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第8話 旅立ち
第8-2話 ドワーフと
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○ドワ娘と出会う。
山あいの細い道を走っている。さすがに道が細いので、馬たちも用心してあまりスピードを上げないように走っている。
手綱を取っているのは、私ですが、ほとんど馬たちが勝手にスピードを調整しているのでただ、手綱を手に持っているだけです。ええ、別に御者など必要ないみたいです。
そんな道の途中でメアさんが私に声をかけました。
「囲まれていますね。」
「ああ、どうやら魔族らしいのう。」
「敵です」ユーリが自分の大剣を手元に引き寄せる。
「皆さんもわかりますか。」
「かなりの人数です~。馬車を囲みながら移動しています~。」さすがエルフィそこまでわかりますか。
「馬車を壊されると困りますねえ。」
「心配するのはそこか」
「まあ、殺されたら馬車も何も必要なくなりますけどね」アンジーがちょっと怖がっています。
「こんなところで徒歩にはなりたくないわ」
「ですよねえ。」
「馬車を止めます。」
私はそう言って、手綱で馬に合図をする。馬たちは、周囲の気配に気付いているはずなのだけれど、静かに止まって暴れもしない。本当にこの馬達は肝が据わっている。魔族に動じない良い馬です。まあ、いつもドラゴン乗せて走っていますから慣れているからなのでしょうか。
馬車を止めると、囲むように周囲に人影が現れる。人ではない、その大きさからそれはわかる。魔族なのだろうか、そういえば、これまで魔族の方とお会いしたことがありませんでしたね。でもやけに体毛が多いような。
「そこの馬車に一人、客が紛れ込んだだろう、渡せ。」
とりあえず、馬車の手綱をエルフィに任せて、私が御者台から降りる。メアさんが私に付き添う。
「さて、私たち6人しか乗っておりませんけど。」
「これだから人は、その馬車の下にへばりついている奴のことだよ。」
私は、メアさんに顔を近づけ耳打ちする。
「メアさん気付いていましたか?」
「ええ、追われているのか、囲まれる前に気配を殺して床下にへばりついていました、殺気も放っていなかったですし、周りの殺気の方が気になりましたので放置していました。気付いていなかったのですか?」
「残念ながら、周りの方が気になって、細かいところまで注意ができていませんでした。すいません。」
「ご主人様のせいではありません。この気配の殺し方は、訓練を受けています。」
「これはまた、やっかいな。」
「どうした、早くしろ」
「とりあえず、その人に出てきてもらいましょうか、出てきてもらえますか?」
「はい」
馬車の下から人が。いや、その骨格や肌の色で人ではないと思いますが。女の子のようです。体格の良いグラマラスな女性が出てきました。
「さきほどの気配とちょっと違います。さっきの気配よりかなり大きくなっています。」
その大きさにメアさんが戸惑っている。
「そうですか。」
私はその人のところに近づいてこう言った。
「確かにいらっしゃいましたね、隠れていたという事は、何か事情があるのですね?」
「はい、この辺で道に迷ってさまよっていたのですが、何かあの方達の縄張りに入ってしまったようで、追いかけられていました。誤解なのです。」
「でも、私達の馬車の下に隠れたのはどうしてですか?」
「色々な匂い、気配を感じたのでこの中に紛れれば、見つからないかもしれないと思ったからです。すいませんでした。」
「それは、仕方ないですね。」
「ご主人様!」
メアさんはびっくりしている。確かに仕方ないことではありません。私達を故意に巻き込んだのですから。
「でも、そうでもしないと逃げ切れないと思ったのですね。」
「はい、でも見つかってしまいました。」
「念のためもう一度聞きますが、何もしていないのですね。」
「はい、何もしていません。」
「わかりました。」
私は、その人をそこに残して再び引き渡しを要求する人の方に向かっていく。
「本人は、誤解だと言っています。信じられませんか?」
「なんだよ、あんたそのドワーフの味方をするのか。」
「ドワーフなんですね。初めて見ました。そうなのですかドワーフさんですか。とりあえず、何もしていないという人をお渡しするのもちょっと後味が悪そうです。」
「いや、おまえ達の馬車の下に身を潜めて逃げようとしたんだぞ。おまえたちを巻き込んで逃げようとしているんだぞ。そんなやつの味方をするのか。」
「まあ、誤解を解けないまま捕まって拷問されても嫌でしょうし、こうやって話をしている間に隙があれば逃げることもできそうじゃないですか。もっとも逃げる気はなさそうですけどねえ。」
そうして、そのドワーフの女性を見る。うなずいている。
「公正なジャッジをする人が欲しかったのですねえ。きっと」
「なるほどな、一方的に裁かれるのは嫌だったと。」
「そうなりますかねえ」
「おまえ、こうやって俺らと話しをしているが、普通の人間だったら、さっさとそのドワーフの女を置いて逃げているだろう。だが、おまえは、平然と俺を見て話をしている。まあ、俺らは温厚な方だから、こうやって話し合いをしているわけだが、いきなり襲われて殺されているかもしれないんだぜ、随分と腕に自信があるんだな。」
「ありませんよ。ただの成り行きです。だって、止まれと言われて止まって、下に誰かいると言われて、そこから人が出てきた。たったそれだけのことが起きただけなのでです。そこに私が逃げられる状況なんてありませんよ。」
「ああ、そういえばそうだが、普通は俺の姿を見て魔族だとわかった瞬間に逃げる算段にはいるぜ。」
「そうなのですか、それでは、逃げましょうか。」
「逃げられるわけ無いだろう。周囲には俺の部下が逃がさないようにしているんだ。」
「ではどうしたらよいのでしょうか。」
「とりあえず、どんなやつが乗っているのか馬車から全員出てきてもらおうか。」
「わかりました。皆さん出てきてください。」そう言うと、みんながぞろぞろと出てくる。
「これで全員です。馬車には他に誰もいないですよ。」
「確かに気配でも誰もいないな。」
「はい、ここにいる全員。つまり7人で全員です。」
「旅人、きさま名前は」
「しがない魔法使いとその家族です。」
まあ、貴様に名乗る名前など無いと言いたいところですが、やめておきます。
その魔族は、全員を一瞥して、ある人に目がとまったようだ。
他の魔族の者が耳打ちをしている。
「ちっ、わかった。」
「今は引いてやる。だが、そいつが、何かしていたら引き渡してもらうからな。」
「私の方でも聞いてみますので、それでよろしいですか?」
「ああ、そこのドワーフ、これですむと思うなよ。」
「少しだけ聞いて良いですか。ドワーフは、魔族と共存しているのではなかったのですか。」
「それでもルールはあるんだよ、縄張りを越えてちょろちょろしやがって、ここは、魔族のものになっているんだ、断りもなく入ったら殺されても文句は言えないだからな。」
「でも、ここは、少し前まで境界の町だったはずなんですが。」
「いつの話をしてやがる、もう十年近くは経っているぞ。」
「では、私たちも同罪ですね」
「はあ?一応な、俺らにもプライドって奴があるんだよ。ただ通行している奴は、一応警告もするが、何もなければそのまま通す。今回は、そいつを追っていたからたまたま引っかかったが、通るだけなら無視していたんだよ。」
「そうですか。それはありがとうございます。」
