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いまさら愛せと言われましても
出会いは
しおりを挟むロレスとの出会いは彼と出会うよりもずいぶんと前だった。
私とロレスの関係は遠方の親戚にあたる。その家は我が家と同じく子爵家にあたり、子爵家の内での家格もほぼ同じくらい。
歳はロレスの方が2つ程上ではあるものの、貴族の婚姻で男性側の方が年が上であるのは普通であるし、私としても婚約するにあたり特に忌避感はなかった。
当時はお互いにこれといった恋意識はなかったものの、何かと惹かれ合う部分はあった。しかし、会っていた時もあくまで親戚筋の歳が近い者ということだったため、互いの婚約者候補として名が上がることもなく、そして私に婚約者が出来たことで、それからは殆ど会うことはなかった。
しかし、私の婚約が破棄されたことで、もう一度ロレスに会う機会が訪れたのだ。そして、どうやらロレスの方も私と同じく婚約者がいなくなってしまっていたらしく、途方に暮れていた。故に互いに行く遅れにならないようにと親戚ではあるけれど、婚約者として関係を再構築することになった。
そこからは小さい頃の思い出話に花を咲かせて、気持ちを確かめ合って、今に至るわけです。彼には関係ない話ですけれどね。
「ああそうかよ」
私が発した言葉を聞いた彼の表情が一気に黒くなる。色合いがという訳ではなく、怒気を通り越して表情が抜け落ちているものの殺意を秘めているような明らかに危ない表情だ。
「仕方ない」
彼はそう言うと着ていた服の内側に手を入れた。そして、服の内側から出した手には大き目のナイフのような刃物が握られていた。
「お前が居なくなれば俺がその位置につけるよな。いや、無理やりにでもつかせてもらうが」
「この場でそのような物を出すとは、正気ですか?」
彼が刃物を取り出したことに気付いたロレスがすぐに警戒し、彼に問いかける。それと同時に、突然のことで呆けていた私はロレスの手によって少しでも距離を取るようにと数歩後ろに下げられた。
近くに待機していた使用人たちも、彼が武器を手にしたことに気付いたようで、一部は別の場所へ応援を呼びに行ったようです。残った者たちは何かあった際にすぐ彼を取り押さえられるよう先程よりも近くで待機しています。
「何だ説得でもするつもりか? 死にたくないからって今更過ぎるだろ」
「いえ、そんなつもりは一切ありませよ。ただ、本当に馬鹿なことをしているな、と思っただけです」
本当に呆れかえっているのがわかる表情でロレスが彼へ返事する。それを聞いた彼は怒り心頭といった感じで顔を赤く染めた。
「そんなに死にてぇならさっさと死ねよ!」
そう言うよりも早く彼はロレスに向かってナイフを突き出した。
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