巻き込まれ体質な私、転生させられ、記憶も封印され、それでも魔法使い(異種族ハーレム付き)として辺境で生きてます。

秋.水

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第14話 氷の世界

第14-2話 エースのジョーは消えた

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○ 氷のドラゴン
 そして再び氷の神殿に戻りました。クリスタ様に呪いでは無いことを簡単に説明した。
「なるほどね、それで犯人はわかったのかしら。」
「残念ながら特定まではできていません。」
「そうなの」
「お願いなんですが、エリスさんを呼んでもらえませんか。」
「私に連れてこいと言うのかしら。」
「ああ、わしが行ってこよう。」モーラが気を利かせて迎えに行ってくれました。
「私は、ここで扉のところに仕掛けられた魔法を調べます。」
「直せるのかしら」
「ええ、たぶん。でも、直す必要は無いですよね。」
 私は扉に近づき観察及び解析を開始する。
「それはどういうことかしら。」
「そもそもあなたは、本物の氷のドラゴンではないからですよ。」
「へえ、いつ気付いたのかしら。」
「皆さん最初からわかっていましたよ。特にレイはね」
「はい、私も弧狼族の一員です。もっとも私は屋敷の中の納屋で暮らしていたのですが、それでも氷のドラゴンのクリスタ様が里に来られた時には、屋敷にもお見えになっていました。その匂いを間違うはずもありません。」
「なるほど、そこですか。匂いまで真似たつもりでしたが。」
「ええ、似せたとしても我々弧狼族の鼻までだませるものではありません。」
「クリスタ様は、たぶん、エリスさんのところにいらっしゃいますよね。」
「そうね、そうするよう仕向けたからね。」
「仕向けられるだけ、近しい間柄と言うことですか。」
「そうやって、情報を引き出そうとするのね。」
「そうですか情報を引き出すのは、ここまでのようですね。それでも、さきほどエリスさんを迎えに行けば逃げられたのではないですか?」
「ばれているとは思っていなかったから、あそこで迎えに行くとはクリスタなら言わないでしょ。」
「そこまで研究されているのですか。」
「付き合いが長いですからねえ。」
「さて、そろそろモーラが戻って来ますねえ。」
「それまで、戦うのはやめておきましょうか。」
「ネタばらしもありますしねえ」
 そして、ドタドタと走ってモーラ、クリスタ、エリスの3人が扉を開けて入ってくる。
「どういうことよこれは、」
 入ってきた氷のドラゴンさんが叫ぶ。それはそうだ、自分と同じ姿をしている者がそこに立っているのだから
「わしにもわからんが、氷のが2人いるぞ、どういうことだ。」同じ事を叫ばないでください。
「ああ、そう言うことだったの。氷の人が私のところに訪ねてくるなんて変だと思ったのよ。これではねえ」
「しかもここは、氷の神殿ではないということも含めてでしょう。」
 私は、言いたくてうずうずしていました。
「おや、わかっていましたか。失敗ですねえ。」
「そうよ、ここは氷の神殿ではないのよ。どこよここは。」
 連れてきたモーラに向かって本物の方の氷の方が言った。
「そんなのわしが知るわけないじゃろう。そこの偽物に聞けばよかろう。」
「あんた、今回の犯人はあなたなのね。」
「何のことかしら。」
「私の氷の神殿の恩恵を・・・ってここは神殿ではないのか。でも、私の神殿の名誉を傷つけた。」
「名誉って何?そもそも恩恵を与えるって何?ドラゴンがして良いことなの?」
「それは、私の先代からしていることだから。」
「なら別に、違うものに変化していても構わないじゃない。」
「そんなことはないわ。そうではないもの」
「まあ、いいわ。ここまであなたを引っ張り出すことができたから。」
「私に関係があるのですか?」
「ええ、どうやって私のテリトリーにおびき出そうかと考えていたところだったから。」
「おびき出す。ですか」
