現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
37 / 45
イベントには参加しません

兎さん

しおりを挟む
 

「ウサギ?」

 ダンジョンの最奥の空間にいたのは毛の長いウサギ。サイズはそこまで大きくなく、リアルでも存在するくらいの大きさのウサギである。

 見た目的にアンゴラウサギ? 私が知っている見た目は顔まで毛で覆われているタイプなんだけど、このウサギは顔の毛はそこまで長くない。そういう種類……なのかな? それともアンゴラ以外の種類かもしれない。

 ああいや、そうじゃない。何でここにウサギが居るのかとか、今まで話しかけて来ていたのはこの子なのかとか、いろいろあるでしょ。

『おい。聞いておるのか!?』
「……なのです」
『何するんじゃ!? 退くのじゃ!』

 どう対応すべきか悩んでいる内に、シュラがウサギの目の前に移動していた。眼前まで迫られたことで私のことが見えないのか、私の方を見るためにシュラの影から出ようと左右に体を動かしている。しかし、それに合わせてシュラが左右に揺れているので、私からもウサギの姿がほとんど見えていない。

 あれは態とやっているのかな? それとも、偶然そうなっているのか。まあ、シュラの性格からして偶然よりも意図してやっている方が可能性は高いかな。なんだかんだ好奇心が高い子だし。

『あ、ちょっ、近付くでないわ!』

 シュラに視界をふさがれワタワタしているのが気になったのか、ぷらてあもウサギの元へ行ってつつき始めた。さすがに直接触られるのは嫌だったのか、ウサギは逃げるようにその場から移動していった。

「ん?」

 先ほどまでウサギが居た場所に何か丸い物が落ちていることに気付いた。今まで気付かなかったという事は、あの丸い物はウサギの下にあったのか後ろにあったのか、とにかくこの空間の入り口からでは見えない所にあったのだろう。
 そして、あの球体を私は見たことがある。と言うか、今インベントリの中にあるんだよね。

 何十回、いや何百回とダンジョンを攻略する中でこの前ようやく10個集まり完全な球体となったあのアイテム。

 そう、ダンジョンコアである。

 最初のゴブリンダンジョンで手に入れたから、割と簡単に集まると思っていたんだけど想定外に集まらなかったんだよね、これ。

 それでようやく集まったわけなんだけど、こうやって目の前に転がっているという事は、別に集めなくても良かったの? いや、そこにいるウサギみたいな存在に会ったことはこれまでなかったから、見た目が一緒だけど、アイテムとしては全くの別物という可能性もありそう。

『ほぬぁ!? そち何をしようとしておる!? それに触るでないわ!』

 私が地面に落ちていたダンジョンコアと思われる物を拾おうとしたところで、ウサギはシュラとぷらてあを振り切って私のところまで一気に跳んできた。
 とはいえ、シュラ達に追い掛け回されて、球体があった場所から結構離れた位置にいたので、私が球体を拾う方が数瞬早かった。

『あぁぁぁああああ!?』

 急いで駆け寄るもダンジョンコアと思われる球体を私に取られて絶叫するウサギ。なんかその姿を見ていると申し訳なくなってくるけど、それよりもこれの確認が先である。


[(アイテム)ダンジョンコア レア度:7 Fs:‐]
 ダンジョンを形成するために必要なコア。コアの主を決めることでダンジョンを作り出すことが出来る。ただし、何処でもダンジョンを作り出すことは出来ないため、特定の場所に持って行かなければならない。1度決めたコアの主は変更できない。
 現在、このコアはダンジョンを形成しているため、このコアが破壊されると紐づけされたダンジョンが崩壊する。※このアイテムはインベントリにしまうことが出来ません。
 マスター:アンゴーラ


 ふーん。説明の内容は微妙に違うけどおおよそ同じだね。ただ、私の持っているダンジョンコアのレア度は6だから別物扱いっぽい。

 少なくともコアがあればダンジョンが出来る今拾ったものとは違い、私が持っていた物は元ある洞窟をダンジョンに変えたり、別のダンジョンを乗っ取ったりしなければならないので、0からダンジョンを作り出すことは出来ない。

『それは妾のじゃ! そちが触るでないわ!』

 ダンジョンコアを取り返そうと、ウサギが私に対して体当たりを仕掛けてきたけれどまったく痛くはない、と言うかダメージを受けていないので攻撃判定にはなっていないようだ。
 しかし、ウサギは構わず私に体当たりなどの攻撃……のようなものを続けている。