「ん?、だが、おまえらは、少し違うな。怪しい匂いがプンプンしている。そうだな、おまえらなら、いずれは声をかけたとは思うわ。それでも何もしないならいい。そいつもこちらで調べて何か出たらお前らごと殺す。」
「私たちは、何もしていないし、するつもりもありませんがねえ、」
「言葉は信用できねえ。態度で示しな」
「それでは、失礼します。」お辞儀をして馬車に乗り込む。
「メアさんその方を馬車に」
「はい」
そうして最初の騒動は、なんとかなった。
魔族は引き上げるにあたって監視役を置いていったようだ、馬車の周囲に適当な間隔を置いて、数人動きを監視している。構わず私達は、馬車で移動を始めた。
魔族の方は、残っていた魔族達の中で、頭領らしき物が数人を呼んだ。
「あいつら強いな。」
「大ボスからは、遭遇したなら殺しても良いと言われている連中ですよきっと」
「ああ、あんなケチな獲物を追っていて大物が引っかかったのか。でも、あいつらもったいないなあ。殺すにしても少しは楽しみたい。」
「ならば罠を仕掛けますか。」
「罠を?面倒だな。だが、他の奴らに邪魔されたくないからな、周囲から見えないところで、どんなものなのか試してみたいぜ。」
「数日のうちに渓谷がありますぜ。そこなら他の奴らの邪魔は入らないかと。」
「おう、そうするか。とりあえずあいつに連絡をしろ。後から変に難癖をつけられてもこまるからな。」
「いいんですかねえ、連絡は必要なときはあっちからしてくると聞かされていますが。」
「おれは、そういう所は慎重なんだ。だからこそおいしいことにもありつけるんでな」
「わかりやした。機をうかがいます。」
「まあ、あの渓谷までまだ数日はあるだろう。あの馬車の他の連中に気付かれるな。もちろん俺たち以外の他の仲間にも知られるなよ」
「わかっていますよ。」
エルフィに手綱を代わってもらい馬車の中に移る。
「少しは落ち着きましたか」
「はい、大丈夫です」体は少し小さくなったように見えますが、気のせいですかね。
「また来ると言っていましたね。」
「ですから、私を相手に引き渡せば、良かったではありませんか。」
ああ、その怒っているようなすがるような、そしてちょっとうれしそうな目が私の心を動かしますね。
「でも、何もしていないんですよね。」
「はい、勘違いされるようなことをしたのかもしれませんが」
「ならばこちらに非はありません」
「それにしても、ひとり旅なんて、あなたはこれからどちらに行かれるのですか。」
メアさんが心配そうに聞いた。
「修行のためのひとり旅ですので、行く先は決めておりません。ですが、こんなことに遭ってしまうと少し先行きが不安になりました。」
「そうですか、しばらく一緒に旅をしましょうか。ああ言いながらもこの地域を抜けるまでは、襲ってくる可能性がありますから。少なくともここを出るまでは一緒に行きませんか?」
「もう、相手の都合も考えずに」アンジーが怒っています。
「私は別にかまいません。むしろお願いしたいくらいですが。それでいいのですか?」
「私は、旅は道連れ、世は情け、情けは人のためならず。旅の仲間は皆家族というのを自分の座右の銘としておりますので。」
「いつから、そんな座右の銘を刻むようになったんですか。突っ込みどころ満載です。」アンジーが吠えています。
「さきほどからです。」
私は涼しい顔で言いました。だってあんな顔をされたら助けたくなるでしょう。可愛いですし。
『はあ、やはりそこですか。』とアンジー
『すけべ~』とエルフィ
『まったくじゃ』とモーラ
『本当に~』とエルフィ
『それが本心とは思えませんけど』とメア
『ええ、ご主人様のやさしさですよね』とユーリ
「何から何までありがとうございます。私は、パムと申します。見ての通りドワーフです。失礼ですがお名前を」
「今回は、「大丈夫」だったようじゃのう」モーラがつぶやく
「本当に。いつもこうなら良いですけど。」とアンジーがつっこむ。そこの2人余計な事は言わない。
「私は、しがない旅の魔法使いです。何と呼ばれましてもかまいません。」
「あ、私アンジー、職業子役、4人姉妹の3女役ね」
「ちがうじゃろ、3女役では無くてニセ天使じゃろう」
「モーラその話はなしで、誤解されるから。」
「わしはモーラ。職業子役、末っ子役じゃ。」
「私は、メア、職業メイドです。」
「私は、ユーリ、職業子役、えーと次女役になるのですか。」
「私は~、エルフィ~、職業冒険者で~す。役は長女?」御者台から叫ばないでください。よく聞こえていましたね
「違う、飲んだくれ」
「泥酔者でしょう」
「ひどいです~、最近飲んでないのに~。」だから叫ぶなと。
「皆さん、勝手なことを言っていますね。気にしないでください全部冗談ですから」
「でも、その方が天使様で、全員で6人ならば、噂の天使様ではないのですか?」
「ほほう、有名になったものじゃのう」
「モーラのせいですからね」
「あの噂は、誤解なのですよ。私たちは、たまにそういう目で見られてしまいますけれど、そんな噂の方々とは全然違います。そのことでかなり迷惑しています。」
「そうなんですか。魔族の襲来を予知できる天使様と水神様のお使いの天使様の噂があります。どちらか一方の方々なのかと思いました。」
「水神様のお使いの方は、水神様のお作りになった虚像だったと聞いていますよ。魔族の襲来を予知する天使様は、力が無くなったと聞きましたよ。」
「ずいぶんおくわしいんですね。」おお、するどいつっこみ。
「はい~本にん・・・」口が軽いですねエルフィ。その口を塞ぎに瞬間移動したメアさんに瞬殺されてください。でも、その動きを見てパムさんがびっくりしていますよ
「旅をしているといろいろな情報が入って来ますから。特にその噂はどちらもその商隊の人達から聞いたので間違いないですよ。」
「そうですか、実は、先ほど修行と言いましたが、もちろん修行もして旅しているのですが、その方達にお会いできないかと、その噂を求めて旅していました。皆さん全員で6人ですし、魔法使いの従者の方だけが男で、残りの方が全員女性だと、その中にはエルフの方もいらっしゃると言っておりましたので、もしやと思っていましたが、違うのですね。」
『ずいぶん詳細なことを知っておるな。もしや手配書でも回っておるのか?』
『さすがにそれはないでしょう。でも、あまりにも正確すぎますね。』
「そうですか、そんなに具体的な噂がでているんですね、確かにそれならうちの家族が間違われてもしかたがありませんね。」
「家族ですか。」
「血はつながっていませんけれど家族ですねえ。」
「うらやましいです。」
「そうですか?少なくともこの子は、私が町から預けられた孤児ですので」不安そうなアンジーの頭をかかえてなでる。そうですこれは、本当です。大きな嘘は、小さな本当をまぶすと本当に見えるものです。
「あとの子達も同様に身寄りがありませんから身を寄せ合って旅をしています。」
「そうなんですか、複雑なんですね。」
「わしらは、気にしておらんがなあ」
「これこれ、そういう話し方はやめてくださいっていったでしょ。」本当にこのロリばばあは、やめてください。
「いいじゃろう別に。わしが育ったところではこういう話し方をするもんじゃと教えられているんじゃから」
「そうなんですか、けっこうばばくさいですね。」
「ああ、誰に対してもじゃ、年齢も性別も関係なくつこうておる。すまんな勘弁してくれ」確かにこの中では最高年齢でしょうしねえ。
「いま、手綱を持っているエルフの方もですか?」
「そうですよー、訳ありでーす」
手を振っている。今の話し声聞こえていましたか?耳が良いんですね。エルフィ。魔法の通信では、人の声まで中継できないはずですが?
