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第一章「囁き」
「囁き」
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アルは魔術学の教室に着いた。
既に教卓には先生がいた。
脂っこい髪にやつれた顔、全体的に黒い服に黒いマント。
まさに邪悪な魔術師そのものの姿である。
この先生の名前はゴドリクスと言った。
アルは席に着いた。なるべくゴドリクス先生から離れたところに。
他の生徒もぞろぞろと教室に入り、教室はすぐ埋まった。
それから数秒後、始業の鈴が鳴った。
その音が鳴り止むとすぐに
「授業を始める。静かにしたまえ。」
と、高圧的な声がアルの耳にとどいた。
「さて、今日は新しいところを学ぶ。
前にも言ったと思うが、魔術学は非常に高度である故、このクラスに数人いる…
あー、落ちこぼれには難しいのである。」
最後の方はしっかりとアルを見据えながら言い放った。
その後数秒、アルのことを見たあと、また話し始めた。
「しかし、私は教師であるため、落ちこぼれどもにもこの高度で美しい術たちを教えねばならん。」
そして教室を見回した後に
「今日は無言呪文をやる。
黒板を写したまえ。」
そう言って黒板を叩くと、黒板に文字が浮かび上がった。
生徒たちはみんな一斉にノートに写し始めた。
無言呪文とは、術を行使する際、呪文を言わずに術を使うことを指す。
ゴドリクス先生は全員が写し終わるのを見て、
「この無言呪文は集中すれば誰でも出来る。
では、始めたまえ。」
生徒たちは立ち上がり、各々でペアを作って無言呪文の練習を始めた。
当然、アルは一人取り残されてしまった。
落ちこぼれに友達などできようはずもなかったのだ。
周りの生徒には無言呪文に成功する人も出始めた。
アルの様子を見たゴドリクス先生はアルの元にやってきた。
「アル君、君は授業を受ける気がないのかね?」
間違いなく、ゴドリクス先生はアルと組んでくれる友達がいないことを知っていた。
アルは込み上げる怒りを抑えてゴドリクス先生に答えた。
「僕と組んでくれる生徒がいないのです、先生。」
ゴドリクス先生はそれを聞くと、口角を上げ、こう言った。
「ほう、落ちこぼれ君に構ってくれる生徒が周りにいないと。
まあ、それもそうであろう。落ちこぼれと練習なんてしてみろ、自分の腕が落ちるだけだ。」
そして、クラスを見回すと
「クリス!こっちに来なさい。
彼と練習をして差し上げなさい。」
なんと、ゴドリクス先生は贔屓にしている生徒、しかもアルを事あるごとに馬鹿にしてくる生徒を選んだのだ。
「わかりました。先生。」
クリスはそう答え、前に出てきた。
また馬鹿にされることを確信しながら、アルはクリスと向き合った。
「では行くぞ。始め!」
クリスは手を前に突き出した。
気づいたらアルは壁に打ちつけられていた…。
アルは壁に打ちつけられた時、一瞬気を失いかけた。
クリスは構わず、また手を前に突き出した。
アルの体は宙に浮いた。浮遊呪文だ。
そして、体から魔法の支えがなくなった瞬間、アルは教室の床に墜落した。
(なんで僕がこんな目に…。落ちこぼれだからってこんなこと…)
「グッ…!」
たった二回の魔術でボロボロになってしまったアルは、それでも起きあがろうとした。
それでも、クリスは容赦なく次の魔術をかける。
「落ちこぼれは大人しく…
這いつくばっていろッ!」
アルは見えない手で床に押し付けられた。
アルは心の奥からふつふつと怒りが湧き上がるのを感じた。
その時、頭に声が響いた。
『こいつに復讐したくないか…?
お前を馬鹿にした人間の顔を全て泣き顔に変えたくはないか…?
