落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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はじめての依頼

依頼達成〈前編〉

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「この先にレオンがいるのね!?」

「そのはずです!」

 暗い洞窟の中をリンネ達が進む。
 シュンランは森を抜けることに成功していたのだ。
 やがて三人は広い空間に辿り着いた。

「なにここ……レオン!」

 空間の中央で倒れているレオンに気づいたララがすぐに駆け寄る。
 リンネとシュンランもそれに続いた。

「レオン! 大丈夫!?」

 ララが強く揺さぶると、レオンが薄く目を開けた。

「ララ……リンネと、シュンランも……よかった。無事だったんだな……」

「それよりレオン、冷たい! リンネ、なにかあったかい物!」

「わ、わかった。えーと『陽光の天蓋サンシャイン・カーテン』!」

 リンネの魔法により出現した温かな光がレオンを包む。
 それは暖かな春の日の陽だまりのようであった。

「ありがとうリンネ……そうだ、リッチは……」

 レオンが辺りを見渡す。
 すると、そう遠くない場所に、しゃれこうべが一つ転がっていた。

「リッチ……!? あんたリッチと戦ってたの!?」

「魔獣か……!」

「いや、もう大丈夫だよ……」

「……! みんな!」

 シュンランが部屋の端で倒れている仲間たちの元に駆け寄る。

――これで依頼完了だな

 そう思うと安心したのか、レオンの意識は遠のいていった。



 その後、ギルドによる大規模な調査が行われた。
 どうやら海沿いの森にアンデッドは出現しなくなったようで、一時はレオン達の自作自演が疑われた。
 しかしシュンランの仲間たちによる証言や、洞窟に残されていた解読不明の魔法陣、図書館の奥底にあった古い書物によってレオンが元ネクロマンサーのリッチを倒した功績は正式に認められた。
 レオン達の手助けをしたことでシュンランは五級冒険者となり、リンネとララは四級冒険者、そして当のレオン本人は――

「三級冒険者……ですか」

 長い治療を終え、レオンはその日、ギルドを訪れていた。
 受付嬢は満面の笑みで一躍英雄となったレオンに向き合っていた。

「はい! 約千年前に滅んだネクロマンサーの力を持つリッチを倒した冒険者なんて他にいませんから、飛び級昇格です!」

 そう言って、受付嬢は青の首飾りを手渡してくる。

「レオンいいなぁ。私も青がよかった~」

「何言ってるのララ。四級だってすごいのよ?」

「そうじゃなくて、好きな色の話!」

 なんて話す二人の首には緑の首飾りが光っている。
 これでレオン達はこのギルド一のパーティーとなった、らしい。

「それと、他にも報酬がありまして……金貨百二十枚になります」

「「金貨百二十枚!?」」

 レオンとリンネが声を揃えて驚く。
 ララはその価値が分からないので首を傾げた。

「金貨百二十枚ってそんなにすごいの?」

「……カモメ亭でララの好きなステーキが千二百回食べられる金額だな」

「千二百って……ええっと」

 ララが指を折って数を数え始める。
 恐らく数え切れないだろう。

「ひとまずギルドからは以上です。シュンランさん達があちらの席で待ってますので、行ってあげてください」

 受付嬢が示した方を見ると、シュンランと共に見覚えある数人が席で待っていた。
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