59 / 102
第16話 魔族の子
第16-8話 死んでもらいます
しおりを挟む
翌日、私とモーラは、元の洞窟の近くに行って罠を仕掛けています。
「まあ、残される子どもの事を気にしてのことかも知れませんが、納得いきませんね。」
「お主も気付いたか。なんとなくしっくりこないのう。」
「ええ、私たちに汚名を着せるつもりかも知れません。」
「なるほど、元魔王殺しか」
「私たちのこれまでの風評だと、元魔王殺しまでやりかねませんからね。」
「そうなれば、現魔王とてその復讐に出てこざるをえまい。」
「そうですよ。魔族は特に同族が殺されることに強烈な反応を示します。どんなことをしても殺されますよ。わたし。」
「噂どおりなら下級悪魔は出てこないだろうが、闇討ち、だまし討ちなんでもありで殺しに来るな。最終的には総力戦も辞さないだろう。しかもわしは手を出せないと来ている。」
「元魔王殺しにドラゴンが関わったとなったら、ドラゴンの里からも抹殺命令が出ますねきっと。」
「ああ、ドラゴンの里と魔法使いの里の両方からも来られたらまあ、まちがいなく全滅しただろうな。」
「うまいシナリオですねえ。誰が考えたのでしょうか。」
「さあなあ。今の魔王はそこまで考えてはおらんじゃろうしなあ。まあ、ここまで頭の回る奴なら尻尾は出さんじゃろうなあ。」
「確かにそうよねえ」
そうして罠を張りめぐらして、そのことを元魔王様に告げて、その日は終わった。
翌日、たぶんドラゴンの里と魔法使いの里に報告が届いたせいなのか、モーラの縄張りの中に、どこの勢力かわからない人達の監視が始まりました。監視は、私たちの家のある方向と以前モーラがいた洞窟の方です。数日後、元魔王の親衛隊の方が食料等を持って旧洞窟の中に入っていくと、我々への監視は手薄になり、そこを監視し始めました。しかし、まだ攻撃には至っていません。むしろお互いの監視のせいで、身動きが取れなくなった様に見えます。さらに数日が過ぎ、元魔王の元に獣人達が新しい里への連絡が入ったことを知らせていた。
私は、モーラの新しい洞窟に行き、そのことを話しました。
「わしもすでに感知しておる。わざわざ来なくても良いのに」ドラゴンのままの姿で私と会話をしている。本当に以前より2回りは、大きいです。
「いや、脳内通信しているのを知られたくないので。」
「ああ、そうか。でも、意外に早かったのう。」
「そうですね。定期的に指定場所を巡回しているようで、たまたま連絡がついたそうです。ただし、念のためその連絡員が本物なのか確認するため、新しい里に向かっているそうで、まだかなりの日数がかかりますとのことでした。」
「その者が本物の使者か確認していると。」
「そのくらい用心しないとダメですよねえ。」
「まだ、何の動きもないからいいが、じれて突っ込むバカが出そうな気がするが。」
「そんな雑魚なら大丈夫でしょう。」
「そうあって欲しいがな。」
「では、戻ります。」
「そういえば、あの洞窟とは連絡がとれるのか?」
「一応、有線で連絡は取れるようにしてありますし、念のため転移できるようにしてありますよ。」
「なるほど、到着地点はどこにしているのじゃ。」
「魔法使いの里にしたかったのですが、モーラの縄張りのギリギリエリア内です。その時は、そこで死んでもらおうと。」
「なるほどなあ。」
「では、もうしばらく我慢してください。」
「わかった。風呂に入りたいのう」
「うちに来て入っていけばいいんじゃないですか?」
「まあ、その時に何かあってもな。里につけいる隙を与えそうでなあ。けじめじゃな。今はやめておくわ」
「そうですか、では、これを置いていきます。」
「なんじゃそれは、」
「新しい家を作るときに簡易で作った風呂があったでしょう。あれを作る魔法を組んであります。効果は30分くらいで切れて消えてしまいますが、もしよろしければお使いください。」
「ああ、助かる。そういえばあの姿にも久しく変わっていないのでなあ。」
「ドラゴンでいることに慣れてしまったのですね。」
「ああ、そういうものかもしれぬなあ。」
「それでは」
私は洞窟を出て自分の家に戻った。
「モーラはどうでしたか。」
「お風呂に入りたいと、でも、ドラゴンのままで過ごしているので、元の姿に戻るのが面倒くさい感じでした。」
「確かにねえ、あのでかい洞窟でひとの形になっても広さを持て余すだけだしねえ。」
チリンチリンと窓辺に置いた鈴が鳴りました。
その音を聞いて、目をつぶって耳を澄ましたエルフィが
「あ、罠に引っかかりましたよ。」
「ついに動き出しましたか。しかも昼間に。ずいぶん無謀ですね。」
「さすがにケガをした人を抱えて撤退したようです。」
「とりあえず、第1ラウンド終了ですね。」
「あのえげつない罠に引っかかって、膝から下持って行かれてもまだ突進するかしらねえ。」
「命令に背けない人達もいますからねえ。」
「さすがに今日はこれで終わりですかねえ」
「また動き出しましたよ~。」
エルフィから報告が、
「罠に引っかかりました~さっきと同じ所です~」
「まあ、一度起動した罠は、なくなったと普通思うわよね。」
「罠が復活しているとか普通考えませんよ。ご主人様は意地悪です。」
「ごめん意地悪しているつもりはないんだ、こういう罠は、相手がどう考えるかを想像して裏をかいて設置するものだから。」
「あるじ様、あの時「特定の方向に、幅1メートルで帯状に蟻の這い出る隙間もなく罠を設置しておくもの」と言うのは、たぶん意地悪だと思います。」
「いや、それでも特定の方向だけですし、獣人なら飛び越えられる幅だし。」
「でもその先には獣人が飛び越えられそうな着地点には、罠は仕掛けていないけれども、次の一歩に反応して罠が作動しますよね」
「レイあの時のテストに付き合ってもらってありがとう。大変助かったよ。」
「どう考えても空飛ぶくらいしか近づけないのではないでしょうか。」
「飛んだとしても、粘りつく糸が張り巡らされていて、落ちるしかないですよね。」
「さすがに飛んであの糸の隙間を通ろうとは考えないでしょう。」
「たった今引っかかりましたよ。片翼が取れたように見えましたけど。」
「戻ろうにも戻れないみたいです。血がたくさん出ていますが、大丈夫ですかね~」
「あ、親衛隊の人が洞窟から出てきてその獣人を回収して回復させています。羽根は元通りになりましたよ?そんな簡単に大けがが治せるんですか?旦那様どうしてですか?」
「まあ、ケガが過剰に見えるように意識に作用させていますから。」
「旦那様は、そんなこともできるんですね~」
「またやばいことを憶えたのね。ああ、ネクロマンサーの頭を覗いたときに知ったのね。」