「そういうこともありますか。皆さん良い関係なのですね。うらやましいです。」
「立ち入ったことをお聞きしますが、お一人なのですか?」
「はい、一人です。身寄りはありません。」
「お里の方にもですか?」
「はい、天涯孤独です。」
「すいません、立ち入りすぎました。」
「いえ、これまで私のことを聞いてくれる方もおりませんでしたので。」
「修行と言っていましたが、どのような修行をしているのですか」
「ええ、私たちは、魔力がほとんどありません。ですので、この腕一本で生きていかなければなりません。幸いなことに鍛えれば鍛えるほど体力・筋力はついていきますので、こうやっていろいろなところを回って冒険者まがいのことをしながら旅をしております。」
「そうなんですか。これからというところですね。」
「はい、道は始まったばかりです。」
「ところで、噂の天使様一行を探しているといっておったが、会ってどうするつもりじゃ。」
「もちろんお手合わせをお願いしたいと思いまして。」
「なるほどのう、じゃがそもそも、そんな者達がいないとすればどうする。」
「どういうことですか。」
「噂だけで、実際に存在しない、まあ童話の中でてくるような架空の人物の可能性じゃ」
「確かにそれは可能性としてありますが、さきほどこの方が、その商隊の方から聞いたと言っていましたが、」
「そこじゃ、わしらも実際見たことが無い。その商隊の者は見たと言っているが、それが真実なのかとな。そやつらが噂を流していて、わしらがそれにだまされている可能性じゃよ。」
「なるほど、わざと噂を流していると」
「ああ、どんなことも斜めに見なければいかんと思うのじゃ。」
「モーラ、あんたねえ。本の読み過ぎ。ばばあしゃべりといい、こんな変な講釈をたれたりと、年齢にそぐわないでしょ。自重しなさい」おお、アンジーのお姉ちゃん発言。なじんでいますね。
「しようがなかろう、そういう環境で育ったのじゃから。」環境のせいで逃れるつもりですか、ちょっと無理があるでしょう。
「まあまあ、確かにその可能性は否定できませんねえ、実際私たちは見ていないのですから。」そりゃあ本人達ですから見られるわけがありません。詭弁ですね。
「メアさんどう思いますか?」
「私ですか。これは、結局周囲がどう見るかでしょう。私たちのことを見れば、そういう風に見えても仕方が無いと思います。」ナイスフォローです思わずサムズアップしそうになりましたよ
「僕もそう思います。相手がそう思ってしまうと、どう誤解を解こうとしてもそう解釈されてしまいます。」ユーリが雄弁です。まあ、自分自身の経験ですからね。
「私は誤解されていませんよエルフはエルフです。そんなすごい人達の仲間だったら逃げ出していますね。」ぼろを出すなっていうのにだしますかこのダメエルフ。
「どんな風にすごいのですか?」ほーら言われた。
「エルフィが答えるまでも無く、魔族の襲来を予知できるのならすごいわなあ」
「でも、今、人達と言いましたよね。知っているんですか?」おお、良いところをつく。
「天使と魔法使いで達ですねえ。天使様は何も話さずその魔法使いが語ったとか」
「ああ、そうなんですか。ひとつ勉強になりました。」
「あくまでその商隊の者から聞いた話じゃ。」
「でも、水神の使いの方の天使様については、ほとんど情報が無いのです。その魔法使いしか話さなかったようだというのは、初めて聞きました。情報として有用です。」
『あ』
『ばかもの、お主が墓穴を掘ってどうするのじゃ。』
『だって、エルフィがよけいなことを』
『てへ?』
『てへじゃないですよ』
『そうです声に反省の色が見えません』
『だってこの人みるからに悪い人じゃ無いですよ~。ばれても大丈夫な気がします~。』
『でたな根拠の無い推測が』
『確かにエルフィの勘というか感覚はこれまで外れていませんけど』
『でしょう~、そろそろ信じてくださいよ~。』
『信じているからと言って、従うかと言えばそういうものではないわ』
「皆さん急に黙り込みましたがどうしましたか。」パムさんが不思議そうに私達を見て言った。
「ええ、確かにその情報が私の思い込みで無いのかと記憶をたどっていました。どうも私が勝手に思い込んでいただけだったみたいです。」
「ああ、そうでしたか。皆さん全員黙ってしまわれたのでどうしたのかと思いました。」
「たぶん皆さん今の指摘で記憶をたどったのだと思います。」
「全員で、ですか?」
「みんな私の記憶があやふやなのを気にしていますから」
「そうなんですか。うらやましいです。」
「うらやましい・・か?」
「ええ、そんな風に他人に気にしてもらったことがないので。」
「ああ、そうか。まあ、一緒にいればそういうことも多々あるじゃろう。」
そしてしばらく馬車は進む。光の加減かチラチラと木漏れ日が入ってくる。アンジーが急に嫌そうな顔をしてそわそわしだし、めずらしく御者台に移った。
しばらくして、アンジーが言った
「そろそろ休憩にしませんか。馬車を止めてください」
「どうしましたか」
「ちょっと酔ったかも」
「大丈夫ですか?最近はなかったのに。」
「気晴らしに少し歩いてくれば治ると思うの。」
「はいはい、あまり離れないでくださいね。嫌でなければご一緒しますが。」
「はあ?で、あなたの目の前でしろと言いますか?」
「ああ、そっちですか。そうでしたかすいません、それでも、気をつけてください。皆さんも散策して気分転換しましょう。」
全員が気分転換をしに森の中を散策している。残された2頭の馬は、逃げもせず静かに待っている。ええ、賢い子達なので大丈夫です。
「まったく急な連絡はやめて欲しいです。」アンジーが周囲を見回ししゃがみながらつぶやく。
「ああ、彼女は、わざとあなたたちに接触して、襲われて私たちの方に逃げたようだと。最初からそれが目的のようだというのね。あなた達の間者では無いのね。それが、聞けたのはありがたいわ。」
「私たちを襲うの?襲うにしても、ケガしないように気をつけてね。させないようにじゃなくてしないようによ。いつも急に襲うから私も気が気では無いのですけどね。ええ?今度はけっこうきついのですか。それでも、私も巻き添えにするくらいにやってくださいね。でないと私の正体がばれてしまいますので。本当に直接の連絡はやめてください。今回のも良いですから。本当に連絡が欲しいのは、彼を暗殺するとかそういうときだけにして欲しいのだけれど。」
アンジーは、立ち上がってその場を去り、馬車の方に戻っていく。アンジーは、離れたところに人影があったのに気付いていなかった。
そうして、アンジーが戻ってきた。メアさんもいつの間にかいなくなりいつの間にか戻ってきていた。
「おう、おなかが空いたぞ」モーラが私の服の裾を引っ張っています。仕草が可愛すぎて、萌え狂いそうです。
「干し肉で我慢してください。」
「お風呂ー」アンジー足をバタバタさせるのやめてください、可愛すぎて萌え狂いそうです。
「知らない人がいるんですから我慢してください。」
御者台にいる私の両隣でごねる可愛い子供達のフリですが、要求は大人ですね。
『ぬしも疑っておるのじゃろう?』
『何を疑うというんですか。』
『あのドワーフじゃよ』
『ああ、そうですね不自然ではあります。』
『魔族方面?』
『そんなまどろっこしいことするわけ無いじゃろう。とっとと殺した方が早かろう。』
『ですよねー、泳がせておく理由が無いもんねー』言葉の乱れは心の乱れですよアンジーさん。
『にしても新鮮な肉が食いたいのう。』
『そうね、そして、お風呂』
『お肉は何とかしますから、お風呂は我慢してください。』
『何とかするのか。』
