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あなたへ
ララの戦い
しおりを挟むララの灰色の髪が更に長く伸び、犬歯と爪が大きく鋭く発達していく。
狼のような耳は大きくなり、年不相応に大きかった身体は更に成長を遂げた。
「これも〈魔獣王〉の力なのか……!?」
そうして変身を終えたララの姿はどこか大人びていて、獣人とは一線を画す独特な雰囲気を持っていて、そしてなにより美しかった。
「レオン、ありがとう」
「ララ……?」
「『勝て』って、そう言ってくれたおかげで私、戦えるよ」
口を開いたララに、元々の幼い雰囲気は残っていなかった。
これまでレオンが操ってきた魔獣のように自我を失っている様子もない。
「これは驚いたな……」
シンピが呟く。
特級冒険者である彼女にとっても、ララの変身は完全に想定外の現象であった。
「ララちゃん!? その姿は……!」
リンネが駆け寄ってくる。
髪が返り血で赤く染まっていることにレオンは驚いた。
「……! ララちゃん、後ろ!!」
リンネの声に振り向くと、獄狼のかぎ爪がもうすぐそこまで迫っていた。
「ララ!!!」
大きなかぎ爪がララを切り裂く――かに見えたが、獄狼の爪は彼女の片腕のみによって防がれていた。
「こんなの全然効かないよ……父さん」
ララが消える。
否、速すぎて消えたかのように見えたのだ。
獄狼の眼前に現れたララはかぎ爪を振るう。
先ほど自分を襲った攻撃と同じように。
獄狼がまばたきをする。
そしてその視界に光が戻ることは二度となかった。
咆哮。
しかし断末魔が長く続くことはなかった。
ララが獄狼の喉笛を切り裂いたからだ。
おぞましき血が吹き出し、巨体が沈む。
半人半魔の少女は獄狼を見下ろす。
彼女は強力な魔獣であるはずの獄狼を間もなく討ち取らんとしていた。
「……さよなら。父さん」
その言葉と共に獄狼は一瞬で切り刻まれた。
「強い……!」
「だな。師匠、これはララ本来の力だと思いますか? それとも〈魔獣王〉の……」
「……おそらくはどちらも、だろうな。他の魔獣では見られなかった現象であり、お前の言葉が引き金になったことは確かだ」
「やっぱりそうですよね……」
ララにのみ起きた現象。
それならば――
「“奴”はここでなにを生み出そうとしていたんだ……!?」
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