争と呼びます。この創世戦争で女神の使徒として戦った勇者が、十人いましたが、彼らは死した後、その功績を認められ、女神によって、神の末席に加えられることとなりました。女神像は世界中に数多ありますが、デザインはどれもほぼ同じです。右手に持った剣が、女神が魔神と戦ったときに使用した剣を。そして左手で持った皿に乗った虹色の玉。古代ヴァンダリーア語で名前が彫ってありますが、これが勇者を現しているのです」
最初、ポカンとしていた杏奈の顔が、みるみるうちに青く変わっていく。
「えっと、つまり、なに? 神像を弾丸として使っちゃった、みたいな話?」
ロンが重々しくうなずく。
「ヤバイじゃん、天罰くだっちゃうじゃん。あ、でも、当たったのはさっきのディアボロスだから、天罰くだるとしたらディアボロスの方? なら……いいのかな?」
「いいわけないでしょ!」
「でも、おかげで息子さん、助かったのよ? ならいいんじゃない?」
「いや、それとこれとは……」
「こう考えるのよ。今代の勇者であるわたしに、先輩勇者が力を貸してくれたのよ。うん、そうよ。だからあんなに強かったのね。でも、これ程の威力なら、ボス戦で大活躍してくれそうね。よし、勇者の名において、この虹玉、接収します。ありがたく思うように」
言うが早いが、杏奈は、カラになっていた腰袋に勝手に残りの虹玉を入れ始めた。
「ちょちょちょちょ! 杏奈さん、わたしの話、聞いてました?」
神儀官ロン=レイが、呆れた顔をした。
それから二日後、杏奈と神務官ジン=レイは、ワルダラット城に向かっていた。
魔族の襲撃で焼け落ちた本山の瓦礫撤去をしていたので、出立に時間が掛かってしまったが、ようやく首都に行ける。
神殿で早馬を出したらしく、ワルダラットに、すでに話は行っているそうだ。
曰く、今代の勇者が現れたと。
ワルダラットに着いたら、王様と話をして、四天王の塔攻略法を練らなくてはならない。
「そういえばその両剣、なんて名前なの?」
ピーちゃんの背に揺られながら、ジンが背負った棒を見て言う。
「名前はありません。無銘なんです。そうだ。杏奈さん、名付けてくれませんか?」
「わたしが? あ、そう。じゃあ……疾風迅雷ってのはどう? 聖両剣『疾風迅雷』」
「疾風迅雷ですか。不思議な語感だ。どういう意味ですか?」
「疾い風や激しい雷って意味で、まぁ、嵐ってとこね。ディアボロス戦で、ジンの動きが嵐みたいに見えたから」
「いいですね、それ」
ジンは、馬を歩ませながら、杏奈に向かって満足気に笑った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
30
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる