巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第11話 森を救え

第11-3話 森を救え

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少し前に各地点を馬車で移動していた時のことです。
「今回のように複数の事柄が重なり合うと陰謀の匂いを感じますが、違ったみたいですねえ。」
「ああ、どうやらたまたま、重なっただけらしいな。それにしても、ドワーフの里は相変わらずじゃのう。」
「おじいさんは、いい人だったみたいですよ。里の人達は、パムを名残惜しそうに見送ってくれていましたから。」
「さすがに里の長に反旗など翻せないわなあ」
「さて、傷はどうなのじゃ」
「傷はたいしたことは無いですが、魔力がですねえ。少しばかりまずいですよ。どこにいるかわからない遠距離のパムと魔法でつながって、解毒や解呪など諸々やりましたから。」
「そうか。」
「それでもこの危機は乗り越えなければならないですよね。」
「ああ、一命に代えても必ず止めてみせる。」
「今回は、気迫が違いますね。さすがに土が汚染される危機となると気合い入りますか。」
「まあなあ、わしがおるのに土壌汚染とかありえぬわ。」
「それでは、参りましょうか。」

すでに後手に回っているのは間違いありません。すでに広範囲にわたって黒い闇が広がり始めています。モーラは、中心となっている現地の空に、馬車を手に乗せて、滞空しています。
森は次々と色を変え、緑から赤茶色に枯れ、朽ちていき、それを飲み込むように黒い闇が放射線状に広がっていく。ゆっくりとじわじわと黒い領域を広げている。
「ここまで広範囲にできる魔力量は、闇の奴の仕業か」
そうモーラが言うと、
「ああ?俺は何もしていないぜ。土の」
と、突然空中に男が現れる。黒ずくめの服に黒髪と顔の白さだけが際立つ。目も白目が極端に少なく見える。
「いつからここに」
「影のあるところ俺は存在する。そうだろう?」
「じゃが移動範囲は限られているじゃろう。いつからこの辺にいた」
「さすが、同族だな、俺のことをよく知っている。感心感心。」
腕を組んでうんうんと頷いている。
「お主くらいしかこんなことできんじゃろう。」
「そうでもないぜ、これくらいなら魔族ならできるはずさ。」
「お主が教えたのか?」
「はあ?俺がそんなこと教えるわけ無いだろう?見られたのよ。使ったところを。」
「おぬし、わざと見せたな。」
「そんなことはないわな。偶然よ偶然」
「なるほどのう。お主の技なら止め方も知っておろう。」
「おきてしまったものは、止められない、込められた魔力がつきるまでな。まあ、光の属性の魔法があれば何とかなるかもしれんなあ。」
「方法をしらんのか」
「それは無理でしょ。おまえだって、地震の起こし方は知っていても止め方は知らないだろう?」
「う・・・」
「そういうものさ魔法なんて。でも、この魔法は大丈夫みたいだ。しばらくしたら止まるらしいから。」
「いつじゃ。どのくらいの範囲を闇に包み込む。」
「そうだな、この魔力量なら、この森をすべて壊したらたぶんな。」
「エルフの里もか」
「入るかもしれないし入らないかもしれない。そんなのこの魔法を構築していないから、それくらいのことしかわからないなあ」
「そうか。」
「何とかしようなんて思わない方が良いぜ。」
「わしは土のドラゴンじゃ、土がこのような状態にされてほおってはおけぬ。」
「そう言うだろうと思ったよ。でもな、ひとつ警告するけど、今回の件に直接手を出すことはやめたほうがいいぜ。」
「は、今更。ここまでひどくなっているのを見過ごせというか。」
「だからさ、実は俺もなあ。俺の魔法を見られたのをちっとは後悔しているのさ。でも、この後、おまえがその作業を始めたら邪魔しに来るらしいのよ、まあ、それを知ったのは、話しているのをちらっと聞いただけなんだけどな。だから来ないかもしれないがね」
「わかった。見ているだけならここからいなくなってくれんか。わしが手を出すにしろ、出さぬにしろ、おぬしに見ていられたらやりづらいわ」
「はいはい、さすがに同族が傷つくのを間近で見るのは気が引けるので、退散するよ。」
 そう言って闇のドラゴンは、そこから消えた。

「さて、どうじゃ、あまり情報は引き出せなかったが。何かわかったことはあるか」
「いいえ、私の知識の引き出しではなんともできません。」
