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王と忠誠
晩酌
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夜、シンピが自室で魔導書を読んでいると、唐突にドアが開かれた。
シンピはそちらを見ずとも、その荒々しい開き方で誰が訪ねてきたのか分かった。
「ノックくらいしろ……それで何の用だ。ビーディー」
魔導書を閉じたシンピが部屋の入り口を見やると、開け放たれたドアの先には予想通り。
酒樽を軽々と抱える小さな女ドワーフの姿があった。
「いやぁなんか吞みたくなってな。お前も久しぶりにどうだ? ブレンダムから結構いい酒持ってきたんだ」
そう言ってビーディーが酒樽を掲げる。
シンピは少し考えてから「座れ」と促した。
「シンピと吞むのも久しぶりだなぁ。いつ以来だ?」
後ろ手にドアを閉めつつビーディーが問いかける。
「お前が本部で暴れた時以来だな」
その言葉にビーディーの視線は泳ぎ、滝のような汗が一気に流れ出す。
それに構わず、というよりもここぞとばかりにシンピが続ける。
「あの時は大変だった……本部の老狐どもに頭を下げて周り、特級解任にまで処分を軽くしてやったというのに、まさか当の本人が山奥に引きこもるとは……」
「だ~! 悪かったよあん時は! そんでグラスとかねぇのか! さっさと呑むぞ!」
顔を真っ赤にしたビーディーが怒鳴ると、シンピはその硬い表情をいくらか崩して見せた。
なんだかんだ言っても元パーティーメンバー。
数年程度の時が経っても、信頼の強さというものはそう簡単に変わらない。
「ふふふ……ああ、グラスならある。『引き寄せ転移』」
唱えると、棚が開きグラスがシンピの手元へと引き寄せられていく。
ビーディーはそれを見て少し渋い顔をした。
「お前なぁ、魔法をそんなことに使うか? 普通」
「いいんだよ。魔法だろうと仙術だろうと、本来生活に寄り添うためのものだ……こんな使い方をできるくらいがちょうどいい。ほら、酒を注げ一級冒険者」
そう言ってシンピはグラスをビーディーに向かって突き出す。
ビーディーは苦い顔をしつつも、これ以上あの失態を掘り返されたくないと思い、大人しく従っておくことにした。
「くそ……あたしが他人に酌をする日が来るとは……」
「ふ、そうだな。あのじゃじゃ馬に酌をさせていると思うとなかなかに気分は悪くない。丸くなったか?」
「うるせぇ」
このままシンピに良いようにされるのも癪だと思ったビーディーは気になっていたことについて突っ込んでやることにした。
「そういやお前、ウルフのこと“奴”とか呼んでんだろ。レオン達が“奴”とか言うから最初なんのこと言ってんのかわかんなかったわ」
どうやらビーディーの目論見は成功したらしく、気持ちよさそうに酒を飲んでいたシンピが苦い表情を見せる。
酒のせいか、少し恥じらいが混じっているのもよく分かる。
いい気味だとビーディーは心中でほくそ笑んだ。
「まあ、な。正直、まだ信じられないんだ……今のあいつをウルフと思いたくない」
「あー……何年経ってると思ってんだ吹っ切れろや! って言いたいとこだが……それは、ちょっと分かるな」
「……そういうことだ」
二人が想いを断ち切るように酒を煽る。
すると、不意に閉じたドアがノックされた。
「誰だ? 入れ」
シンピが促すと、ゆっくりと開かれたドアの隙間から小麦畑のように美しい金の髪が覗く。
深夜の訪問者の正体はリンネと、その後ろに立つベルだった。
「リンネとベルか。こんな時間にどうした」
リンネはその蒼の瞳でシンピを見据え、口を開く。
「師匠……私に、魔法を教えてください!」
シンピはそちらを見ずとも、その荒々しい開き方で誰が訪ねてきたのか分かった。
「ノックくらいしろ……それで何の用だ。ビーディー」
魔導書を閉じたシンピが部屋の入り口を見やると、開け放たれたドアの先には予想通り。
酒樽を軽々と抱える小さな女ドワーフの姿があった。
「いやぁなんか吞みたくなってな。お前も久しぶりにどうだ? ブレンダムから結構いい酒持ってきたんだ」
そう言ってビーディーが酒樽を掲げる。
シンピは少し考えてから「座れ」と促した。
「シンピと吞むのも久しぶりだなぁ。いつ以来だ?」
後ろ手にドアを閉めつつビーディーが問いかける。
「お前が本部で暴れた時以来だな」
その言葉にビーディーの視線は泳ぎ、滝のような汗が一気に流れ出す。
それに構わず、というよりもここぞとばかりにシンピが続ける。
「あの時は大変だった……本部の老狐どもに頭を下げて周り、特級解任にまで処分を軽くしてやったというのに、まさか当の本人が山奥に引きこもるとは……」
「だ~! 悪かったよあん時は! そんでグラスとかねぇのか! さっさと呑むぞ!」
顔を真っ赤にしたビーディーが怒鳴ると、シンピはその硬い表情をいくらか崩して見せた。
なんだかんだ言っても元パーティーメンバー。
数年程度の時が経っても、信頼の強さというものはそう簡単に変わらない。
「ふふふ……ああ、グラスならある。『引き寄せ転移』」
唱えると、棚が開きグラスがシンピの手元へと引き寄せられていく。
ビーディーはそれを見て少し渋い顔をした。
「お前なぁ、魔法をそんなことに使うか? 普通」
「いいんだよ。魔法だろうと仙術だろうと、本来生活に寄り添うためのものだ……こんな使い方をできるくらいがちょうどいい。ほら、酒を注げ一級冒険者」
そう言ってシンピはグラスをビーディーに向かって突き出す。
ビーディーは苦い顔をしつつも、これ以上あの失態を掘り返されたくないと思い、大人しく従っておくことにした。
「くそ……あたしが他人に酌をする日が来るとは……」
「ふ、そうだな。あのじゃじゃ馬に酌をさせていると思うとなかなかに気分は悪くない。丸くなったか?」
「うるせぇ」
このままシンピに良いようにされるのも癪だと思ったビーディーは気になっていたことについて突っ込んでやることにした。
「そういやお前、ウルフのこと“奴”とか呼んでんだろ。レオン達が“奴”とか言うから最初なんのこと言ってんのかわかんなかったわ」
どうやらビーディーの目論見は成功したらしく、気持ちよさそうに酒を飲んでいたシンピが苦い表情を見せる。
酒のせいか、少し恥じらいが混じっているのもよく分かる。
いい気味だとビーディーは心中でほくそ笑んだ。
「まあ、な。正直、まだ信じられないんだ……今のあいつをウルフと思いたくない」
「あー……何年経ってると思ってんだ吹っ切れろや! って言いたいとこだが……それは、ちょっと分かるな」
「……そういうことだ」
二人が想いを断ち切るように酒を煽る。
すると、不意に閉じたドアがノックされた。
「誰だ? 入れ」
シンピが促すと、ゆっくりと開かれたドアの隙間から小麦畑のように美しい金の髪が覗く。
深夜の訪問者の正体はリンネと、その後ろに立つベルだった。
「リンネとベルか。こんな時間にどうした」
リンネはその蒼の瞳でシンピを見据え、口を開く。
「師匠……私に、魔法を教えてください!」
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