落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

文字の大きさ
28 / 101
はじめての依頼

人なのか、獣なのか

しおりを挟む
 真っ暗な洞窟の中、レオンは壁伝いに奥へと進んでいた。
 すると、闇に覆われていた視界が微かな灯りを捉える。
 近づいてみると、古びたランタンが幾つか吊るされており、奥への道筋を怪しく照らしていた。

「……間違いなさそうだな」

 灯りの導きに従い、さらに奥へと進んでいく。
 そのまましばらくすると、広い空間に出た。
 空間の中心では大型のアンデッドが魔法陣を描いている最中で、その脇には数人の女性が倒れていた。

「あれがシュンランの仲間か……」

 これまで戦ってきたアンデッドとは様子が違うことから、中心にいる大型がボスとみて恐らく間違いないだろう。
 ただ、そいつ以外にも周囲には多くのアンデッドが待機している。
 不意打ちを狙うのは恐らく難しい。

「というか、なんで魔獣が魔法陣の書き方なんか知ってんだ……?」

 通常、魔獣の知性は低い。
 ましてや、魔術の知識に精通している魔獣なんてレオンは聞いたことがなかった。

「大型のアンデッドって、たしかリンネがなんか言ってたな……たしか、リッチだったか」

 しかしリッチは知能が優れているという話は聞いていない。
 幾つか魔法を使うとは聞いていたが、魔法陣を用いる魔術は豊富な魔術知識がないと描くことはできないはずだ。

「まあなんにしても殺すだけか……」

「はたして貴様に殺せるかな?」

 レオンはの呟きに呼応して、低い地鳴りのような声が響く。
 それは間違いなく、レオン達の暮らす連邦の言語だった。

「なっ……!」

 リッチがレオンの方を振り向く。
 古びた頭骨のみで形づくられた顔に表情などというべきものはなく、瞳の存在するべき位置には底なしの深淵があった。

「この女どもを助けに来たのか? 無駄なことを……」

「……なんで話せるんだ、お前」

「何故、か。愚問だな。それは私が人間の魔術師だからだ。人々はネクロマンサーと呼んでいたかな。今は魔獣の姿となっているが、儀式さえ成功すれば再び人間の身体を手に入れることができる」

 リッチが口にしたネクロマンサーという言葉に、レオンは覚えがある。
 ミスト神父が寝物語に話してくれた御伽噺に登場する、恐ろしい魔術師。
 冒涜的な魔術を使う彼らを、人々はネクロマンサーと呼び恐れていた。

――まさか実在してたとはな

 そんなレオンの驚きなどはつゆ知らず。
 リッチは儀式の話を続ける。

「しかしその儀式というものが中々難しくてな……失敗すれば材料の人間がただのアンデッドになってしまう。まあ、思いのままに操れる駒ができるというのは、それはそれでありがたいがな」

「その儀式ってやつのために、この人らを攫ったのか……?」

「ああ。わが兄によって封印されてから、長らく儀式の研究は止まっていた……だが、この女どもが、あの忌々しい短剣を抜いて私を解き放ってくれた! おまけに乗り移るための体まで提供してくれるとは……実に滑稽極まりない!」

「聞いたこと以外まで……よく喋る魔獣だな。何百年ぶりにか知らねえけど、他人と話せたのがそんなに嬉しかったか?」

 その一言で、周りの空気が凍りつく。
 ネクロマンサーの魔法か魔獣としての特性なのかは分からないが、このリッチには温度を変化させる力があるようだ。

「貴様は話を聞いていなかったのか? 私は人間だ。あのような醜い獣と一緒にするなぁ!!」

 リッチの叫びとともに、周囲のアンデッドどもがレオンに群がってくる。

「同じだよ。今のお前は人間じゃない……殺すべき魔獣だ」


「『狂戦士化バーサーク』!」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を殺された黒竜は勇者を許さない

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
ファンタジー
幼い竜は何もかも奪われた。勇者を名乗る人族に、ただ一人の肉親である父を殺される。慈しみ大切にしてくれた魔王も……すべてを奪われた黒竜は次の魔王となった。神の名づけにより力を得た彼は、魔族を従えて人間への復讐を始める。奪われた痛みを乗り越えるために。 だが、人族にも魔族を攻撃した理由があった。滅ぼされた村や町、殺された家族、奪われる数多の命。復讐は連鎖する。 互いの譲れない正義と復讐がぶつかり合う世界で、神は何を望み、幼竜に力と名を与えたのか。復讐を終えるとき、ガブリエルは何を思うだろうか。 ハッピーエンド 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/02……完結 2023/12/21……エブリスタ、トレンド#ファンタジー 1位 2023/12/20……アルファポリス、男性向けHOT 20位 2023/12/19……連載開始

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる

灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~ 幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。 「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」 「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」 最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?

冴えない建築家いずれ巨匠へと至る

木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」 かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。 安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。 現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。 異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。

• 『社交界の華は、影に咲く毒。〜私を捨てた世界、すべてお返しいたします〜』

YOLCA(ヨルカ)
ファンタジー
「その黄金の瞳……なんて気持ち悪いの。我が家に化け物は必要ないわ」 名門伯爵家の娘として生まれたエレーナ。しかし、彼女に宿った未知の能力を恐れた継母イザベラは、実父の留守中を狙い、幼い彼女を雪の降る町に捨て去った。 死を覚悟した彼女を拾ったのは、帝国の裏社会を支配する「皇帝の弟」ヴィンセント公爵。 彼はエレーナの力を「至宝」と呼び、彼女を公爵家の実の娘として迎え入れた。 それから数年。 エレーナは、二人の過保護な兄と、五人の精鋭部下に囲まれ、美しくも最強の工作員へと成長していた。 すべてを暴く『黄金の瞳』、すべてを操る『魅了』、そして伝説の師匠たちから授かった至高の淑女教育を武器に。 一方、継母イザベラは父を捨て、さらなる権力を手に入れるため、悪名高い侯爵の妻として社交界の頂点に君臨していた。 「お久しぶりです、お母様。……化け物と呼ばれた私からの、お返しを受け取ってくださいね」 捨てられた少女による、優雅で残酷な復讐劇。 今、その幕が上がる。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

「お前を愛する事はない」を信じたので

あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」 お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

処理中です...