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第7話 宝石移送
第7-8話 魔獣の襲来
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魔族の襲来
冬と言っても寒いだけです。雪が降るわけでもなく、乾燥した風が吹いています。
「乾期だというのにヒメツキのおかげで、かなり収量が期待できるな。」
「そうなの?」ヒメツキさんがうれしそうです。
「ああ、あの時に育ててもらった時の薬効ほどではないが、かなりのものになっているぞ。」
「それはうれしいわね。でもあの時は、どうしたらいいか試行錯誤しながら育てていたのよ、だから、あの時の方法がどうだったのかよく憶えてなくて残念ながら、再現できないのよ。」
「いや、あんなものが世にあふれたら、それこそ人間が魔族と本気でやり合う気になるかもしれん」
「何か大きな災害があった時に使えば良いのに、戦争に使おうなんて本当に人間は面倒ね」
「それくらい、すごいものじゃ。自慢してくれ」
「はいはい、そうそう、魔族で思いだしたのだけど、最近このあたりに魔族の気配が増えたのよ。」
「わかるのか」
「まあ、祭壇との行き来で感じるのだけれど、これまでに無い数の魔族の気配がするのよ。街までの距離はかなり離れているし、面倒を起こしていないから放置しているけどね。」
「ここが狙われているのか?」
「それはないと思うけど、用心するに越したことはないじゃない?」
「家を壊されると困るなあ」
「そうよね、弁償しなければならないし」弁償にこだわりますね、前に私が言ったからですね。
「わしらに直接攻撃してこないとは思うが、街が心配じゃ。」
「そうねえ。誰かが伝えてあげても良いかもしれないわね。」
「お主、すまぬが行ってきてくれないか。」
「ええ、行ってきますけど。気付いた理由を聞かれそうですねえ。」
「まあ、アンジーの予知を使っても良いし、エルフィの感知力でもいいし。」
「わかりました。ちょっと行ってきますね」
「頼む」
と言うことで領主さんの館に来ています。あれ?一緒に行かないんじゃなかったのですか。
「そう言うな、ここのお菓子も久しぶりじゃと思ってなあ」それがついてきた理由ですか、大概ですね
「そうそう。おいしいからね」なんでアンジーも来ていますかね。あとキャロルとミカさんの2人もつれて来ていますけど。
「いいじゃない。おいしいものはみんなで食べたいでしょ」アンジーあなたが食べたいだけですよね。
領主さんの館の応接に通されました。やはり偉い人の家は緊張します。領主さんはなぜか走り込むように部屋に入ってこられました。何か急がれていますか?
「お久しぶりです。どうですか、新しい人も増えて、子どもさん達も元気にしていますか。」
「はい、ここに・・・って、もういない。すいません相変わらずしつけがなってなくて。」
「いえいえ、きっと込み入った話なのでしょう?時間はそんなに取れませんが、どういったご用件でしょう。」そう言って応接の椅子に座る。
「実は、あまり確実性がないのですが、最近遠くの方の森の様子がおかしいのです。」急に真面目な顔になる領主さん。正面に座り直す。
「どういうことですか。」
「はい、うちのエルフィの話では、魔獣の気配が多くなっていると。もちろんこちらを襲ってきているわけではないのですが、もしかしたら多数の魔獣が森に潜んでいるのでは、と言うのです。」
「あなたの方でも気付かれていましたか。」
「こちらでもそういう噂が?」
「ええ、あの町との交易が頻繁になって、道を通る者が増えたため、ここからは、かなり遠い森の中一帯から魔物の気配がすると。それも大量の気配だと。」
「そうなんですか。」
「たぶん、もうすぐここを襲いに来るのではないかと噂されています。」
「そうですか」
「それでですね、もし襲撃があった時には、その」
「冒険者として登録していますから、当然この街の防衛のお手伝いをさせていただきます。」
「助かります。」
「いえ、当然の義務です。」
「それでですが、新参の方は、ですね」言いづらそうだ。
「最前線で街の外の人の誘導ですよね。」
「おっしゃるとおりです。」
「気配が消えるまでしばらくは、交代で外周を見回りましょう」
「そこまでおっしゃっていただけるのですか。」
「この街は私たちが住みやすい良い街です。襲われて、なくすわけにはいきません。」
「ありがとうございます。では、私はこれから、冒険者組合に行って打ち合わせをしますので、失礼します。」
「突然、伺ってすいませんでした。」
「いえ、外に暮らすあなたから有力な情報をもらって説得しやすくなりました。」
「襲撃がない方がもっといいですが。」
「杞憂に終わってほしいものです。」
そうして、領主さんは、館を出て行き、私は玄関にいたメイドさんにお願いして、厨房に連れて行って欲しいとお願いしました。
案の定、厨房で、メイドさん達と遊んでいる4人がいました。私は、開いたドアからしばらく見ていました。ええ、モーラもアンジーも楽しそうでした。子どもか!!
「いや、こういう遊びは真剣にやってこそじゃ、そうだろう?」
「そうそう」
「まったく。他の2人のお手本になってくださいよ。」
「それは無理じゃ」
「そうそう」
「頼むからこんなお姉ちゃん達にならないでね」私は2人に言いました。
「はい、わかっています。ヒメツキねえさんからは、悪い見本だから見習わないよう言われています。そうだよね」
「ねー」
「ちょ、ねえさんですか、サバ読んでいますね。」
「いや、それは正しい。お主の言語では、姉と変換したがこの場合「姐」じゃ。」
「ああ、そういうことですか。言語の違いで、そう解釈するのですねえ。でも、ごまかされませんよ。」
「まあまあ」
と言うことで、一度家に戻りました。今後の対応を考えなければなりません。
「・・・なので、エルフィは、飲んだくれていないで、レーダー役をお願いしますね。」
「その飲んだくれているというところは~納得できませんけど~了解しました。びしり」その敬礼するの何とかなりませんか。子ども達が真似しています。
「メアさんとユーリは、エルフィの範囲にいて交代で外周を見回るという事で。何か起きたら、外周の人達を街の中に誘導してください。」
「はい」
「私たちはいいの?」ヒメツキさんが言った。
「ドラゴンは干渉できないでしょう。それにできればこの家を守ってください。」
「この結界で十分じゃろうが」
「今回の動きは、もしかして、私達を狙ったものかもしれません。街を襲っている間に、この家を襲撃してくるかもしれませんので。」
「まさか、あの魔法使いの一件以降動きがないが、だからといっていきなりそれはあるまい。」
「まあ、街を襲撃したついでに狙うというのもあながちないわけではないでしょう。」
「紛れてというのはあるか。」
「はい。ですので、ヒメツキさんには、この家とこの2人とアンジーの命を絶対守ってください。」
「当然よ、」
「できれば、あの祭壇に移って欲しいのですけど、嫌ですよね。」
「どうなの?」2人は、顔を見合わせる。
「できればみなさんといたいです。そうだよね。」ミカの言葉にうなずくキャロル。
「ならばここにいてください。けっして無理しないように。特にキャロル、あなたは魔法の制御が上達していないので、身の危険を感じるまでは、絶対に魔法は使ってはいけませんよ。」
「はい」
「大丈夫です。私がずーっとそばにいます。」
「ミカさん、あなたもですよ。慢心は油断を生みます。注意してくださいね。ましてやドラゴンは人の世界に干渉できないのですから。」
「は、はい」
「本当に心配性ねあなたは、私もいるし大丈夫よ」
「子ども達をよろしくお願いします。」
「はい。」そこで頬を染めないでください。
その会話を見ていたモーラがはっとして私に言いました。
『おい、もしかして、この子「属性:英雄」かもしれんぞ』
『どうしたんですか急に。』
『わしがこの子の属性がわからないといったであろう。わしが知識として知っていて、実際に出会ったことがないのが、聖者、賢者、魔道士、竜騎士、混沌そして、英雄じゃ』
『今までだって現れていたでしょう。』
『だが、わしは出会ったことはない。なにせひきこもりじゃからな』そんなこと威張らないでください。
『ああそうでした』
『まあ、英雄ではなく他の者かもしれん。その可能性があるというだけじゃが。こうしてヒメツキの世話を焼いているしなあ、英雄の片鱗も見えんのだが。』
『なにかひらめいたんですか?急に』
『うむ、先ほどの会話でうなずいたその姿を見てなんかそう思ったのじゃ。まあ、属性が英雄だからといって英雄にならなければならないわけでもないのだがなあ。』
『気にしてもしようがないですがね。』
そうして、見回りの日々が始まりました。領主様との打ち合わせで、エルフィを中心に私とユーリ、メアの4人で週2~3日、三交代で対応することが決まりました。実際に冒険者として参加してみると、結構な冒険者がいることを知りました。さすがに自己紹介をするような間柄ではありませんが、肉屋のご主人は、立派な出で立ちで、宿屋の食堂の女将さんもそうでしたか、まあ、それでないと客が暴れても止められませんものねえ。
翌日には、街の楽しそうな雰囲気がほとんど無くなり、街中の子ども達の声も聞こえなくなってしまい、ちょっと寂しい感じになってしまいました。
「街に遊びに行っても食べるところがないのよ。」アンジーが不満そうです。
「そうですねえ、さすがに家でケバブとか、タコスは食べられませんからねえ。」
「食事のバリエーションを考えなければならないですね。」メアさんが考え込んでいます。
「今だけでしょ。」
「こちらから攻撃を仕掛けましょうか。」メアさんが目を輝かせています。
「へたに手を出して暴走されるのも問題ですので。」
「そうですか。」その背中に背負ったものは、武器を入れたカゴですよね、何をするつもりなんですか。でも、確かに待っているのは、じれますねえ。
しかし、その次の日には動きがありました。
「魔獣が動いたぞ~」
今回、エルフィは役に立ちませんでした。ちょうど交代していた時だったようです。
「こんな大群どこに隠れていたんですか。」かなりの大群が街に近づいています。もっともかなり距離があるので、米粒ほどですが、それでもかなりの規模です。土煙を上げてこちらに向かってきています。
「魔族ではなく、魔獣ですよ。本来こんなに集団で行動しないはずの魔獣です。統制されていないはずなのに。」冒険者達に動揺が走る。
「とりあえず、街外民を中に誘導してください。」
「はい、」団長さんの声にみんな一斉に動き出す。
街外の人達は、事前に準備していたので、すぐに誘導は完了しました。
街の入り口付近に設置してあった物見櫓にいる団長さんに大声で聞く。
「時間的にはまだ先ですが、これからどうしましょう」
「食い止めるにしても規模が大きいですね、たぶん食い止められないでしょう。避難させた方が良いかもしれませんね。」
「たぶん、魔獣を操っている者がいるはずです。それを見つければ何とかなるかもしれませんよ。」
「そうですね。でも、どうやって探せば良いのでしょうか。まだ距離がありますが、方法がわかりません。むやみに飛び出すわけにも行きませんし。何か方法はありませんか。当面、冒険者達には、先頭を走ってくる足の速い魔獣が先導しているように見えるので、まずそれを倒すことにします。その間に考えないと。」団長は弓隊に指示を出している。
「そうですね、どう探せば良いか。エルフィどう思いますか?」
「もしかしたら~二・三匹捕まえて、(モーラが)頭を覗けば、探せるかもしれませんよ~」
「ふむ、エルフィ、ここぞという時のお主のアドバイスは的確じゃのう。危機が来ないと働かないのかその脳は。」