「ええ、私にはあの家の結界を破ってあなたを襲うことはできなかったわ。」
「私の顔のままで話すのはやめて。」
「ああ、そうね、でもこの姿で一つだけやっておくことがあるのよ。」
 そう言って、取り囲んでいる人達との間に氷の壁を作る。そして壁の中には私と彼女だけが残された。
「やっと二人っきりになれたわ。愛してるわダーリン」
 そう言ってその女は、姿を変え始める。見覚えのある顔が現れ始める。
「ああ、そうでしたか。あなたでしたか。確かエースのジョーと言いましたか。あいにく私は、二人っきりにはなりたくありませんけどねえ」
「あらあ、憶えていてくれたの~。とてもうれしいわ~、あなたの周りに愛人が増えているからきっと忘れてしまったかと思ったわよ。意外に私のこと愛していてくれたのねえ」
「憶えているだけで愛しているなら、エルフ族の族長も孤狼族の族長も愛していることになりますが、そうではないですねえ。」私は、くだらないことを言いながら、その変身が終わるのを見届けている。
「そうそう、あなた魔法を見て憶えられると聞いたけど、この変身に使った魔法は憶えられないわよ。ざーんねん。」
「ああ、ずーっと見ていましたけれど、見ようとして、魔法を認識しようとすると、何かに邪魔をされていますねえ。」
「ええ、解析しようと魔法を使うとその魔法を拡散するのよ。だからよく見えない。私が愛するあなたのためだけに特別に作ったわ。喜んでくれたかしら。」
「ええ、その拡散する魔法は見えましたから。」
「ふ~んそういうことをするんだ。いやらしいわね、私の中を覗くなんて。」
「魔法を見せておいて見るなと言われましても、街中を裸で出歩いているのに裸を見るなと言っているようなものじゃないですか。」
「あら、別に魔法をひけらかしてはいないし、見なければいいだけでしょう。」
「まあ、私の知らない魅力的な魔法でしたからねえ。」
「あら、私って魅力的なの~?」
「魔法はとても魅力的ですよ。魔法だけはね。見たことがない魔法は魅力的です。憶えて使ってみたくなります。」
「私じゃないのね。」
「ええ、あなたではないです。」
「ざ~んねん。」
「さて、これだけ小細工をして私をここに呼びつけ、これだけの舞台をしつらえたんです。何がしたいんですか。」
「そうね、あなたの家族が見ている前で無残に負かして這いつくばらせ、プライドをズタズタにしたいそれだけよ。」
「ええ、前の時は、死にたいと言っていませんでしたか」
「あの時はねえ、あなたの「家族を殺されてもお前を殺してやる」という殺意を感じてねえ、あなたに殺されてもいいかなあって思ったのよ。もうね、あの時のことを思い出すと濡れてくるのよ」
 そう言って体をくねらせるのはやめて欲しいんですが。気持ち悪い。
「でもねえ、それ以降のあなたの腰抜けっぷりに腹が立ってきたの。私の大好きな人が、誰も殺せない。その程度の男だとわかってねえ。がっかりしたわ」
「まあ、何を期待されていたのかわかりませんが、私なんてそんなものですよ。それでどうしたいのですか。」
「愛してしまったからよ。愛しさのあまり殺してしまおうと思ったのよ。」
「なるほど、でもこんな大それたものを作らなくても良かったんじゃないですか。」
「そうではないわ。私が一瞬でも愛した人ですもの、華やかで晴れやかで輝いた場所で死んで欲しかったの。愛する者達に泣きながら見送られてね。」
「それで氷の神殿ですか。」
「ここは、あなたのお墓よ、死んだ後、永遠に氷漬けにしてあげますね。」
「はい、それは嫌なのでお断りします。」
 私は、周囲を氷で囲まれたその場所の反対側の端まで歩いて行き、氷の壁に触ってから振り向き、数歩戻ってエースのジョーと向かい合う。そして、床にも触ってノックをするようにたたいてみる。
「ちなみに、この氷の壁や床は、どのくらい持ちますかねえ。」
「前回くらいの力では壊れないわよ。大丈夫だから。」
『お・・し、や・・する』雑音混じりにモーラの声が聞こえたような気がする。