さあ、私を解き放つのだ……。
さぁ!』
アルはこの声に身を委ねてはならないと直感的に察した。
何故ならこの声には恐ろしい魔力が隠れていることを感じたからだ。
このままこの声に身を委ねてしまえば力に呑まれてしまうとアルは悟った。
アルは感情を必死に押さえつけると、クリスに両手を挙げ、降参の意を示した。
「チッ、もう終わりかよ。つまらねえ」
クリスはそう言ってアルに目を向けた。
「フッフッ。落ちこぼれは所詮落ちこぼれか。
これにて授業を終了とする!」
ゴドリクス先生はそう言って授業を終了した。
アルはその日一日を惨めに過ごすことになった…。
既に教卓には先生がいた。
脂っこい髪にやつれた顔、全体的に黒い服に黒いマント。
まさに邪悪な魔術師そのものの姿である。
この先生の名前はゴドリクスと言った。
アルは席に着いた。なるべくゴドリクス先生から離れたところに。
他の生徒もぞろぞろと教室に入り、教室はすぐ埋まった。
それから数秒後、始業の鈴が鳴った。
その音が鳴り止むとすぐに
「授業を始める。静かにしたまえ。」
と、高圧的な声がアルの耳にとどいた。
「さて、今日は新しいところを学ぶ。
前にも言ったと思うが、魔術学は非常に高度である故、このクラスに数人いる…
あー、落ちこぼれには難しいのである。」
最後の方はしっかりとアルを見据えながら言い放った。
その後数秒、アルのことを見たあと、また話し始めた。
「しかし、私は教師であるため、落ちこぼれどもにもこの高度で美しい術たちを教えねばならん。」
そして教室を見回した後に
「今日は無言呪文をやる。
黒板を写したまえ。」
そう言って黒板を叩くと、黒板に文字が浮かび上がった。
生徒たちはみんな一斉にノートに写し始めた。
無言呪文とは、術を行使する際、呪文を言わずに術を使うことを指す。
ゴドリクス先生は全員が写し終わるのを見て、
「この無言呪文は集中すれば誰でも出来る。
では、始めたまえ。」
生徒たちは立ち上がり、各々でペアを作って無言呪文の練習を始めた。
当然、アルは一人取り残されてしまった。
落ちこぼれに友達などできようはずもなかったのだ。
周りの生徒には無言呪文に成功する人も出始めた。
アルの様子を見たゴドリクス先生はアルの元にやってきた。
「アル君、君は授業を受ける気がないのかね?」
間違いなく、ゴドリクス先生はアルと組んでくれる友達がいないことを知っていた。
アルは込み上げる怒りを抑えてゴドリクス先生に答えた。
「僕と組んでくれる生徒がいないのです、先生。」
ゴドリクス先生はそれを聞くと、口角を上げ、こう言った。
「ほう、落ちこぼれ君に構ってくれる生徒が周りにいないと。
まあ、それもそうであろう。落ちこぼれと練習なんてしてみろ、自分の腕が落ちるだけだ。」
そして、クラスを見回すと
「クリス!こっちに来なさい。
彼と練習をして差し上げなさい。」
なんと、ゴドリクス先生は贔屓にしている生徒、しかもアルを事あるごとに馬鹿にしてくる生徒を選んだのだ。
「わかりました。先生。」
クリスはそう答え、前に出てきた。
また馬鹿にされることを確信しながら、アルはクリスと向き合った。
「では行くぞ。始め!」
クリスは手を前に突き出した。
気づいたらアルは壁に打ちつけられていた…。
アルは壁に打ちつけられた時、一瞬気を失いかけた。
クリスは構わず、また手を前に突き出した。
アルの体は宙に浮いた。浮遊呪文だ。
そして、体から魔法の支えがなくなった瞬間、アルは教室の床に墜落した。
(なんで僕がこんな目に…。落ちこぼれだからってこんなこと…)
「グッ…!」
たった二回の魔術でボロボロになってしまったアルは、それでも起きあがろうとした。
それでも、クリスは容赦なく次の魔術をかける。
「落ちこぼれは大人しく…
這いつくばっていろッ!」
アルは見えない手で床に押し付けられた。
アルは心の奥からふつふつと怒りが湧き上がるのを感じた。
その時、頭に声が響いた。
『こいつに復讐したくないか…?
お前を馬鹿にした人間の顔を全て泣き顔に変えたくはないか…?
さあ、私を解き放つのだ……。
さぁ!』
アルはこの声に身を委ねてはならないと直感的に察した。
何故ならこの声には恐ろしい魔力が隠れていることを感じたからだ。
このままこの声に身を委ねてしまえば力に呑まれてしまうとアルは悟った。
アルは感情を必死に押さえつけると、クリスに両手を挙げ、降参の意を示した。
「チッ、もう終わりかよ。つまらねえ」
クリスはそう言ってアルに目を向けた。
「フッフッ。落ちこぼれは所詮落ちこぼれか。
これにて授業を終了とする!」
ゴドリクス先生はそう言って授業を終了した。
アルはその日一日を惨めに過ごすことになった…。
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