「やはりそうか。このままか」
「まったく使えない魔法使いですねえ。しようがないですね。私の力を使うしかないようですね。」
「頼めるか。でもこれだけの範囲を浄化するとなると」
「そんなことを言っていられる状況ではないでしょう。やるしかないのよ」
「いいのか?」
「私は堕ちたとはいえ天使ですよ。こんな悪逆非道な行為を知っていたのに何もしなければ、私自身が一生後悔します。」
「これまでも使えたのか。」
「使えなかったわけではありませんが、使うタイミングも無かったでしょう?」
「確かにそうじゃが」
「こんなにひどいことをするとは、魔族って・・・」
「エルフィさんお願いがあります。あなたの力で闇の拡散を少しの間だけ止めてもらってもいいですか?」
アンジーの丁寧かつ真剣な声にちょっとびびるエルフィ。少し考えてからこう言った。
「はい、反対側の山側と砂漠までは無理ですが。迷いの森に向かって広がっている部分なら魔力を広げて抑えられそうです。」
「では、出来るだけこれ以上範囲を広げないことだけを考えて、魔法を展開してください。たぶん回復魔法とシールドの併用でできると思いますから。」
「さて、モーラ。浸食が発生したと思われる中心地に私を降ろして欲しいの。」
「大丈夫なのか?」
「私?ええ、私自身は大丈夫。浸食されることは無いわ。でも、魔法発動前の詠唱と魔法行使中は、外部からの攻撃に無防備にならざるを得ないのよ。なのでこの人を借りるわ。」
「あ、ああ」
「モーラは、私とこの人を降ろした後、今度は、エルフィを連れて迷いの森の側の浸食している最前線に降ろして、闇の侵食を食い止めて。たぶんさっきの闇の人の話だと敵が来る。メアとユーリはそれを防いで。」
「わしは・・・」
「とりあえずドラゴンは中立なのでしょう?だったら手を出さないでね。」
「しかし、」
「いい?モーラは、モーラの力は、本当に最後で最後の切り札なのよ。わかるわよね、土のドラゴンさん。私がこの地を浄化した後のことを」
「そういうことか。わかった。」
「いつもこれくらい物わかりが良いといいのだけれど。」
「さて、エルフィどうなの?」
耳に手を当てていたエルフィにアンジーが問いかける。
「はい、すごい数の魔族が接近しています。」
「だそうよ。急いで。」
「そうそう、ユーリ、メア。そんなに身構えなくても私の魔法は一瞬よ、詠唱に時間がかかるだけ。それまでの時間、エルフィを守って。一瞬で浄化されれば、作戦の失敗に気付いて魔族も帰って行くはずだから。」
「わかりました。」
「魔力が厳しいからお話しはここでおしまい。私がダメでもモーラがいるのよ、みんな緊張しすぎよ」
「そうじゃな」
「そうそう、リラックス、リラックス」
でもアンジー、そう言って無理に笑っているのが丸わかりです。みんなも笑いが中途半端です。
そして、モーラの手からゆっくりと2人だけで降りていきます。私は天使に戻ったアンジーに背負われています。地面に近づくとアンジーの足元だけ、黒い闇が逃げるように消えていき、地面が現れ始め、魔方陣が描いてあるのが見えてきます。
「まあ、そんなところよね。」
アンジーが地面に足を降ろし、私が地面の見えている範囲に降りたのを見たのか、モーラが馬車と共に3人を手に乗せて飛び去る。アンジーと2人きりになる
「本当のところはどうなんですか。」
私の頭の中には、他の4人の不安感が届いている。
「やっぱりわかっちゃった?みんな家族ねえ。実際はかなり厳しいのよ。」
「そうですか。」
「でもね、あきらめられないの。この世界とこの家族をね」
「まさか、」
「ああ死ぬなんて考えてないわよ。残念ながらね、生き残るつもり。そもそも無理なら最初からやるなんていわないわ。」
「では、あとよろしくね」
アンジーは、天使の羽根をさらに大きく広げ、地面に膝をつき両手を合わせる。私たちの周囲が光りはじめる。
「はい。よろしくします」
空には、無数の点がこちらに近づいてくる。まあ、空が敵で真っ黒じゃないだけ、ましかもしれませんね。
「さて、防御の方針は決まっていますよ。この周囲の闇の中に魔族を落とせば良いのです。残念ですが生きて帰してあげるというわけにはいかなそうです。」
そう言って私は、両手を広げて向かっている魔族に向ける。
「ライトニング」
私は雷撃を空に向けて撃ったが、まだ距離があり途中で拡散してしまう。ありゃ、まだ届きませんか。使い慣れないから有効範囲がわかりませんね。
「では、先日憶えたアイシング!」