「ああ、ついでに脳内通信も遮断しておいたから。そこの土のドラゴンさん無理はしないほうが良いわよ。というか声は聞こえるんだから堂々と話しかけなさいよ。無粋ねえ。」
「なるほど、徹底していますねえ。」
「もちろんあなたを愛すればこそよ。」
「私をずっと観察していたのですか。」
「時々ね、あの結界に近づくと見つかっちゃうし。あなた達が街から出て、壺を取り返したり、黒い霧の中で魔族と戦ったり。そういえば、魔法攻撃の重圧の中で魔法を受けきろうと持ちこたえている時のあなたのあの顔は良かったわー。あ、いいわー」
「これは、変態ですねえ。というかストーカーですか。」
「ストーカーと言われるほど見てはいないわ。たまにしか見にいっていないわよ。だって、私も成長しないと対等にならないでしょ。ちゃんと成長もしているわよ」
「一応、そういう所は努力家なんですねえ。」
「それもあなたを愛すればこそよ。」
「違う方向に頑張ればものすごい魔法使いになれるんじゃないですか。」
「魔法使いというのはそういうものじゃない。あなただって興味のあることしか、追求していないみたいだし。」
「確かにそうですねえ。」
「そろそろいいかしら。」彼女は杖を持った右手を差し出し構えた。
「本当に殺し合わなきゃいけませんか。」
「殺し合い?いいえ、私が一方的にあなたを嬲り殺すのですけどね。」
「そうはなりたくないですねえ。」
「御託はいいわ。」
 そして彼女は杖を持った手を動かした。
 その言葉と共に彼女の足元に魔方陣が現れ、同時に私の足元にも魔方陣が現れる。私は、指を鳴らして、彼女の作った私の下の魔方陣をキャンセルして、自分の魔方陣を構築する。
「遅い」彼女はそう叫んで、私に氷塊を飛ばしてくる。私はそれをよけるが、魔方陣から足を離してしまい、作ろうとしていた魔方陣がキャンセルされる。文字どおりたたらを踏み体勢を立て直したところで、再度私の足元に魔方陣を作られてしまう。今度の魔方陣は、すぐに炎を吹き上げ、一瞬にして私はその炎に包まれる。しばらくして炎は消えたが、羽織っていた毛皮の上着がその炎で黒焦げになっただけで、私は大丈夫でした。周囲からは安堵のため息が漏れる。
「なるほど、その毛皮に耐火魔法を掛けていたのね」次のターンへのつなぎなのか、話しかけてくる。
「そうですね、耐火ではなくて防寒ですがねえ。」
 私は、この後の展開を想定してどういう魔法がいいのかシミュレートしている。
「そういえば、以前、炎の魔法を使っていたと思いますが、氷の魔法も使うようになりましたか、勉強熱心ですねえ。」
「あなたは、見ただけで金属生成までしたって聞いたけど。」
「ああ、それも知っていましたか。どうやらそちらが私の得意分野らしいので。」
「らしい?ああ、記憶無いのでしたねえ。でもそれもすごいわ。ああ、私も元の世界の記憶がなかったらもう少しまともな人生を歩んでいたかもねえ。」
 彼女はそう言って自分の足下に魔方陣を作り始める。第2ラウンドの開始らしい。
「今からでも素直に生きれば良いじゃないですか。」
 私は防御の魔方陣を敷設する。そう何層にも。体の周りまで持ち上がってくるくらい何周も作り、頭まで白色の魔方陣の壁ができあがる。もっとも目のあたりには魔法と魔法の間に隙間があって相手を見ている。どうやら防御魔法の生成は私の方が速いようです。
「それができればねえ。」彼女も同様に周囲に壁を作っていく。その色は赤い。
「そうですか。魔法使いは長生きなので、自分を曲げたまま生きるのは、この先つらくなりませんか?」
 私は、今度は攻撃のための小さな魔方陣を自分の周囲に多数配置を始める。
「言うわねえ。まだ間に合うと思う?今までどれだけ殺してきていると思うの」
 今度は、彼女が多数の細かい魔方陣を展開し始める。能力差を見せつけるために私の真似をしているのでしょうか。
「贖罪の気持ちがあれば、恨みを受け止めるしかないでしょうねえ。」
 こちらは、相手の動き待ちになりました。黙ってみています。
「それは、無理ね」