「えへへ~」
「ユーリ、メアさん。とりあえず、2~3匹手足切り落としてください。焼いて止血して、生きたままにして、こちらに向かってください、こちらからは、モーラを連れてそっちに向かいます。そうそう、頭は潰さないでくださいね。」
「はい、」メアさんが一番早く近づいてきた魔獣に向かっていき、一瞬でその魔獣を連れ去る。少し離れて私たちの方へ放り投げた。真上に落ちてきたその魔獣をユーリは、一瞬にして両手両足を切断する。その場所に到着した私の所に落ちてくる頃には胴体だけ、魔法でやさしく受け止め、両手両足の切断面を焼く。血が焦げる嫌なにおいだ。メアさんは、作業が終了したのを見ると、『次行きます。』そう言って同じように魔獣をつかみ投げる。その間にも魔獣の群れと戦っている。
『モーラどうですか。』
『うむ、もう少しじゃ』そう言って次の魔獣の頭に額をあてる。
『なるほど、さっきの魔獣の方がわかるわ。先導する魔獣がいるはずじゃ、それを連れてこい』
『なるほど、では、反対側の先頭を走る魔獣を捕らえましょう。』そう言って私たちも次に迫っている魔獣の群れの先頭をめざす。
『その間、間引きします。』ユーリはすでに走って行って、魔獣の波の横を分断するように走る。メアがこちらに投げてきた魔獣をモーラに渡す。
『エルフィ、この景色の場所はどこじゃ。』
『え~と、森の少し高台の見晴らしの良いところですね~』
『行きますか?』
『いや、あの傭兵団の団長に任せるのじゃ。』
『いいのですか?』
『ああ、それでだめなら手を貸そう。』
「では、伝言しにいきます。」エルフィがそう言って、団長のところに言いに行き、私はモーラを背負って街に戻って行く。その速さはばれそうですが、誰にも見られていませんしいいですよねえ。
「場所の特定ができたとして、それをどう伝える。アンジーをまた使うことになるかのう。」
「いいえ、適当に言いますよ。エルフィが見えたとかね」
『確かに今、見えましたよー』
「ええ?本当ですか」
『はい、ばっちりです。』
『魔獣使いも遠見まではできなかったんですね』
「ちなみにエルフィその魔獣使いを狙い撃てますか?」
「さすがにこの距離では無理ですね~、魔法を乗せれば届かないことは無いと思いますが、射殺すだけの威力は残らないと思います。たぶん無理だと思います。」
すでにメアとユーリは、魔獣の群れの中に紛れて見えなくなってしまいました。しかし、群れの突進速度は、かなり鈍り始めている。
「お主いけるか?」
「どうするんですか?」
「お主の魔法をエルフィの矢に乗せて撃つのじゃ」
「ああ、そういうことですか。」
『エルフィとりあえず、傭兵団の団長に敵が見えたことを話すのじゃ。』
『らじゃー』相変わらず、余計な知識だけ私の頭から吸収していますね。
「私も戦場にいえ、高台がいいのでやぐらに向かいます。」
「うむ、頼んだぞ」モーラは、街の中に消えました。きっとどこかで出てくるタイミングを見計らって待機しているでしょう。もちろん今回も出番はありませんよ。
おや、魔法使いさんがやぐらの上で魔法を使っています。私も高いところにいきましょう。
「見晴らしが良いですね。」
「やっと来たわね、さっさと一掃してちょうだい。」
「そういう魔法を憶えていないんですよ。」
「じゃあ見せてあげるから真似しなさい。」あきらめたようにエリスさんが言いました。
「いいんですか?」
「観察者のあなたに見せるのは不本意だけど、まきこまれて死ぬよりはましですからね。」
「わかりました。では、行きます。」
「え?今のを見ていたの?」
「はい、観察者の面目躍如ですね。」
「まったくあなたという人は。」
『エルフィここに来られますか』
『団長と話しています。あの距離にここからだと攻撃できる武器はないみたいです。この街に魔獣が到着する前にあの魔獣使いのところまで行って攻撃するのも無理だと言われました。何とかして欲しいと。』
『そうですか、何とかしてみますと話してこちらに来てください。』
『ラジャー』
「おもしろそうなことしているわねえ」
「ああ、聞こえましたか。ちなみに言葉まで理解できましたか?」
「ええ、内容も明瞭に、脳内無線通信なのかしら。」
「そうですか、話の内容までわかったのでしたら、あなたも転生者ですね。しかも日本語を理解しているので、日本人でしょうか。」
「あ、そういうことなの?」
「ええ、あとで話しますが、そういうことなんですよ。」
「これは、失敗したわ、一応転生者なのは秘密にしているのよ。」
「お互い秘密ですよ。」
「はいはい。で、何をすれば良いのかしら。」
「エルフィがこちらに来ますので、エルフィに照準をつけてもらい、魔法を乗せてこの群れを操っている者を撃ちたいのです。」
「魔法を乗せる?」
「ええ、このシールドをレールにしてそこに金属の棒を平行において、電磁気を帯びさせて金属を打ち出したいのです。」
「レールガン?」
「知っていましたか」
「知識では知っていますけど、それを作ったのですか?」
「でも、単に物質を打ち出せるだけですよ。今回は、相手まで距離がありますからあくまで威嚇ですね。」
「あなたねえ、観察者だけでなく異世界の理論も持ち込む者だったのね。」
「こんなこと誰にも教えていませんよ。この世界の文明を壊してしまいます。」
「持ち込むこと自体が本来タブーでしょう。もっとも私では、レールガンという言葉は知っていますが、原理や理論や現物を構築するだけの技術は持っていないけれど」
「きっと飛ばされる前の時代が違うからなんでしょうけどレールガンを知っていますから、結構世代的に近いですよね。」
「いや、作れてしまうのもどうかと思うわよ、あの世界で一体何を仕事にしていたの」
「記憶はありませんが、知識はありますねえ。」
「ああ、そうだったわね」
「エルフィ、到着しました。」エルフィが敬礼をする。
「だから敬礼しないでください。私の頭の中のよけいな知識を勝手に使わないでと言っているでしょう。」
「ラジャー」ああもう、おもしろがっていますねえ。
「で、エルフィ見えますか。」
「まだ見えていますよ。移動していませんね~」
「では、魔法使いさんお願いします。」
「え?私?」
「私は残念ながら金属の生成ができません、金属の玉を錬成してください。」
「はあ?これだけのことができるのに?」
「残念ながら習ってないものは知らないのです。」
「しょうがないわねえ。」そういって10数個の金属の玉を生成する。
「ありがとうございます。」私はその雨樋に2本の平行した金属棒を作る。
「いつでもいけますよー」
「では、エルフィさんこの雨どいのはじから相手を見てください。」片方をある程度の角度で設置して角度を変えられるようにする。
「はい、見ましたよー。相手がよく見えますよー」
「では、雨樋の端と端が重なるように見て、さらに相手の胸のあたりか、おなかのあたりにかかるように見てください。」
「はい。」
「では、ちょっとパチパチ言いますが少し我慢してくださいね。」私は生成した2本の金属棒の中に電界を発生させる。
「エリスさん、作っていただいた玉をそっと入れてください」
「わかったわよ」
「エルフィ重なったらはいって言ってください。」
「わかりました。いきますよー、はい」エリスさんの手を離れた金属の玉は、一度空中に停止した後一瞬にしてそこから消えた。まあ、飛んでいったのだけれど。
「エルフィどうですか。」目を開け続けていて涙目になっているエルフィに聞いた。
「土埃だらけで見えません。」
「当たっていたら良いのですけど。」
「いや、当たる、当たらないではないでしょ。その周囲が削れていますよ。」おや、エリスさんも見えていますか。さすがですねえ。
「そうですか。やっぱり理論どおりにはいきませんね」
「いや理論どおりでしょ。破壊力は」
『ご主人様何かしましたか?魔獣達が急に暴れ回りだしました。』ユーリから聞かれる。
『統率している者を倒しましたので、たぶん正気に戻ってしまっています。たぶん混乱して、動き回りますので、動きに注意してください。』
「少なくとも効果はあったみたいですね。それにしてもこの武器は、ちょっとまずいですね。やはり封印しましょう。」
「使っておいて今更いいますか。」
「そうだ、魔法使いさんが見ていないことにすればいいのです。そしてですねえ、エルフィの矢にエリスさんの爆炎魔法を時限発火にして発射したことにすればごまかせるでしょう。」
「はあ、そういうことにしましょうか。」
「でも、そんなに私の射程距離長くないです。」射程とか私の知識から使わないで
「わたしが風の魔法を付加したことにしましょう。」
「あなた最初はそれを考えていたでしょう。でも、レールガン試したかったから黙っていたんじゃないの?」
「いや、まあ、あはは。ばれましたか。すいません」
「もう、常識人なのか非常識なのかあなたの中のルールがわからないわ」
「好奇心優先というルールです。すいません。エルフィ、団長に連絡を」
「ラジャー」エルフィの伝言によって団長が指示を出す。
「防衛方法の変更だ、司令塔がなくなり洗脳が解けた、魔獣達は、それぞれ同士討ちをするもの、逃げ出すものなどバラバラだ。こちらに向かってくるものだけ蹴散らせ」
『モーラさんには、逃げ出した魔獣の整理をお願いします。』私が黙ったのを見てすかさずエリスさんが私の額に額をつける。
『まかせておけ、って、本来はここを縄張りにしているカンウの仕事じゃろう。あ?もうやっている?子ども達は大丈夫なのか?あ?うれしそうに討伐しているじゃと。あまり遊びでやらせるのは感心しないな。ああ、魔力制御の練習に丁度良いって、いいのか?それって虐殺にならないか?追い立てているだけか。まあ、それならまあいいか。』モーラは、ヒメツキさんとどうやって連絡を取っているのでしょうか。興味津々です。
『モーラさんダダ漏れです。私の隣にいるエリスさんにまで聞かれていますよ。』
『ああ、こちらの会話も聞かれるのか。そういうものか。』
『そちらはそちらで大変そうね』
『だれじゃ、ああ、エリスか。そうか、おぬしこの男と同郷じゃな。初めて知ったぞ』
『あまりレディの出自や年齢に興味を持たない事ね』
『わかった、わかった、じゃが、この会話わしらの家族には筒抜けじゃからな。』
『ちょっと伝達範囲は無限なの?』
『無限ではないが、その男のそばで話したら隷属した者には、この距離なら確実に聞かれるようになっておる。注意せい』
「やはり危険ねあなた、ここで殺しておこうかしら。」
「勘弁してください。」
「冗談よ。」
『終わったら魔獣使いのいた地点で合流しましょうか。』
『はーい』皆さん元気なお返事で。
私は、エリスさんと一緒に残っていた魔獣を街に近づけないようにしばらく攻撃していました。一段落した頃に団長さんに合図をしてから集合場所に向かいました。
そうして大地が金属の玉でえぐれているところに向かって移動します。実際狙撃したとこ場所から少し離れた出入り口から歩いて行きましたので、えぐれている場所を横に見ながら大きくえぐれたところにまっすぐ進んでいる。すごく遠かった。
「こんなに遠いのにエルフィはよく見えましたね。」
「すごいでしょー」そう言って頭を下げてくる。
「そうですね、えらいえらい」頭をなでながら歩く。
「今回は、わしらを狙ったりとかではなさそうじゃな。」さきに爆心地に到着していたモーラが言った。
「残念ながら死体が残らないくらい跡形もなく吹き飛ばしてしまいましたから、襲った者の正体はわかりませんねえ」まあ、こういう形なら殺してもけっこう平気でいられるものですね。
「そうでもないようじゃ。見ろこれを」
「おや、シールドの後ですねえ」
「ああ、防ぎきれなくてケガしたようじゃな。血痕が残っておる。」見るとけっこうな血だまりが残っている。もっとも土に吸われて黒くなっている。匂いでわかったのかな?