「そうです、あの人の頭の中は、私の知らない魔法の宝庫でした。さすがに全部は見られませんでしたけど。」
「やりすぎよ。これじゃあ、当初の目的である襲われて悲観して自殺までいかないでしょう。」
「あ、そうでした。罠を作るのが楽しくてつい。」
「とりあえず、いったん暗殺者の動きが落ち着いて、夜になったら罠を外しなさい。」
「いや、今解除します。」
「ここから遠隔で?」
「ええ、あの洞窟に連絡を取れるようにした時にその糸を中継してあそこの罠とつないでいますから。」
「だったらすぐ切りなさい。過剰防衛よ。」
「はい」私は、指につないであった糸を操作して罠を外した。
「終わりましたよ。これであの洞窟に近づいても罠は発動しません。夜は別ですけど。」
「まったく、いつもどおりにあんたね。」どういう言われようでしょうか。
「あるじ様、家庭内の力関係は、アンジー様が頂点ということでよろしいのでしょうか」
ユーリが突然そんなことを聞く。慌ててアンジーが訂正する。
「違うわよ、こいつが一番なの。こいつとモーラの暴走を止めるときだけわたしなの。」
「はあ、そうなんですね。」メアさんがため息をついている。
「僕は最初からアンジー様が一番偉いと思っていましたけど。」レイが当然そうに言った。
「そうですか、力関係の把握は獣人の方がよく見て理解していますね。」
パムが感心して言う。私は、レイに尋ねてみた。
「レイ、ちなみに私の順位はどの辺にありますか」
「ええ?言っても良いのでしょうか。怒りませんか?」
いや、わかっていますが念のため。
「やっぱり最下位ですか。」
「・・・はい」その回答に一同苦笑している。
「理由は、何かありますか。」
「親方様がエッチな事を想像したときに皆さんから一斉に攻撃されているからです。」
「そうですか~」
「レイもしっかり女の子ですからね」
翌日は、誰もその洞窟には現れず。その翌日には、攻撃が始まった。午前中だけでも数人単位で5度繰り返され、殺さないことが身上のはずの元魔王様が、攻撃に転じ瀕死まで追い込む攻撃を行っている。昼過ぎにモーラが、一度周囲に隠れている魔族やら獣人やらに警告を発している。その場所から撤退したが、モーラが住処に戻っていき、しばらくすると、徐々に集まってきている。いたちごっこだ。
たまに元魔王は、洞窟まで追い込まれたように見せて撃退しているのだが、なかなかに演技っぽいらしく、楽しそうに演技していて、親衛隊の皆さんがあきれているようだ。まあ、楽しそうなんでいいですが。それで自殺するとかちょっと問題でしょう。
でも、こんなに元魔王を攻撃する者が出るのは予想外でした。夜にこっそり殺しに来ると思っていたのに不思議でしたが、裏切り者ということにされて、それを旗印に攻撃しているそうです。
それでも、うちの家にもとばっちりが来ているので、こちらからドラゴンの使いだといって先制攻撃をかけ、傷つかない程度に追い払ってもいた。
その日は、朝に男の獣人が家に到着するという知らせが事前に入ったため、罠を解除して到着を待っていた。元魔王がこの地で発見されてから2週間ほど経過している。
「ごめんください。」
「あら、こんにちは。ご主人様、獣人の方がお見えです。」
「やあ、よく無事に戻ってこられたね。よかった、よかった。」
「かなり遠かったが、なんとか無事に戻ってこられたよ。さっそくですまないけれど、新しい里に行く手はずはようやくできたぜ。これで元魔王様の新しい里に行ける。」
「そのまま、あの洞窟に向かってください。あと、シナリオを少し変えます。」
「どう変えるんだい。」
「元魔王様一家はその里に入れないことを悲観して一家心中ということにします。」
「なるほど、元魔王様は了解しているのかい。」
「自分の行動を省みてしようが無いだろうと言っていました。」
「自分の行動?」
「攻撃が続いて追い込まれて精神をおかしくして自殺のはずが、楽しんで迎撃している姿が随所に見られまして。説得力に欠けるもので」
「ああ、なるほど。」
「その事で、今後の住処をどうするか決めるため、ドラゴンの里と魔法使いの里から使者を呼ぶことにします。さすがに魔族領に戻すわけにもいきませんでしょう。」
「新たな住処か」
「はい、それでは連絡が取れたことを伝えに行ってください」
「わかった。その後ここに寄ってもいいかい?」
「ええ、いいですよ。メアさん。」
「はい、お食事用意して待っていますね。」
「ありがてえ、早速行って来るぜ。」
そういえば、あの方の女ボスは元気にしているんでしょうか。なんとなく聞いていませんでしたが。
『モーラさん、新しい里と連絡が取れたそうですよ。』
『うむ、周辺から魔族が消えたぞ。どういうことじゃ。』
『たぶんこの後、魔法使いの里とドラゴンの里から使者が来ることが知れ渡っているのでしょう。』
『なるほどな、証人がいるところで襲ったらばれるか。どれ、ドラゴンの里に連絡を取るか。』
『お願いしますね。』
「モーラ様~連絡を取る必要はなさそうですよ~。」エルフィが外から戻ってきた。
『ああ、2人揃ってお出ましか。』
「こんにちは、」
「来たわよ」
「早かったですね。彼が来たのは数分前ですが、もう、それぞれの里にはお話しが?」
「ええ、そうよ、早く終わらせたいようね」
「そうみたいです、連絡が取れ次第急いで行けと。」
「それであなた達がお越しになったと。」
「代わりの者をお願いしたけど、最後までやってこいと言われたわ。まあ、あなたに関わるとろくな事にならないと学習してしまったからね。」
「わたしですか。」
「ええ、あと最果ての賢者のせいね。」ミカさんが同意している。
「わしのせいじゃと」
「あ、まずい」
「ミカ、なぜヒメツキがこんのだ。」
「それが、本当に別件に追われていまして。」
「風のやつは、・・・まあつかまらんか」
「こういう時にはどこにいるかつかめません。」
「ミカとエリスじゃあ、証人としても信憑性がないのじゃがなあ。」
「そうですねえ、身内で嘘をついていると言われかねないのですよ」
「他の種族の族長ではどうですか?」
「これまで関わってきた族長はほとんどが利害関係者じゃからなあ。」
「エルフ族は、感謝してないと思いますから大丈夫ですかね。」
「孤狼族は感謝されているから無理じゃろうが、エルフ族はいけるかもしれんな。」
「あとは、ドワーフはどうなんじゃ、まあ、あれだけのことをしでかしておいて今更じゃが。」
「突飛な考えですいませんが、聞いてもらえますか。」パムがめずらしく口を開く。
「なんじゃ改まって。」
「それだけ恩をうっているのであれば、族長会議を招集してはどうですか。」
「ふむ、大胆な発想じゃな。」
「いかがでしょうか。」