『あなたをシールドで囲えばきっとでかいのがつれますよ。』
『なるほどな、では、ここで狸寝入りをするので、シールドで囲え。メア、ユーリ、エルフィ頼んだぞ』
『了解しました!!』三人同時に敬礼していますよ。いきなりなので、パムさんがびっくりしていますよ。それより、どこでそんなポーズ憶えたんですかって、私の頭か。ってセルフ突っ込みは置いておいて、指を小さくパチリと鳴らすふり。もちろん音はしていませんけどね。モーラを持ち上げて、周囲に見えないシールドが作られる。
『おお、クッションがついてふわふわじゃ、なんじゃこれは、前のと違うぞ』
『ああ、前のは固くて不評でしたから内側に弾力をつけてみました。居心地はどうですか?』
『お主、本当にこういうことだけは優秀だのう』
『お褒めいただき光栄です』
『皮肉じゃ、もっと攻撃魔法とか憶えんか。』
『だから、師匠が欲しいと何度も言っているじゃないですか。』
『そうだったのう』
「魔獣が襲ってきます。」しばらく馬車が進んだ後にエルフィが叫ぶ
「馬車止めまーす。」私はそう言って馬車を止める。すでにエルフィは、馬車の上に登って弓を引き絞っている。
「かなり大きいです。」
「当然じゃ、わしの残り香にも動じぬくらいじゃからな。」
「弓矢が効きません。それでは、魔法を乗せて、とりゃあ」
「どうじゃ。」
「刺さって、魔法が効いているみたいですけど、平然としています。いや、むしろ元気になった気が・・・」
「まさか、回復魔法を乗せてはおるまいな」
「ありゃ、つい間違えました~」
「ばかもの」
「接近してきます。いや、突進してきます。」エルフィが叫んでいる。
「ユーリ行きまーす。」その言い方どこで憶えたんですか(以下略
「おう、まかせた。メア、サポートじゃ」指揮はモーラですか。
「がってんです」だから(以下略
メアさんが、突進してくる魔獣の牛のような角を捕まえて動きを止め、ユーリがメアの脇をかいくぐり、首を目指して剣先をねじ込む。
「くっ浅い。」さすがに重量級の魔獣との戦闘は不慣れなのか、突き殺せなかった。メアさんが角で体制を崩される。
「まずい!!」メアとユーリお互いがお互いを心配して動きが鈍る。その時、後ろから大きな影が崩れかけたメアの後ろから角をつかみ、ひねる。あっけなく首がちぎれる。
「す、すごい。というかあなた誰ですか。」
ひねり殺した魔獣の首を持ったままの上半身裸の巨大な女性がそこに立っている。
「あ、私はパムです。ごめんなさい裸で。」
「えええええええええ」
巨大化したパム、上半身は裸である。ちぎれた服が腰からぶら下がっている。
「なるほどのう」ニヤニヤしながらモーラが見ている。
メアさんが、フード付きのマントを持ってくる。さすがにそんなサイズの服はありません。そうしたら、今度は縮んで、元の大きさに戻りました。けっこう苦しそうです。とりあえず持ってきたフードをかぶせ、馬車の中に戻りました。
「どういうカラクリじゃ。」
「わかりませんよ。でも、聞きづらいですね。とりあえず助けてもらってありがとうございます。でしょうか。」
戻ってきたパムは、メイド服を着せられていた。そんなサイズ用意していたんですか?
「すいません服までお貸しいただいて。」
「いえ、それはたぶんメアさんのよこしまな心の産物ですので、処分しておいたほうが良いと思いますので」
「ご主人様ひどいです。これは、私が小さいときから大事にしていた・・」
「そうなんですか?お返しします。」真面目に脱ごうと知るパムさん。
「ああ、冗談です。」真顔で言わないでください。
「はあ、」
「メアさん」
「はい」
「これどうしましょう。」
「解体・・・ですね」
さすがのメアさんもため息が出ます。でかすぎます。
一方、魔族の方々は、見張りからの報告を聞いていたようです。
「ほう、あの野獣を一撃か。」
「はい、あのドワーフが文字どおり首をひとひねりでした。」
「誰とやってもおもしろそうだな。だが、あの一行を統率している男が一番強いのだろうなきっと。」
「でしょうねえ。」
「まあ、楽しみだ。だが、もう少し試してみたいなあ。」
「では、こうしましょう」
「そうだな、そうしてくれ、それで全滅するようなら俺が出るまでもない。」
全員で静かに笑っている。
○夕食
たき火の炎が明るく感じる薄暮です。全員がよだれを垂らしながら肉の焼けるのを見ています。メアさんがたき火の上で肉の塊をあぶっていて、焼ける匂いは非常に香ばしい。
さきほど倒した魔獣です。とても大きい。あれから、解体作業に入ったのですが、でかすぎてほぼ半日を使ってもまだ、作業が終わらずにここで野宿することになりました。
魔族の森と言ってはいるけれど、エルフィの魔法による解毒も必要ない位、綺麗な水の湖が近くにあり、私が水を精製することもなく水も確保できた。ただし、入浴できるかと言えば、周囲に魔族の監視の目があり、はずかしくてとても入れる状況にはなかったため、みんなはあきらめた。ユーリは、あれから、パムに教えを乞い、剣技の練習にはげんでいます。
私は馬を連れて、近くの草原に行きました。もう、この馬達は、どんなに恐い魔獣に遭遇しても驚かないくらい落ち着いています。まあ、いつも魔獣より恐い者を乗せているんだから当然なのかもしれません。それでも周囲にいる魔族を敏感に感じているようです。それでも動じることは無いのです。水辺で水を飲ませ、体を拭いてやる。動物は素直でいい。うちの人達はもう・・・
「もう、なんじゃ申してみい」そう言ってモーラがやってくる。
「とっても素敵です。私にはもったいないくらい。」お世辞を一応行っておきます。
「うそつけ、心をのぞくぞ」
「それより、ひとりで歩き回って大丈夫ですか?」
「ああ、誰に言っておる」
「はい、その先は言わないでね、誰が聞いているかわかりませんから」そう言ってアンジーも来ました。
「なんじゃアンジーも来たのか」
「モーラが抜け駆けしないようにね」
「ほっとけ。」そう言って座る。アンジーも座る。私も手近な木に馬の手綱を結び、横に座る。
「良い景色じゃ、いやされるのう」『つけられておるな』
「良い景色ね。」『そうね、あのドワーフの子よ』
「魔族のエリアでこんな風景なので違和感がありますね。」『どういうことですか』
「しばらく前までここは、人間のエリアだったのじゃろう。」『わしらが天使様御一行か見極めようとしているな』
「魔族だからってなんでも破壊するわけでも汚染するわけでもないわよ」『どうやらそうみたいね。』
「頼みますからこういう風景を壊さないで欲しいですね」『それをする意味がよくわかりませんね。』
「そうじゃな。心が洗われるようじゃ。」『どうする直接聞いてみるか?』
「いつまでも見ていたいですがねえ」『何か事情があるのでしょう、彼女から言って来るまで、待ちます。』
「そう言うと思った」
『アンジー声に出していますよ』
『あ』
「皆さん食事の用意ができましたよ」メアさんが呼びに来ました。その時には彼女はもう戻っていたようですね。
食事の時にはパムはユーリと話していました。というか、ユーリがパムを離さなかったというのが正しいですね。
ユーリが疲れたのでしょうか、居眠りを始めて、メアさんが毛布を掛けています。
パムさんがこちらに来て隣に座りました。
「ユーリが離れなくてすいません。」
「いえ、彼女は、とても筋が良いですね。まだまだ伸びしろがある。教え甲斐のある生徒という所ですね。」
「ドワーフの里には学校があるのでしょうか。」
「普通は、親が子に教えるのですが、残念ながら機会が無くて。」
「そうですか。教えることで気がつくこともありますからね。」
「はい、ユーリさんからは自分でも気付かなかった点を逆に教えてもらったりしています。」