「着弾したのは、ちょっと手前の地点ですね。その人には当たっていません。たぶん着弾した時に飛散したガレキがその者を襲ったのでしょう。」メアさんが弾道を追ってこちらに戻ってきました。そうですか。さすがにあのぶっつけ本番で、命中精度を期待するのは無理でしたか。
「しかも、誰かが連れ去っているな。」
「そうね。大きさの違う足が複数残っていて、ひきずったあとまで残っているようだし。足跡の大きさから魔族と人間かもしれないわねえ。」
「エルフィ、見た時はひとりしかいなかったんですよね。」
「はい、いませんでしたよ~」キョロキョロと周囲を見渡しながらエルフィが言った。
「最初はいなかった、後から合流する予定だった、誰かが監視していた、いろいろ想定できますねえ。」私は、顎に手を当てて考え込んでしまう。
「うむ、にしてもうちの家もやられていないようだから目的もわからんな。」
「そうですねえ」
ほどなく団長も現れた。経過を話して納得していただいた。まあ、すでにこちら側の人ですしね。
現場を確認して街に戻ると領主さんが商人さんと一緒に待っていました。後ろには冒険者さん達もいます。
「またあなたに助けられたようですね。」
「いえ、私は何も。しいていえばエルフィの機転とエリスさんの魔法のおかげですよ。私は手伝っただけです。」
「はあ、今回はそういうことにしておくわ」エリスさんが横を向いて頭に手をやりながら言った。
「お二人ともありがとうございます。」今度は商人さんが頭を下げる。
「わーい何かくれるんですか?」エルフィは、うれしそうに言いました。
「こらエルフィ。」
「そうですね、何が良いですか?」
「えーと、あの居酒屋でお酒が飲みたいです。おごってくれますか?」
「ええと、1年分とかですか?」商人さんがびっくりしている。
「いいえ、みんなと打ち上げがしたいので~。ね~」回りの冒険者さん達からおおーっと声があがる。
「そうですか。いいでしょう。こちらもやるつもりでしたから。」
「わ~い」
そう言ってエルフィは冒険者達の所に行って話をしている。
「エルフィさんは、良い子ですね」領主さんと商人さんが微笑ましくエルフィを見ている。
「はい、素直な良い子です。飲んだくれですけどね」
「はは、それは酒樽を追加しましょうか。」
「お酒は弱いですよー」エルフィが手を振りながら言いました。そこで言わなくてもというかよく聞こえていましたね。
「そうなんですか?飲んだくれなのに」
「そうらしいです。弱いけど好きですぐ寝て、起きては飲むというかんじですか。」
「それってずーーっと朝まで続くのではないですか。」
「大丈夫です。その前に連れ帰りますから。」
「えへへ~旦那様よろしく~」
再び私に手を振ってエルフィは冒険者達と一緒に居酒屋に向かった。領主さんも商人さんもあわててその後を追う。
私たちは、少しだけその後ろ姿を見ていました。
「人気者じゃのう」
「ええ、引きこもりと、言っていませんでしたかねえ。」
「里が悪かったのじゃなあ」
「そうですね。」
そこにアンジーさんがミカさんやキャロルと共に現れました。
「アンジーさんそういえば、今回はどこにいましたか。」
「家で震えていたわよ。わかっているでしょう?」
「でしょうねえ。」
「非力な私に何ができるというの。」
「確かに。」
○剣の精錬
金属の作り方を見て、見よう見まねで工具やらを作り、今は使っていない厩舎にちょっとした工房を作ってみた。
私は、部屋の奥に穴を開けて、窯を作り、火をおこしていた。
さらに窯の前に鉄の台を作り、鋼をたたき、刀工の真似事をやっている。何回かたたいては、中の組成を見て、またたたく。これを何回か繰り返してる。」
「おぬし何をやっておるのじゃ。」暇なモーラが私が金属を叩いて出している音に釣られて入ってくる。
「ああ、ユーリの大剣を新調しようかと思いまして。」
「おぬし、剣も作るのか。」
「まあ、記憶はあいまいなのですが、叩いて折り返してすと、折れにくくしなやかなものになっていくはずですから。」
「そういうものなのか。」
「あと、軽い金属でも作ります。包丁用ですね。こっちがメインですけど。」
「相変わらず、日常生活特化型じゃのう」
「技術は日常生活にフィードバックされなければいけません。」
さて、一度ユーリに使ってもらいましょうか。ユーリに声を掛けると皆さんぞろぞろと見に来ました。
「あるじ様これは、」私は、作った刀をユーリに渡す。残念ながらまだ鞘は作っていません。
「私が作った刀です」ユーリは、刃についている波になった部分を見て言った。
「綺麗ですね。」
「あら、日本刀ねえ、よく作ったわね。へえ、柄や鍔もちゃんとこしらえているじゃない。あんた、こういう知識だけは達者よねえ。」
「そうなのですか。」ユーリがアンジーを見る。
「まあ、知識の方におぼろげながらあっただけですから保障はできませんが、」
「剣ではなくて刀ですか。」
「はい、そこに柱を立ててみましたので、切ってみてください。刃先には触らないでください。」私は近くにあった葉っぱをその刃先に落とす。きれいに二つに切れて落ちる。
「すごい切れ味ですね。」
「はい、扱いには気をつけてください。」
「では、」青眼に構えたあと、その柱を右上から斜めに切り落とす。速い。いつもの大剣のスピードの数倍は速い。切られた柱はそのままそこにある。風が吹きその柱は揺らいで切られた部分が落ちていく。
「あるじ様、これは、恐いです。」刀を持つユーリの手がガタガタと震えている。
「そうですか。切れすぎますかねえ」
「たぶん何でも切りたくなりそうです。しかも切った後の刃こぼれなど一切ありません。」
「まあ、魔獣とかを切ったら脂で何体も切れるものではありませんからねえ。」
「は・・・い」震えを止めたいのか、右手で軽く刀を振る。どうやら少し落ち着いたようです。
「では、もう一刀用意してあります。」私は、小屋から大剣を持って出てくる。
「それは、大剣ですね。」いつもであれば私も両手で持ち上げて持ってくるのでしょうけど、片手で肩に持ち上げられるくらいです。
「これを」そう言ってユーリにその大剣を渡す。ユーリは片手で受け止めたが、軽すぎてバランスを崩した。
「この大きさでこんなに軽いんですか。」
「はい、でもたぶん今使っている大剣より硬度がありますし、切れ味も違いますよ。」
ユーリは、その大剣を片手で軽々振り回している。
「あるじ様、これは軽すぎます。」
「ええ、そうなのですか。」
「はい、僕のような非力な者は、重い大剣を振り回すことで相手の進行を止めたりしています。なので、この大剣では、相手の進行を止められません。なので、もう少し重くしてもらえませんか。」
「なるほど、軽ければ良いわけではないのですね。」
「はい、ただ、多数の敵と戦う時には必要なのかもしれません。ただ、日頃は、その軽さに慣れすぎてはいけないのだと思います。」
「わかりました、ユーリの要望に合わせた形にしましょう。」
「お願いします。」
「刀はどうしますか。」
「私には、少し荷が重すぎます。今はまだそれを携えるだけの力量はありません。」
「ユーリ、もし嫌でなければ私に譲ってはくれませんか。」メアさんが言った。
「まだ私のものではありませんので、あるじ様よろしいですか。」
「ええ、かまいません。これはあくまで私の習作ですからこれからどんどん注文をつけてもらいたかったのです。」
「ありがとうございます。」
「エルフィ」私はエルフィを呼び、厩舎に隠してあった弓を渡す。
「え?これは、すごいですね。」
「あなた、弓がどんどん違うものに変わっていましたよね。たぶんあなたの膂力に弓が負けてしまうのでしょう?」
「あら~しってましたか~」舌を出すエルフィ。
「いえ、最近知ったのですよ。申し訳ありません。それで、これを試作しました。」
「えーーーー、私自分で作ったりしていますよ。でもでも、これは、すごいですねえ。」
「なんじゃこれもおぬしの世界の技術か。」
「これは、本当にしらないんですよ。でもサイトとかバランスとかが調整できて、エルフィの膂力に耐えるものになると金属に頼らないとダメなんですよ。」
「はー、ここで構えて、ここを見て打つんですねえ。すごい、弦をどんなに引っ張っても、きしみもしませんね~すごいです。」
「弦は、高張力鋼線を縒ってあります。木の本体がきしみだしたらそこまでですので、引っ張りすぎないでくださいね。」
「きしみません~」
「それはよかった。それでは、これを使って射ってください。」そう言って私は、数本の矢を渡す。
「これは、木の矢ではありませんね~」
「一応、テストしておいてください。さすがに何本も作れませんので、何かあった時のため用です。テスト用なのでガンガン撃ってください。」
「では、広いところにいきましょ~」弓から手を離さずそのままスキップして広いところに行く。途中で普通の矢を何本か使って森の木に当てていた。たぶん、弓のアタリをつけながら小走りに進んでいく。カンをつかんだのか、「そこで待っててくださいね~」と言ってかなり離れる。
私たちが立っている所よりさらに離れた木を狙うようだ。
「いきますよ~」矢をつがえ、目標を正確に狙い弦を引き絞っている。撃ったともわからないままシュッという風切音が私たちの前を通過した時には、目標にしていただろう木が破壊された。そう、あたった部分が粉々に砕けた。音があとに来ましたけど。
「はえ~これはすごすぎます。」いや、あなたの弓の方がすごすぎますよ。魔法で何かしてますね。
「もう一本いきます~」その隣の太い木を狙うようだ。言いざますぐに、矢をつがえ弓を構え、照準をつけた風もなく、すぐ矢を射た。その一連の動作がたった一瞬である。
先ほどの矢よりもゆっくりしたスピードだがそれでも速い。正確に打ち抜いたが、先ほどの威力はない。
「もう一本いきまー」そう言って、ゆっくりとした動作で狙いをつけ矢を打ち出だす。最初のスピードで射ったようだが、なぜか目標にあたらず軌道がそれて横に外れた。
「なんじゃ、外しよったのう。」
「いつもなら完璧に当てるのに変ねえ。なにかやっているわねえ。」
「ラスト一本いきまー」「す」まで言いましょう。言葉の乱れは性格の乱れです。
そうしてエルフィは、ゆっくりと構えて矢を射った。速く正確だが最初の速さはない。そして、まっすぐ進んだ矢は、途中で軌道を変えて左の木に当たった。
「軌道が曲がったようですが」
「はい、軌道を曲げましたね。」打ち終わったエルフィが、私たちの前を駆け抜けて矢の回収に行ったようだ。私たちはその後を追って矢を探すのを手伝った。
一射は、爆散した木からさらに数百メートル先にあった。ええ、モーラの土のドラゴンの能力で探し当てたくらいに遠かった。
二射と四射は、木に刺さっていますが、普通の木の矢でした。
三射は、金属の矢でこれもモーラが探してくれました。
「さて、教えてください。4本の矢の放ち方を。」めずらしくメアさんが言いました。
「皆さんわかりますか~」
「たぶん、一本目は全力なのでしょうねえ」
「正解です~、私の弓を引っ張る力を全開で出したらどのくらいかなあってやってみました。でも、刺さらないで爆発するとは思いませんでした。」
「魔法を付与しているのですか」ユーリが聞きたそうです。
「はい、習慣なんですけど、速すぎると木の矢が燃えてしまってなくなる時があります~」
「なるほど、それは、持てる者の悩みねえ」アンジーがエルフィの胸をじっと見ながら言いました。そっちの持てる者じゃありませんよ。
「じゃ~二本目~」エルフィが指を二本突き出す。まあ、Vサインですね。
「速射でどのくらいの速さと正確さが出るか測ってみたのか。」
「そうです。さすが~モーラ。じゃあ三本目~」
「金属の矢で軌道を曲げようとしましたね」
「当りです~ご主人様わかりましたね~」
「四射目がなければ、わかりませんでしたけど、金属の矢だと曲がりにくいですか。」
「はい~。スピードが速すぎるのと風の影響を無視して進んでいますね~あの金属の矢でも曲がるはずなんですけど。」
「すいません、矢に細工をしていました。」
「あ~やっぱりですか~」
「ええ、直進安定性を高くしてあります。逆に曲がりづらくなっていましたね。」
「それで四射目は、普通の矢で確認したのですか。」メアさんが言った。
