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貴方の言う真実の愛のお相手は誰なのでしょうか。まさか私の妹ではありませんよね?
妹は見た
私は本来の予定よりも夜会を早く退出したため、予定を前倒しにしその日の夜には実家の屋敷へ戻りました。
しかし、実家に戻ったところで時間も遅かったためシレスの相手が誰なのか、それを確認する方法はなく、そのまま翌日に持ち越しとなりました。
結局、あれは誰だったのかしら。シレスの発言があちらの実家も把握しているのであれば早い段階で、こちらへ向けて連絡が来ているはずなのですが。お父様のところには届いているのでしょうか。
朝、いつもと同じ時間にベッドから起き上がり、部屋を出るための支度をしながらあれこれと思考を巡らせます。
私の実家であるレフリア伯爵家が、シレスの実家であるイゲリス伯爵家に対する今後の対応を決めるためにも、相手がどこの貴族家出身なのかを知らなくてはならないのですが、見たことのない相手がどこの家の出なのかわからない限りそれを決めることは出来ません。
ただし、私が知らない、という事はおそらく子爵かもしくは男爵家の出身の可能性が高いですね。
伯爵家及び、我が家よりも爵位が上の辺境伯、侯爵、公爵家であれば貴族として知らないというのは致命的です。そのため、各貴族家で強制的に覚えされられる内容なので、その中にあの令嬢の情報がなかったとなれば自動的にそうなります。
まずは、男爵家から調べればいいかしらね。特にここ最近に爵位を与えられたところを中心に調べれば、あの方が誰なのかはわかるでしょう。
何処から調べるか、そう考えている時、不意に自室のドアがノックされました。
「お姉さま、少々いいでしょうか?」
「いいわよ」
朝の早いこの時間にエレーナが来るなんて珍しいですね。昨日のこともあって少々後ろめたい気持ちがありますが、拒む理由もないので入室の許可をだします。
「おはようございます。お姉さま」
「ええ、おはよう。でも、この時間にエレーナが来るなんて何かあったのかしら?」
エレーナの見た目は私の少し前の見た目によく似ているんですよね。ただ、瞳から感じられる意思の強さと声の張りから、私とは完全に別人だとよくわかります。私にはあのしっかりとした印象はありませんからね。
「昨日の夜会について話がありまして」
「昨日の?」
何故、夜会に参加していないエレーナからその話が出て来るのか、理解できなかったために短く言葉を返してしまいました。
「はい。あのクソ野郎の相手のことです」
「え……え? く、くそ? そ……それってシレスのことかしら?」
「そうです! そのクソ野郎です!」
エレーナからそのような言葉が出て来るとは思っていなかったので驚きましたが、先の話が気になったため止めることなくそのまま話を進めます。
「エレーナは昨日の夜会に出てはいなかったと思うのだけど、シレスの事で何か知っているのかしら」
「えぇ、ええ! あれの相手の事も存じています」
「え?」
突然の言葉に呆けたものの、思わぬところではあるが情報が得られそうなことに少し安堵しました。
「どうしてその事をエレーナが知っているのかが気になるけど、話してくれない?」
「はい! といっても私も最初はたまたま偶然、そう偶然! あの2人が会っているのを見かけただけなのです。まあ、その後にしっかり調べましたけど」
「そ、そうなの」
エレーナがどのような場面でその光景を見たのかはわかりませんが、婚約者が居る状況で会っていたとなれば、そこはあまり人目につかない所でしょうね。たまたまとか偶然を連続して使ったのには少し引っ掛かりますけど。
「あのゴミの相手はフマ男爵の令嬢ですね。一応私と同年なので調べるのは簡単でした。ただ、フマ男爵の家は少々黒い噂があるようですね」
「黒い噂?」
「洗脳術が使えるのでは、という不確かなものでした」
洗脳術とは、伝承のみで伝えられている特殊な魔法の事。
この国の貴族の大半は魔法が使えるのですが、基本的に属性魔法と呼ばれる何もない所から火や水、風を起こすものです。特殊な魔法であれば回復魔法と呼ばれる希少属性もありますが、洗脳術と呼ばれる魔法は正式な属性として存在していません。
「洗脳術……たしか、最近の物語によく出て来るようになった魔法よね? 昔からあるかもしれない、という伝承も在ったはずだけど」
「そうです。その洗脳術ですね」
最近、貴族の令嬢の中で流行っている物語は、婚約者に囚われている好きな相手を救い出すもの。特に人気が高い内容は傲慢な姉を持つ妹が、姉の婚約者に恋して姉からその婚約者を救い出すという話。
エレーナもこの手の物語が好きでいくつも書籍で持っています。私が最初にエレーナを疑ってしまったのはこれの影響もあるのですよね。
「……ん? あれ、不確かな物……でした?」
「はい。私も最初は空想の産物だと思っていたのですが、フマ男爵令嬢の周囲の状態を見ると、空想の産物、とは断言できないことがちらほらありました。特にフマ家が男爵の爵位を受け取ったあたりから、少々周囲で不自然な動きが確認できたのです」
「不自然な動き?」
「フマ家が男爵の爵位を授けられた経緯が変だったのです。普通、男爵の位は大きな功績やいくつもの功績を称えられて国から授かるのです。ですが、フマ家にはそのような功績はありませんでした。あっても精々、領地で褒賞を貰う程度ですね」
私が住んでいる国は基本的に王政によって運営されています。そのため、新たに爵位を得るには、国に対しての大きな貢献が必要になるのですが、フマ家が上げたとされる功績は大したものではなかったようですね。
エレーナから話を聞いた限り、どの観点から見ても国からの褒賞どころか、関わった領地から金一封が出る程度の爵位を授かるほどの功績でしかなかったと思うのですが、これで爵位を受けたとなれば確かに不自然な感じですね。
こうなってくればおおよそ不正によるものか賄賂によるものでしょうけれど、元より平民だったフマ家が不正が出来るほどに貴族に繋がりがあるはずがないのですよね。
その点を考えれば、どのように貴族との繋がりを得たのかを調べなければならないのだが、そこを調べたエレーナがあることに気付いたようで……
「どう見てもフマ家が繋がりを持てるはずのない高位の爵位を持つ貴族家が爵位の授与に関わっていたのです。しかも普段なら不正をしないような家も関わっていました。どう考えてもおかしな状況です」
不正による爵位の授与はこの国では犯罪です。いえ、別の国でもそうでしょうけれど、少なくとも不正に関わった貴族家には重い罰を受けることになるは確実です。そのため、どの貴族家でも余程の事がない限り、いくら恩人や領地及び国に貢献した者が出たとしても、そうそう爵位の授与を国に嘆願することは無いのですよね。
「そのことについて、お父様には伝えたのですか?」
「昨晩、この情報を見つけた後すぐに伝えています。本当なら昨日の内にお姉さまにも伝えたかったのですが、お疲れだったようですので」
「そうなのね」
とりあえず、レフリア伯爵家の当主にこの話が伝わっているなら、これ以上私が直接関わることは無いでしょう。
それを理解したことで深く息を吐き、私は緊張してこわばっていた体から力を抜きました。
「お姉さまは私が守りますから、待っていてくださいね! それでは!」
「……え? それはどういう事です……か。って、あの子は行動に移すのが昔から早いわね」
既に部屋から出て行ってしまったエレーナの事を想いながら小さく息をつきました。
「私の方が年は上なのですけど……ここまでされてしまうと姉としての立場がないわね。まあ、エレーナに何かあったら私が助けになれるようにしておかないといけないわね」
そうして、朝の支度を終えて、朝食の場に移動することにしました。
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