「集めてどうする。」
「そこに元魔王一家を同席させどこに住まわせるかを議論してもらいましょう。結果的にどこでも受け入れしないと思いますので、悲観して一家焼身心中というシナリオです。」
「全部族が集まっていないから、まあ会議といっても小規模になるでしょうけど。主催は普通、ドラゴンの里なのよね。」
「あとは、私から提案があります。ドラゴンの里にはモーラからここに元魔王一家がこれ以上いることは、迷惑じゃなんとかしてくれと族長会議の依頼をして、開催地をここにする。理由は、元魔王一家を他の地に移送するには襲撃が恐いから。そして極めつけは」
「ほう極めつけは、なんじゃ」
「若い族長候補を全件代理人として立てること。なぜなら、長老達が死んでからも元魔王達は生きている可能性があるからですよ。約定を憶えていてもらおうと。どうせ、じじい共は出てきませんから。」
「でも、さすがにエルフ族やドラゴンは出てこないのでは。」
「決まったことは、持ち帰って一族の会議に掛けて可否を決めるとすれば、納得もしましょう。」
「第1回代理人交渉というところか。」
「出てくるのは、たぶん。ドラゴンは・・・」
「持ち帰るとなるならわしがそのまま議長をやらされるな。誰も出てこないじゃろう。」
「でしょうねえ。」
「エルフ族はどうなの?」
「そうですね~、うちのいとこですかね~実際は腹違いの兄らしいのですけど~」
「面倒くさそうなやつじゃな」
「そのほうが良いのでしょう?」
「まあそうじゃが、会ってそうそうケンカとか始めるなよ」
「ありそうですね~」
「獣人族はどうなんでしょうねえ。」
「たぶん、孤狼族がしきることになると思いますが、」
「ああ、そうなれば出てくるのは、兄ですね。」とレイ
「ああ、族長の孫な。例の暴れ狼の。」
「はい、一応家族の中では優しくしてもらいましたから、今回の件だとこちら側になっちゃうかもしれません。」
「ドワーフは、聞かない方が良いか」
「いえ、たぶん族長の息子だと思われます。私の祖父に対する族長の行動に対してあまり良い感情は持っていませんでしたが、それを前面には出してこないと思いますので、中立の立場で望んでくれると思います。」
「あとは、ホビットとドリュアデスくらいか?」
「どちらも会議には参加していても姿は見えないのですが、まあ、連絡は森に行けば可能だと思いますよ。」
「ドリュアデスって何ですか?」
「ああ、知らないか。草木のドラゴンの縄張りに住む木の妖精ね。そういえば、あのエルフの森の騒動の時は騒がなかったけどどうしてたのかしらね。」
「ふむ、それは気になるな。まあよい、ダメでもともとじゃ、掛け合ってみるかのう。だめなら、この2人で強硬じゃ。」
「一度私は戻ります。」
「私もよ、魔法使いの里からは、たぶんナンバー2が出てくると思うのよ。であれば、早めに連絡を取りたいの。ドラゴンの里も動けば私たちも当然動く。そういうことよ。」
「お互い、牽制し合っておるのか。」
「お互いに貸している借金や借りている借金は山になっているのよ、精算のあてもなくね」
「そうじゃのう」
そうこうしているうちに例の獣人が帰ってきた。
「話はまとまったが、立会人はいつ来るんだい。」
「来ているんだけど、役者不足と言われてね、次の人選をしている所よ。」
「そうか、いつ頃になるのかな。あの子がだいぶまいっていたんだよ。それがかわいそうで。」
「だいぶ疲弊しているのか。」
「両親に会えたが、外に出られないからなあ。子どもにはつらいのだと思う。全く元気がないんだよ。両親でもどうしようもないらしい。」
「子どもは外にでて遊ぶものじゃからなあ。それでも、今なら出られるぞ、まあ遊び相手がいないか。」
パムとエルフィとレイが相談している。パムがこちらに来た。
「ぬし様、提案があります。私たちを使者として各部族へ行かせてください。」
「私は行かせたくないのですがねえ。特にパムとレイは」
「次世代の者をとのことでしたので、もしかしたら可能かと思いましたが。」
「僕は、逃げるようにあの里を出てきた身ですので、一度あの里に行って事情を説明しておきたいと思います。」いつものレイらしくない真面目な顔でそう言った。
「私は~、里の門から里の中に何通か手紙を射かけてみようと思います~。」
「そうですか。それは面白そうですね。」
「私は、近くの街にいるであろう間者をしている者を探して連絡をつけようと思います。」
「皆さんの気持ちは大変ありがたいのですが、この件についてそんなに力を入れているわけではないのですよ。」
「そうじゃ、実際、族長達に呼びかけをするのはドラゴンの里でやってくれるはずじゃ。無理をしなくてもよいのではないか。」
「いえ、3人で話したのですが、私たちの家族が静かに暮らすためには必要なことだと思っていますが。いかがでしょう。」
「確かにそうですね。静かに暮らすためには、私たちは関与していないと認める者が必要です。だからといってあなた達まで行く必要はありませんよ。」
「ですが、私たちが動けばより一層代表を出させることが可能になります。」
「そうでしょうか。」
「ええ、たとえ脅迫になろうとも。」
「お主ら、気持ちはわかるがのう。その獣人の話しを聞いたであろう、あの子が体調不良らしいのじゃ、急いだ方が良さそうなのじゃ。」
「わかりました。お力になれず残念です。」
「あなた達のその気持ちだけで私たちは幸せですよ。ありがとうございます。」
「うむ、では、レイ、ユーリ、すまぬが元魔王のところへわしの使いとして行ってきてくれぬか。何か遊ぶ物を持っていってくれ、そしてしばらくの間遊び相手になってやってくれ。ただし、外には出るなよ。」
「はい」そう言ってレイとユーリは出て行った。懐に遊び道具を抱えて。
「さて、私たちも戻るわ、役に立たなくなったと報告しにね」
「私もそうします。そして会議の開催を伝えてきます。」
「ミカ、ドラゴンが各種族を回って連れてくるようにしてくれんか。それも一刻も早くじゃ。元魔王の子どもの心が濁ったなら、また何か起きるかもしれんからな。」
「わかりました。明日とは言えませんが、一両日中には、開催日時を決めます。」
そうして、ミカとエリスさんは出て行きました。
「俺はどうしたらいい?」獣人さんは所在なげです。
「しばらくここで足止めです。あとドリュアデスさんと連絡が取れますか?」
「いや、俺たちの中でも存在を否定する者もいるくらいだから会ったことも連絡もとれない。すまないが。」
「いえ、エルフィあたりは、存在を知っていて会うことができそうですがどうですか?」
「残念ですが、その人達と連絡を取ることはできません。しかし、もしかしたら呼びかければ出てくるかもしれませんよ」
