少年と蛇影

Zerueru

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第三章「力というモノ」

反撃 1

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「さてさて…。
諸君。授業を始めよう。」
ゴドリスク先生は話し出した。
「ふむ。前回の授業で無言呪文は終わりだ。
次は、落ちこぼれたちには少し高度なことを行う。」
そう言いつつ、ゴドリスク先生はアルの方を見るのを忘れなかった。
(ッ…!
その顔すぐにクシャクシャに変えてやる!)
アルは一つの決意を胸にゴドリスク先生を睨み返した。
しばらく、ゴドリスク先生とアルの睨み合いが続いた。
そのうちにゴドリスク先生はアルから目を逸らした。
「さて、今日の授業で諸君に教えるのは…」
(蛇影の言ったことは本当なのか?)
アルはどうしても不安が拭えなかった。
「決闘の行い方だ。」
続くゴドリスク先生の言葉を聞いた時、アルは驚愕した。
(おい、蛇影。お前の言ったこと、当たったぞ!)
『嗚呼、五月蝿い…。
眠っていたというのに…。
アル、その時になったら呼べと言っといた筈だが?』
アルは少し焦る。
蛇影の機嫌が悪くなればこの計画全てが崩れる。
(すまん。蛇影がすごいなって思ってつい…。
それにしても、なんで分かったの?)
『ん?今日の授業の内容が予想できた理由か?』
(ああ。すごいな…お前。)
『長い時間をここで過ごしたからな。
この世の大体のことは解る。
例えば……………』
蛇影はそこで言葉を切る。
(例えば?)
待ちきれなくて、アルは聞いた。
『いや、なんでもない。』
(なんだよ。気になるだろ?)
『お前にこの話はまだ早い。
あと一年。
一年生きられたら教えてやる。』
(ふ~ん…。
一年生きるのなんて簡単だろ?
どうしてそんなことをするの?)
蛇影は淀みなく答える。
『さて、どうかな。
案外人間なんてコロッと死ぬものだぞ』
その少し嘲笑うかのような声音にアルはゾッとする。
『兎に角、お前にはまだ早い。
お前には我輩が宿っている。
その時点で他の奴らとは違うのだよ。』
そして、蛇影は沈黙した。
アルは蛇影に対する畏怖のような念が突如湧いたのを感じた。
そして蛇影は魔物や人間、亜人、魔族とは違うことを悟った。
だとしたら、蛇影はなんなのだろうか?
そう、通常であれば誰でも感じる筈だ。しかし、蛇影にはその疑問を打ち消す圧とも呼べるものを持っていた。
それが至極当然である。蛇影の圧はそう語っていた。
『お前にはやはりまだ早かったか…。』
長い沈黙の後、蛇影は口を開く。
その時、ある声がアルを現実に引き戻した。
「おい、アル。話を聴いているのか?」
ゴドリスク先生の声だった。
アルは少し焦りながらも挑戦的に答える。
「すいません。聴いていませんでした。」
「ほう。アルよ。
私の話を聴いていないとは…。
驚きですな…。
そう。非常に。」
ゴドリスク先生は話を続ける。
「落ちこぼれは人一倍、勉強しないといけないのでは?
いや、落ちこぼれは勉強しても魔術を行使できるレベルまで到達できんか。」
そう言って先生は笑った。
『おいアル。そろそろ……なんというか…。』
アルは次の蛇影の言葉を待つ。
『我慢の限界だ。
いまからお前に力を送る。
力を蓄えておけ。
誤っても使うんじゃないぞ!』
その言葉と共に蛇影の声は途切れた。
(さあ、反撃の始まりだ!)
アルは高揚しながらそう心の中で叫んだ。
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