 彼女は、前に出した杖を振り始める。地面に発生していた細かい魔方陣から私に向かって攻撃を始める。素早く何回も攻撃してくる。私の方は、展開していたたくさんの小さな魔方陣から相手の攻撃にあわせて自動的に攻撃して、相手の攻撃を相殺している。
「これでは、らちがあきそうにないわねえ。」
 魔方陣を自分の周りに張りながら、私に向かってゆっくりと進んでくる。その間も魔方陣からの攻撃は続いている。私も、少し飽きてきたので、防御に徹するのをやめて、細かい魔方陣から打ち出していた魔法の数と速度を増やして攻撃に転じる。相手の攻撃の手数を超えているので、当然、相手の周囲に展開している防御壁に対して攻撃があたり始める。そうして、彼女の回りの防御魔方陣を少しずつ削っていくつもりでした。
「それくらいでは、びくともしないわ。残念ね。」
 彼女は少し立ち止まって、攻撃の様子を観察してから、また歩き出そうとする。
「そうですねえ、それでは、これを」
 私は、そう言って、違う魔方陣を展開して、魔法をその防御壁にぶつける。展開していた防御壁を一つ砕く。
「へえ、やるわね、どんな属性の攻撃にも対応するよう魔法を練っていた魔方陣だったのに」
 しかし、少しずつ近づいてくる。
「お褒めいただきありがとうございます。」
 彼女の防御壁は、もう胸のあたりまで消えている。しかし、攻撃に対して、その環が自動的に飛び上がり、攻撃を跳ね返して削れて消えていく。
「でもそれも想定済みなのよねえ」
 そう言って杖を振り、再び防御壁を構築し直す。今度は、攻撃をはじき返した。
「なるほど、私がこの場で解析するのも想定済みですか。」
「ええ、でもすごいわあ。本当に殺すのがもったいないくらいにねえ」
「ならば殺さないでくださいよ。」
「できないのよ、私の過去があなたを殺せと叫ぶの。愛した人を殺さないではいられないのよ。」
 そして、少しずつ近づいてくる。まるで、愛する人を慈しむように微笑みながら静かにゆっくりと。
「かわいそうな過去をお持ちの人なんですね」
「かわいそう?いいえ、私はそうして生きてきたのよ。愛する人を殺して、一緒になるために脳を食べて、」
「脳を食べる?」
「そうよ、愛しているからこそそのすべてが欲しくなるのよ。だから、殺して食べる。すべては食べきれないから。頭を、脳を食べるの。すてきでしょう?」
「今もしているのですか?」
「そうね、これまで数十年、その間に愛した人達は、数人いたけど、全員食べたわ。」
「私も死んだらそうするつもりですか?」
「もちろんよ、あなたの愛する人達の前でね。」
「もしかして、これまでも同様に?」
「そう、残された人達が何もできず、ただただ絶望して私を見ている顔は、素敵だわ。」
「すいません、どうやらこれから私は、この世界に来て最初の殺人を、殺意を持って、同族殺しをすることになりそうです。」
 私は、手をあげて、私と彼女の周囲に展開していた魔法をすべてキャンセルした。
「な、何をしたの?」
 彼女が慌てている。あと数歩まで私に近づいていた彼女にこちらから近づき、その額を左手でつかみ、持ち上げて顔面を潰しにかかる。持ち上げられ足をジタバタさせながら彼女は、
「痛い痛い痛い。え?なに、自分にかけた無痛化の魔法まで無効にされているの。ねえどうやったの。」
 彼女は、額を握りつぶそうとする私の手を両手で引き剥がそうとする。外れそうにないとわかると指で魔法を使おうとするが、使えない。
「魔法が使えない?どういうこと?ねえ、答えなさいよ」
「あなたと話す言葉を残念ながら持っていません。」
「やめて、ねえお願いだから、私を殺すと、大変なことになるのよ」
「命乞いですか。」
「この神殿が壊れて麓の町まで土砂崩れを起こすわよ。」
「なるほど、そんな些細なことはどうでもいいです。あなたはここで死んでください。」
「何よそれ、」
「それはあなたのせいで起きることで、私のせいではありませんので。」
「あなたが私を殺すからじゃない。」
「そこに因果関係はありませんよ。もし、あなたが事故死したって起こるのでしょう?あなたの死が原因なのだから、誰が殺そうが自殺しようが関係ないですよね。」