氷のつぶてを発生させ、勢いよく遠くへ飛ばす。今度は飛びすぎましたか。でも、遠くの魔族にはあたって、翼を破かれ失速して落ちていきました。そうそう、重力軽減させて加速して打ち出していますので、かなりの貫通力がありますし、威力もなかなか落ちませんよ。
「次はサンダー」
雷も憶えました。広範囲にわたって一斉に落としましたが、効かない魔族やよける魔族などがいて、範囲は広いですが効率が悪そうです。
低空で飛来する魔族は、炎で横にひと薙ぎします。どうやらこの方が効率が良いですね。さすがに地上を進んでくる魔族はいませんから空中の敵だけになりますけど、全方位から向かってこられるのでちょっとつらいですねえ。定期的に後ろの方や両サイドをまとめて処理しなければなりません。
真上から来て、自分のそばに落ちてきたものは、起き上がって悪さをしないようにすべて焼き、低空で突っ込んでくるものは風の力で巻き上げて一気に燃やし尽くします。それでも、なぎ払ったものはもちろんそのまま落ちて闇に消えてしまい、こちらまで来ることはないのでかなり楽ですけれど。
そうして、どのくらい経過したのでしょうか。まだそんなに経っていないのかもしれません。本当にこういう時は、時間が長く感じますねえ。だからといって、さすがに催促もできません。淡々と事務処理をするように敵を落としましょう。ああ、さすがに頭が痛くなってきました。チリチリと脳が焼ける感じがしてきました。
「きたきたきたきたきたー」
アンジーが吠える。文字どおり吠える。私の頭の中にも響く。森を暗黒に包んでいた周囲の黒いものは、光に包まれ、そして塵になって天に向かって消えた。本当に一瞬だった。そこには、何も、そう何も無い白い大地が広がっている。木々も消え山肌がむき出しになり、まるで塩の山のようになっている。
「へへ、がんばったでしょ。ご褒美ちょうだい。」
天使だった姿は幼女に戻り、立ち上がって、シニカルに笑いながらVサインを出す。刹那、気を失って倒れ込む。近寄って抱きかかえる。
「よく頑張ってくれました。」
私の声に気がついたのか目が開く。
「光になって散るほどでは無いわよ。この体も維持できるくらいにはちゃんと魔力は残せたわ。」
なんかうれしそうですね。
「天使様、さすがですね。」
わたしもつられて笑ってしまいます。
「あんただって、そうとうやばいんじゃないの?手が震えているわよ」
「使い慣れない魔法を使っていますからね。」
「あんた、本っ当に戦闘向きでは無いわね。あと、ちょっとくっつきなさい。」
「え?」
アンジーが私の服に手を突っ込み手のひらを胸に当てています。
「ほんのちょっとだけ、ちょっとだけ魔力ちょうだい。」
『魔・く・が・撤・た・・て・・き・す。』
メアさんの声です。エルフィの魔力が安定しないのか、寸断しながら何とか届いています。
『どこまでですか。』
『私の探知範囲を越えていますので、ざっとですが20キロくらいには魔族の気配は感じられませんです。』
エルフィが告げる
『そちらの被害は?全員大丈夫ですか?ケガしていませんか。』
『エルフィの魔力がつきかけています。それ以外は大丈夫です。』
『わかりました、モーラさん』
『ああ、合流じゃな』
『はい、みんなを乗せてこちらに来られますか。』
『ああ、すぐ行く』
この通信は、相手の心情まで伝わってきますので、微妙な心の動きがわかります。心なしか、モーラの気分がすぐれないようです。どうしたのでしょうか。
「はー本当になにもありませんねえ」
ユーリが白い大地に立ちそう言いました。確かに闇とは違い暗くはないですけど、白い大地も絶望感がありますね。
「とりあえず、森のそばに行きませんか、ここでは、周囲から丸見えです。」
メアが周囲を見回しながら言った。
「そうじゃな」
モーラは元気なく答え、私たちを手に乗せてたぶん先ほどエルフィのいた地点に戻りました。モーラの幼女に戻り全員で白い大地を見ている。
「私の力で浄化はできたけど、この後どうするの。このあたり一帯は、逆に不毛の地になってしまったのよ。浄化は諸刃の剣。地中にある微生物や土の養分なども全部無に帰してしまった。草木も生えられないのよ。」
アンジーがつらそうに叫ぶ。そうだ、結果としてこれ以上の浸食は止められたが、元に戻せるものでもない。あきらめるしかないのか。
