落ちこぼれの魔獣狩り

織田遥季

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魔龍動乱

討伐、そして暴走

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 魔龍の右手側。
 ララのいる位置と反対方向にはリンネがいた。
 ララが叫び、魔龍の注意を引き付ける。
 魔龍の意識が完全にララに向いたタイミングを見計らって、リンネが飛び出した。
 狙うは首筋。

――苦しませはしない

 今のリンネは狩人の眼をしていた。

「一撃で終わらせる……!」

 すっかり暗くなった森で、蒼い刀身が月光により閃く。
 魔龍の首が間合いに入るや否や、横に一閃。
 その鱗で覆われた身を撫で斬った。
 魔龍の血液が大量に吹き出し、ララを捉えていたその瞳からは生気が失われる。
 森を襲った咆哮すらも放たれることはなかった。
 魔龍の巨体が沈み、〈魔獣王〉の赤いオーラすらも完全に沈黙した。
 それを確認して返り値に染まったリンネは『座標転移ポイント・ワープ』で剣を納めた。

「終わった……?」

 リンネが呟く。
 しかしこの後に起こることを考えれば、それは大きな間違いと言えた。

「グウウ……」

 リンネの耳が、獣の呻きのようなものを捉える。
 周囲を見回して発生源を探せば、それはうずくまったララから聞こえてきているようだった。

「ララ! どうしたの?」

 駆け寄るリンネ。
 ララは苦悶の表情のまま、リンネを見やる。

「リンネごめん……逃げ、て……!」

「……ララ?」

 ララの呻き声は叫びへと変わり、立ち上がる。
 灰色の髪は伸びて赤く変色し、爪と牙は槍のように鋭く尖る。
 その眼は、もう一人のレオンと同じ赤に染まっていた。

「これって……!?」

「ううう……ぐおおおお!!!」

 野性的な雄叫びを上げ、ララが飛びかかってくる。
 リンネは身をよじり、急襲をすんでのところで躱した。
 理由は分からないが、ララに与えられた〈魔獣王〉が暴走したのだとリンネは理解した。

「ララ! 目を覚まして!」

 リンネの必死の叫びも虚しく、ララが攻撃の手を止める様子はない。

「お願い! ララ!」

 仲間であるララの暴走に巻き込まれてしまったリンネは、ただ叫びながら逃げ続けることしか出来なかった。
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