「そうで~す。以上です。でも、この弓はすごいですね~。全然よれないしブレないですから。何本でも正確に打ち抜けますよ~」
「ということは、これまでは、力もセーブしていたし、弓のブレとかよれを考えながら正確に当てていたのか」
「はい~。だって弓は大事にしないと壊したらそこで試合終了ですよ~。なんですか~試合って~」エルフィ、そこに突っ込まないでください。勝手に頭の中から使っておいてそれはないでしょう。
「おぬし、弦の付け替えは簡単にできるのか?」
「え?ええ、できますけどどうしましたか?」
「とりあえず、弦は普通のにしておけ、鋼の弦などこの世界で使わせるなよ。」
「ああ、そうですねえ。それはオーバーテクノロジーでした。」
「これだからおぬしは、目が離せんわ」
「すいません、エルフィが苦労して弓を使っているのを見ていたので、やりすぎてしまいました。」
「技術バカが。エルフィが喜ぶだろうと頑張ったんじゃろうが、やりすぎじゃ。」
「旦那様~うれしいです~」だから背中に胸を押しつけるのはやめなさい。みんな見てますよ。
「はいはい離れて離れて、」アンジーがエルフィを引き剥がす。
「のう、わしらには何か無いのか。」物欲しそうにモーラが私を見る。
「モーラにはこれを用意してあります。」そう言って、ベルトのような物を渡す。同じようにメアさんにも渡す。
「これは、なんじゃ。」
「くないと言ってナイフのような物です。巨大化できない時とか私たちが人質に取られたりした時の武器です。」
「太ももにつけておけと。」スカートをたくし上げて太ももにつける。
「はい、スカートなら非常時に出せるでしょう。」
「ありがとうございます。大切にします。」メアさんがうれしそうだ。でも、ちゃんと使ってくださいね。
「念のため言っておきますけど、そのくないは切れ味いいですから、抜くときは、用心してくださいね。」
「おわ、なんじゃこれは、スカートまで切れおったぞ。」
「だから、非常時以外は使わないでください。」
「抜いた瞬間すべての物を切り裂くのか。確かに非常時しか使えんな。ってそんな物騒な物持たせるな。」
「いや、魔力で自然治癒する人なら傷ついても問題ないじゃないですか。特にモーラ」
「うーん、なんか納得できん。」
「ねえねえ、私には何か無いの?」今度はアンジーが私の袖を引っ張る。
「このペンダントをあげましょう。」
「これは、なによ。前にアクセサリーならもらったわよ。でもちょっとデザインが違うわね。」
「はい、緊急時に鎖の根元を引っ張ると、アンジーの回りにシールドが発生して守ってくれます。」
「でも、逃げられないのね。」
「我慢してください。その段階で私に連絡が入りますので、すぐ助けに行けますから。」
「ならいいわ。ありがとう。」
「でも、そうやってあんたは、みんなを平等に扱うのよねえ」
「そうじゃなあ。特別はないようじゃのう。」
と、言われておりましたが、ユーリに大剣の新バージョンを渡した時に、ユーリにだけ脇差しの剣を渡していました。
○キャロルの決意
「実は相談があるのですが。」
「どうしたのキャロル」
「そろそろ、私も働きたいと思います。」
魔獣の襲撃も一段落して食事の時にキャロルは、みんなに言った。
「メアと一緒に働いておるじゃろう」
「そうですよ。それでは不満ですか。」ヒメツキさんがオロオロしています。
「はい、メイドの仕事を一人前にこなしているとは言えませんので、さらに磨きをかけたいと思います。」モーラと身長が同じくらいなのに大人びています。
「具体的にはどうするつもりなのですか?」
「領主さんか商人さんの館で住み込みで修行をしたいと思っています。」
「ああ、そういうことですか。ヒメツキさんどう思いますか。」
「私が寂しいのだけれど、そうも言っていられないようね。」
「カンウ様には大変良くしていただき、人の身でありながらそばに一緒にいられて大変幸せでありました。しかし、所詮私は人の身です。ずっと一緒にはいられません。ですので、一度おそばを離れて知識を蓄えたいと思います。」
「なるほど。そういうことですか。」私は、その決意の目を見てうなずいた。
「わからないわ、キャロルには私のそばにいて欲しいのですけど。」ヒメツキさんの方が子離れできていませんね。
「私としては、もう少しメイドとしていろいろな知識を得たうえで、カンウ様のそばに一生いたいと思います。」カンウさんを見上げ、目をそらさずそう言った。
「なるほどね」カンウさんがため息をついて目をそらす。
「つきましては、住み込みでメイドの修行をしてまいります。」
「思い切りましたねえ。」
「その・・・そういうときは、私はあなたの顔を見に行っても良いのかしら。もちろん時々ですけど。」
「はい、私も実は心細いのです。でも、こうでもしないとカンウ様に甘えてしまって、先に進めそうにないのです。」キャロルの目から抑えていた涙がこぼれ落ちる。まるで宝石のようにきらきらと輝き頬を伝って落ちるのです。思わずヒメツキさんも彼女を抱きしめて、2人で泣いていた。しばらく抱き合っていた後、ヒメツキさんが膝をつき、キャロルの顔見て
「頑張らなくてもいいから、つらくなったら戻ってきなさい。」
「カンウ様、ありがとうございます」
そうして、私は、領主さんに話をつけました。キャロルは、しばらくして部屋の物を片付け、領主様のところに住むことになりました。
「ここで住ませていただいてありがとうございました。」
「私からは、無理してはいけませんとしか言えません。そしてこれをお持ちなさい。」
私は、例の笛を渡しました。この笛の意味することをわかっているキャロルは黙って受け取り、それを服のポケットにしまう。ヒメツキさんは、本当に寂しそうにキャロルを抱きしめる。キャロルは、
「カンウ様にとっては、ほんのひとときです。すぐにおそばに戻ります。」
「そうね、大きくなって帰ってきて私の世話をしてちょうだい。」
「はい。必ず。」
そうして、ついにその日になり、領主様の馬車が迎えに来ました。外は霧雨が降っている。
私たちは見送りのために外にでたが、ヒメツキさんは、私の後ろに隠れるように立ち、手だけ振っている。キャロルは、それを見て手を振り、頭を下げた。馬車は走り出し、霧雨の中に消えていった。
「さびしくなるのう」
「そうですねえ」
「やっぱり手放すべきではなかったのかしら。」
「おぬしが子離れできなくてどうする。」
「やっぱりあの洞窟に戻るわ、ミカもそろそろ違うところに縄張りを持つでしょうし。」
「そうか、しかたないのう」
ミカさんは、すでに里に戻ってドラゴンとして独立して生きていくために自分の縄張りの調整を始めていました。
○路銀
「路銀もかなり貯まりましたので、そろそろ旅立ちですかね。」冒険者の資格というのは、望外に収入に変わりました。ええ、もちろんスタッフが家族が優秀なおかげです。
「そうじゃのう、いろいろあって長居しすぎたからなあ。」
「当初は2~3ヶ月の予定でしたから、1年近くもいましたからね。」
「冒険者の資格ってすごいですね、すごくお金が貯まりましたよ。」報酬のうち1割だけ家計に入れていただきましたからね。
「馬車も新調しましたし、馬も増やしたんですけどねえ。」馬は、領主様からあの時お借りした馬をそのまま買い取りました。おとなしくなったので、お返しすることにしたのですが、あの後さらに手がつけられなくなったと言います。私たちのことを話すとおとなしくなるんだそうです。一度会いにいって、話をすると、納得しておとなしくなりました。
「ええ、皆さんが冒険者として街の人のために大活躍してくれたおかげですよ。」
「人数分の資格証を発行してくれるとは、領主も奮発してくれたものじゃ。」
「さすがにお二人のは、名誉冒険者ですけどね。」
「それでも年齢が15歳に達したら有効なのよね。実際の年齢ならもう越えているんですけど。」
「まあ、しようがないのう。おかげで片手間にアルバイトというのか、以外に小銭がもらえたぞ。」
「楽しかったわよ。酒場のウェートレスとか露天の売り子とか」
「ああ、それのおかげで売り上げがあがるんじゃから、わからんものよのう」
「エルフィは、私たちの護衛とか言いながら居酒屋で酔い潰れていましたけどね」
「ひどい~。ちゃんと見張っていましたよ~」
「どこがじゃ。」
「あやしいおじちゃんに声かけられそうになっていたじゃないですか~。ちゃんと阻止しましたよ~。」
「道をきかれただけじゃ。しかも酔っ払って絡み酒はいかんぞ。迷惑じゃ。」
「てへ?」
「あと、酒代はちゃんと払えよ。」
「あれ?」
「たとえおごりと言われてもなあ、それに甘んじること無くちゃんと払わんか。そんな話を聞かされるわしらのことも考えろ」
「すいません、すいません、すいません」
「とりあえず払っておきましたよ。他にお金の使い道もなさそうですし。あなたに渡すはずのお小遣いから。」会計管理しているメアさんから言われました。
「ええええええ、がくり」
「ダメさに拍車がかかっていますね。」
「お金の管理もできないと、独りになったらどうするんですかね。」
「誰かに頼って生きます~きりり」そこできりりとかやられてもどう反応して良いやら
「いや、だまされて有り金全部取られて逃げられますよ。」
「それでもいいのです~」
「お主は、道ばたの草花で生きていられるからのう。」
「それでもやせませんよねえ。」
「はい、ばいんばいんです。」だから飛び跳ねるなといっているでしょう。
ヒメツキさんと、そろそろここを離れるという話をしました。
「そうですか。ここの暮らしは楽しかったのですけれど。最初からわかっていたことですからねえ。でもちょっと寂しいわねえ」ため息交じりにヒメツキさんが言う。いや、ドラゴンさんにとっては、一瞬でしょう。
そうして、借家での生活は終わりを告げようとしていました。
続く
冬と言っても寒いだけです。雪が降るわけでもなく、乾燥した風が吹いています。
「乾期だというのにヒメツキのおかげで、かなり収量が期待できるな。」
「そうなの?」ヒメツキさんがうれしそうです。
「ああ、あの時に育ててもらった時の薬効ほどではないが、かなりのものになっているぞ。」
「それはうれしいわね。でもあの時は、どうしたらいいか試行錯誤しながら育てていたのよ、だから、あの時の方法がどうだったのかよく憶えてなくて残念ながら、再現できないのよ。」
「いや、あんなものが世にあふれたら、それこそ人間が魔族と本気でやり合う気になるかもしれん」
「何か大きな災害があった時に使えば良いのに、戦争に使おうなんて本当に人間は面倒ね」
「それくらい、すごいものじゃ。自慢してくれ」
「はいはい、そうそう、魔族で思いだしたのだけど、最近このあたりに魔族の気配が増えたのよ。」
「わかるのか」
「まあ、祭壇との行き来で感じるのだけれど、これまでに無い数の魔族の気配がするのよ。街までの距離はかなり離れているし、面倒を起こしていないから放置しているけどね。」
「ここが狙われているのか?」
「それはないと思うけど、用心するに越したことはないじゃない?」
「家を壊されると困るなあ」
「そうよね、弁償しなければならないし」弁償にこだわりますね、前に私が言ったからですね。
「わしらに直接攻撃してこないとは思うが、街が心配じゃ。」
「そうねえ。誰かが伝えてあげても良いかもしれないわね。」
「お主、すまぬが行ってきてくれないか。」
「ええ、行ってきますけど。気付いた理由を聞かれそうですねえ。」
「まあ、アンジーの予知を使っても良いし、エルフィの感知力でもいいし。」
「わかりました。ちょっと行ってきますね」
「頼む」
と言うことで領主さんの館に来ています。あれ?一緒に行かないんじゃなかったのですか。
「そう言うな、ここのお菓子も久しぶりじゃと思ってなあ」それがついてきた理由ですか、大概ですね
「そうそう。おいしいからね」なんでアンジーも来ていますかね。あとキャロルとミカさんの2人もつれて来ていますけど。
「いいじゃない。おいしいものはみんなで食べたいでしょ」アンジーあなたが食べたいだけですよね。
領主さんの館の応接に通されました。やはり偉い人の家は緊張します。領主さんはなぜか走り込むように部屋に入ってこられました。何か急がれていますか?