「そうじゃ、それはだめじゃ。生物が生きていけない世界、もちろん氷の世界も水の世界も、火山もみんな生きてはいけないが100%死んではいない。どんな土地・地域でも生き物が存在している。じゃが、ここはそうはならんのだな。」
「このまま放置されればね。何かを加えなければ。」
「わしの出番か」
「どうするつもりですか?」
「わしがここでこの土地と一体になる。」
「だめだよ、それはだめだ」おっと私としたことが、口調が変わってしまいました。
「いいや、お主がダメと言おうとわしが決めたのじゃ。」
「私はいやです。何か他の方法があるでしょう。探しましょう。」
「ならば、わしがここで土を癒やし、土に還る前にわしを取り戻す方法を考えてくれ。」
「だって、この土地と一体になったら、意識も無くなると、前に言っていたじゃないですか。」
「よく憶えておったのう。」
「だから、お願いします。私とともに生きて、一緒に暮らしてください。お願いします。」
「ああ、わしは幸せなドラゴンじゃ。こうして、いい男にも巡り会った。」
「出会ったなら、一生離れないで一緒にいてくださいよ。」
「・・・」
「昔あなたは、私に言いましたよね、この中の一人でも欠けたら私はその存在を自分を引き換えにしてでも一矢報いると。でも、それもできないじゃないですか。誰を恨めば良いのですか。」
「のう、お主、転生してきた名も無き魔法使いよ。お主の私や私たちに対する愛情はよくわかっているつもりじゃ。じゃが、わしはドラゴンじゃ。お主達人間を含めてこの世界を愛しているのじゃ。じゃからこの世界を守るためなら、お主達を守るためならこの身を捧げてもかまわないと思っている。なに、わしは土のドラゴンじゃ、風化していなくなっても、必ず復活する。真祖となる7体のドラゴンは必ず現れる。それがこの世界の理じゃ。安心せい。」
「ちょっと待ってーーーーー!」
彼方から頭に声が響く。ああ、以前にも聞いた声です。
「おや、風の、おまえが来たのか。よくここがわかったのう」
「来たのかじゃないわよ。こんなことになってしまって。さすがに我々もあなた達のことをずーっと見ていたのよ。」
「おお、そうか、里にもばれたか。まあよい。これからこいつらをよろしくな。」
「そうはいかないのよ。あなたに今いなくなられたらドラゴン界の均衡も崩れるのよ。」
「いや、そんなのはわしの知ったことでは無いのじゃ、この世界をこの森に生きるもの達をエルフ達の生活を守ることが今は最優先じゃ。」
「でも、あなたが欠けるとドラゴン大戦争になるのよ。せっかくあなたがこの世界の一部を救っても、その後この世界の人々は滅び、他の種族も滅び、最悪、世界そのものがリセットされるかもしれないのよ。」
「どういうことですか、」
「実はね、今回の件を手引きしたのは、魔族の中の急進派と結託した火と闇とあと、草木のドラゴンらしいのよ。つまり土のドラゴンを消すことでドラゴン界の勢力バランスを崩して、そのすきに実権を握り、ドラゴン界は魔族に不干渉を貫き、魔族は他種族に対して攻勢を強めるつもりなの。」
「その話は前にも聞いたが、別にそれはそれで良いでは無いか。」
「現魔王ルシフェルは、そんなことまで考えていないのよ。でもその配下には、そのやり方に不満を抱いている者達、いわゆる魔族絶対主義の一派がいて、炎のやつは、その者達と結託して魔王ルシフェルと最近親しくなった土のドラゴンを抹殺して、ルシフェルを再び魔族絶対主義に傾かせようとしているの。それはね、火と闇は、膠着したこの世界のままであってほしくて、でも人間やエルフなどの種族は不要と考えていて、現在の状況の打破、つまり、魔族と人間との融和を図っているあなたが邪魔で、排除すれば、現状維持の世界の中、ルシフェルを説得して、人間がいなくなる中でなら、魔族と共に覇権を握って安泰だと考えたみたい。」
「安易じゃのう。魔族絶対主義なんぞになったら、人間やエルフは絶対反撃するわ。そうなれば、草木のやつだってエルフに味方をするし、金のやつだってドワーフにつくじゃろうに。ああ、ドラゴン達の分断も狙いなのか?」
「さあね、火の奴は単に里の長になりたいだけかもしれないけど。」
「頼むからわしを巻き込まんでくれんか。いや、もう巻き込まれているし、もういなくなるからどうでもよいが。」
「そこでね、この状況を打破する方法があるのだけれど。」
「そんなものあるのか?土のドラゴンであるわしにしかこの状況は変えられないと思うのだが。」
「一応聞くけど、死にたいわけではないのね。」