「それは良いことですねえ」
「それと、こんなに楽しい夕食は初めてなので、とても感謝しています。」
「そうですか。いつも一人で食事をされているのですか?」
「はい、いつも一人です。」
「それならなおさら、ここを越えてもしばらく一緒に旅しましょう。」
「ありがとうございます。」
続く
山あいの細い道を走っている。さすがに道が細いので、馬たちも用心してあまりスピードを上げないように走っている。
手綱を取っているのは、私ですが、ほとんど馬たちが勝手にスピードを調整しているのでただ、手綱を手に持っているだけです。ええ、別に御者など必要ないみたいです。
そんな道の途中でメアさんが私に声をかけました。
「囲まれていますね。」
「ああ、どうやら魔族らしいのう。」
「敵です」ユーリが自分の大剣を手元に引き寄せる。
「皆さんもわかりますか。」
「かなりの人数です~。馬車を囲みながら移動しています~。」さすがエルフィそこまでわかりますか。
「馬車を壊されると困りますねえ。」
「心配するのはそこか」
「まあ、殺されたら馬車も何も必要なくなりますけどね」アンジーがちょっと怖がっています。
「こんなところで徒歩にはなりたくないわ」
「ですよねえ。」
「馬車を止めます。」
私はそう言って、手綱で馬に合図をする。馬たちは、周囲の気配に気付いているはずなのだけれど、静かに止まって暴れもしない。本当にこの馬達は肝が据わっている。魔族に動じない良い馬です。まあ、いつもドラゴン乗せて走っていますから慣れているからなのでしょうか。
馬車を止めると、囲むように周囲に人影が現れる。人ではない、その大きさからそれはわかる。魔族なのだろうか、そういえば、これまで魔族の方とお会いしたことがありませんでしたね。でもやけに体毛が多いような。
「そこの馬車に一人、客が紛れ込んだだろう、渡せ。」
とりあえず、馬車の手綱をエルフィに任せて、私が御者台から降りる。メアさんが私に付き添う。
「さて、私たち6人しか乗っておりませんけど。」
「これだから人は、その馬車の下にへばりついている奴のことだよ。」
私は、メアさんに顔を近づけ耳打ちする。
「メアさん気付いていましたか?」
「ええ、追われているのか、囲まれる前に気配を殺して床下にへばりついていました、殺気も放っていなかったですし、周りの殺気の方が気になりましたので放置していました。気付いていなかったのですか?」
「残念ながら、周りの方が気になって、細かいところまで注意ができていませんでした。すいません。」
「ご主人様のせいではありません。この気配の殺し方は、訓練を受けています。」
「これはまた、やっかいな。」
「どうした、早くしろ」
「とりあえず、その人に出てきてもらいましょうか、出てきてもらえますか?」
「はい」
馬車の下から人が。いや、その骨格や肌の色で人ではないと思いますが。女の子のようです。体格の良いグラマラスな女性が出てきました。
「さきほどの気配とちょっと違います。さっきの気配よりかなり大きくなっています。」
その大きさにメアさんが戸惑っている。
「そうですか。」
私はその人のところに近づいてこう言った。
「確かにいらっしゃいましたね、隠れていたという事は、何か事情があるのですね?」
「はい、この辺で道に迷ってさまよっていたのですが、何かあの方達の縄張りに入ってしまったようで、追いかけられていました。誤解なのです。」
「でも、私達の馬車の下に隠れたのはどうしてですか?」
「色々な匂い、気配を感じたのでこの中に紛れれば、見つからないかもしれないと思ったからです。すいませんでした。」
「それは、仕方ないですね。」
「ご主人様!」
メアさんはびっくりしている。確かに仕方ないことではありません。私達を故意に巻き込んだのですから。
「でも、そうでもしないと逃げ切れないと思ったのですね。」
「はい、でも見つかってしまいました。」
「念のためもう一度聞きますが、何もしていないのですね。」
「はい、何もしていません。」
「わかりました。」
私は、その人をそこに残して再び引き渡しを要求する人の方に向かっていく。
「本人は、誤解だと言っています。信じられませんか?」
「なんだよ、あんたそのドワーフの味方をするのか。」
「ドワーフなんですね。初めて見ました。そうなのですかドワーフさんですか。とりあえず、何もしていないという人をお渡しするのもちょっと後味が悪そうです。」
「いや、おまえ達の馬車の下に身を潜めて逃げようとしたんだぞ。おまえたちを巻き込んで逃げようとしているんだぞ。そんなやつの味方をするのか。」
「まあ、誤解を解けないまま捕まって拷問されても嫌でしょうし、こうやって話をしている間に隙があれば逃げることもできそうじゃないですか。もっとも逃げる気はなさそうですけどねえ。」
そうして、そのドワーフの女性を見る。うなずいている。
「公正なジャッジをする人が欲しかったのですねえ。きっと」
「なるほどな、一方的に裁かれるのは嫌だったと。」
「そうなりますかねえ」
「おまえ、こうやって俺らと話しをしているが、普通の人間だったら、さっさとそのドワーフの女を置いて逃げているだろう。だが、おまえは、平然と俺を見て話をしている。まあ、俺らは温厚な方だから、こうやって話し合いをしているわけだが、いきなり襲われて殺されているかもしれないんだぜ、随分と腕に自信があるんだな。」
「ありませんよ。ただの成り行きです。だって、止まれと言われて止まって、下に誰かいると言われて、そこから人が出てきた。たったそれだけのことが起きただけなのでです。そこに私が逃げられる状況なんてありませんよ。」
「ああ、そういえばそうだが、普通は俺の姿を見て魔族だとわかった瞬間に逃げる算段にはいるぜ。」
「そうなのですか、それでは、逃げましょうか。」
「逃げられるわけ無いだろう。周囲には俺の部下が逃がさないようにしているんだ。」
「ではどうしたらよいのでしょうか。」
「とりあえず、どんなやつが乗っているのか馬車から全員出てきてもらおうか。」
「わかりました。皆さん出てきてください。」そう言うと、みんながぞろぞろと出てくる。
「これで全員です。馬車には他に誰もいないですよ。」
「確かに気配でも誰もいないな。」
「はい、ここにいる全員。つまり7人で全員です。」
「旅人、きさま名前は」
「しがない魔法使いとその家族です。」
まあ、貴様に名乗る名前など無いと言いたいところですが、やめておきます。
その魔族は、全員を一瞥して、ある人に目がとまったようだ。
他の魔族の者が耳打ちをしている。
「ちっ、わかった。」
「今は引いてやる。だが、そいつが、何かしていたら引き渡してもらうからな。」
「私の方でも聞いてみますので、それでよろしいですか?」
「ああ、そこのドワーフ、これですむと思うなよ。」
「少しだけ聞いて良いですか。ドワーフは、魔族と共存しているのではなかったのですか。」
「それでもルールはあるんだよ、縄張りを越えてちょろちょろしやがって、ここは、魔族のものになっているんだ、断りもなく入ったら殺されても文句は言えないだからな。」
「でも、ここは、少し前まで境界の町だったはずなんですが。」
「いつの話をしてやがる、もう十年近くは経っているぞ。」
「では、私たちも同罪ですね」
「はあ?一応な、俺らにもプライドって奴があるんだよ。ただ通行している奴は、一応警告もするが、何もなければそのまま通す。今回は、そいつを追っていたからたまたま引っかかったが、通るだけなら無視していたんだよ。」
「そうですか。それはありがとうございます。」