「なにその理屈。街の人が死ぬのよ」
「死ぬんじゃなくてあなたが殺すのでしょう。これまで何人も殺してきているのでしょう。ならば、このあと何千人死人が増えようと人殺しは人殺しです。まあ、私もあなたを殺して人殺しになりますから、これからは何人殺しても人殺しは変わりませんね。」そう言って再び手に力を込める。
「どうしてこんな殺し方をするの。さっさと魔法で殺せばいいでしょう。」
「私の魔法は師匠がいませんので、先ほどあなたが使っていた魔法の無効化を真似してみたのですが、解析が間に合わず、自分も含めて全ての魔法を無効にする以外方法がなかったのですよ。それと、魔法で簡単に殺したりしたら、次からも魔法で簡単に人を殺してしまって、歯止めがきかなさそうなのです。ですからこうやって自分の手でじっくり殺して、人の死を私の中に刻み込まないとならないと思いまして。」
「ふうん、いいことを聞いたわ」
 彼女は手を下ろし、ブーツの中からナイフを取りだして私の腕を切り、私の手を振り切った。私の手首からは大量の血が噴き出している。
「さあ、動脈を切ったから、魔法が使えないお前はこのままなら失血死するのよ。」
「まだ、あがきますか。さすがですねえ。」
 私は、そうではないと首を振った後、服の中からナイフを取り出す。ほんのり光っている。
「魔法が効果を発揮している?私は今も魔法を使えないのにどうして?」
「さあ、どうしてでしょう。」
 私は、そのナイフを彼女に投げつける。彼女はとっさによけるが、ナイフは軌道を変えよけた彼女の腕に突き刺さり、そのまま腕を突き抜け、腕をちぎり取り、腕はその場に転がり落ちる。傷口からは血が噴き出している。
「うあっ。何よこれ。」
「ああ、誘導式のナイフですよ。一撃目には効果的です。これで五分五分ですねえ。まあ、そちらは腕がちぎれていますから、出血量が多そうなので、先に死ぬでしょうたぶん。」
「大丈夫よ、この薬があるから。」
 そう言って薬草を出す。
「おやその薬、あなたも持っていたのですねえ。でも即効性はありますが、腕をつけることはできませんよ。」
「それがねえ、この薬、限定生産の奴でねえ。ほら、」
 落ちた腕をつけ直すと、腕が直っていく。
「あの時作った薬は、そんなにも高性能だったとは、わからないものですねえ。」
「ああ、これはあんたが作ったの、すごいわねえ。」そう言って彼女は腕を振り回す。
「さて、では私も血を止めましょう。」私も薬草を取りだして、傷口に貼る。
「それでは、続けましょうか。」傷のあった左手を握ったり開いたりする。
「そりゃあ、あんたも用意しているわよねえ。」
 そう言って何かを胸元から取り出し、床にたたきつける。
 それは煙幕だった。古典的だが、肉弾戦の時にこそ役に立つ。もちろん体制を立て直すための時間稼ぎ程度だが。
さて、時間は、稼いだ。そう思いながら彼女は、壁に向かって移動を始めた。しかし、すぐに、肩が糸のような物に引っかかりそれ以上行けなくなる。まずい、これは、罠だ。その糸から慎重に体を離し、違う方向に向かって、違う角度でゆっくり移動を始める。今度は腹のあたりと足元に引っかかる。落ち着け、壁まで移動できれば、壁に脱出用の穴がいくつか作ってある。どうしたのだろう、さっきまでの高揚した気分とは違い、生に執着を感じ始めている。そんな自分の心の動きが不思議だった。
 ああ、私はあの男と心中したかったのか。氷の棺桶に二人で入って永遠にそこで結ばれたかったのだ。でも今度は、脳を食べたりはしない。二人とも完全な体のままで、手をつないで眠るのだ。そんなことを想像しながら、移動していると、また糸が体に当り移動を阻まれた。そろそろ壁に着いてもいいのに着かない。こんなに広いわけはないのに。煙幕もそんなには持たない。ああ、また引っかかった。さすがあせってしまい、この神殿のどこにいるのかわからない。どうやら糸が邪魔をして感覚を鈍らせているみたいだ。ああ、また糸だ。一体どうやってこんなに張り巡らしていたのか。そして、風が起こり煙幕が晴れていく。なんで風が起きている?