「あたりまえじゃ、まだわしは、この世界に絶望も悲観もしていないし、むしろ、今が最も充実しているのじゃ、死ぬ気などもうとうないわ。何か方法があるのか?」
「あるわ、っていうかそんなことも知らなかったのと言いたいくらいよ。ドラゴンの里から早々に飛び出したツケが今、回ってきたかたちね。」
「いいから教えろ」
「はいはい、今、いなくなられては、こちらにも都合が悪いのよ。準備が間に合わなくなるから。」
「おまえのたくらみなどしらん。早く教えろ。」
「脱皮よ」
「なんじゃと?脱皮?」
「ほらねー、里にいれば誰かの脱皮が見られていて、憶えていれば、思い出したかもしれないのにね」
「脱皮なら見たことがあるが、それがどうした。」
「土のドラゴンの場合は、それが、「土の栄養」になるのよ」
「そんなに体はでかくないぞ。」
「だから、その辺がわかっていないのよ。土のドラゴンの特性は、大地に根ざすものでしょう。だから森羅万象、木の育成から火山の維持まで他の属性には真似できないことができるの。金属でさえ土の中で作られるのよ。だから、あなたが脱皮したあとの抜け殻は、大地の中に無限に浸透してその効果を発揮する。もちろんあなたの意志でね。しかも未来永劫。なんらかの物理的な圧力をかけられない限り。例えば草が芽を出すとか火山が噴火するとかがないとずーっと効力をもつのね。」
「まあ、風や水や氷による侵食は避けられないけどね。」一応ドヤ顔ですか。
「だからさっさと脱皮して終わらせなさいよ。同化なんてしないで。」
「そうじゃったのか。よかった。まだわしは生きていていいんじゃな。お主達とともに生きていいんじゃな。」
「よかった。本当に良かった」私はうれしくてつい泣いてしまった
「また泣くのかお主は、」
「うれしいときに泣くのはかまわないでしょう。」
「なあ、風の、脱皮はどうやるんじゃ?」
「はあ?今まで脱皮していないの?」
「ああ、記憶のある間は一度もない」
「なんてこと、まだ一度も脱皮していないでこの力なの、末恐ろしいわ。」
「そうなのか」
「大体は、500年に1回くらいの割合で体がかゆくなるのよ、そして、ひびが入り出す。」
「かゆくなったことはあるが、すぐおさまったぞ」
「そうね、その辺が土の癒やしの力なのね。でも、そのまま放って置くと、その反動がくるかもしれないわよ。でも、長命なドラゴン、特に1柱をなすドラゴンは、その周期が長いらしいから、そのせいもあるかもしれないわね。」
「すでに1000年近く経っておるが大丈夫なのか?」
「そうねえ、それは、ちょっと長すぎるから、かなりまずいと思うのよ。つまりあなたの中の癒やしの力があなたの脱皮を妨げるくらい強くて、このままだと魔力を放出できなくて、内部で破裂して自壊する可能性があるわね。」
「ええっ」
「今思えば、あなたがその幼女体型になったのも、魔力を抑え込むためにとった自衛措置とも取れるわね。」
「よくわからん」
「えーとね、膨大な魔力をあの大きな体では、耐えきれなくなっていたので、成人女性に変化すると人間の成人と同じなので魔力も見合うだけ持っていなければならない。でも、多すぎる魔力を持つことになって耐えきれない。幼女体型なら魔力をその体に収めなくても生活できるので、幼女になったということなのかな?」
「確かにわしはこの姿になろうと思ってなったわけではない。その時はこの男の趣味が反映したのじゃと勝手に思っておったが。自衛措置だったと。」いや、私の趣味ではないですよと反論するのは、今はやめておきましょう。
「その体ではうまく魔力を制御できないし、魔力量も少なかったでしょう?」
「ああ、そのとおりじゃ。」
「からだが、魔力を使えなくしていたのね。本来の魔力をその体で使っていたら自壊していたのね。」
「こわ、今聞くとこわ。」
「でも、すぐ脱皮しろと言われてもできんぞ。」
「しかたないわね、風の風化促進か土の活性化のどちらかで試してみましょう。」
「すまんな。」
「とりあえず、大型化して」
「おお、そうであった」
急いで我々はそこから移動する。いや、モーラが空中に浮かび、移動している。
「一度憶えれば大丈夫よ。まず、風化ね」
モーラの回りに風の渦が生じる。徐々にヒビが入ってくる。しかし、風がおさまるとヒビが元に戻っていく。
「さすが癒やしの力、強力ね。今度は、念じて、この壁を壊す、もしくは破る。ああ、剥がすでも良いからイメージして。」
「ああ、一時期そういう夢を見ていたのう」モーラがのんきに言った。
「その時脱皮しておきなさいよ」
