俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
54 / 79
自分勝手な弟が『ざまぁ』スキルを手に入れた!? ヤバイざまぁされる!?と思っていたら、どうも様子がおかしい

『ざまぁ』スキルの結末

しおりを挟む
 
 弟が死んでから数日が経った。あの時、弟と同じく倒れた使用人は死ぬことは無かったが、現在も仕事に復帰できない程度には後遺症が残っているようだ。

 そして、今は夜だというのに俺は兄からの呼び出しを受けて執務室へ来ている。

「何か問題でも起きたのか?」
「そうだな、一応問題…とは言えるかもしれない」
「どう言うことだ?」
「すまないがちょっとこれを見てくれ」

 そう言われて兄から差し出された書類を受け取る。その書類には空白が目立つが、どうやらあいつが手に入れた『ざまぁ』スキルについての考察が兄の文字で書かれている。

「これがどうしたんだ?」
「それは俺があのスキルについて書いた考察書の一部だ。それは本来、空白部分は無く前面に文字を書き連ねていた」
「は? どう言うことだ? 誰かが消したと言うことか?」

 まさか俺をここに呼んだということは疑われているのか。
 そんなことを思っているのが表情に出たのか、兄が直ぐに訂正してきた。

「ああ、すまん。疑っている訳ではない。少し確認したいことがあっただけだ」
「なら良かった。それで確認したいことってなんだ?」
「お前は、このスキルに関する事をどこまで思い出せる?」
「え? いや、最近のことだから当然思い出せ…る。んん?」

 あれ? 何で思い出せない? あいつがあのスキルを手に入れて、メイドや親に使って…どうなったんだっけ? 確か何かがあって両親は怪我をした。だが、どうしてだ? 詳しい内容が思い出せない。

「その様子だと思い出せないようだな」
「ああ、あいつがスキルを手に入れて何かをしたまでは思い出せる。でも、どんなことが起きたかまでは思い出せそうにない」
「そのようだ。なら、あいつがどうやって死んだかは思い出せるか?」
「は? そんなの一番最近のことだからさすがに…え? 何で死んだんだ? あいつは」

 ヤバイ。何も思い出せない。どうやってあいつは死んだんだ? スキルを使ってざまぁして、どうなった? いや、あいつのことだ。スキルを使って誰かの恨みを買って殺されたのだろう。たぶんそうだ。……いや、本当にそうだったか?

「それも思い出せないだろう? 俺も同じように思い出すことが出来ない。この書類に書き込んでいた消えた部分のこともさっぱり思い出せない状況だ」
「どう言うことだよ」
「これについては私にも良くはわからない。しかし、これがあのスキルの情報が極端に少なかったことに繋がるのだろう。おそらく過去に居たスキル所有者の周りに居た者も、徐々にスキルについての記憶が無くなっていったのだろう。そしてこの書類に残っている分を見るに、最終的にここまでの記憶しか残らなくなると言うことだ」
「な、なるほど」

 確かに、あいつがスキルを得た後に調べた時も情報が少ないと感じた。そして、この書類に残っている情報は、その時調べた物の内容とそう変わりはない。

「あいつがあのスキルを手に入れた経緯は不明だ。しかし、こうも記憶から情報が消えていることを考えれば神が関わっていると言われてもおかしくはないな」
「いや、さすがにそれは」
「いや、無いとも言い切れないだろう。そもそも有名なスキルの中には神託により授かったという物もある。それにこうも複数人の記憶を一斉に消せるとなれば人の力では不可能だ。そうなれば神が関わっている以外に説明のしようがない」
「まあ、肯定も出来なければ否定も出来ないんだよな」

 神が関わっているいないに関わらず、どうとも言うことは出来ない。それが本当に神に関わる物だったとしても、俺には、と言うか人にはそうだ、と断言できるような根拠を用意できる者は居ないだろうから。

 まあ、要するに『ざまぁ』スキルには、人の力を越えた何かがあり、それを知ることは出来ないものだ。ああ、こう言ってみると、確かに神の力のような気もするな。

 まあ、そうだとしたら、『ざまぁ』スキルは神の気まぐれによってもたらされる、神の力の一端と言うことか。だから、詳しい情報は記載できないし、記憶しておくことも出来ない、と。

 あれ、そういえば『ざまぁ』スキルを手に入れたやつは誰だったっけ? …思い出せない。さっきまで覚えていた気がするのに一切思い出せなくなった。

 ああ、これはもう本当に神の力なのかもしれない。まさか、こうも思い出せなくなるとはな。

 これはまさに神の力と言わなくて何だと言うのか。

 ああ、こうしてスキルを使った者は人知れず、気付かれること無く消えて行ったのだろう。

 何ともむなしい結末だな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位 転生者のブルーノは絶大な力を持っていたが、その力を隠してダンジョンの荷役として暮らしていた。だが、教会の力で勇者を騙る卑怯下劣な連中に、レットドラゴンから逃げるための生贄として、ボス部屋に放置された。腐敗した教会と冒険者ギルドが結託て偽の勇者パーティーを作り、ぼろ儲けしているのだ。ブルーノは誰が何をしていても気にしないし、自分で狩った美味しいドラゴンを食べて暮らせればよかったのだが、殺されたブルーノの為に教会や冒険者ギルドのマスターを敵対した受付嬢が殺されるのを見過ごせなくて・・・・・・

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

二十年仕えた王女が私を敵に売った。それでも守ることにした

セッシー
ファンタジー
二十年間、王女殿下の護衛騎士として仕えた。その殿下が、私を敵に売った。 牢の中で事実を知り、一分考えて——逃げることにした。殿下の目的を、まだ果たしていないから。 裏切りの真相を確かめるため、一人王都へ戻る護衛騎士の話。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

処理中です...