私は立っている場所を確認する。さっき立っていたところからほとんど動いていない。そして、煙幕のカスのせいなのか、糸が浮かび上がって見えている。ああ、糸に阻まれて、その場所の回りを回っていただけだったのか。自分の周囲はすべて糸が張られていて、動ける状態にはなかった。
「どうやってこんなに糸を張れたのかしら。」
「長くなりますけど聞きますか?まあ、自慢したいのですけどね」
 彼女はあきれたような顔をしているが、うれしくて構わず話し続けます。
「これはパムさんに言われて練習させられましてねえ。壁を作られたら利用しろと。床に手を当てて10本の指から魔法の糸をくり出す練習をさせられまして、今回は、魔法の糸に細かいワイヤーをつけて、一緒に壁まで這わせましたよ。そして、戦闘開始前に壁の上の方に昇らせておいたんですよ。練習しました。」
「最初から設置していたのね。」
「高度な魔法を使う魔法使い同士が戦うと、魔力量や技術の練度より、最終的には肉弾戦になりそうでしたからねえ」
「さて、では死んでくださいね。」
 私は再び近づき、糸のせいで動く範囲を限定されている彼女に近づきます。
「待って待って待って。これから改心するから。お願い殺さないで。」
「だめですねえ。一度でもやらかした人で少なくとも私はあなたから1回、いや家族を含めると2回被害を被っているんですよ。残念ですが、悔やみながら死んでください、そうしないとあなたに殺された人たちが・・」
 そこで氷の壁にヒビが入り、モーラ達のいる部分の壁が壊れた。その壁に這わせていた糸も当然切れて彼女は、そこから逃げだし、反対側の氷の壁に走り出した。
「無理に決まっているじゃないですか。」私は、手元にあった糸を使って、彼女の動きを止める。
「それ以上動こうとすると、体が切れますよ。」走った体制で止まらざるをえず、はずみで彼女は転びました。さすがにそんな死に方は許せないので、倒れる寸前、糸を少し緩めて倒れた後また締めなおしました。そんな中モーラが急いで近づいてくる。
「おぬしそれ以上はするな。」
「こればかりは、モーラの意見でも聞けませんねえ。」
「こやつの処分は、魔法使いの里に任せるんじゃ。」
「そうですか。それは、仕方ありませんね。」でも、手元の糸は緩めることができず、少しだけ彼女の体に食い込み肌に血がにじんでいる。それでも彼女は倒れた体勢のまま何も言わない。
「ちなみに土砂崩れはどうなっていますか。」私は、彼女から目を離さずモーラに聞いた。
「ああ、わしが何とかした。土砂崩れはおきん。」
「そうでしたか。話は聞こえていただろうと思うので、対処してくれていると思いました。ありがとうございます。」
「相変わらず無茶をする。わしの肝が冷えたわ。」
「無茶はしていませんけど。」
「あれだけ大量に血を流しておいて、何を言うか。ほとんど死ぬ一歩手前だったじゃろう。」
「そういえば、怒りで痛みが飛んでいましたねえ。」
「あそこがいちばんヒヤヒヤしたわ」
「ごめんなさい」
 そんな話の間にエリスさんが彼女を確保しようとしている。
「あ、一つだけ意趣返しをしておきましょう。」私は彼女に近づいていく。
「何をする気?」彼女が怯えながらイヤイヤをする。あれ、もしかしてエリスさんの方が怯えていませんか。
「そう怯えないでください。」そう言って嫌がる彼女の頭に手をかざす。魔法が効果を発揮している。そして、彼女は光に包まれ、おとなしくなっていく。
「あなた一体何をしているのよ。」エリスさんが止めようとしてきます。
「彼女の悲しい記憶を和らげているのですよ。」
「そうなの、でも記憶まで消していないのでしょう」
「はい、残念ながら。では、お連れください。しばらくは落ち着いていると思いますから。逃げる気にもならないと思います。」
「それはありがたいわ。」そうして、何らかの縄のような魔法をかける。彼女はおとなしく従っている。

「あんたどうしたの急にやさしくなって」アンジーが近づいてきて言った。
「彼女と戦っていた時に見た、彼女の半生の記憶は、トラウマになりそうな内容でしたからねえ。」
「おぬし、記憶まで見ることができるようになったのか。」
「見たくはなかったんですが、「愛しています」を連発しながら、私の記憶を見て、私の記憶を見てと無理矢理私の頭にねじ込んで見せてくるんですよ。「こんなわたしなんだからあなたは私を愛してそして死んで」とね」
「それは、すさまじいプロポーズじゃな。」
「どちらかと言えば、心中強要ですね。」
「ここは棺桶か」
