俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
30 / 79
転生ガチャでSランクの転生チケットを当てて聖女に転生! って、は? いやちょっと待て、この状態は求めていなかったんだが!?

シェケルの独白

しおりを挟む

 ちょっと暗くて支離滅裂な部分がありますが、若干病んでいるシェケルの内情なのでそういうものだと思ってください。
―――――



「ふはぁ」

 聖女さ……いえ、あの人が婆さまに連れられて聖堂から住居区へ移動していったのを見送った僕は、聞かれないようある程度時間を置いてから大きく息を吐いた。

 まさか、また聖女様に会えるとは思っていなかった。中の人は違うみたいだけど見た目は完全に聖女様だ。仕草も話し方も本当にそっくりで、聖女さま本人なんじゃないかと疑ってしまうほどに似ているけれど。
 
 ……でも、聖女様が生き返ったわけではない。それは理解している。あの時本当の聖女様は亡くなった。
 聖女様によって住居区にある自分の私室に閉じ込められていたからその場を直接見たわけではないけれど、部屋の中にまで聞こえて来た悲鳴は今も覚えているし、未だにその悲鳴が聞こえている気がしてならない。

 聖女さまが亡くなってまだ数日。……もう数日が経っている。

 僕はこの教会の司祭として、いつまでも引きずっているわけにもいかないのはわかっている。理解している。
 これが他の人だったならばすぐに切り替えることもできたはずだ。

 だけど、亡くなったのは聖女さまだ。そう簡単には切り替えられない。


 どうして聖女さまは亡くなったんだろう。

 この時を納める領主が悪どい人物だったからか? 教会の運営に領主の助けが必要だったからか? 教会本部の対応が遅かったからか?

 ……違う。僕に力がなかったからだ。

 領主がああいう人物だったのは最初からわかっていたことだ。教会の運営だって地域のお金を使っているのはどこだって同じだ。教会本部の対応だって別に遅くはなかった。ただただこの地が地位すぎただけだ。

 少しでもあの領主の行動を止めるだけの力が僕にあれば聖女さまは自ら死にに行く必要はなかったんだ。

 無力は罪だ。
 だから全部僕のせいなんだ。

 この教会で一番力があったのは僕で、聖女さまを庇わないといけなかったのも僕なんだ。
 あの時もっと強く聖女さまを制止出来ていれば、少し前に届いた教会本部からの制止命令が間に合ったかもしれない。
 僕がもっとしっかりしていれば……

 違う。聖女さまは僕がこんなことを考えることを望んでいないはず。

 ……駄目だ。
 1人になった途端、こんなことを考えてしまうのは良くない。あの人に会う前だって、余計なことを考えないように必要のない夜の見回りをしていたんだ。
 もうこんなことを考えるのはやめないと。
 
「はは」

 乾いた笑うが口から漏れる。
 そう思って簡単に切り替えられればここまで苦労していない。

 実はあの人は聖女さま本人なのでは? 僕のことを驚かせるために知らないふりをしているだけで……

 そんなことがないのはわかっているんだ。
 聖女さまが亡くなっているのを確認したのは僕だし、その弔いを主導したのも僕だ。
 どんな状態であれ、僕が聖女さまを見間違うことは絶対にない。

 絶対にあり得ないんだ。


 聖女様の笑顔が好きだった。

 楽しそうに僕の名前を呼んでくれることが好きだった。

 僕が話しかけると嬉しそうにしてくれた聖女様が本当に好きだった。


 でも、それを見ることはもうできない。2度とあの聖女さまに会うことはできないんだ。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

エクセプション

黒蓮
ファンタジー
 血筋と才能に縛られた世界で【速度】という、それ単体では役に立たないと言われている〈その他〉に分類される才能を授かったダリア。その才能を伯爵位の貴族である両親は恥ずべき事とし、ダリアの弟が才能を授かったと同時に彼を捨てた。それはダリアが11歳の事だった。  雨の中打ちひしがれて佇んでいたダリアはある師に拾われる。自分を拾った師の最初の言葉は『生きたいか、死にたいか選べ』という言葉だった。それまでの人生を振り返ったダリアの選択肢は生きて復讐したいということだった。彼の選択を受け入れた師は彼にあらゆることを教えていく。  やがて師の元を離れる際にダリアはある紙を受け取り、それと同時に再度の選択肢を投げ掛けられる。彼が選ぶ復讐とは・・・彼が世界に及ぼす影響とは・・・

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう
ファンタジー
無能だと思い込み、荷物持ちのレンジャーを追放した戦士アレクス。 しかし―― 彼が切り捨てた仲間こそが、 実はパーティを陰で支えていたレアスキル持ちだった。 事実に気づいた時にはもう遅い。 道に迷い、魔獣に襲われ、些細な任務すらまともにこなせない。 “荷物持ちがいなくなった瞬間”から、 アレクスの日常は静かに崩壊していく。 短絡的な判断で、かけがえのない存在を手放した戦士。 そんな彼と再び肩を並べることになったのは―― 美しいのに中二が暴走する魔法使い ノー天気で鈍感な僧侶 そして天性の才を秘めた愛くるしい弟子レンジャー かつての仲間たちと共に、アレクスはもう一度歩き出す。 自らの愚かさと向き合い、後悔し、懺悔し、それでも進むために。 これは、 “間違いを犯した男が、仲間と共に再び立ち上がる” 再生の物語である。 《小説家になろうにも投稿しています》

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...