「お久しぶりです。どうですか、新しい人も増えて、子どもさん達も元気にしていますか。」
「はい、ここに・・・って、もういない。すいません相変わらずしつけがなってなくて。」
「いえいえ、きっと込み入った話なのでしょう?時間はそんなに取れませんが、どういったご用件でしょう。」そう言って応接の椅子に座る。
「実は、あまり確実性がないのですが、最近遠くの方の森の様子がおかしいのです。」急に真面目な顔になる領主さん。正面に座り直す。
「どういうことですか。」
「はい、うちのエルフィの話では、魔獣の気配が多くなっていると。もちろんこちらを襲ってきているわけではないのですが、もしかしたら多数の魔獣が森に潜んでいるのでは、と言うのです。」
「あなたの方でも気付かれていましたか。」
「こちらでもそういう噂が?」
「ええ、あの町との交易が頻繁になって、道を通る者が増えたため、ここからは、かなり遠い森の中一帯から魔物の気配がすると。それも大量の気配だと。」
「そうなんですか。」
「たぶん、もうすぐここを襲いに来るのではないかと噂されています。」
「そうですか」
「それでですね、もし襲撃があった時には、その」
「冒険者として登録していますから、当然この街の防衛のお手伝いをさせていただきます。」
「助かります。」
「いえ、当然の義務です。」
「それでですが、新参の方は、ですね」言いづらそうだ。
「最前線で街の外の人の誘導ですよね。」
「おっしゃるとおりです。」
「気配が消えるまでしばらくは、交代で外周を見回りましょう」
「そこまでおっしゃっていただけるのですか。」
「この街は私たちが住みやすい良い街です。襲われて、なくすわけにはいきません。」
「ありがとうございます。では、私はこれから、冒険者組合に行って打ち合わせをしますので、失礼します。」
「突然、伺ってすいませんでした。」
「いえ、外に暮らすあなたから有力な情報をもらって説得しやすくなりました。」
「襲撃がない方がもっといいですが。」
「杞憂に終わってほしいものです。」
そうして、領主さんは、館を出て行き、私は玄関にいたメイドさんにお願いして、厨房に連れて行って欲しいとお願いしました。
案の定、厨房で、メイドさん達と遊んでいる4人がいました。私は、開いたドアからしばらく見ていました。ええ、モーラもアンジーも楽しそうでした。子どもか!!
「いや、こういう遊びは真剣にやってこそじゃ、そうだろう?」
「そうそう」
「まったく。他の2人のお手本になってくださいよ。」
「それは無理じゃ」
「そうそう」
「頼むからこんなお姉ちゃん達にならないでね」私は2人に言いました。
「はい、わかっています。ヒメツキねえさんからは、悪い見本だから見習わないよう言われています。そうだよね」
「ねー」
「ちょ、ねえさんですか、サバ読んでいますね。」
「いや、それは正しい。お主の言語では、姉と変換したがこの場合「姐」じゃ。」
「ああ、そういうことですか。言語の違いで、そう解釈するのですねえ。でも、ごまかされませんよ。」
「まあまあ」
と言うことで、一度家に戻りました。今後の対応を考えなければなりません。
「・・・なので、エルフィは、飲んだくれていないで、レーダー役をお願いしますね。」
「その飲んだくれているというところは~納得できませんけど~了解しました。びしり」その敬礼するの何とかなりませんか。子ども達が真似しています。
「メアさんとユーリは、エルフィの範囲にいて交代で外周を見回るという事で。何か起きたら、外周の人達を街の中に誘導してください。」
「はい」
「私たちはいいの?」ヒメツキさんが言った。
「ドラゴンは干渉できないでしょう。それにできればこの家を守ってください。」
「この結界で十分じゃろうが」
「今回の動きは、もしかして、私達を狙ったものかもしれません。街を襲っている間に、この家を襲撃してくるかもしれませんので。」
「まさか、あの魔法使いの一件以降動きがないが、だからといっていきなりそれはあるまい。」
「まあ、街を襲撃したついでに狙うというのもあながちないわけではないでしょう。」
「紛れてというのはあるか。」
「はい。ですので、ヒメツキさんには、この家とこの2人とアンジーの命を絶対守ってください。」
「当然よ、」
「できれば、あの祭壇に移って欲しいのですけど、嫌ですよね。」
「どうなの?」2人は、顔を見合わせる。
「できればみなさんといたいです。そうだよね。」ミカの言葉にうなずくキャロル。
「ならばここにいてください。けっして無理しないように。特にキャロル、あなたは魔法の制御が上達していないので、身の危険を感じるまでは、絶対に魔法は使ってはいけませんよ。」
「はい」
「大丈夫です。私がずーっとそばにいます。」
「ミカさん、あなたもですよ。慢心は油断を生みます。注意してくださいね。ましてやドラゴンは人の世界に干渉できないのですから。」
「は、はい」
「本当に心配性ねあなたは、私もいるし大丈夫よ」
「子ども達をよろしくお願いします。」
「はい。」そこで頬を染めないでください。
その会話を見ていたモーラがはっとして私に言いました。
『おい、もしかして、この子「属性:英雄」かもしれんぞ』
『どうしたんですか急に。』
『わしがこの子の属性がわからないといったであろう。わしが知識として知っていて、実際に出会ったことがないのが、聖者、賢者、魔道士、竜騎士、混沌そして、英雄じゃ』
『今までだって現れていたでしょう。』
『だが、わしは出会ったことはない。なにせひきこもりじゃからな』そんなこと威張らないでください。
『ああそうでした』
『まあ、英雄ではなく他の者かもしれん。その可能性があるというだけじゃが。こうしてヒメツキの世話を焼いているしなあ、英雄の片鱗も見えんのだが。』
『なにかひらめいたんですか?急に』
『うむ、先ほどの会話でうなずいたその姿を見てなんかそう思ったのじゃ。まあ、属性が英雄だからといって英雄にならなければならないわけでもないのだがなあ。』
『気にしてもしようがないですがね。』
そうして、見回りの日々が始まりました。領主様との打ち合わせで、エルフィを中心に私とユーリ、メアの4人で週2~3日、三交代で対応することが決まりました。実際に冒険者として参加してみると、結構な冒険者がいることを知りました。さすがに自己紹介をするような間柄ではありませんが、肉屋のご主人は、立派な出で立ちで、宿屋の食堂の女将さんもそうでしたか、まあ、それでないと客が暴れても止められませんものねえ。
翌日には、街の楽しそうな雰囲気がほとんど無くなり、街中の子ども達の声も聞こえなくなってしまい、ちょっと寂しい感じになってしまいました。
「街に遊びに行っても食べるところがないのよ。」アンジーが不満そうです。
「そうですねえ、さすがに家でケバブとか、タコスは食べられませんからねえ。」
「食事のバリエーションを考えなければならないですね。」メアさんが考え込んでいます。
「今だけでしょ。」
「こちらから攻撃を仕掛けましょうか。」メアさんが目を輝かせています。
「へたに手を出して暴走されるのも問題ですので。」
「そうですか。」その背中に背負ったものは、武器を入れたカゴですよね、何をするつもりなんですか。でも、確かに待っているのは、じれますねえ。
しかし、その次の日には動きがありました。
「魔獣が動いたぞ~」
今回、エルフィは役に立ちませんでした。ちょうど交代していた時だったようです。
「こんな大群どこに隠れていたんですか。」かなりの大群が街に近づいています。もっともかなり距離があるので、米粒ほどですが、それでもかなりの規模です。土煙を上げてこちらに向かってきています。
「魔族ではなく、魔獣ですよ。本来こんなに集団で行動しないはずの魔獣です。統制されていないはずなのに。」冒険者達に動揺が走る。
「とりあえず、街外民を中に誘導してください。」
「はい、」団長さんの声にみんな一斉に動き出す。
街外の人達は、事前に準備していたので、すぐに誘導は完了しました。
街の入り口付近に設置してあった物見櫓にいる団長さんに大声で聞く。
「時間的にはまだ先ですが、これからどうしましょう」
「食い止めるにしても規模が大きいですね、たぶん食い止められないでしょう。避難させた方が良いかもしれませんね。」
「たぶん、魔獣を操っている者がいるはずです。それを見つければ何とかなるかもしれませんよ。」
「そうですね。でも、どうやって探せば良いのでしょうか。まだ距離がありますが、方法がわかりません。むやみに飛び出すわけにも行きませんし。何か方法はありませんか。当面、冒険者達には、先頭を走ってくる足の速い魔獣が先導しているように見えるので、まずそれを倒すことにします。その間に考えないと。」団長は弓隊に指示を出している。
「そうですね、どう探せば良いか。エルフィどう思いますか?」
「もしかしたら~二・三匹捕まえて、(モーラが)頭を覗けば、探せるかもしれませんよ~」
「ふむ、エルフィ、ここぞという時のお主のアドバイスは的確じゃのう。危機が来ないと働かないのかその脳は。」
「えへへ~」
「ユーリ、メアさん。とりあえず、2~3匹手足切り落としてください。焼いて止血して、生きたままにして、こちらに向かってください、こちらからは、モーラを連れてそっちに向かいます。そうそう、頭は潰さないでくださいね。」
「はい、」メアさんが一番早く近づいてきた魔獣に向かっていき、一瞬でその魔獣を連れ去る。少し離れて私たちの方へ放り投げた。真上に落ちてきたその魔獣をユーリは、一瞬にして両手両足を切断する。その場所に到着した私の所に落ちてくる頃には胴体だけ、魔法でやさしく受け止め、両手両足の切断面を焼く。血が焦げる嫌なにおいだ。メアさんは、作業が終了したのを見ると、『次行きます。』そう言って同じように魔獣をつかみ投げる。その間にも魔獣の群れと戦っている。
『モーラどうですか。』
『うむ、もう少しじゃ』そう言って次の魔獣の頭に額をあてる。
『なるほど、さっきの魔獣の方がわかるわ。先導する魔獣がいるはずじゃ、それを連れてこい』
『なるほど、では、反対側の先頭を走る魔獣を捕らえましょう。』そう言って私たちも次に迫っている魔獣の群れの先頭をめざす。
『その間、間引きします。』ユーリはすでに走って行って、魔獣の波の横を分断するように走る。メアがこちらに投げてきた魔獣をモーラに渡す。
『エルフィ、この景色の場所はどこじゃ。』