「かもしれません。でも、彼女を彼岸と現世とをつないでいた物はなんだったんですかねえ。」
 近づいてきたクリスタ様に向かって私は言いました。
「さて、氷のドラゴンさん。犯人はわかりましたし、たぶんですが、実際に被害を受けた人は、いないと思われます。まあ、噂が収まるまでは少しかかるでしょうが、それはあきらめてくださいね。」
「でも、突き詰めればあなたが原因なんですよね。」
「ええ、それをいいますか。それは逆恨みというものですよ。でも、この事件を解決はしましたので、これで終了です。」
「そう、なのね。」
「まあ、わしらは戻るわ。ここが氷の神殿じゃないならいても意味ないしなあ」
「壊さなくていいのですか~」エルフィが、どうしてそこで、でかい金槌を背負って現れますかねえ。大工さんじゃ無いんですから。
「ああ、そうじゃな、わしがやろう。全員外に出るんじゃ、」
 みんなゾロゾロとその建物から出る。壊すことになっても彼女は無反応なままだ。ありゃ、ちょっとやり過ぎたかな?
 そして、モーラが地震を起こし、その山頂の広場に穴ができ、すべて氷塊となった城はそこに落ちていった。。
「簡単じゃったなあ。」
「安普請だったのでしょう。」
「そうじゃな」
 そうして、エリスさんは、クリスタ様の手に乗って、私たちは、馬車と共にモーラの手に乗る。
「のう氷の、念のため本当の氷の神殿の場所を確認したいのだが教えてくれないか。」
「ああ、いいわよ、途中で寄って、そこの空中で停止して教えるから。私達は、そのあと、魔法使いの里に向かうわ。」
「わかった」
 そうして、ほんの少し北にある氷の神殿に到着する。なるほど、先ほどの神殿とは比べものにならないくらい大きい。もっとも神殿をはるか下に見てるから、どのくらい大きいのかはよくわからない。
「確かに違うな。では、帰るわ。」
「気をつけて」
「お主もな。」
 そうして、私たちは、無事に家に到着して、お風呂に直行しました。ええ、神殿壊す時に冷えましたので。旅の疲れと旅の垢も落としました。
 そうして、氷の神殿の件は終了し、エースのジョーは、魔法使いの里に保護されました。


数日後、魔王城にて
「またいなくなったからどこに行ったのかと思えば、氷のドラゴンのところとはなあ。」
「報告によると、正確には違いますが」
「そうか、あのやばい魔法使いはいなくなったのか。」
「一応、私達の側で動いていた者ですけど、いいのでしょうか?」
「なにがだい?」
「魔法使いの里に連れて行かれて、事情聴取されているはずですが。」
「わしらとの関係が知られると?一応契約はしていたが、今回のは、わしらの指示では無く、奴の独断専行じゃからなあ。ましてや、あの里は、事なかれ主義だから、わしらが一枚かんでいたとしても気にするものでもなかろう。」
「そうですね。でも、連絡係の話しにあった。彼女の記憶とはいったい。」
「あやつは、一体、彼女の記憶の何を見たのかのう。」
「気になりますか。」
「いいや、あやつがトラウマになるというておったが、所詮は元の世界の過去だからなあ。引きずったらだめだろう。むしろリセットしてこの世界に順応しないとなあ」
「いや、無理でしょう。そうそうなじむ奴も珍しいですよ。」
「あやつは、記憶が無くて良かったのかもしれないなあ」
「果たしてそうでしょうか。」


○その記憶は消えた。跡形もなく(エースのジョーの過去)
 小さい時から殴られてばかりだった。両親ともに家にいた記憶は無く、家では私ひとりだった。どちらかがたまに帰ってきては、相手がいないのを私のせいにして殴っていた。殴られることになれると誰かが言っていたが、そんなことはない。痛いものは痛い。私は慣れることはなかった。そんな時期も過ぎ、回りのくれた施しで栄養不良ながらも成長し、社会出て働ける歳になり、そこから逃げ出した。そして、しばらくは生きて行けた。もちろん、ろくな職には就けなかったが。
愛した男がいた。逆恨みする男がいた。そして、愛する男と共に襲われ拉致され、なぶり者にされた。男を殺せとナイフを持たされガムテープで両手をまかれ、男の前に立たされ無理矢理、最愛の男を刺した。いや、すんでの所で止まっていたのに、後ろから蹴られた。愛する男は、逃げる気力もなく。むしろ死ぬために飛び込んできた。腹を刺してしまった私に愛する男は、ガムテープを食い破り、あいつらを殺して逃げろとつぶやいた。そして、俺の体の一部を食べてくれと。
 そういえば、死んだらどうすると言う話をした時に、体の一部を食べてくれと言われていた、もし可能なら記憶のある脳をと言われていた。
