輪廻”異世界”転生

第1話 そして転生

ーーNULL


　俺の名前はカイ。20代後半のそこら辺にいるフリーターだ。
　朝起きて、仕事に行き、夜に帰って寝る。ごくごく普通の暮らしをしている人間である。
　これといった欲望もなく、本当に何も無い人生を送り続けている。

　何も無い人生、それが幸せだった。

　「お疲れ様でしたー」
　ある日の夏、仕事が終わった俺はお馴染みのスーパーに寄り、公園を突っ切って、家に帰ろうとしていた。
　スーパーでいつもの弁当を買い、そのまま公園に向かう。
　その公園は真ん中に大きな木があり、その周りには遊具がある。
　地面には子供たちが描いたであろう絵がたくさん。
　その絵が消えないように避けながらその公園を突っ切ろうとしたその時

　「うっ……目が……」

　目の前に見えるいつもの公園がグルグルと回り始めている。

　（今日は疲れているのか……さすがにこのままじゃまずいな……）

　視界がグルグルしているせいか、吐き気がしてきてさすがにマズいと思った俺はフラフラになりながら公園の真ん中にある木にもたれかかった。
　落ち着くために目を閉じて呼吸を整える。
　目が回る、と言うよりかは体が回っている。そういう感覚だ。
　天地がどっちかも分からなくなってきてしまい、体の力を抜いてしまった。
　そのまま意識が遠くなりーー

　「……んん……うっ……」

　意識が少しずつ戻り、少し気持ちが悪いながらも目を少しずつ開ける、
　太陽が眩しい……
　夏の暑さを感じながら、風が気持ちよく吹いていて、地面に生えている草が体に触れくすぐったい……ん？
　確か、木の周りには草なんて生えてなかったはず……
　そう思い、重い体を起こし目を擦って周りを見渡した。

　「どこだよ、ここ……｣

　そう言って、俺の頭は思考が停止した。