「ん?、だが、おまえらは、少し違うな。怪しい匂いがプンプンしている。そうだな、おまえらなら、いずれは声をかけたとは思うわ。それでも何もしないならいい。そいつもこちらで調べて何か出たらお前らごと殺す。」
「私たちは、何もしていないし、するつもりもありませんがねえ、」
「言葉は信用できねえ。態度で示しな」
「それでは、失礼します。」お辞儀をして馬車に乗り込む。
「メアさんその方を馬車に」
「はい」
そうして最初の騒動は、なんとかなった。
魔族は引き上げるにあたって監視役を置いていったようだ、馬車の周囲に適当な間隔を置いて、数人動きを監視している。構わず私達は、馬車で移動を始めた。
魔族の方は、残っていた魔族達の中で、頭領らしき物が数人を呼んだ。
「あいつら強いな。」
「大ボスからは、遭遇したなら殺しても良いと言われている連中ですよきっと」
「ああ、あんなケチな獲物を追っていて大物が引っかかったのか。でも、あいつらもったいないなあ。殺すにしても少しは楽しみたい。」
「ならば罠を仕掛けますか。」
「罠を?面倒だな。だが、他の奴らに邪魔されたくないからな、周囲から見えないところで、どんなものなのか試してみたいぜ。」
「数日のうちに渓谷がありますぜ。そこなら他の奴らの邪魔は入らないかと。」
「おう、そうするか。とりあえずあいつに連絡をしろ。後から変に難癖をつけられてもこまるからな。」
「いいんですかねえ、連絡は必要なときはあっちからしてくると聞かされていますが。」
「おれは、そういう所は慎重なんだ。だからこそおいしいことにもありつけるんでな」
「わかりやした。機をうかがいます。」
「まあ、あの渓谷までまだ数日はあるだろう。あの馬車の他の連中に気付かれるな。もちろん俺たち以外の他の仲間にも知られるなよ」
「わかっていますよ。」
エルフィに手綱を代わってもらい馬車の中に移る。
「少しは落ち着きましたか」
「はい、大丈夫です」体は少し小さくなったように見えますが、気のせいですかね。
「また来ると言っていましたね。」
「ですから、私を相手に引き渡せば、良かったではありませんか。」
ああ、その怒っているようなすがるような、そしてちょっとうれしそうな目が私の心を動かしますね。
「でも、何もしていないんですよね。」
「はい、勘違いされるようなことをしたのかもしれませんが」
「ならばこちらに非はありません」
「それにしても、ひとり旅なんて、あなたはこれからどちらに行かれるのですか。」
メアさんが心配そうに聞いた。
「修行のためのひとり旅ですので、行く先は決めておりません。ですが、こんなことに遭ってしまうと少し先行きが不安になりました。」
「そうですか、しばらく一緒に旅をしましょうか。ああ言いながらもこの地域を抜けるまでは、襲ってくる可能性がありますから。少なくともここを出るまでは一緒に行きませんか?」
「もう、相手の都合も考えずに」アンジーが怒っています。
「私は別にかまいません。むしろお願いしたいくらいですが。それでいいのですか?」
「私は、旅は道連れ、世は情け、情けは人のためならず。旅の仲間は皆家族というのを自分の座右の銘としておりますので。」
「いつから、そんな座右の銘を刻むようになったんですか。突っ込みどころ満載です。」アンジーが吠えています。
「さきほどからです。」
私は涼しい顔で言いました。だってあんな顔をされたら助けたくなるでしょう。可愛いですし。
『はあ、やはりそこですか。』とアンジー
『すけべ~』とエルフィ
『まったくじゃ』とモーラ
『本当に~』とエルフィ
『それが本心とは思えませんけど』とメア
『ええ、ご主人様のやさしさですよね』とユーリ
「何から何までありがとうございます。私は、パムと申します。見ての通りドワーフです。失礼ですがお名前を」
「今回は、「大丈夫」だったようじゃのう」モーラがつぶやく
「本当に。いつもこうなら良いですけど。」とアンジーがつっこむ。そこの2人余計な事は言わない。
「私は、しがない旅の魔法使いです。何と呼ばれましてもかまいません。」
「あ、私アンジー、職業子役、4人姉妹の3女役ね」
「ちがうじゃろ、3女役では無くてニセ天使じゃろう」
「モーラその話はなしで、誤解されるから。」
「わしはモーラ。職業子役、末っ子役じゃ。」
「私は、メア、職業メイドです。」
「私は、ユーリ、職業子役、えーと次女役になるのですか。」
「私は~、エルフィ~、職業冒険者で~す。役は長女?」御者台から叫ばないでください。よく聞こえていましたね
「違う、飲んだくれ」
「泥酔者でしょう」
「ひどいです~、最近飲んでないのに~。」だから叫ぶなと。
「皆さん、勝手なことを言っていますね。気にしないでください全部冗談ですから」
「でも、その方が天使様で、全員で6人ならば、噂の天使様ではないのですか?」
「ほほう、有名になったものじゃのう」
「モーラのせいですからね」
「あの噂は、誤解なのですよ。私たちは、たまにそういう目で見られてしまいますけれど、そんな噂の方々とは全然違います。そのことでかなり迷惑しています。」
「そうなんですか。魔族の襲来を予知できる天使様と水神様のお使いの天使様の噂があります。どちらか一方の方々なのかと思いました。」
「水神様のお使いの方は、水神様のお作りになった虚像だったと聞いていますよ。魔族の襲来を予知する天使様は、力が無くなったと聞きましたよ。」
「ずいぶんおくわしいんですね。」おお、するどいつっこみ。
「はい~本にん・・・」口が軽いですねエルフィ。その口を塞ぎに瞬間移動したメアさんに瞬殺されてください。でも、その動きを見てパムさんがびっくりしていますよ
「旅をしているといろいろな情報が入って来ますから。特にその噂はどちらもその商隊の人達から聞いたので間違いないですよ。」
「そうですか、実は、先ほど修行と言いましたが、もちろん修行もして旅しているのですが、その方達にお会いできないかと、その噂を求めて旅していました。皆さん全員で6人ですし、魔法使いの従者の方だけが男で、残りの方が全員女性だと、その中にはエルフの方もいらっしゃると言っておりましたので、もしやと思っていましたが、違うのですね。」
『ずいぶん詳細なことを知っておるな。もしや手配書でも回っておるのか?』
『さすがにそれはないでしょう。でも、あまりにも正確すぎますね。』
「そうですか、そんなに具体的な噂がでているんですね、確かにそれならうちの家族が間違われてもしかたがありませんね。」
「家族ですか。」
「血はつながっていませんけれど家族ですねえ。」
「うらやましいです。」
「そうですか?少なくともこの子は、私が町から預けられた孤児ですので」不安そうなアンジーの頭をかかえてなでる。そうですこれは、本当です。大きな嘘は、小さな本当をまぶすと本当に見えるものです。
「あとの子達も同様に身寄りがありませんから身を寄せ合って旅をしています。」
「そうなんですか、複雑なんですね。」
「わしらは、気にしておらんがなあ」
「これこれ、そういう話し方はやめてくださいっていったでしょ。」本当にこのロリばばあは、やめてください。
「いいじゃろう別に。わしが育ったところではこういう話し方をするもんじゃと教えられているんじゃから」
「そうなんですか、けっこうばばくさいですね。」
「ああ、誰に対してもじゃ、年齢も性別も関係なくつこうておる。すまんな勘弁してくれ」確かにこの中では最高年齢でしょうしねえ。
「いま、手綱を持っているエルフの方もですか?」
「そうですよー、訳ありでーす」
手を振っている。今の話し声聞こえていましたか?耳が良いんですね。エルフィ。魔法の通信では、人の声まで中継できないはずですが?
