俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

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転生ガチャでSランクの転生チケットを当てて聖女に転生! って、は? いやちょっと待て、この状態は求めていなかったんだが!?

着替え

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 目の前でシェケルが土下座をしている。

 こちらの世界にもこの分かがあったことに驚いたが、正直うっとうしい。
 そもそもあの状況を作り出した原因は俺だし、シェケルに非はない。まあ、倒れた後に揉んだのはシェケルだからその分の謝罪は受け取るが、それ以上は本当にうっとうしいだけだ。

「本当に申し訳ありませんでした!」

 あの後、倒れていた俺の事を介抱してくれたし元からそこまで怒ってもいないんだが、何を言っても頭を上げようとしない。どうしたらいいんだこれは?

「もう怒っていない。と言うか元から怒っていないし、もうそれやめて欲しいんだけど。話が進まない」
「でも、僕があの……触ってしまって――」
「ああ、もうそういうの良いから!」

 強引にシェケルの言葉を切る。そして直ぐに顔を下に向けようとするシェケルの顔、というか顎を掴む。

「でも……」
「ああもう! あれはお前がどうとろうと事故だ。と言うかむしろ俺が転んだ結果に起きたことなんだから、そこまで気にされても迷惑でしかないんだよ」

 未だに微かに残っている聖女の意識からも苛立っているような気配を感じる。こうも同じところで苛立ちを感じるというところは、最初にシェケルが言ったように男女の差はあれど、俺と聖女の性質がかなり似通っているのだろう。

 ここまで言ってもシェケルの目に俺の言葉を受け入れた様子は見られない。本当に昔から見た目にそぐわぬ堅物だ。

 そう思ったのは生前の聖女だろう。俺は目の前にいるシェケルにそういった印象を持つほどに会ってから殆ど時間が経っていないからな。

「はぁ」

 まあ、これは何を言っても無駄だな。
 内に残る聖女の感情からそう判断し、話を変えることで先に進めることにした。

「すまん。とりあえず話す前に着替えさせて欲しいんだが、着替えとかあったりするか?」

 動いたせいなのかさすがにもう服の中に入っている土が不快になってきた。それに湿っている所為で所々ゴワゴワするしな。

 ただ、出来れば聖女が元々着ていた替えの服があればいいんだが、この聖女が死んだ後に所持品がどうなったのかはわからない。シェケルの態度から聖女が死んでそれほど時間が経っていない感じなのはわかるが、死体と一緒に服なんかも埋められていたら替えとしては使えないし、破棄されていたらどうにもならない。

「着替えさせて……!?」

 俺の言い方が悪かったのかシェケルが何を想像したのか顔を赤らめた。

「いや、手伝って貰うつもりはないぞ。さすがに自力で着替えるわ」
「え、あ。そそそうですねよ!」

 まあ着替えから連想したことに関しては、今の状況からだと変ではないし普段からこんなことを考えている訳ではないのは分かっているので、深くは追及しない。そもそもそんなことをしたらまた面倒なことになるからな。

「それで、着替えられる服とかってあるのか?」
「えぁ、そうですね。えっと服……聖女様のとなると、おそらく残っていないかと。葬儀の際に一部は棺に納めましたが、他は燃やし……処理してしまっているので。もしかしたら残っている可能性もありますが、ちょっと探してみないとわからないです」

 シェケルの言葉を聞いて俺はほんの少しだけ顔を顰めた。

 予想していたとは言え、やっぱり死んだ奴の私物を何時までも保管している訳ないよな。棺に入れた物も今着ている服と同じ状態だろうし、着替えの服としてはカウントできない。

「まあ、無いならしょうがないか」

 あーだこーだ言ったところでない物は無いのだからこれ以上言ったところで出て来る訳でもない。このままの状態で話すことにしよう。

「うーん、ちょっと待っていてください。聞いて来ますので」
「は?」

 いや、聞いてくるって誰にだよ!? 俺の存在がバレると面倒なことになるってわかっていないのか? いやそんな訳ないはずだよな。さっきまでは見つからないように行動していたし、もしやさっきの混乱状態が続いていてとち狂ったことでもしようとしているのか?
 そう判断して俺は即座にシェケルの行動を制止する。

「ちょっと待て。俺の存在がバレると拙いってことはわかっているよな? 他の奴に聞きに行くってことは俺のことを話さないといけなくなるかもしれないんだぞ?」
「え、あぁ。それでしたらたぶん大丈夫かと。あの方は口が堅いですし、どの道その服から着替えるには1人では無理なので、どなたかの手伝いは必要です」
「多分っていうのが不安要素だか、シ……お前がそう言うなら任せる」

 なるべく俺の存在を知っている人数は少ない方が良いんだが、確かにこの服を1人で脱ぐのは難しそうだからな。手伝いはあった方が良いかもしれない。
 それに、今後どうなるのかはわからないがここで生活することになれば、シェケル以外にも事情を知ってくれている人が居てくれた方が、過ごしやすいだろうな。
 今のところ不安しかないが。
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