 鬼気迫る感じで私に体当たりをかましているウサギに、どうしたらよいかを迷っているシュラたちは私とウサギに視線を迷わせていた。


 
『ふぬぅ、ふぬぅぅ。何なのじゃそちらは!?』

 さすがに疲れたのか、息を荒げながらも1分もしない内にウサギは私に対して攻撃してくることはやめた。ただ、あくまでも体力が尽きたからやめたといった感じなので、攻撃することをあきらめた感じではない。

 そもそもコアを奪われたくなかったら、ここに私たちを呼び込まなければよかったのだ。まあ、ゲームシステム的にそうしなければならなかったのかもしれないけれど、それならばもう少ししっかり隠すべきだったんだよね。この空間何もないから、隠すような場所はおなかの下くらいしかなかったんだろうけど。

『そもそもなんじゃ。妾がここを作ってそう経たぬうちに入ってきおって! さらには妾が設置したボスまで倒すとは! それに、まだ作っとる最中だったんじゃぞ!?』

 作りかけ……あ、だから階層が2つしかなくて敵も弱かった割にダンジョンボスのレベルが少し高かったのか。

 もうちょっと見つけるのが遅かったら階層の数も増えていただろうし、出て来るモンスターも強かったかもしれない。まあ、私がここまで来てしまった以上、可能性の話でしかないのだけど。

「なんかごめんね?」
『ようやく安心して住める場所を作り出せたと思っておったんじゃぞ。それに、あわよくば妾を捨てた者に復讐できると思ってもおったんじゃぞ!?』

 いや、なんでこんな話をここでするかなぁ。それだけ聞くと完全に私が悪者じゃないですか。そもそも何でこのウサギ(おそらくNPC扱いなのだろうけど)にこんな話をさせているんだ運営。

 確かに、近年、無計画にペットを購入して捨てる人が増えているという問題があるのは知っているけれど、ここはゲームの中なんですよ。非現実の空間で現実の話題を出すのは、微妙に萎えるからやめてほしい。

「まあ、私が攻略しに来なかったとしても、遠からず誰かが見つけて中に入ってきていたと思うよ。このダンジョン、結構視界に入る場所にあったし」
『な……なんじゃと』
「あと、ダンジョンで発生したモンスターって、ダンジョンから出られなかったと思うがんだけど、どうやって復讐するつもりだったの?」

 ダンジョンの中に居るモンスターは基本的にダンジョンの一部扱いらしいので、外に出ることが出来ない。なので、復讐すると言ったこのウサギは自力でしなければならないわけなんだけど、他に協力者でも居るのかな。

『……え?』

 ありゃ、知らなかった感じっぽいね? 
 どうやってダンジョンマスターになったのかもわからないけど、ダンジョンマスターになったことでどうにかなるって、大雑把に考えていただけかな。
 まあ、あわよくばとも言っていたし、最初は安心できる住処が欲しくてダンジョンマスターになったけど、なんかダンジョンの支配者になったことで万能感でも覚えていたのかもしれないね。それでこれなら復讐できるかもって発想になったと。
 うん、これが一番可能性が高そう。

「えーと、まあ、どうあれあなたが―」
『妾はそんな名前ではないわ! ちゃんとアンゴーラという名前を持っておる!』

 そういえばダンジョンコアのマスターの欄にアンゴーラって載っていたね。なるほど、コアを使ってダンジョンマスターになるとあそこに名前が載るようになっているのか。

「えっと、アンゴーラちゃんがダンジョンを作った目的は、安心して住める場所を作るため?」
『そうじゃ』
「だったら、ダンジョンはあんまり向いていないと思うよ。普通、ダンジョンがあればアイテム目当てにかなりの数の人間が来るから、安心とは程遠いし」

 強いモンスターとかを出せるなら安心できるかもしれないけど、少なくともアンゴーラがこうなったように、安全だと言えるくらいに強いモンスターが出るダンジョンってなると、このエリアでは不可能だと思うし、プレイヤーのことを考慮すれば絶対に安全にはならないよね。