「それはいつでもですか」
「今、森に行きましょう。」
「ここでもできるのですか。」
「森に木や草があれば呼ぶだけはできますよ。来るのかどうかは保障できませんけど」
「では、森にいこうかのう。」
そうしてぞろぞろと裏の庭から続く森の中に入りました。
「では、呼びかけます。ドリュアス、ドリュアデス、ここにある者達があなたと話したいと言っています。その姿を現してください。」
「ドリュアス、ドリュアデス、ここに体がないなら作り現れてください。お願いします。」
そうして全員で手を前にあわせている。しばらくそうしていたが、何も反応が無いので、ちょっとガッカリしていたところに、森の中に響く声が聞こえ出す。
「なんでしょうか。我々のように静かに生き、姿なき者に対し、姿を現せという。なにを求めるのですか。」
「お願いがあります。お話を聞いていただいてもいいですか。」
「おや、貴方たちには見覚えがあります。もしかして、あなた達はあの森を壊し、そして再生した者達ですね。わかりました姿を現し、話しを聞きましょう。」
そうしてドリュアスは姿を現した。長身の美人さんである。胸はありませんが。
「ありがとうございます。よく私たちだとわかりましたね。」
「それは、あの時、一部始終を見ていましたから。」
「見ていたのですか。」
「はい、あの状態では、私たちは見守るしかなかったのです。闇に飲まれないよう自分たちの仲間を避難させるくらいしか。」
「そうですか。全てを守り切れずにすいませんでした。」
「いえ、再生してもらえただけでも良かったと思っています。」
「さて、お願いしたいことがあります。かくかくしかじか」
「そうですか。わかりました。見ていれば良いのですね。」
「立ち会ってもらえればかまいません。あと、元魔王様家族が焼け死ぬのを見てもらえれば。」
「わかりました。」
「わかりました。燃やされるのを見ていて証言すればよろしいのですね。」
「お願いします。」
「それでは、その時が来ましたらお声をおかけします。」
「では、いつでもお声をおかけください。」
ドラゴンの里の素早い対応で、各部族の若手をドラゴンの里の者が抱えて、翌々日の正午に連れてくることになった。場所もモーラの縄張りの端の方。ドラゴンが飛んできたのを見られないよう、町とは離れた山間の草原決まった。
翌々日の朝には、すでに私達一同と元魔王様家族そして親衛隊の者達が草原に集まっている。
「さて、もうじき証人も来るところだし、死んでもらいましょうか。」
「そうね、早いほうが良いわね。場所は、ここから走ってもらって森のそばでいいわね。」
「遺体3つの確保が先じゃろう。」
「もう用意してありますよ。」
「で、どう入れ替えるのじゃ」
「そりゃあ、自分たちの周りに火を盛大に燃やしてもらってその間に土の下に潜ってもらいます。」
「なるほどな」
「で、モーラさんに土を動かして欲しいのですお願いしますよ」
「お主がやらんのか」
「ええ、私が土関係の魔法を使うとモーラが怒るので。」
「おぬし、今ここでそれを言うのか」
「だって~モーラが~怒るんですもの~」と私が言った。
「エルフィの真似をやめんか。気持ち悪いわ。わかったわしがやる。まったくドラゴン使いの荒い男じゃ。わしが関与したらまずいじゃろう。」
「まあ、さすがにばれないでしょう。では、お願いしますね。」
「あとでちょっと練習しておこうかのう」
続く
「まあ、残される子どもの事を気にしてのことかも知れませんが、納得いきませんね。」
「お主も気付いたか。なんとなくしっくりこないのう。」
「ええ、私たちに汚名を着せるつもりかも知れません。」
「なるほど、元魔王殺しか」
「私たちのこれまでの風評だと、元魔王殺しまでやりかねませんからね。」
「そうなれば、現魔王とてその復讐に出てこざるをえまい。」
「そうですよ。魔族は特に同族が殺されることに強烈な反応を示します。どんなことをしても殺されますよ。わたし。」
「噂どおりなら下級悪魔は出てこないだろうが、闇討ち、だまし討ちなんでもありで殺しに来るな。最終的には総力戦も辞さないだろう。しかもわしは手を出せないと来ている。」
「元魔王殺しにドラゴンが関わったとなったら、ドラゴンの里からも抹殺命令が出ますねきっと。」
「ああ、ドラゴンの里と魔法使いの里の両方からも来られたらまあ、まちがいなく全滅しただろうな。」
「うまいシナリオですねえ。誰が考えたのでしょうか。」
「さあなあ。今の魔王はそこまで考えてはおらんじゃろうしなあ。まあ、ここまで頭の回る奴なら尻尾は出さんじゃろうなあ。」
「確かにそうよねえ」
そうして罠を張りめぐらして、そのことを元魔王様に告げて、その日は終わった。
翌日、たぶんドラゴンの里と魔法使いの里に報告が届いたせいなのか、モーラの縄張りの中に、どこの勢力かわからない人達の監視が始まりました。監視は、私たちの家のある方向と以前モーラがいた洞窟の方です。数日後、元魔王の親衛隊の方が食料等を持って旧洞窟の中に入っていくと、我々への監視は手薄になり、そこを監視し始めました。しかし、まだ攻撃には至っていません。むしろお互いの監視のせいで、身動きが取れなくなった様に見えます。さらに数日が過ぎ、元魔王の元に獣人達が新しい里への連絡が入ったことを知らせていた。
私は、モーラの新しい洞窟に行き、そのことを話しました。
「わしもすでに感知しておる。わざわざ来なくても良いのに」ドラゴンのままの姿で私と会話をしている。本当に以前より2回りは、大きいです。
「いや、脳内通信しているのを知られたくないので。」
「ああ、そうか。でも、意外に早かったのう。」
「そうですね。定期的に指定場所を巡回しているようで、たまたま連絡がついたそうです。ただし、念のためその連絡員が本物なのか確認するため、新しい里に向かっているそうで、まだかなりの日数がかかりますとのことでした。」
「その者が本物の使者か確認していると。」
「そのくらい用心しないとダメですよねえ。」
「まだ、何の動きもないからいいが、じれて突っ込むバカが出そうな気がするが。」
「そんな雑魚なら大丈夫でしょう。」
「そうあって欲しいがな。」
「では、戻ります。」
「そういえば、あの洞窟とは連絡がとれるのか?」
「一応、有線で連絡は取れるようにしてありますし、念のため転移できるようにしてありますよ。」
「なるほど、到着地点はどこにしているのじゃ。」
「魔法使いの里にしたかったのですが、モーラの縄張りのギリギリエリア内です。その時は、そこで死んでもらおうと。」
「なるほどなあ。」
「では、もうしばらく我慢してください。」
