俺は何処にでもいる冒険者なのだが、転生者と名乗る馬鹿に遭遇した。俺は最強だ? その程度で最強は無いだろうよ などのファンタジー短編集

にがりの少なかった豆腐

文字の大きさ
33 / 79
転生ガチャでSランクの転生チケットを当てて聖女に転生! って、は? いやちょっと待て、この状態は求めていなかったんだが!?

目を合わせて

しおりを挟む
 
 手紙だけではシェケルの気持ちを前に向けることはできなかった。

 まあ、ラブレターついでの遺書なんてもらって吹っ切れられる奴はそうそういないだろうし、聖女のラブレター自体が未練の塊だからな。

 好きだったよ。でもこれからは他のことに目を向けてね。って書かれていたら、両思いだった時はまあこじれるだろ。
 もともとシェケルが病んでいた中でさらにそんな情報を出したのが悪かったか。
 
 タイミングミスったか? 本来ならもう少し後で見つかる予定だったわけだし、早かったのかもしれん。
 婆さまに対しては今でも問題なかったと思うが、どうしたものか。

 うじうじ悩んでもどうにもならんのよな。だからさっさと手紙を出して吹っ切れてもらおうと思ったんだけど、逆効果だったぽいな、これ。
 
 見る限り多少は気持ちに変化がありそうな感じではあるが、シェケル自身がもとより悩みやすい上に誰にも相談しないで抱え込むようなタイプみたいだからなぁ。

 いっそ手っ取り早く強引に気持ちを切り替えさせるか? ……それが一番ましかね。聖女もこんなにグダグダ悩まれているのも嫌だろうしな。

「シェケル」

 手紙を視界に入れながらも少し遠い目をしているシェケルの前に立つ。声をかけても前に立っても反応はすれど、こちらを見ようとしないシェケルの視界に入るために屈む。

 婆さまに頭が落ちないようにチョーカーらしきものを着けてもらったんだが、完全に固定しているわけじゃないから少しぐらつくし、それなりのサイズの胸が邪魔で足元が見えないからちょっとバランスが、っと。

「あ、やべ頭落ちそう」
「ちょっと!?」

 視線を合わせるために少し屈んだところで、今まで安定して乗っていた頭がずれて落ちそうになってしまった。それを口に出した途端、シェケルがもうすでに起きた両手で落ちないよう支えてきた。

「やっと目が合ったな」
「あっ」

 俺の頭を正面から支えたことでシェケルの視線と俺の視線が交わる。シェケルは咄嗟に視線を彷徨わせ始めるが俺の頭を両手で支えているため、完全に視線を逸らせないでいる。

 この状況になるよう意図していたわけではないが、都合がいいのでそのまま話を進めることにしよう。

 とりあえず、これ以上視線を逸らせないようにシェケルと同じように俺もシェケルの頬に手を添える。
 
「シェケル、よく聞け」
「っ」

 じっとシェケルの目を見つめながら言葉をかけると、シェケルは身を固くし息をのんだ。

「もうすでに起きた過去は何をやっても変えられない。ここでうだうだ悩んだってどうにもならないんだよ」
「でも」
「でもじゃなくてさ、どうして聖女がお前にだけ個別で手紙を書いたのか、そこのところ理解できてる?」
「え?」
「婆さまに渡した手紙は複数に宛てたものだった。1人に宛てたものじゃないんだよ。だけどお前のは違う」

 普段シェケル以上に接していたはずの婆さまは他の人たちと一緒で、シェケルだけ個別でもらっているのが、どれだけ深く想われていたのかって気づけよな。まあ、気づいていて目をそらしていただけかもしれないけどさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