『え~と、森の少し高台の見晴らしの良いところですね~』
『行きますか?』
『いや、あの傭兵団の団長に任せるのじゃ。』
『いいのですか?』
『ああ、それでだめなら手を貸そう。』
「では、伝言しにいきます。」エルフィがそう言って、団長のところに言いに行き、私はモーラを背負って街に戻って行く。その速さはばれそうですが、誰にも見られていませんしいいですよねえ。
「場所の特定ができたとして、それをどう伝える。アンジーをまた使うことになるかのう。」
「いいえ、適当に言いますよ。エルフィが見えたとかね」
『確かに今、見えましたよー』
「ええ?本当ですか」
『はい、ばっちりです。』
『魔獣使いも遠見まではできなかったんですね』
「ちなみにエルフィその魔獣使いを狙い撃てますか?」
「さすがにこの距離では無理ですね~、魔法を乗せれば届かないことは無いと思いますが、射殺すだけの威力は残らないと思います。たぶん無理だと思います。」
すでにメアとユーリは、魔獣の群れの中に紛れて見えなくなってしまいました。しかし、群れの突進速度は、かなり鈍り始めている。
「お主いけるか?」
「どうするんですか?」
「お主の魔法をエルフィの矢に乗せて撃つのじゃ」
「ああ、そういうことですか。」
『エルフィとりあえず、傭兵団の団長に敵が見えたことを話すのじゃ。』
『らじゃー』相変わらず、余計な知識だけ私の頭から吸収していますね。
「私も戦場にいえ、高台がいいのでやぐらに向かいます。」
「うむ、頼んだぞ」モーラは、街の中に消えました。きっとどこかで出てくるタイミングを見計らって待機しているでしょう。もちろん今回も出番はありませんよ。
おや、魔法使いさんがやぐらの上で魔法を使っています。私も高いところにいきましょう。
「見晴らしが良いですね。」
「やっと来たわね、さっさと一掃してちょうだい。」
「そういう魔法を憶えていないんですよ。」
「じゃあ見せてあげるから真似しなさい。」あきらめたようにエリスさんが言いました。
「いいんですか?」
「観察者のあなたに見せるのは不本意だけど、まきこまれて死ぬよりはましですからね。」
「わかりました。では、行きます。」
「え?今のを見ていたの?」
「はい、観察者の面目躍如ですね。」
「まったくあなたという人は。」
『エルフィここに来られますか』
『団長と話しています。あの距離にここからだと攻撃できる武器はないみたいです。この街に魔獣が到着する前にあの魔獣使いのところまで行って攻撃するのも無理だと言われました。何とかして欲しいと。』
『そうですか、何とかしてみますと話してこちらに来てください。』
『ラジャー』
「おもしろそうなことしているわねえ」
「ああ、聞こえましたか。ちなみに言葉まで理解できましたか?」
「ええ、内容も明瞭に、脳内無線通信なのかしら。」
「そうですか、話の内容までわかったのでしたら、あなたも転生者ですね。しかも日本語を理解しているので、日本人でしょうか。」
「あ、そういうことなの?」
「ええ、あとで話しますが、そういうことなんですよ。」
「これは、失敗したわ、一応転生者なのは秘密にしているのよ。」
「お互い秘密ですよ。」
「はいはい。で、何をすれば良いのかしら。」
「エルフィがこちらに来ますので、エルフィに照準をつけてもらい、魔法を乗せてこの群れを操っている者を撃ちたいのです。」
「魔法を乗せる?」
「ええ、このシールドをレールにしてそこに金属の棒を平行において、電磁気を帯びさせて金属を打ち出したいのです。」
「レールガン?」
「知っていましたか」
「知識では知っていますけど、それを作ったのですか?」
「でも、単に物質を打ち出せるだけですよ。今回は、相手まで距離がありますからあくまで威嚇ですね。」
「あなたねえ、観察者だけでなく異世界の理論も持ち込む者だったのね。」
「こんなこと誰にも教えていませんよ。この世界の文明を壊してしまいます。」
「持ち込むこと自体が本来タブーでしょう。もっとも私では、レールガンという言葉は知っていますが、原理や理論や現物を構築するだけの技術は持っていないけれど」
「きっと飛ばされる前の時代が違うからなんでしょうけどレールガンを知っていますから、結構世代的に近いですよね。」
「いや、作れてしまうのもどうかと思うわよ、あの世界で一体何を仕事にしていたの」
「記憶はありませんが、知識はありますねえ。」
「ああ、そうだったわね」
「エルフィ、到着しました。」エルフィが敬礼をする。
「だから敬礼しないでください。私の頭の中のよけいな知識を勝手に使わないでと言っているでしょう。」
「ラジャー」ああもう、おもしろがっていますねえ。
「で、エルフィ見えますか。」
「まだ見えていますよ。移動していませんね~」
「では、魔法使いさんお願いします。」
「え?私?」
「私は残念ながら金属の生成ができません、金属の玉を錬成してください。」
「はあ?これだけのことができるのに?」
「残念ながら習ってないものは知らないのです。」
「しょうがないわねえ。」そういって10数個の金属の玉を生成する。
「ありがとうございます。」私はその雨樋に2本の平行した金属棒を作る。
「いつでもいけますよー」
「では、エルフィさんこの雨どいのはじから相手を見てください。」片方をある程度の角度で設置して角度を変えられるようにする。
「はい、見ましたよー。相手がよく見えますよー」
「では、雨樋の端と端が重なるように見て、さらに相手の胸のあたりか、おなかのあたりにかかるように見てください。」
「はい。」
「では、ちょっとパチパチ言いますが少し我慢してくださいね。」私は生成した2本の金属棒の中に電界を発生させる。
「エリスさん、作っていただいた玉をそっと入れてください」
「わかったわよ」
「エルフィ重なったらはいって言ってください。」
「わかりました。いきますよー、はい」エリスさんの手を離れた金属の玉は、一度空中に停止した後一瞬にしてそこから消えた。まあ、飛んでいったのだけれど。
「エルフィどうですか。」目を開け続けていて涙目になっているエルフィに聞いた。
「土埃だらけで見えません。」
「当たっていたら良いのですけど。」
「いや、当たる、当たらないではないでしょ。その周囲が削れていますよ。」おや、エリスさんも見えていますか。さすがですねえ。
「そうですか。やっぱり理論どおりにはいきませんね」
「いや理論どおりでしょ。破壊力は」
『ご主人様何かしましたか?魔獣達が急に暴れ回りだしました。』ユーリから聞かれる。
『統率している者を倒しましたので、たぶん正気に戻ってしまっています。たぶん混乱して、動き回りますので、動きに注意してください。』
「少なくとも効果はあったみたいですね。それにしてもこの武器は、ちょっとまずいですね。やはり封印しましょう。」
「使っておいて今更いいますか。」
「そうだ、魔法使いさんが見ていないことにすればいいのです。そしてですねえ、エルフィの矢にエリスさんの爆炎魔法を時限発火にして発射したことにすればごまかせるでしょう。」
「はあ、そういうことにしましょうか。」
「でも、そんなに私の射程距離長くないです。」射程とか私の知識から使わないで
「わたしが風の魔法を付加したことにしましょう。」
「あなた最初はそれを考えていたでしょう。でも、レールガン試したかったから黙っていたんじゃないの?」
「いや、まあ、あはは。ばれましたか。すいません」
「もう、常識人なのか非常識なのかあなたの中のルールがわからないわ」
「好奇心優先というルールです。すいません。エルフィ、団長に連絡を」
「ラジャー」エルフィの伝言によって団長が指示を出す。
「防衛方法の変更だ、司令塔がなくなり洗脳が解けた、魔獣達は、それぞれ同士討ちをするもの、逃げ出すものなどバラバラだ。こちらに向かってくるものだけ蹴散らせ」
『モーラさんには、逃げ出した魔獣の整理をお願いします。』私が黙ったのを見てすかさずエリスさんが私の額に額をつける。
『まかせておけ、って、本来はここを縄張りにしているカンウの仕事じゃろう。あ?もうやっている?子ども達は大丈夫なのか?あ?うれしそうに討伐しているじゃと。あまり遊びでやらせるのは感心しないな。ああ、魔力制御の練習に丁度良いって、いいのか?それって虐殺にならないか?追い立てているだけか。まあ、それならまあいいか。』モーラは、ヒメツキさんとどうやって連絡を取っているのでしょうか。興味津々です。
『モーラさんダダ漏れです。私の隣にいるエリスさんにまで聞かれていますよ。』
『ああ、こちらの会話も聞かれるのか。そういうものか。』
『そちらはそちらで大変そうね』
『だれじゃ、ああ、エリスか。そうか、おぬしこの男と同郷じゃな。初めて知ったぞ』
『あまりレディの出自や年齢に興味を持たない事ね』
『わかった、わかった、じゃが、この会話わしらの家族には筒抜けじゃからな。』
『ちょっと伝達範囲は無限なの?』
『無限ではないが、その男のそばで話したら隷属した者には、この距離なら確実に聞かれるようになっておる。注意せい』
「やはり危険ねあなた、ここで殺しておこうかしら。」
「勘弁してください。」
「冗談よ。」
『終わったら魔獣使いのいた地点で合流しましょうか。』
『はーい』皆さん元気なお返事で。
私は、エリスさんと一緒に残っていた魔獣を街に近づけないようにしばらく攻撃していました。一段落した頃に団長さんに合図をしてから集合場所に向かいました。
そうして大地が金属の玉でえぐれているところに向かって移動します。実際狙撃したとこ場所から少し離れた出入り口から歩いて行きましたので、えぐれている場所を横に見ながら大きくえぐれたところにまっすぐ進んでいる。すごく遠かった。
「こんなに遠いのにエルフィはよく見えましたね。」
「すごいでしょー」そう言って頭を下げてくる。
「そうですね、えらいえらい」頭をなでながら歩く。
「今回は、わしらを狙ったりとかではなさそうじゃな。」さきに爆心地に到着していたモーラが言った。
「残念ながら死体が残らないくらい跡形もなく吹き飛ばしてしまいましたから、襲った者の正体はわかりませんねえ」まあ、こういう形なら殺してもけっこう平気でいられるものですね。
「そうでもないようじゃ。見ろこれを」
「おや、シールドの後ですねえ」
「ああ、防ぎきれなくてケガしたようじゃな。血痕が残っておる。」見るとけっこうな血だまりが残っている。もっとも土に吸われて黒くなっている。匂いでわかったのかな?