『ぬぅ? ダンジョンマスターになれば入って来る者を適当に追い払っていればいいのではないのか? そのコアを妾にくれた相手はそう言っておったぞ?』

 ふむ? ダンジョンコアをアンゴーラに渡した存在がいると? 運営によるつじつま合わせの可能性もあるけど、少なくとも自分で見つけ出したわけではないのか。

『はっ!? それよりもそれを妾に返すのじゃ!』
「返すのはいいんだけど、そうしたら私たちはこのダンジョンから出られるの?」

 元からダンジョンを壊すつもりはないので、外に出られさえすれば特に問題はないんだよね。出られないからここに来た感じだし。

『……出られるぞ。そちがリタイアすればいいのじゃ。そうすればこのダンジョンから出ることが出来るわ』
「ん?」

 リタイア……という事は正式にクリアした事にはならないのでは? 転移陣を出して外に送ることが出来ないとなると、インスタントダンジョンのクリアはそのダンジョンを壊す……ダンジョンコアを壊すことで成立するという事なのかもしれない。

 アンゴーラの言葉を聞いて、返そうとして差し出しかけていたダンジョンコアを引っ込めた。

『ぬあっ!? 何故じゃ!?』

 リタイアすればおそらく私が死亡した扱いになるのでシュラたちには影響はないはず。ただ、ビッグラビットを倒した後に宝箱は出て来たけれど、ダンジョン攻略成功のアナウンスが流れていないので、ここでリタイアを選択した場合、ダンジョンボス討伐報酬とは別のダンジョンのクリア報酬が受け取れない可能性が非常に高い。

「リタイアするのは私たちにメリットがないから駄目」
『ぐぬぅっ』

 出来ると言った時も少し間があったから、少なくとも私たちに利が無いということは理解していたようだ。

「他に方法はないの?」
『妾はそれ以外知らぬ』
「そう」

 何かほかに方法もありそうな気はするけれど、アンゴーラが知らないと言う以上、私にできることはない。

 やっぱりこのダンジョンをクリアするためには、このダンジョンコアをどうにかする必要があるみたいだね。
 さすがに、ダンジョンコアを壊すことでアンゴーラが死ぬというなら止めるけど、話の流れ的に死ぬことはなさそうだし、大きな問題なさそうかな。アンゴーラには悪いけど、これはゲーム。諦めて欲しい。

『待てそち。何をするつもりだ!?』

 私の視線がダンジョンコアに向いたことで嫌な予感でもしたのか、アンゴーラが焦ったような声? を上げた。

 そう言えば、ダンジョンコアってどうやって壊すんだろう? 適当に地面にたたきつければ壊れるかな? いや、私の持っているダンジョンコアに乗っ取り可能って載っていたし、もしかしたらそれでもクリア扱いになるかも? アンゴーラは壊されたくないみたいだし、可能ならそっちの方がいいのかもしれない。

 何となく、そんなことを考えて慌てているアンゴーラを無視しつつ、インベントリから私のダンジョンコアを取り出した。

 うーむ、取り出してみたけどこれからどうすればいいんだろう。何か説明が出てきてくれればいいのだけど……

「ん?」

 どういう訳か、インベントリから取り出したダンジョンコアとアンゴーラが持っていたダンジョンコアが小さく震え始め、淡く光を発し始めた。

「え? 何これ?」

 訳もわからず戸惑っている間にも、ダンジョンコアの震えは徐々に大きくなっていく。

 暫く耐えていたのだけど、その振動を抑えきれなくなってしまったことで、2つのダンジョンコアが私の手の中から零れた。しかし、ダンジョンコアは地面に落ちることは無く、私の少し前にふわふわと浮きはじめた。

「えっちょっ!? えぇ?」
『何なのじゃあ!?』

 次第に光が強くなっていったところで突然、アンゴーラのダンジョンコアと私が持っていたダンジョンコアがいきなり衝突した。しかし、ダンジョンコア同士は割れることなく、そのまま少しだけサイズを大きくした状態で融合してしまった。
 そして、融合したダンジョンコアは弾けるように勢い良く飛び出し、その勢いのままアンゴーラに衝突して強い光を放った。

『ぬぐぁあぁぁぁっ?!』


 ≪ダンジョンコアを上書きしたことで、名称未設定ダンジョンを支配下に置きました。
 ダンジョンマスターの称号を獲得しました。それに伴い、ダンジョン管理スキルを取得しました≫

 ≪インスタントダンジョン 難易度:Eをクリアしました。報酬はインベントリに送られます≫


「Oh……」

 想定外の展開に私はこれしか言葉を漏らすことができなかった。

 アンゴーラ、大丈夫なのかな、これ……?


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...