 ゲラゲラ笑っていた男達の一人が近づいてきたので、用心深く胸を刺した。他の男達から見えないように。そして、もうひとりも最後のひとりは、逃げようとしたが、容赦なく殺し、その場で、愛する男の死に顔を見て、泣きながら頭を頭蓋を割り、中の脳みそを食べた。味覚など無い。ただがむしゃらに食べた。頭蓋骨を割った時の骨が少し痛かった。
 そうして、そこを出て、警察に保護をされた。死体を食ったのかと聞かれ無理矢理食わされたと言っておいた。
 それでも、周囲の目は同情ではなく奇異の目で見られ、そこから転々とし始めた。
 ああ、そうだ。それから愛してしまうと殺したくなり、脳みそを食べたくなる。そこまでが私の愛情になってしまい。ついに警察に捕まり。精神鑑定の結果、釈放される。もともと、愛してしまう男は、どこか浮世離れをした男ばかりで、家族もない独り身で、復讐されることも石を投げられることもなかった。だが、最後の男は、愛人を捨てて私と関係を持っていた。そう、その愛人に刺され、私の生涯は終わった。大の字に倒れ、雨に打たれながら。私の人生はいったいなんだったのだろうと思いながら記憶が無くなった。
 目を覚ますと森の中だった。どうして生きているのかわからない。左の胸や脇腹にはナイフが刺さった跡があり、血もついている。でも、傷もなく生きている。そして、獣に襲われとっさに炎の魔法を使った。ああ、そういう仕組みか瞬時に魔法を理解して、火に怯えた獣を焼き尽くした。楽しかった。これまでは、暴力に屈して生きてきた。でも今は違う。それでも街に入り込み、魔法使いであることを隠して暮らそうとした。だが、生きる糧のためには非力な私は、それを使わざるを得ない。理不尽な暴力にも使った。容赦なく。そうしなければ反撃され自分が死ぬのだ。どうしても非合法な奴が寄ってくる。そして、魔法使いの掟なんかに縛られないアウトローな魔法使いになった。
強そうな魔法使いと戦い、ノウハウを吸収していく。そうやって能力を向上させていった。
 そして、何人かの男を愛し殺し食べた。
 魔族がある男を調べろと言ってきた。風采の上がらない男だ。回りには、数人の女達。あああ、腐っているのかもしれない。なので、女達から襲ってみることにした。おもしろいことにすごい手練ればかり。剣の達人に魔法使い。そしてホムンクルス。ああ、こんなにも彼女らはその男を愛しているのか。会ってみたい、ぜひ会って殺したい。こんな感情は初めてだ。そして、適当な男をだまし。誘拐したように見せその男と戦う。ああ、女達の心配そうな顔、そして、怒っている男の顔。そして高度な魔法を難なく使うこの男だ、そう求めた男はこの男だ。好きになってしまった。人質をなんとも思わないクールさ。そして私は、自分で殺したいのか自分が殺されたいのか不思議な感情が生まれた。これが本当の恋なのかもしれない。
 しかし、邪魔が入り、死にはしなかった。その男の素性、魔法特性などなど色々調べて、ついに罠に掛けることができた。だがそこまでだった。私の記憶はそこで消えてしまった。忌まわしい過去と共に。


続く


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この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

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地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

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三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

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貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

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農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

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