「着弾したのは、ちょっと手前の地点ですね。その人には当たっていません。たぶん着弾した時に飛散したガレキがその者を襲ったのでしょう。」メアさんが弾道を追ってこちらに戻ってきました。そうですか。さすがにあのぶっつけ本番で、命中精度を期待するのは無理でしたか。
「しかも、誰かが連れ去っているな。」
「そうね。大きさの違う足が複数残っていて、ひきずったあとまで残っているようだし。足跡の大きさから魔族と人間かもしれないわねえ。」
「エルフィ、見た時はひとりしかいなかったんですよね。」
「はい、いませんでしたよ~」キョロキョロと周囲を見渡しながらエルフィが言った。
「最初はいなかった、後から合流する予定だった、誰かが監視していた、いろいろ想定できますねえ。」私は、顎に手を当てて考え込んでしまう。
「うむ、にしてもうちの家もやられていないようだから目的もわからんな。」
「そうですねえ」
ほどなく団長も現れた。経過を話して納得していただいた。まあ、すでにこちら側の人ですしね。
現場を確認して街に戻ると領主さんが商人さんと一緒に待っていました。後ろには冒険者さん達もいます。
「またあなたに助けられたようですね。」
「いえ、私は何も。しいていえばエルフィの機転とエリスさんの魔法のおかげですよ。私は手伝っただけです。」
「はあ、今回はそういうことにしておくわ」エリスさんが横を向いて頭に手をやりながら言った。
「お二人ともありがとうございます。」今度は商人さんが頭を下げる。
「わーい何かくれるんですか?」エルフィは、うれしそうに言いました。
「こらエルフィ。」
「そうですね、何が良いですか?」
「えーと、あの居酒屋でお酒が飲みたいです。おごってくれますか?」
「ええと、1年分とかですか?」商人さんがびっくりしている。
「いいえ、みんなと打ち上げがしたいので~。ね~」回りの冒険者さん達からおおーっと声があがる。
「そうですか。いいでしょう。こちらもやるつもりでしたから。」
「わ~い」
そう言ってエルフィは冒険者達の所に行って話をしている。
「エルフィさんは、良い子ですね」領主さんと商人さんが微笑ましくエルフィを見ている。
「はい、素直な良い子です。飲んだくれですけどね」
「はは、それは酒樽を追加しましょうか。」
「お酒は弱いですよー」エルフィが手を振りながら言いました。そこで言わなくてもというかよく聞こえていましたね。
「そうなんですか?飲んだくれなのに」
「そうらしいです。弱いけど好きですぐ寝て、起きては飲むというかんじですか。」
「それってずーーっと朝まで続くのではないですか。」
「大丈夫です。その前に連れ帰りますから。」
「えへへ~旦那様よろしく~」
再び私に手を振ってエルフィは冒険者達と一緒に居酒屋に向かった。領主さんも商人さんもあわててその後を追う。
私たちは、少しだけその後ろ姿を見ていました。
「人気者じゃのう」
「ええ、引きこもりと、言っていませんでしたかねえ。」
「里が悪かったのじゃなあ」
「そうですね。」
そこにアンジーさんがミカさんやキャロルと共に現れました。
「アンジーさんそういえば、今回はどこにいましたか。」
「家で震えていたわよ。わかっているでしょう?」
「でしょうねえ。」
「非力な私に何ができるというの。」
「確かに。」
○剣の精錬
金属の作り方を見て、見よう見まねで工具やらを作り、今は使っていない厩舎にちょっとした工房を作ってみた。
私は、部屋の奥に穴を開けて、窯を作り、火をおこしていた。
さらに窯の前に鉄の台を作り、鋼をたたき、刀工の真似事をやっている。何回かたたいては、中の組成を見て、またたたく。これを何回か繰り返してる。」
「おぬし何をやっておるのじゃ。」暇なモーラが私が金属を叩いて出している音に釣られて入ってくる。
「ああ、ユーリの大剣を新調しようかと思いまして。」
「おぬし、剣も作るのか。」
「まあ、記憶はあいまいなのですが、叩いて折り返してすと、折れにくくしなやかなものになっていくはずですから。」
「そういうものなのか。」
「あと、軽い金属でも作ります。包丁用ですね。こっちがメインですけど。」
「相変わらず、日常生活特化型じゃのう」
「技術は日常生活にフィードバックされなければいけません。」
さて、一度ユーリに使ってもらいましょうか。ユーリに声を掛けると皆さんぞろぞろと見に来ました。
「あるじ様これは、」私は、作った刀をユーリに渡す。残念ながらまだ鞘は作っていません。
「私が作った刀です」ユーリは、刃についている波になった部分を見て言った。
「綺麗ですね。」
「あら、日本刀ねえ、よく作ったわね。へえ、柄や鍔もちゃんとこしらえているじゃない。あんた、こういう知識だけは達者よねえ。」
「そうなのですか。」ユーリがアンジーを見る。
「まあ、知識の方におぼろげながらあっただけですから保障はできませんが、」
「剣ではなくて刀ですか。」
「はい、そこに柱を立ててみましたので、切ってみてください。刃先には触らないでください。」私は近くにあった葉っぱをその刃先に落とす。きれいに二つに切れて落ちる。
「すごい切れ味ですね。」
「はい、扱いには気をつけてください。」
「では、」青眼に構えたあと、その柱を右上から斜めに切り落とす。速い。いつもの大剣のスピードの数倍は速い。切られた柱はそのままそこにある。風が吹きその柱は揺らいで切られた部分が落ちていく。
「あるじ様、これは、恐いです。」刀を持つユーリの手がガタガタと震えている。
「そうですか。切れすぎますかねえ」
「たぶん何でも切りたくなりそうです。しかも切った後の刃こぼれなど一切ありません。」
「まあ、魔獣とかを切ったら脂で何体も切れるものではありませんからねえ。」
「は・・・い」震えを止めたいのか、右手で軽く刀を振る。どうやら少し落ち着いたようです。
「では、もう一刀用意してあります。」私は、小屋から大剣を持って出てくる。
「それは、大剣ですね。」いつもであれば私も両手で持ち上げて持ってくるのでしょうけど、片手で肩に持ち上げられるくらいです。
「これを」そう言ってユーリにその大剣を渡す。ユーリは片手で受け止めたが、軽すぎてバランスを崩した。
「この大きさでこんなに軽いんですか。」
「はい、でもたぶん今使っている大剣より硬度がありますし、切れ味も違いますよ。」
ユーリは、その大剣を片手で軽々振り回している。
「あるじ様、これは軽すぎます。」
「ええ、そうなのですか。」
「はい、僕のような非力な者は、重い大剣を振り回すことで相手の進行を止めたりしています。なので、この大剣では、相手の進行を止められません。なので、もう少し重くしてもらえませんか。」
「なるほど、軽ければ良いわけではないのですね。」
「はい、ただ、多数の敵と戦う時には必要なのかもしれません。ただ、日頃は、その軽さに慣れすぎてはいけないのだと思います。」
「わかりました、ユーリの要望に合わせた形にしましょう。」
「お願いします。」
「刀はどうしますか。」
「私には、少し荷が重すぎます。今はまだそれを携えるだけの力量はありません。」
「ユーリ、もし嫌でなければ私に譲ってはくれませんか。」メアさんが言った。
「まだ私のものではありませんので、あるじ様よろしいですか。」
「ええ、かまいません。これはあくまで私の習作ですからこれからどんどん注文をつけてもらいたかったのです。」
「ありがとうございます。」
「エルフィ」私はエルフィを呼び、厩舎に隠してあった弓を渡す。
「え?これは、すごいですね。」
「あなた、弓がどんどん違うものに変わっていましたよね。たぶんあなたの膂力に弓が負けてしまうのでしょう?」
「あら~しってましたか~」舌を出すエルフィ。
「いえ、最近知ったのですよ。申し訳ありません。それで、これを試作しました。」
「えーーーー、私自分で作ったりしていますよ。でもでも、これは、すごいですねえ。」
「なんじゃこれもおぬしの世界の技術か。」
「これは、本当にしらないんですよ。でもサイトとかバランスとかが調整できて、エルフィの膂力に耐えるものになると金属に頼らないとダメなんですよ。」
「はー、ここで構えて、ここを見て打つんですねえ。すごい、弦をどんなに引っ張っても、きしみもしませんね~すごいです。」
「弦は、高張力鋼線を縒ってあります。木の本体がきしみだしたらそこまでですので、引っ張りすぎないでくださいね。」
「きしみません~」
「それはよかった。それでは、これを使って射ってください。」そう言って私は、数本の矢を渡す。
「これは、木の矢ではありませんね~」
「一応、テストしておいてください。さすがに何本も作れませんので、何かあった時のため用です。テスト用なのでガンガン撃ってください。」
「では、広いところにいきましょ~」弓から手を離さずそのままスキップして広いところに行く。途中で普通の矢を何本か使って森の木に当てていた。たぶん、弓のアタリをつけながら小走りに進んでいく。カンをつかんだのか、「そこで待っててくださいね~」と言ってかなり離れる。
私たちが立っている所よりさらに離れた木を狙うようだ。
「いきますよ~」矢をつがえ、目標を正確に狙い弦を引き絞っている。撃ったともわからないままシュッという風切音が私たちの前を通過した時には、目標にしていただろう木が破壊された。そう、あたった部分が粉々に砕けた。音があとに来ましたけど。
「はえ~これはすごすぎます。」いや、あなたの弓の方がすごすぎますよ。魔法で何かしてますね。
「もう一本いきます~」その隣の太い木を狙うようだ。言いざますぐに、矢をつがえ弓を構え、照準をつけた風もなく、すぐ矢を射た。その一連の動作がたった一瞬である。
先ほどの矢よりもゆっくりしたスピードだがそれでも速い。正確に打ち抜いたが、先ほどの威力はない。
「もう一本いきまー」そう言って、ゆっくりとした動作で狙いをつけ矢を打ち出だす。最初のスピードで射ったようだが、なぜか目標にあたらず軌道がそれて横に外れた。
「なんじゃ、外しよったのう。」
「いつもなら完璧に当てるのに変ねえ。なにかやっているわねえ。」
「ラスト一本いきまー」「す」まで言いましょう。言葉の乱れは性格の乱れです。
そうしてエルフィは、ゆっくりと構えて矢を射った。速く正確だが最初の速さはない。そして、まっすぐ進んだ矢は、途中で軌道を変えて左の木に当たった。
「軌道が曲がったようですが」
「はい、軌道を曲げましたね。」打ち終わったエルフィが、私たちの前を駆け抜けて矢の回収に行ったようだ。私たちはその後を追って矢を探すのを手伝った。
一射は、爆散した木からさらに数百メートル先にあった。ええ、モーラの土のドラゴンの能力で探し当てたくらいに遠かった。
二射と四射は、木に刺さっていますが、普通の木の矢でした。
三射は、金属の矢でこれもモーラが探してくれました。
「さて、教えてください。4本の矢の放ち方を。」めずらしくメアさんが言いました。
「皆さんわかりますか~」
「たぶん、一本目は全力なのでしょうねえ」
「正解です~、私の弓を引っ張る力を全開で出したらどのくらいかなあってやってみました。でも、刺さらないで爆発するとは思いませんでした。」
「魔法を付与しているのですか」ユーリが聞きたそうです。
「はい、習慣なんですけど、速すぎると木の矢が燃えてしまってなくなる時があります~」
「なるほど、それは、持てる者の悩みねえ」アンジーがエルフィの胸をじっと見ながら言いました。そっちの持てる者じゃありませんよ。