A級パーティーを追放された黒魔導士、拾ってくれた低級パーティーを成功へと導く~この男、魔力は極小だが戦闘勘が異次元の鋭さだった~

名無し
ファンタジー
「モンド、ここから消えろ。てめえはもうパーティーに必要ねえ!」 「……え? ゴート、理由だけでも聴かせてくれ」 「黒魔導士のくせに魔力がゴミクズだからだ!」 「確かに俺の魔力はゴミ同然だが、その分を戦闘勘の鋭さで補ってきたつもりだ。それで何度も助けてやったことを忘れたのか……?」 「うるせえ、とっとと消えろ! あと、お前について悪い噂も流しておいてやったからな。役立たずの寄生虫ってよ!」 「くっ……」  問答無用でA級パーティーを追放されてしまったモンド。  彼は極小の魔力しか持たない黒魔導士だったが、持ち前の戦闘勘によってパーティーを支えてきた。しかし、地味であるがゆえに貢献を認められることは最後までなかった。  さらに悪い噂を流されたことで、冒険者としての道を諦めかけたモンドだったが、悪評高い最下級パーティーに拾われ、彼らを成功に導くことで自分の居場所や高い名声を得るようになっていく。 「魔力は低かったが、あの動きは只者ではなかった! 寄生虫なんて呼ばれてたのが信じられん……」 「地味に見えるけど、やってることはどう考えても尋常じゃなかった。こんな達人を追放するとかありえねえだろ……」 「方向性は意外ですが、これほどまでに優れた黒魔導士がいるとは……」  拾われたパーティーでその高い能力を絶賛されるモンド。  これは、様々な事情を抱える低級パーティーを、最高の戦闘勘を持つモンドが成功に導いていく物語である……。

義妹がピンク色の髪をしています

ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。

勇者PTを追放されたので獣娘たちに乗り換えて楽しく生きる

まったりー
ファンタジー
勇者を支援する為に召喚され、5年の間ユニークスキル【カードダス】で支援して来た主人公は、突然の冤罪を受け勇者PTを追放されてしまいました。 そんな主人公は、ギルドで出会った獣人のPTと仲良くなり、彼女たちの為にスキルを使う事を決め、獣人たちが暮らしやすい場所を作る為に奮闘する物語です。

ゴミスキルと追放された【万物鑑定】の俺、実は最強でした。Sランクパーティが崩壊する頃、俺は伝説の仲間と辺境で幸せに暮らしています

黒崎隼人
ファンタジー
Sランク勇者パーティのお荷物扱いされ、「ゴミスキル」と罵られて追放された鑑定士のアッシュ。 失意の彼が覚醒させたのは、森羅万象を見通し未来さえも予知する超チートスキル【万物鑑定】だった! この力を使い、アッシュはエルフの少女や凄腕の鍛冶師、そして伝説の魔獣フェンリル(もふもふ)といった最強の仲間たちを集め、辺境の町を大発展させていく。 一方、彼を追放した勇者たちは、アッシュのサポートを失い、ダンジョンで全滅の危機に瀕していた――。 「今さら戻ってこい? お断りだ。俺はこっちで幸せにやってるから」 底辺から駆け上がる痛快逆転ファンタジー、ここに開幕!

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

1000年生きてる気功の達人異世界に行って神になる

まったりー
ファンタジー
主人公は気功を極め人間の限界を超えた強さを持っていた、更に大気中の気を集め若返ることも出来た、それによって1000年以上の月日を過ごし普通にひっそりと暮らしていた。 そんなある時、教師として新任で向かった学校のクラスが異世界召喚され、別の世界に行ってしまった、そこで主人公が色々します。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【読切短編】処刑前夜、地下牢に現れた王女は言った。「お前でなければ駄目なんだ」滅びの未来を覆す、騎士との契約

Lihito
ファンタジー
王国騎士団の副長ヴェルドは、無実の罪で投獄され、明日処刑される運命にあった。 腐敗した国に絶望し、静かに死を待つ夜。 地下牢に現れたのは、実権を持たない「傀儡」と噂されるイゾルデ王女。 彼女はヴェルドに仮死毒を渡し、こう告げた。 「死んで、私の影になれ」 彼女は知っていた。 この国が三年後に滅ぶこと。誰が裏切り者か。 そして——ヴェルドこそが、国を救うための唯一の「切り札」であることを。 これは、滅びの未来を知る孤独な王女と、一度死んで生まれ変わった騎士が、裏から国を救う「共犯」の物語。

処理中です...