現実逃避のために逃げ込んだVRMMOの世界で、私はかわいいテイムモンスターたちに囲まれてゲームの世界を堪能する

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
15 / 45
ダンジョン

幸運の力

しおりを挟む
 
 ゴブリンたちが私に向かって近づいてくる。数は……正確にはわからないけど既に30は超えていそう。しかもまだ後続が現れ続けている。

 ええ? ちょっと待って。初期エリアにあるダンジョンでこれは無いよね!? クリアさせる気あるの!? いくらゴブリンが弱からと言って、流石にこんな数相手にどうにかできるほど強くはないんだけど。

 さらにゴブリンの数が増えていく目の前の光景を見て焦りつつも光魔術のライトショットを放ち、近い位置に居るゴブリンを倒していく。

 今目の前に居るゴブリンの内訳は大体こん棒ゴブリンが半分とそれよりもやや少なめな感じで弓ゴブリン。ゴブリンメイジと新しく出て来たゴブリンを合わせて1割居るかどうか。

 一撃一殺で倒せてはいるんだけど、明らかに手数が足りていない。範囲攻撃が欲しくなるけど残念あがら今は持っていないし、覚える可能性のある光魔術でもいつ覚えるかは不明。一応、光魔術がLV10になった時に、ライトエンチャントという技を覚えたが範囲攻撃ではなく、ライトエンチャントが掛かったプレイヤーの攻撃が全て光属性になり、追加ダメージを与えるという物だった。

 正直あまり使えな…いや、今なら使えるかも? ライトエンチャントを覚えた時はまだ素手格闘を持っていなかったし、試す価値はあるかもしれない。
 魔術だとどうしても発動から着弾まで数秒はかかる。要するに一体倒すのにそれだけの時間が掛かるわけなんだけど、素手格闘ならその時間は要らないし、一発の火力の低さをライトエンチャントで補えれば何とかなるかもしれない。

「ライトエンチャント! からのパンチ!」

 既に物量に圧され、ゴブリンに囲まれつつあった中で近くに居たゴブリンを殴る。そしてライトボールが当たった時と同じようなエフェクトが薄ら現れ、ゴブリンのHPバーの半分以上を削り取った。

 これなら何とかなる? いや微妙?

 そんなことを考えながらもう一発攻撃してゴブリンを倒す。
 そして、そこからは近づいてくるゴブリンを片っ端から殴り続け、ようやく残り10匹を切った。

 さて、ここからが正念場だ。残っているのは弓ゴブリンが4、ゴブリンメイジが3、そして初見ゴブリンが2だ。

 今残っている中でもまずは面倒なゴブリンメイジから倒したいところだけど、そのために何度か放ったライトボールは初見のゴブリンの盾によって全て防がれていた。
 盾を持っているというところからわかるかもしれないけど、初見ゴブリンの名称はゴブリンタンクだった。

 そのゴブリンタンクは看破で見た限り他のゴブリンに比べてHPが高く、総合攻撃力が低い代わりに総合防御力が高くなっている。それにダメージが0になる訳でもないが、盾で攻撃を防がれるとダメージがかなり減らされ、未だにゴブリンタンクを倒しきれていない。
 
 それに私もゴブリンを倒しているとはいえ、被弾が0というわけでもない。今もすでにHPは残り3割を下回っている。

「あっ、まずぐっ!?」

 とりあえずゴブリンタンクを1匹倒そうと攻撃してみたのだけど、その攻撃はあっさり防がれてしまった。しかも、その隙にもう1匹のゴブリンタンクが盾を叩きつけてきて、その衝撃で私は後ろに倒れ込んでしまった。

 直ぐに立ち上がろうとするもゴブリンタンクの追撃により、直ぐに立ち上がることが出来ない。さらに一瞬見えた限り、弓ゴブリンが弓矢を放っているのが見えてしまった。

 ああ、これは無理かもしれない。今からライトボールを放てばゴブリンタンクを1匹倒せるかもしれないけど、そうすると弓を回避することはできない。そして後ろに下がりつつ立ち上がろうとすればゴブリンタンクが追撃をしてきて立ち上がれない。

 ならゴブリンタンクを1匹でも道連れにした方が良い…

『危機的状況に幸運の星が降り注ぐ!』
「え?」

 ゴブリンタンクを道連れにしようとライトボールを放とうとしたところでアナウンスが流れた。
 幸運の星? そう言えばそんな感じのスキルを持っていたような? 