「そういうこともありますか。皆さん良い関係なのですね。うらやましいです。」
「立ち入ったことをお聞きしますが、お一人なのですか?」
「はい、一人です。身寄りはありません。」
「お里の方にもですか?」
「はい、天涯孤独です。」
「すいません、立ち入りすぎました。」
「いえ、これまで私のことを聞いてくれる方もおりませんでしたので。」
「修行と言っていましたが、どのような修行をしているのですか」
「ええ、私たちは、魔力がほとんどありません。ですので、この腕一本で生きていかなければなりません。幸いなことに鍛えれば鍛えるほど体力・筋力はついていきますので、こうやっていろいろなところを回って冒険者まがいのことをしながら旅をしております。」
「そうなんですか。これからというところですね。」
「はい、道は始まったばかりです。」
「ところで、噂の天使様一行を探しているといっておったが、会ってどうするつもりじゃ。」
「もちろんお手合わせをお願いしたいと思いまして。」
「なるほどのう、じゃがそもそも、そんな者達がいないとすればどうする。」
「どういうことですか。」
「噂だけで、実際に存在しない、まあ童話の中でてくるような架空の人物の可能性じゃ」
「確かにそれは可能性としてありますが、さきほどこの方が、その商隊の方から聞いたと言っていましたが、」
「そこじゃ、わしらも実際見たことが無い。その商隊の者は見たと言っているが、それが真実なのかとな。そやつらが噂を流していて、わしらがそれにだまされている可能性じゃよ。」
「なるほど、わざと噂を流していると」
「ああ、どんなことも斜めに見なければいかんと思うのじゃ。」
「モーラ、あんたねえ。本の読み過ぎ。ばばあしゃべりといい、こんな変な講釈をたれたりと、年齢にそぐわないでしょ。自重しなさい」おお、アンジーのお姉ちゃん発言。なじんでいますね。
「しようがなかろう、そういう環境で育ったのじゃから。」環境のせいで逃れるつもりですか、ちょっと無理があるでしょう。
「まあまあ、確かにその可能性は否定できませんねえ、実際私たちは見ていないのですから。」そりゃあ本人達ですから見られるわけがありません。詭弁ですね。
「メアさんどう思いますか?」
「私ですか。これは、結局周囲がどう見るかでしょう。私たちのことを見れば、そういう風に見えても仕方が無いと思います。」ナイスフォローです思わずサムズアップしそうになりましたよ
「僕もそう思います。相手がそう思ってしまうと、どう誤解を解こうとしてもそう解釈されてしまいます。」ユーリが雄弁です。まあ、自分自身の経験ですからね。
「私は誤解されていませんよエルフはエルフです。そんなすごい人達の仲間だったら逃げ出していますね。」ぼろを出すなっていうのにだしますかこのダメエルフ。
「どんな風にすごいのですか?」ほーら言われた。
「エルフィが答えるまでも無く、魔族の襲来を予知できるのならすごいわなあ」
「でも、今、人達と言いましたよね。知っているんですか?」おお、良いところをつく。
「天使と魔法使いで達ですねえ。天使様は何も話さずその魔法使いが語ったとか」
「ああ、そうなんですか。ひとつ勉強になりました。」
「あくまでその商隊の者から聞いた話じゃ。」
「でも、水神の使いの方の天使様については、ほとんど情報が無いのです。その魔法使いしか話さなかったようだというのは、初めて聞きました。情報として有用です。」
『あ』
『ばかもの、お主が墓穴を掘ってどうするのじゃ。』
『だって、エルフィがよけいなことを』
『てへ?』
『てへじゃないですよ』
『そうです声に反省の色が見えません』
『だってこの人みるからに悪い人じゃ無いですよ~。ばれても大丈夫な気がします~。』
『でたな根拠の無い推測が』
『確かにエルフィの勘というか感覚はこれまで外れていませんけど』
『でしょう~、そろそろ信じてくださいよ~。』
『信じているからと言って、従うかと言えばそういうものではないわ』
「皆さん急に黙り込みましたがどうしましたか。」パムさんが不思議そうに私達を見て言った。
「ええ、確かにその情報が私の思い込みで無いのかと記憶をたどっていました。どうも私が勝手に思い込んでいただけだったみたいです。」
「ああ、そうでしたか。皆さん全員黙ってしまわれたのでどうしたのかと思いました。」
「たぶん皆さん今の指摘で記憶をたどったのだと思います。」
「全員で、ですか?」
「みんな私の記憶があやふやなのを気にしていますから」
「そうなんですか。うらやましいです。」
「うらやましい・・か?」
「ええ、そんな風に他人に気にしてもらったことがないので。」
「ああ、そうか。まあ、一緒にいればそういうことも多々あるじゃろう。」
そしてしばらく馬車は進む。光の加減かチラチラと木漏れ日が入ってくる。アンジーが急に嫌そうな顔をしてそわそわしだし、めずらしく御者台に移った。
しばらくして、アンジーが言った
「そろそろ休憩にしませんか。馬車を止めてください」
「どうしましたか」
「ちょっと酔ったかも」
「大丈夫ですか?最近はなかったのに。」
「気晴らしに少し歩いてくれば治ると思うの。」
「はいはい、あまり離れないでくださいね。嫌でなければご一緒しますが。」
「はあ?で、あなたの目の前でしろと言いますか?」
「ああ、そっちですか。そうでしたかすいません、それでも、気をつけてください。皆さんも散策して気分転換しましょう。」
全員が気分転換をしに森の中を散策している。残された2頭の馬は、逃げもせず静かに待っている。ええ、賢い子達なので大丈夫です。
「まったく急な連絡はやめて欲しいです。」アンジーが周囲を見回ししゃがみながらつぶやく。
「ああ、彼女は、わざとあなたたちに接触して、襲われて私たちの方に逃げたようだと。最初からそれが目的のようだというのね。あなた達の間者では無いのね。それが、聞けたのはありがたいわ。」
「私たちを襲うの?襲うにしても、ケガしないように気をつけてね。させないようにじゃなくてしないようによ。いつも急に襲うから私も気が気では無いのですけどね。ええ?今度はけっこうきついのですか。それでも、私も巻き添えにするくらいにやってくださいね。でないと私の正体がばれてしまいますので。本当に直接の連絡はやめてください。今回のも良いですから。本当に連絡が欲しいのは、彼を暗殺するとかそういうときだけにして欲しいのだけれど。」
アンジーは、立ち上がってその場を去り、馬車の方に戻っていく。アンジーは、離れたところに人影があったのに気付いていなかった。
そうして、アンジーが戻ってきた。メアさんもいつの間にかいなくなりいつの間にか戻ってきていた。
「おう、おなかが空いたぞ」モーラが私の服の裾を引っ張っています。仕草が可愛すぎて、萌え狂いそうです。
「干し肉で我慢してください。」
「お風呂ー」アンジー足をバタバタさせるのやめてください、可愛すぎて萌え狂いそうです。
「知らない人がいるんですから我慢してください。」
御者台にいる私の両隣でごねる可愛い子供達のフリですが、要求は大人ですね。
『ぬしも疑っておるのじゃろう?』
『何を疑うというんですか。』
『あのドワーフじゃよ』
『ああ、そうですね不自然ではあります。』
『魔族方面?』
『そんなまどろっこしいことするわけ無いじゃろう。とっとと殺した方が早かろう。』
『ですよねー、泳がせておく理由が無いもんねー』言葉の乱れは心の乱れですよアンジーさん。
『にしても新鮮な肉が食いたいのう。』
『そうね、そして、お風呂』
『お肉は何とかしますから、お風呂は我慢してください。』
『何とかするのか。』
『あなたをシールドで囲えばきっとでかいのがつれますよ。』
『なるほどな、では、ここで狸寝入りをするので、シールドで囲え。メア、ユーリ、エルフィ頼んだぞ』
『了解しました!!』三人同時に敬礼していますよ。いきなりなので、パムさんがびっくりしていますよ。それより、どこでそんなポーズ憶えたんですかって、私の頭か。ってセルフ突っ込みは置いておいて、指を小さくパチリと鳴らすふり。もちろん音はしていませんけどね。モーラを持ち上げて、周囲に見えないシールドが作られる。