「いや、なんか恐いじゃろう。体が壊れそうで。体が壊れたら周囲に何かが起きて、迷惑をかけそうじゃし。」
「強い力を持つ者は、力の怖さを知るがゆえにその力を行使することをためらう・・か。」
「しようがないのう、では、念じるのでよろしくな。」
「それと、治すんじゃ無くて破壊することを考えてね」
「壊すのは不得意じゃ」
「い!い!か!ら!」
再び風が起こり、外皮に亀裂が入る。今度は、外皮が剥離するように舞い上がり出す。その風の中、モーラのからだが光り出す。一瞬の閃光とともに元の状態に戻ったように見える。しかし、やや大きくなっているようだ。ここからでは、残念ながらわからないが。目に見えない霧のようななにかが舞い散っていることがわかる。これは、魔力なんですね。
「変わりないような気がするぞ。脱皮もしておらんし。少しずつだが、体が大きくなっているようなのは感じるが。」
「あなたの場合、抜け殻は、土に還るのよ。感じなさいよ、抜け殻を」
「ふむ、おお、そうか、そこに在るのか。そうかそうか。頼んだ、この土地を育み守っていてくれ。」
「人に話しかけているみたいですね。」
「1000年近くも経っていれば、魂が宿るかもね。」
「うむ、わかった。脱皮とはこういうことか。」
「これは貸しね。」
「すまぬな、すぐにでも返したいが、なにか返せるものがあるかのう。」
「まあ、貸しはいいすぎね、こちらも都合もあるから。それに今はそんな状況じゃ無いからいいわ。あ、そうね、それなら一度、あなたの家で家族と一緒に食事をさせてもらおうかしら。」
「そんな事で良いのか?あ、水から何か聞いたのか?」
「相変わらず頭の回転が速いわね。そうよ、あの水が楽しいって言っていたから、どんなものか気になって・・って、まあ、そんなもので良いわよ。じゃあ」
「ああ、助かった。死ななくてすんで良かった。」
「ああ、後ね、脱皮後は、魔力もすっからかんだし、外皮も柔らかいから、魔力が戻るまでは、周囲の敵に気をつけてね。」
「なんじゃと?それを早く言わぬか。」
「さっそく嗅ぎつけてきたわよ。私は今回、何も知らなかったことにしたいから、手助けはできないの。魔法使いさんあとはよろしくね。」

 続く
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ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。 そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。 「荷物持ちでもいい、仲間になれ」 その言葉を信じて、俺は必死についていった。 だけど、自分には何もできないと思っていた。 それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。 だけどある日、彼らは言った。 『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』 それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。 俺も分かっていた。 だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。 「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」 そう思っていた。そのはずだった。 ――だけど。 ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、 “様々な縁”が重なり、騒がしくなった。 「最強を目指すべくして生まれた存在」 「君と一緒に行かせてくれ。」 「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」 穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、 世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい―― ◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇

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