「わかった。風呂に入りたいのう」
「うちに来て入っていけばいいんじゃないですか?」
「まあ、その時に何かあってもな。里につけいる隙を与えそうでなあ。けじめじゃな。今はやめておくわ」
「そうですか、では、これを置いていきます。」
「なんじゃそれは、」
「新しい家を作るときに簡易で作った風呂があったでしょう。あれを作る魔法を組んであります。効果は30分くらいで切れて消えてしまいますが、もしよろしければお使いください。」
「ああ、助かる。そういえばあの姿にも久しく変わっていないのでなあ。」
「ドラゴンでいることに慣れてしまったのですね。」
「ああ、そういうものかもしれぬなあ。」
「それでは」
私は洞窟を出て自分の家に戻った。
「モーラはどうでしたか。」
「お風呂に入りたいと、でも、ドラゴンのままで過ごしているので、元の姿に戻るのが面倒くさい感じでした。」
「確かにねえ、あのでかい洞窟でひとの形になっても広さを持て余すだけだしねえ。」
チリンチリンと窓辺に置いた鈴が鳴りました。
その音を聞いて、目をつぶって耳を澄ましたエルフィが
「あ、罠に引っかかりましたよ。」
「ついに動き出しましたか。しかも昼間に。ずいぶん無謀ですね。」
「さすがにケガをした人を抱えて撤退したようです。」
「とりあえず、第1ラウンド終了ですね。」
「あのえげつない罠に引っかかって、膝から下持って行かれてもまだ突進するかしらねえ。」
「命令に背けない人達もいますからねえ。」
「さすがに今日はこれで終わりですかねえ」
「また動き出しましたよ~。」
エルフィから報告が、
「罠に引っかかりました~さっきと同じ所です~」
「まあ、一度起動した罠は、なくなったと普通思うわよね。」
「罠が復活しているとか普通考えませんよ。ご主人様は意地悪です。」
「ごめん意地悪しているつもりはないんだ、こういう罠は、相手がどう考えるかを想像して裏をかいて設置するものだから。」
「あるじ様、あの時「特定の方向に、幅1メートルで帯状に蟻の這い出る隙間もなく罠を設置しておくもの」と言うのは、たぶん意地悪だと思います。」
「いや、それでも特定の方向だけですし、獣人なら飛び越えられる幅だし。」
「でもその先には獣人が飛び越えられそうな着地点には、罠は仕掛けていないけれども、次の一歩に反応して罠が作動しますよね」
「レイあの時のテストに付き合ってもらってありがとう。大変助かったよ。」
「どう考えても空飛ぶくらいしか近づけないのではないでしょうか。」
「飛んだとしても、粘りつく糸が張り巡らされていて、落ちるしかないですよね。」
「さすがに飛んであの糸の隙間を通ろうとは考えないでしょう。」
「たった今引っかかりましたよ。片翼が取れたように見えましたけど。」
「戻ろうにも戻れないみたいです。血がたくさん出ていますが、大丈夫ですかね~」
「あ、親衛隊の人が洞窟から出てきてその獣人を回収して回復させています。羽根は元通りになりましたよ?そんな簡単に大けがが治せるんですか?旦那様どうしてですか?」
「まあ、ケガが過剰に見えるように意識に作用させていますから。」
「旦那様は、そんなこともできるんですね~」
「またやばいことを憶えたのね。ああ、ネクロマンサーの頭を覗いたときに知ったのね。」
「そうです、あの人の頭の中は、私の知らない魔法の宝庫でした。さすがに全部は見られませんでしたけど。」
「やりすぎよ。これじゃあ、当初の目的である襲われて悲観して自殺までいかないでしょう。」
「あ、そうでした。罠を作るのが楽しくてつい。」
「とりあえず、いったん暗殺者の動きが落ち着いて、夜になったら罠を外しなさい。」
「いや、今解除します。」
「ここから遠隔で?」
「ええ、あの洞窟に連絡を取れるようにした時にその糸を中継してあそこの罠とつないでいますから。」
「だったらすぐ切りなさい。過剰防衛よ。」
「はい」私は、指につないであった糸を操作して罠を外した。
「終わりましたよ。これであの洞窟に近づいても罠は発動しません。夜は別ですけど。」
「まったく、いつもどおりにあんたね。」どういう言われようでしょうか。
「あるじ様、家庭内の力関係は、アンジー様が頂点ということでよろしいのでしょうか」
ユーリが突然そんなことを聞く。慌ててアンジーが訂正する。
「違うわよ、こいつが一番なの。こいつとモーラの暴走を止めるときだけわたしなの。」
「はあ、そうなんですね。」メアさんがため息をついている。
「僕は最初からアンジー様が一番偉いと思っていましたけど。」レイが当然そうに言った。
「そうですか、力関係の把握は獣人の方がよく見て理解していますね。」
パムが感心して言う。私は、レイに尋ねてみた。
「レイ、ちなみに私の順位はどの辺にありますか」
「ええ?言っても良いのでしょうか。怒りませんか?」
いや、わかっていますが念のため。
「やっぱり最下位ですか。」
「・・・はい」その回答に一同苦笑している。
「理由は、何かありますか。」
「親方様がエッチな事を想像したときに皆さんから一斉に攻撃されているからです。」
「そうですか~」
「レイもしっかり女の子ですからね」
翌日は、誰もその洞窟には現れず。その翌日には、攻撃が始まった。午前中だけでも数人単位で5度繰り返され、殺さないことが身上のはずの元魔王様が、攻撃に転じ瀕死まで追い込む攻撃を行っている。昼過ぎにモーラが、一度周囲に隠れている魔族やら獣人やらに警告を発している。その場所から撤退したが、モーラが住処に戻っていき、しばらくすると、徐々に集まってきている。いたちごっこだ。
たまに元魔王は、洞窟まで追い込まれたように見せて撃退しているのだが、なかなかに演技っぽいらしく、楽しそうに演技していて、親衛隊の皆さんがあきれているようだ。まあ、楽しそうなんでいいですが。それで自殺するとかちょっと問題でしょう。
でも、こんなに元魔王を攻撃する者が出るのは予想外でした。夜にこっそり殺しに来ると思っていたのに不思議でしたが、裏切り者ということにされて、それを旗印に攻撃しているそうです。
それでも、うちの家にもとばっちりが来ているので、こちらからドラゴンの使いだといって先制攻撃をかけ、傷つかない程度に追い払ってもいた。
その日は、朝に男の獣人が家に到着するという知らせが事前に入ったため、罠を解除して到着を待っていた。元魔王がこの地で発見されてから2週間ほど経過している。
「ごめんください。」
「あら、こんにちは。ご主人様、獣人の方がお見えです。」
「やあ、よく無事に戻ってこられたね。よかった、よかった。」
「かなり遠かったが、なんとか無事に戻ってこられたよ。さっそくですまないけれど、新しい里に行く手はずはようやくできたぜ。これで元魔王様の新しい里に行ける。」