 いきなりのアナウンスに戸惑っていると上から小石や砂が落ちてきたので上を見る。するとそこには今にも落ちてきそうな、いや、既に落ちてきている大きな岩が存在していた。

「ちょまっ!?」

 大きな岩はそのまま私の前に落下し、轟音を立てながらそこに居たゴブリンタンクを押しつぶしただけでなく、飛んできていた弓矢まで弾き飛ばした。

 上から落ちて来た岩に潰されたゴブリンタンクがポリゴンになって消えていく。その光景を目の前に私は困惑を隠せなかった。

「どう言うことこれ?」

 助かったことは確かに助かった。初デスも回避できたから、ありがたい事には違いない。しかし、これはなんとも。何だろう、横やりを入れられた気分と言えばいいのかな。結果的に助かったのは確かなんだけど、なんとも言えない気持ちになる。

 ああ、いや、とりあえず残りのゴブリンを倒そう。納得できないとはいえ、助かったのに呆けていたせいで殺されるのはもっと嫌だ。

 岩陰から出て来たところを狙われる可能性があるから、勢いよく飛び出し横に駆け抜ける。その際に残りのゴブリンたちの動向を確認。

 弓ゴブリンは弓矢をつがえた状態でこちらを見ていた。ゴブリンメイジに関しては岩が落ちて来た前と変わらない感じだね。

 ゴブリンたちに向かって距離を詰める。弓ゴブリンもゴブリンメイジも近接戦闘向きではない以上、極力距離を詰めて戦った方が楽だ。

 距離を一気に詰めて弓ゴブリンの内の1匹を速攻で殴り倒す。そこから補助魔術を放とうと粗末な杖を掲げているゴブリンメイジに向かってライトショットを放つ。
 ゴブリンメイジは魔術耐性が高いため、光魔術1発では倒せない。なので、行動をキャンセルされたことの反動で動けなくなっているところへ、距離を詰めて追撃を与えることでポリゴンに変える。

 その間に弓ゴブリンが放った弓矢が飛んできたので可能な限り回避する。残念なことに1発食らってしまったけど、まだ大丈夫な範囲だ。
 既に先ほどまでの戦いでHPは総量の3割を下回ってしまっているわけだけど、それでも近距離で放たれた弓矢のダメージであれば後10発程度なら堪えることは可能なのだ。

 ゴブリンメイジとは異なりダメージを与えられる手段を持っている弓ゴブリンを先に倒したいところだなんだけど、既に速度バフが付いているようなので後回しにし、ゴブリンメイジを倒す。

「はっ!」
「ぎゃが」

 突き出した拳が弓ゴブリンにダメージを与え、ようやく最後の弓ゴブリンを倒した。

 ゴブリンメイジを先に倒し、残っている弓ゴブリンに掛かっている速度バフが切れるまで逃げていたこともあり、ゴブリンメイジを倒してから割と時間が掛かってしまった。

「終わったぁ」

 アバターである以上疲れることは無いはずなんだけど、長いこと戦っていたこともあり精神的に疲れてしまい、地面に座り込んだ。

 今回のモンスターハウスで出て来たゴブリンの数は倒している間に数えられただけでも60以上は居た。
 勝った。いや勝ちを拾った、かな。先ほどの落石が無ければ確実に負けていたから、達成感が薄い。

 負けるよりはましだ。そうだとは思うがモヤっとした感じが残る。あの岩が落ちて来たのが私の持っているスキルの影響だとしてもあまり喜べない。

 ステータスボードを開きスキル欄から落石を起こしたと思われるスキルを確認する。前に確認した時はスキル効果が不明になっていたわけだけど、スキルが発動したのなら効果が掛かれている可能性がある。

『幸運の流れ星:このスキルの取得者が危機的状況に陥るなどの特殊な状況に居る場合、一定確率でその状況を打破する何かが起きる』

 予想通り説明が追加されているな。
 あぁまあ、要するに自分に都合のいいことが起きるかもしれないスキルか。いや、ご都合主義スキルと言って良いかもしれない。

 しかし、一定確率ね。毎度発動する訳ではないと。確かに必ず発動するスキルとなればチート一直線だから当たり前だろうけど。一定確率ってのもおそらく1%かそれ以下だろうから持っていても意味が無い可能性もあるんじゃない? 今回は運よく発動しただけだろうし。

「ん?」

 視界の端で何かが光っているような気がしたので、そこに視線を向ける。
 光の元は先ほどゴブリンタンクを圧殺した岩だった。それが時間経過によるものなのか、戦闘が終わったからなのかはわからないが徐々にポリゴンになって消えていくところだった。

 そして私が気付いてから数秒もしない内に岩はポリゴンになって消えた。しかし、そこには消えずに残っている岩の欠片のような物が見えた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...