『おお、クッションがついてふわふわじゃ、なんじゃこれは、前のと違うぞ』
『ああ、前のは固くて不評でしたから内側に弾力をつけてみました。居心地はどうですか?』
『お主、本当にこういうことだけは優秀だのう』
『お褒めいただき光栄です』
『皮肉じゃ、もっと攻撃魔法とか憶えんか。』
『だから、師匠が欲しいと何度も言っているじゃないですか。』
『そうだったのう』
「魔獣が襲ってきます。」しばらく馬車が進んだ後にエルフィが叫ぶ
「馬車止めまーす。」私はそう言って馬車を止める。すでにエルフィは、馬車の上に登って弓を引き絞っている。
「かなり大きいです。」
「当然じゃ、わしの残り香にも動じぬくらいじゃからな。」
「弓矢が効きません。それでは、魔法を乗せて、とりゃあ」
「どうじゃ。」
「刺さって、魔法が効いているみたいですけど、平然としています。いや、むしろ元気になった気が・・・」
「まさか、回復魔法を乗せてはおるまいな」
「ありゃ、つい間違えました~」
「ばかもの」
「接近してきます。いや、突進してきます。」エルフィが叫んでいる。
「ユーリ行きまーす。」その言い方どこで憶えたんですか(以下略
「おう、まかせた。メア、サポートじゃ」指揮はモーラですか。
「がってんです」だから(以下略
メアさんが、突進してくる魔獣の牛のような角を捕まえて動きを止め、ユーリがメアの脇をかいくぐり、首を目指して剣先をねじ込む。
「くっ浅い。」さすがに重量級の魔獣との戦闘は不慣れなのか、突き殺せなかった。メアさんが角で体制を崩される。
「まずい!!」メアとユーリお互いがお互いを心配して動きが鈍る。その時、後ろから大きな影が崩れかけたメアの後ろから角をつかみ、ひねる。あっけなく首がちぎれる。
「す、すごい。というかあなた誰ですか。」
ひねり殺した魔獣の首を持ったままの上半身裸の巨大な女性がそこに立っている。
「あ、私はパムです。ごめんなさい裸で。」
「えええええええええ」
巨大化したパム、上半身は裸である。ちぎれた服が腰からぶら下がっている。
「なるほどのう」ニヤニヤしながらモーラが見ている。
メアさんが、フード付きのマントを持ってくる。さすがにそんなサイズの服はありません。そうしたら、今度は縮んで、元の大きさに戻りました。けっこう苦しそうです。とりあえず持ってきたフードをかぶせ、馬車の中に戻りました。
「どういうカラクリじゃ。」
「わかりませんよ。でも、聞きづらいですね。とりあえず助けてもらってありがとうございます。でしょうか。」
戻ってきたパムは、メイド服を着せられていた。そんなサイズ用意していたんですか?
「すいません服までお貸しいただいて。」
「いえ、それはたぶんメアさんのよこしまな心の産物ですので、処分しておいたほうが良いと思いますので」
「ご主人様ひどいです。これは、私が小さいときから大事にしていた・・」
「そうなんですか?お返しします。」真面目に脱ごうと知るパムさん。
「ああ、冗談です。」真顔で言わないでください。
「はあ、」
「メアさん」
「はい」
「これどうしましょう。」
「解体・・・ですね」
さすがのメアさんもため息が出ます。でかすぎます。
一方、魔族の方々は、見張りからの報告を聞いていたようです。
「ほう、あの野獣を一撃か。」
「はい、あのドワーフが文字どおり首をひとひねりでした。」
「誰とやってもおもしろそうだな。だが、あの一行を統率している男が一番強いのだろうなきっと。」
「でしょうねえ。」
「まあ、楽しみだ。だが、もう少し試してみたいなあ。」
「では、こうしましょう」
「そうだな、そうしてくれ、それで全滅するようなら俺が出るまでもない。」
全員で静かに笑っている。
○夕食
たき火の炎が明るく感じる薄暮です。全員がよだれを垂らしながら肉の焼けるのを見ています。メアさんがたき火の上で肉の塊をあぶっていて、焼ける匂いは非常に香ばしい。
さきほど倒した魔獣です。とても大きい。あれから、解体作業に入ったのですが、でかすぎてほぼ半日を使ってもまだ、作業が終わらずにここで野宿することになりました。
魔族の森と言ってはいるけれど、エルフィの魔法による解毒も必要ない位、綺麗な水の湖が近くにあり、私が水を精製することもなく水も確保できた。ただし、入浴できるかと言えば、周囲に魔族の監視の目があり、はずかしくてとても入れる状況にはなかったため、みんなはあきらめた。ユーリは、あれから、パムに教えを乞い、剣技の練習にはげんでいます。
私は馬を連れて、近くの草原に行きました。もう、この馬達は、どんなに恐い魔獣に遭遇しても驚かないくらい落ち着いています。まあ、いつも魔獣より恐い者を乗せているんだから当然なのかもしれません。それでも周囲にいる魔族を敏感に感じているようです。それでも動じることは無いのです。水辺で水を飲ませ、体を拭いてやる。動物は素直でいい。うちの人達はもう・・・
「もう、なんじゃ申してみい」そう言ってモーラがやってくる。
「とっても素敵です。私にはもったいないくらい。」お世辞を一応行っておきます。
「うそつけ、心をのぞくぞ」
「それより、ひとりで歩き回って大丈夫ですか?」
「ああ、誰に言っておる」
「はい、その先は言わないでね、誰が聞いているかわかりませんから」そう言ってアンジーも来ました。
「なんじゃアンジーも来たのか」
「モーラが抜け駆けしないようにね」
「ほっとけ。」そう言って座る。アンジーも座る。私も手近な木に馬の手綱を結び、横に座る。
「良い景色じゃ、いやされるのう」『つけられておるな』
「良い景色ね。」『そうね、あのドワーフの子よ』
「魔族のエリアでこんな風景なので違和感がありますね。」『どういうことですか』
「しばらく前までここは、人間のエリアだったのじゃろう。」『わしらが天使様御一行か見極めようとしているな』
「魔族だからってなんでも破壊するわけでも汚染するわけでもないわよ」『どうやらそうみたいね。』
「頼みますからこういう風景を壊さないで欲しいですね」『それをする意味がよくわかりませんね。』
「そうじゃな。心が洗われるようじゃ。」『どうする直接聞いてみるか?』
「いつまでも見ていたいですがねえ」『何か事情があるのでしょう、彼女から言って来るまで、待ちます。』
「そう言うと思った」
『アンジー声に出していますよ』
『あ』
「皆さん食事の用意ができましたよ」メアさんが呼びに来ました。その時には彼女はもう戻っていたようですね。
食事の時にはパムはユーリと話していました。というか、ユーリがパムを離さなかったというのが正しいですね。
ユーリが疲れたのでしょうか、居眠りを始めて、メアさんが毛布を掛けています。
パムさんがこちらに来て隣に座りました。
「ユーリが離れなくてすいません。」
「いえ、彼女は、とても筋が良いですね。まだまだ伸びしろがある。教え甲斐のある生徒という所ですね。」
「ドワーフの里には学校があるのでしょうか。」
「普通は、親が子に教えるのですが、残念ながら機会が無くて。」
「そうですか。教えることで気がつくこともありますからね。」
「はい、ユーリさんからは自分でも気付かなかった点を逆に教えてもらったりしています。」
「それは良いことですねえ」
「それと、こんなに楽しい夕食は初めてなので、とても感謝しています。」
「そうですか。いつも一人で食事をされているのですか?」
「はい、いつも一人です。」
「それならなおさら、ここを越えてもしばらく一緒に旅しましょう。」
「ありがとうございます。」
続く
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ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
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