「そのまま、あの洞窟に向かってください。あと、シナリオを少し変えます。」
「どう変えるんだい。」
「元魔王様一家はその里に入れないことを悲観して一家心中ということにします。」
「なるほど、元魔王様は了解しているのかい。」
「自分の行動を省みてしようが無いだろうと言っていました。」
「自分の行動?」
「攻撃が続いて追い込まれて精神をおかしくして自殺のはずが、楽しんで迎撃している姿が随所に見られまして。説得力に欠けるもので」
「ああ、なるほど。」
「その事で、今後の住処をどうするか決めるため、ドラゴンの里と魔法使いの里から使者を呼ぶことにします。さすがに魔族領に戻すわけにもいきませんでしょう。」
「新たな住処か」
「はい、それでは連絡が取れたことを伝えに行ってください」
「わかった。その後ここに寄ってもいいかい?」
「ええ、いいですよ。メアさん。」
「はい、お食事用意して待っていますね。」
「ありがてえ、早速行って来るぜ。」
そういえば、あの方の女ボスは元気にしているんでしょうか。なんとなく聞いていませんでしたが。
『モーラさん、新しい里と連絡が取れたそうですよ。』
『うむ、周辺から魔族が消えたぞ。どういうことじゃ。』
『たぶんこの後、魔法使いの里とドラゴンの里から使者が来ることが知れ渡っているのでしょう。』
『なるほどな、証人がいるところで襲ったらばれるか。どれ、ドラゴンの里に連絡を取るか。』
『お願いしますね。』
「モーラ様~連絡を取る必要はなさそうですよ~。」エルフィが外から戻ってきた。
『ああ、2人揃ってお出ましか。』
「こんにちは、」
「来たわよ」
「早かったですね。彼が来たのは数分前ですが、もう、それぞれの里にはお話しが?」
「ええ、そうよ、早く終わらせたいようね」
「そうみたいです、連絡が取れ次第急いで行けと。」
「それであなた達がお越しになったと。」
「代わりの者をお願いしたけど、最後までやってこいと言われたわ。まあ、あなたに関わるとろくな事にならないと学習してしまったからね。」
「わたしですか。」
「ええ、あと最果ての賢者のせいね。」ミカさんが同意している。
「わしのせいじゃと」
「あ、まずい」
「ミカ、なぜヒメツキがこんのだ。」
「それが、本当に別件に追われていまして。」
「風のやつは、・・・まあつかまらんか」
「こういう時にはどこにいるかつかめません。」
「ミカとエリスじゃあ、証人としても信憑性がないのじゃがなあ。」
「そうですねえ、身内で嘘をついていると言われかねないのですよ」
「他の種族の族長ではどうですか?」
「これまで関わってきた族長はほとんどが利害関係者じゃからなあ。」
「エルフ族は、感謝してないと思いますから大丈夫ですかね。」
「孤狼族は感謝されているから無理じゃろうが、エルフ族はいけるかもしれんな。」
「あとは、ドワーフはどうなんじゃ、まあ、あれだけのことをしでかしておいて今更じゃが。」
「突飛な考えですいませんが、聞いてもらえますか。」パムがめずらしく口を開く。
「なんじゃ改まって。」
「それだけ恩をうっているのであれば、族長会議を招集してはどうですか。」
「ふむ、大胆な発想じゃな。」
「いかがでしょうか。」
「集めてどうする。」
「そこに元魔王一家を同席させどこに住まわせるかを議論してもらいましょう。結果的にどこでも受け入れしないと思いますので、悲観して一家焼身心中というシナリオです。」
「全部族が集まっていないから、まあ会議といっても小規模になるでしょうけど。主催は普通、ドラゴンの里なのよね。」
「あとは、私から提案があります。ドラゴンの里にはモーラからここに元魔王一家がこれ以上いることは、迷惑じゃなんとかしてくれと族長会議の依頼をして、開催地をここにする。理由は、元魔王一家を他の地に移送するには襲撃が恐いから。そして極めつけは」
「ほう極めつけは、なんじゃ」
「若い族長候補を全件代理人として立てること。なぜなら、長老達が死んでからも元魔王達は生きている可能性があるからですよ。約定を憶えていてもらおうと。どうせ、じじい共は出てきませんから。」
「でも、さすがにエルフ族やドラゴンは出てこないのでは。」
「決まったことは、持ち帰って一族の会議に掛けて可否を決めるとすれば、納得もしましょう。」
「第1回代理人交渉というところか。」
「出てくるのは、たぶん。ドラゴンは・・・」
「持ち帰るとなるならわしがそのまま議長をやらされるな。誰も出てこないじゃろう。」
「でしょうねえ。」
「エルフ族はどうなの?」
「そうですね~、うちのいとこですかね~実際は腹違いの兄らしいのですけど~」
「面倒くさそうなやつじゃな」
「そのほうが良いのでしょう?」
「まあそうじゃが、会ってそうそうケンカとか始めるなよ」
「ありそうですね~」
「獣人族はどうなんでしょうねえ。」
「たぶん、孤狼族がしきることになると思いますが、」
「ああ、そうなれば出てくるのは、兄ですね。」とレイ
「ああ、族長の孫な。例の暴れ狼の。」
「はい、一応家族の中では優しくしてもらいましたから、今回の件だとこちら側になっちゃうかもしれません。」
「ドワーフは、聞かない方が良いか」
「いえ、たぶん族長の息子だと思われます。私の祖父に対する族長の行動に対してあまり良い感情は持っていませんでしたが、それを前面には出してこないと思いますので、中立の立場で望んでくれると思います。」
「あとは、ホビットとドリュアデスくらいか?」
「どちらも会議には参加していても姿は見えないのですが、まあ、連絡は森に行けば可能だと思いますよ。」
「ドリュアデスって何ですか?」
「ああ、知らないか。草木のドラゴンの縄張りに住む木の妖精ね。そういえば、あのエルフの森の騒動の時は騒がなかったけどどうしてたのかしらね。」
「ふむ、それは気になるな。まあよい、ダメでもともとじゃ、掛け合ってみるかのう。だめなら、この2人で強硬じゃ。」
「一度私は戻ります。」
「私もよ、魔法使いの里からは、たぶんナンバー2が出てくると思うのよ。であれば、早めに連絡を取りたいの。ドラゴンの里も動けば私たちも当然動く。そういうことよ。」
「お互い、牽制し合っておるのか。」
「お互いに貸している借金や借りている借金は山になっているのよ、精算のあてもなくね」
「そうじゃのう」
そうこうしているうちに例の獣人が帰ってきた。
「話はまとまったが、立会人はいつ来るんだい。」
「来ているんだけど、役者不足と言われてね、次の人選をしている所よ。」
「そうか、いつ頃になるのかな。あの子がだいぶまいっていたんだよ。それがかわいそうで。」