「じゃ~二本目~」エルフィが指を二本突き出す。まあ、Vサインですね。
「速射でどのくらいの速さと正確さが出るか測ってみたのか。」
「そうです。さすが~モーラ。じゃあ三本目~」
「金属の矢で軌道を曲げようとしましたね」
「当りです~ご主人様わかりましたね~」
「四射目がなければ、わかりませんでしたけど、金属の矢だと曲がりにくいですか。」
「はい~。スピードが速すぎるのと風の影響を無視して進んでいますね~あの金属の矢でも曲がるはずなんですけど。」
「すいません、矢に細工をしていました。」
「あ~やっぱりですか~」
「ええ、直進安定性を高くしてあります。逆に曲がりづらくなっていましたね。」
「それで四射目は、普通の矢で確認したのですか。」メアさんが言った。
「そうで~す。以上です。でも、この弓はすごいですね~。全然よれないしブレないですから。何本でも正確に打ち抜けますよ~」
「ということは、これまでは、力もセーブしていたし、弓のブレとかよれを考えながら正確に当てていたのか」
「はい~。だって弓は大事にしないと壊したらそこで試合終了ですよ~。なんですか~試合って~」エルフィ、そこに突っ込まないでください。勝手に頭の中から使っておいてそれはないでしょう。
「おぬし、弦の付け替えは簡単にできるのか?」
「え?ええ、できますけどどうしましたか?」
「とりあえず、弦は普通のにしておけ、鋼の弦などこの世界で使わせるなよ。」
「ああ、そうですねえ。それはオーバーテクノロジーでした。」
「これだからおぬしは、目が離せんわ」
「すいません、エルフィが苦労して弓を使っているのを見ていたので、やりすぎてしまいました。」
「技術バカが。エルフィが喜ぶだろうと頑張ったんじゃろうが、やりすぎじゃ。」
「旦那様~うれしいです~」だから背中に胸を押しつけるのはやめなさい。みんな見てますよ。
「はいはい離れて離れて、」アンジーがエルフィを引き剥がす。
「のう、わしらには何か無いのか。」物欲しそうにモーラが私を見る。
「モーラにはこれを用意してあります。」そう言って、ベルトのような物を渡す。同じようにメアさんにも渡す。
「これは、なんじゃ。」
「くないと言ってナイフのような物です。巨大化できない時とか私たちが人質に取られたりした時の武器です。」
「太ももにつけておけと。」スカートをたくし上げて太ももにつける。
「はい、スカートなら非常時に出せるでしょう。」
「ありがとうございます。大切にします。」メアさんがうれしそうだ。でも、ちゃんと使ってくださいね。
「念のため言っておきますけど、そのくないは切れ味いいですから、抜くときは、用心してくださいね。」
「おわ、なんじゃこれは、スカートまで切れおったぞ。」
「だから、非常時以外は使わないでください。」
「抜いた瞬間すべての物を切り裂くのか。確かに非常時しか使えんな。ってそんな物騒な物持たせるな。」
「いや、魔力で自然治癒する人なら傷ついても問題ないじゃないですか。特にモーラ」
「うーん、なんか納得できん。」
「ねえねえ、私には何か無いの?」今度はアンジーが私の袖を引っ張る。
「このペンダントをあげましょう。」
「これは、なによ。前にアクセサリーならもらったわよ。でもちょっとデザインが違うわね。」
「はい、緊急時に鎖の根元を引っ張ると、アンジーの回りにシールドが発生して守ってくれます。」
「でも、逃げられないのね。」
「我慢してください。その段階で私に連絡が入りますので、すぐ助けに行けますから。」
「ならいいわ。ありがとう。」
「でも、そうやってあんたは、みんなを平等に扱うのよねえ」
「そうじゃなあ。特別はないようじゃのう。」
と、言われておりましたが、ユーリに大剣の新バージョンを渡した時に、ユーリにだけ脇差しの剣を渡していました。
○キャロルの決意
「実は相談があるのですが。」
「どうしたのキャロル」
「そろそろ、私も働きたいと思います。」
魔獣の襲撃も一段落して食事の時にキャロルは、みんなに言った。
「メアと一緒に働いておるじゃろう」
「そうですよ。それでは不満ですか。」ヒメツキさんがオロオロしています。
「はい、メイドの仕事を一人前にこなしているとは言えませんので、さらに磨きをかけたいと思います。」モーラと身長が同じくらいなのに大人びています。
「具体的にはどうするつもりなのですか?」
「領主さんか商人さんの館で住み込みで修行をしたいと思っています。」
「ああ、そういうことですか。ヒメツキさんどう思いますか。」
「私が寂しいのだけれど、そうも言っていられないようね。」
「カンウ様には大変良くしていただき、人の身でありながらそばに一緒にいられて大変幸せでありました。しかし、所詮私は人の身です。ずっと一緒にはいられません。ですので、一度おそばを離れて知識を蓄えたいと思います。」
「なるほど。そういうことですか。」私は、その決意の目を見てうなずいた。
「わからないわ、キャロルには私のそばにいて欲しいのですけど。」ヒメツキさんの方が子離れできていませんね。
「私としては、もう少しメイドとしていろいろな知識を得たうえで、カンウ様のそばに一生いたいと思います。」カンウさんを見上げ、目をそらさずそう言った。
「なるほどね」カンウさんがため息をついて目をそらす。
「つきましては、住み込みでメイドの修行をしてまいります。」
「思い切りましたねえ。」
「その・・・そういうときは、私はあなたの顔を見に行っても良いのかしら。もちろん時々ですけど。」
「はい、私も実は心細いのです。でも、こうでもしないとカンウ様に甘えてしまって、先に進めそうにないのです。」キャロルの目から抑えていた涙がこぼれ落ちる。まるで宝石のようにきらきらと輝き頬を伝って落ちるのです。思わずヒメツキさんも彼女を抱きしめて、2人で泣いていた。しばらく抱き合っていた後、ヒメツキさんが膝をつき、キャロルの顔見て
「頑張らなくてもいいから、つらくなったら戻ってきなさい。」
「カンウ様、ありがとうございます」
そうして、私は、領主さんに話をつけました。キャロルは、しばらくして部屋の物を片付け、領主様のところに住むことになりました。
「ここで住ませていただいてありがとうございました。」
「私からは、無理してはいけませんとしか言えません。そしてこれをお持ちなさい。」
私は、例の笛を渡しました。この笛の意味することをわかっているキャロルは黙って受け取り、それを服のポケットにしまう。ヒメツキさんは、本当に寂しそうにキャロルを抱きしめる。キャロルは、
「カンウ様にとっては、ほんのひとときです。すぐにおそばに戻ります。」
「そうね、大きくなって帰ってきて私の世話をしてちょうだい。」
「はい。必ず。」
そうして、ついにその日になり、領主様の馬車が迎えに来ました。外は霧雨が降っている。
私たちは見送りのために外にでたが、ヒメツキさんは、私の後ろに隠れるように立ち、手だけ振っている。キャロルは、それを見て手を振り、頭を下げた。馬車は走り出し、霧雨の中に消えていった。
「さびしくなるのう」
「そうですねえ」
「やっぱり手放すべきではなかったのかしら。」
「おぬしが子離れできなくてどうする。」
「やっぱりあの洞窟に戻るわ、ミカもそろそろ違うところに縄張りを持つでしょうし。」
「そうか、しかたないのう」
ミカさんは、すでに里に戻ってドラゴンとして独立して生きていくために自分の縄張りの調整を始めていました。
○路銀
「路銀もかなり貯まりましたので、そろそろ旅立ちですかね。」冒険者の資格というのは、望外に収入に変わりました。ええ、もちろんスタッフが家族が優秀なおかげです。
「そうじゃのう、いろいろあって長居しすぎたからなあ。」
「当初は2~3ヶ月の予定でしたから、1年近くもいましたからね。」
「冒険者の資格ってすごいですね、すごくお金が貯まりましたよ。」報酬のうち1割だけ家計に入れていただきましたからね。
「馬車も新調しましたし、馬も増やしたんですけどねえ。」馬は、領主様からあの時お借りした馬をそのまま買い取りました。おとなしくなったので、お返しすることにしたのですが、あの後さらに手がつけられなくなったと言います。私たちのことを話すとおとなしくなるんだそうです。一度会いにいって、話をすると、納得しておとなしくなりました。
「ええ、皆さんが冒険者として街の人のために大活躍してくれたおかげですよ。」
「人数分の資格証を発行してくれるとは、領主も奮発してくれたものじゃ。」
「さすがにお二人のは、名誉冒険者ですけどね。」
「それでも年齢が15歳に達したら有効なのよね。実際の年齢ならもう越えているんですけど。」
「まあ、しようがないのう。おかげで片手間にアルバイトというのか、以外に小銭がもらえたぞ。」
「楽しかったわよ。酒場のウェートレスとか露天の売り子とか」
「ああ、それのおかげで売り上げがあがるんじゃから、わからんものよのう」
「エルフィは、私たちの護衛とか言いながら居酒屋で酔い潰れていましたけどね」
「ひどい~。ちゃんと見張っていましたよ~」
「どこがじゃ。」
「あやしいおじちゃんに声かけられそうになっていたじゃないですか~。ちゃんと阻止しましたよ~。」
「道をきかれただけじゃ。しかも酔っ払って絡み酒はいかんぞ。迷惑じゃ。」
「てへ?」
「あと、酒代はちゃんと払えよ。」
「あれ?」
「たとえおごりと言われてもなあ、それに甘んじること無くちゃんと払わんか。そんな話を聞かされるわしらのことも考えろ」
「すいません、すいません、すいません」
「とりあえず払っておきましたよ。他にお金の使い道もなさそうですし。あなたに渡すはずのお小遣いから。」会計管理しているメアさんから言われました。
「ええええええ、がくり」
「ダメさに拍車がかかっていますね。」
「お金の管理もできないと、独りになったらどうするんですかね。」
「誰かに頼って生きます~きりり」そこできりりとかやられてもどう反応して良いやら
「いや、だまされて有り金全部取られて逃げられますよ。」
「それでもいいのです~」
「お主は、道ばたの草花で生きていられるからのう。」
「それでもやせませんよねえ。」
「はい、ばいんばいんです。」だから飛び跳ねるなといっているでしょう。
ヒメツキさんと、そろそろここを離れるという話をしました。
「そうですか。ここの暮らしは楽しかったのですけれど。最初からわかっていたことですからねえ。でもちょっと寂しいわねえ」ため息交じりにヒメツキさんが言う。いや、ドラゴンさんにとっては、一瞬でしょう。
そうして、借家での生活は終わりを告げようとしていました。
続く
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「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」
そう思っていた。そのはずだった。
――だけど。
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“様々な縁”が重なり、騒がしくなった。
「最強を目指すべくして生まれた存在」
「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
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