落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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王と忠誠

帰還

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 ブレンダムを出発して四日後。
 レオンたちはシンピの家に戻ってきていた。

「で……なんでこいつがいるんだ?」

 珍しく明らかにうんざりした顔のシンピがビーディーを指さして言う。

「あ? んだてめぇ。あたしがいちゃいけねぇのかよ」

 ビーディーが座っているシンピの肩に手を回してすごんでみせる。
 レオンとベルの間に「この二人って仲悪いの?」という空気が流れた。
 ちなみにリンネは散らかりに散らかされていた家の掃除中で、この場には不在だ。

「いてはいけないという訳じゃないが……五年も引きこもってギルド本部の呼び出しにも応じなかったお前がどういう風の吹き回しだと言っているんだ」

「う……」

 シンピから鋭い視線が返され、ビーディーはバツが悪そうに視線を逸らす。

「と、とにかくだなっ! 久しぶりに会ったってのにその態度はなんだっつってんだよ!」

 シンピから離れて乱暴に椅子に座ったビーディーはそう言うと腕を組んで頬を膨らませる。
 その様は機嫌を損ねた女児にしか見えず、レオンは可愛いなと思ったが言うのはやめておいた。
 絡まれたら面倒だから。

「はあ……元気そうでなによりだ。これで満足か」

「ため息をつくな! あとその仕方なく言ってやったみてぇな態度をやめろババア!」

「誰がババアだ。どう見ても老化してないだろ」

「実年齢のことを言ってんだよ!」

「ま、まあまあその辺で……」

 レオンが仲裁に入ろうとした時、部屋の扉が勢いよく開かれる。
 見れば、そこには怒り心頭といった様子のリンネが立っていた。

「師匠~! 作りおいてた食事食べ終わったからって林檎とかしか食べてなかったでしょ! そんなことしてると身体に差し障りますよ!」

「……『帰還転移リ・ワープ』」

 呪文を唱えてシンピが消える。
 『帰還転移リ・ワープ』ということは恐らく自室に逃げ込んだのだろう。

「あ! ちょっと師匠! 逃がしませんよ!」

「あたしとの話も終わってねぇからなぁ!」

 リンネとビーディーがどたどたと騒がしく二階へと上がっていく。
 レオンはそれを見送りつつ笑うしかなかった。

「賑やかになったなぁ……」

「ですねぇ。この前まで一つの町を守るために戦っていた人達には見えないです」

「でもさ」

 ララが嬉しそうな笑顔で言った。

「この方がいいよ……ずっと、ずっといい」

「……そうだな」



 その夜、ベルも交えてみんなで食卓を囲むことになった。

「それで」

 シンピが真っ直ぐにレオンの目を見やる。

「相談というのはなんだ、レオン」

「……はい」

 レオンは口の中の肉を飲み込んで、シンピを、師匠を見つめ返す。

「〈魔獣王〉について、もっと教えてもらえませんか」
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