「だいぶ疲弊しているのか。」
「両親に会えたが、外に出られないからなあ。子どもにはつらいのだと思う。全く元気がないんだよ。両親でもどうしようもないらしい。」
「子どもは外にでて遊ぶものじゃからなあ。それでも、今なら出られるぞ、まあ遊び相手がいないか。」
パムとエルフィとレイが相談している。パムがこちらに来た。
「ぬし様、提案があります。私たちを使者として各部族へ行かせてください。」
「私は行かせたくないのですがねえ。特にパムとレイは」
「次世代の者をとのことでしたので、もしかしたら可能かと思いましたが。」
「僕は、逃げるようにあの里を出てきた身ですので、一度あの里に行って事情を説明しておきたいと思います。」いつものレイらしくない真面目な顔でそう言った。
「私は~、里の門から里の中に何通か手紙を射かけてみようと思います~。」
「そうですか。それは面白そうですね。」
「私は、近くの街にいるであろう間者をしている者を探して連絡をつけようと思います。」
「皆さんの気持ちは大変ありがたいのですが、この件についてそんなに力を入れているわけではないのですよ。」
「そうじゃ、実際、族長達に呼びかけをするのはドラゴンの里でやってくれるはずじゃ。無理をしなくてもよいのではないか。」
「いえ、3人で話したのですが、私たちの家族が静かに暮らすためには必要なことだと思っていますが。いかがでしょう。」
「確かにそうですね。静かに暮らすためには、私たちは関与していないと認める者が必要です。だからといってあなた達まで行く必要はありませんよ。」
「ですが、私たちが動けばより一層代表を出させることが可能になります。」
「そうでしょうか。」
「ええ、たとえ脅迫になろうとも。」
「お主ら、気持ちはわかるがのう。その獣人の話しを聞いたであろう、あの子が体調不良らしいのじゃ、急いだ方が良さそうなのじゃ。」
「わかりました。お力になれず残念です。」
「あなた達のその気持ちだけで私たちは幸せですよ。ありがとうございます。」
「うむ、では、レイ、ユーリ、すまぬが元魔王のところへわしの使いとして行ってきてくれぬか。何か遊ぶ物を持っていってくれ、そしてしばらくの間遊び相手になってやってくれ。ただし、外には出るなよ。」
「はい」そう言ってレイとユーリは出て行った。懐に遊び道具を抱えて。
「さて、私たちも戻るわ、役に立たなくなったと報告しにね」
「私もそうします。そして会議の開催を伝えてきます。」
「ミカ、ドラゴンが各種族を回って連れてくるようにしてくれんか。それも一刻も早くじゃ。元魔王の子どもの心が濁ったなら、また何か起きるかもしれんからな。」
「わかりました。明日とは言えませんが、一両日中には、開催日時を決めます。」
そうして、ミカとエリスさんは出て行きました。
「俺はどうしたらいい?」獣人さんは所在なげです。
「しばらくここで足止めです。あとドリュアデスさんと連絡が取れますか?」
「いや、俺たちの中でも存在を否定する者もいるくらいだから会ったことも連絡もとれない。すまないが。」
「いえ、エルフィあたりは、存在を知っていて会うことができそうですがどうですか?」
「残念ですが、その人達と連絡を取ることはできません。しかし、もしかしたら呼びかければ出てくるかもしれませんよ」
「それはいつでもですか」
「今、森に行きましょう。」
「ここでもできるのですか。」
「森に木や草があれば呼ぶだけはできますよ。来るのかどうかは保障できませんけど」
「では、森にいこうかのう。」
そうしてぞろぞろと裏の庭から続く森の中に入りました。
「では、呼びかけます。ドリュアス、ドリュアデス、ここにある者達があなたと話したいと言っています。その姿を現してください。」
「ドリュアス、ドリュアデス、ここに体がないなら作り現れてください。お願いします。」
そうして全員で手を前にあわせている。しばらくそうしていたが、何も反応が無いので、ちょっとガッカリしていたところに、森の中に響く声が聞こえ出す。
「なんでしょうか。我々のように静かに生き、姿なき者に対し、姿を現せという。なにを求めるのですか。」
「お願いがあります。お話を聞いていただいてもいいですか。」
「おや、貴方たちには見覚えがあります。もしかして、あなた達はあの森を壊し、そして再生した者達ですね。わかりました姿を現し、話しを聞きましょう。」
そうしてドリュアスは姿を現した。長身の美人さんである。胸はありませんが。
「ありがとうございます。よく私たちだとわかりましたね。」
「それは、あの時、一部始終を見ていましたから。」
「見ていたのですか。」
「はい、あの状態では、私たちは見守るしかなかったのです。闇に飲まれないよう自分たちの仲間を避難させるくらいしか。」
「そうですか。全てを守り切れずにすいませんでした。」
「いえ、再生してもらえただけでも良かったと思っています。」
「さて、お願いしたいことがあります。かくかくしかじか」
「そうですか。わかりました。見ていれば良いのですね。」
「立ち会ってもらえればかまいません。あと、元魔王様家族が焼け死ぬのを見てもらえれば。」
「わかりました。」
「わかりました。燃やされるのを見ていて証言すればよろしいのですね。」
「お願いします。」
「それでは、その時が来ましたらお声をおかけします。」
「では、いつでもお声をおかけください。」
ドラゴンの里の素早い対応で、各部族の若手をドラゴンの里の者が抱えて、翌々日の正午に連れてくることになった。場所もモーラの縄張りの端の方。ドラゴンが飛んできたのを見られないよう、町とは離れた山間の草原決まった。
翌々日の朝には、すでに私達一同と元魔王様家族そして親衛隊の者達が草原に集まっている。
「さて、もうじき証人も来るところだし、死んでもらいましょうか。」
「そうね、早いほうが良いわね。場所は、ここから走ってもらって森のそばでいいわね。」
「遺体3つの確保が先じゃろう。」
「もう用意してありますよ。」
「で、どう入れ替えるのじゃ」
「そりゃあ、自分たちの周りに火を盛大に燃やしてもらってその間に土の下に潜ってもらいます。」
「なるほどな」
「で、モーラさんに土を動かして欲しいのですお願いしますよ」
「お主がやらんのか」
「ええ、私が土関係の魔法を使うとモーラが怒るので。」
「おぬし、今ここでそれを言うのか」
「だって~モーラが~怒るんですもの~」と私が言った。
「エルフィの真似をやめんか。気持ち悪いわ。わかったわしがやる。まったくドラゴン使いの荒い男じゃ。わしが関与したらまずいじゃろう。」
「まあ、さすがにばれないでしょう。では、お願いしますね。」
「あとでちょっと練習しておこうかのう」
続く
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜
ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」
「街の井戸も空っぽです!」
無能な王太子による身勝手な婚約破棄。
そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを!
ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。
追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!?
優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。
一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。
「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——!
今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける!
※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません!
神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜
と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます!
3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。
ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです!
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
非常に申し訳ない…
と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか?
色々手違いがあって…
と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ?
代わりにといってはなんだけど…
と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン?
私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。
なんの謝罪だっけ?
そして、最後に言われた言葉
どうか、幸せになって(くれ)
んん?
弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。
※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします
完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします
異世界転生日録〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆感想の受付開始しました。
【あらすじ】
異世界に転生したルイは、5歳の高熱を境に、記憶を取り戻す。一度は言ってみたい「ステータス・オープン」で、ステータスを見れることに気付いた。スキル「生活魔法∞(無限大)」を発見。その意味を知るルイは、仄かに期待を抱いた。
それと同時に、今世の出自である農家の四男は、長男大事な両親の態度に、未来はないと確信。
家族に隠れて、ステータスにあったスキルの一つ「鑑定」を使い、村のお婆(薬師)相手に、金策を開始。
十歳の時に行われたスキル鑑定の結果を父に伝えたが、農家向きのスキルではなかったルイは「家の役には立たない」と判断され、早々に家を追い出される。
だが、追放ありがとう!とばかりに、生活魔法を知るべく、図書館がある街を目指すことにしたルイ。
最初に訪れた街・ゼントで、冒険者登録を済ませる。だがそのギルドの資料室で、前世の文字である漢字が、この世界の魔法文字だという事実を知ることになる。
この世界の魔法文字を試したルイは、魔法文字の奥深さに気づいてしまった。バレないように慎重に……と行動しているつもりのルイだが、そんな彼に奇妙な称号が増えて行く。
そして、冒険者ギルドのギルドマスターや、魔法具師のバレンと共に過ごすうちに、バレンのお師匠様の危機を知る。
そして彼に会いにいくことになったが、その目的地が、図書館がある魔法都市アルティメットだった。
旅の道中もさることながら、魔法都市についても、色々な人に巻き込まれる運命にあるルイだったが……それを知るのは、まだ先である。
☆見切り発車のため、後日変更・追記する場合があります。体調が不安定のため、かける時に書くスタイルです。不定期更新。
☆カクヨム様(吉野 ひな)でも先行投稿しております。
追放された荷物持ちですが、実は滅んだ竜族の末裔でした~のんびり暮らしたいのに、なぜかそうならない~
ソラリアル
ファンタジー
目が覚めたら、俺は孤児だった。 家族も、家も、居場所もない。
そんな俺を拾ってくれたのは、優しいSランク冒険者のパーティだった。
「荷物持ちでもいい、仲間になれ」
その言葉を信じて、俺は必死についていった。
だけど、自分には何もできないと思っていた。
それでも少しでも役に立ちたくて、夜な夜な一人で力を磨いた。
だけどある日、彼らは言った。
『ここからは危険だ。荷物持ちは、もう必要ない』
それは、俺の身を案じた「優しさ」からの判断だった。
俺も分かっていた。
だから、黙ってそれを受け入れ、静かにパーティを離れた。
「もう誰にも必要とされなくてもいい。一人で、穏やかに生きていこう」
そう思っていた。そのはずだった。
――だけど。
ダンジョンの地下で出会った古代竜の魂と、
“様々な縁”が重なり、騒がしくなった。
「最強を目指すべくして生まれた存在」
「君と一緒に行かせてくれ。」
「……オリオンを辞めさせた、本当の理由を知っている」
穏やかなスローライフ生活を望んだはずなのに、
世界はまた、勝手に動き出してしまったらしい――
◇小説家になろう・カクヨムでも同時連載中です◇
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる