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第18話 人柱ならぬ天使柱
第18-6話 そして地下は埋められた
しおりを挟む「王子が、説明しますか?」
すでに国王には謁見の許可は取ってあるそうです。王子と私が知り合ったことを王は喜んだ反面、兄のことを考えてすぎに渋い顔に戻ったらしい。そこまで卑屈にならなくても良いと思うのですが。
「今回の件については、私も国として協力する立場になりますので、最初の説明はあなたからしていただきたいのです。技術的な話になれば臣下の者に説明させますし、父が難色を示したら私が話します。まずは、お願いしたいのですが。」
「わかりました。説得できなければどうしますか。」
「いえ、それでもこの土地に住む人の転居については、私の独断と言われようとも行うつもりです。」
「では、参りましょうか。そこまで決断されているのであれば、私の交渉がダメでも問題ないでしょう。あと、」そう言って私は、ロジーを見た。
「はい、魔法使いの里も協力してくれるというところもお話しできます。」
「そうなんですか?それならば説得もたやすい。」
「問題は場内に入れてくれるかどうかなのですよ。」
「それは、私が頑張りましょう。」
そして、国王の所に向かいます。
謁見室には、中央の高いところにある玉座とその両側に家臣達が立ち並んでいた。
「何か用があると聞いたが。」周囲に家臣がいるせいか少しは威厳を出している国王です。
「はい、まずは、この国の危機についてお伝えします。」
「なんじゃ。」
「この国、というかこの城の周囲一帯は、あと三ヶ月で地崩れが起き崩壊します。」
「なんだと」
「ですかから、早急にここから住民を避難させたいと考えております。」
「そんなはずはない。ここは・・」
「天使様のご加護ですか?」
「ああ、そうだ」
「残念ですが、天使様の余命はあと3ヶ月ほどです。光になって消えてしまい、その恩恵を失い、この土地の崩壊を止めていたものは無くなります。」
「なんだと、昨日もちゃんと生きていたぞ。」
「ああ、ご存じなのでしょう?天使様は光の下に居ないと回復はしないと。なのに地下に縛った。天界から見つからないように。」
「いや、わしは知らん。先代からもまだ数十年は大丈夫と聞いておった。」
「おかしいですねえ、先代からなわけがないでしょう。天使様がつながれたのは二十年という所です。あなたの治政ですよね。」
「まあ、ちょうど入れ替わりの時じゃったからな。わしはその事実だけを知らされておった。しかもこの土地が危ないのは、別の理由だと。」
「なるほど自覚が無かったと。まあ、いいでしょう。でも、もうその恩恵もおしまいです。そして、この土地も崩落します。」
「なんとかならんのか。」
「いや、今更命乞いをしてどうするんですが。これまでさんざん甘い汁を吸ってきておいて、そのツケを払ってくださいよ。」
「王子、そんなことをこやつに言わせるためにここに連れて来たのか。」
「いいえ、お父様、いや国王様、そこから先があります。落ち着いて聞いてください。」
「あ、ああ」
「私がここに来たのは、最初は天使様とその娘を助けるためでした。ただ、助け出すとここの土地に住んでいる人たちが路頭に迷うことがわかったのです。それで、何か策が無いかと考えていたのですが。」
「・・・・」
「何も思いつかなかったのですよ。」
「では、なんのためにここに」
「でも、私の周りにいた皆さんが考えてくれました。」
「で、お願いなのですが、その作業をするために城の中を人が出入りするのを許可して欲しいのです。それと作業中危険なのでこの地方の人たち。正確には、城とその城塞内にいる人たちを一時避難させて欲しいのです。」
「なるほど、そうするのか。城の中を人が行き来するのは、城の地下に入るためだな。」
「その通りです。」
「地下では何人作業をするのか」
「数十人ですね。」
「武器は持ち込まぬな」
「たぶん大丈夫です。ただし、入るのは魔法使いですけどね」
「魔法使いだと。」
「3ヶ月以内に作業しなければなりませんから」
「魔法使いが数十人もか。」
「それについては、大丈夫です。」ロジーは、言った。
「小娘、名前は。」
「街中にて薬屋を営んでおりますロクサーヌ・ベントルドンと申します。」
「おぬしがどうして大丈夫と言えるのか。その、申してみよ」
「今回のこの崩落について、魔法使いの里は、災害と判断して全面的に協力をするとの申し出がありました。」
「だから安心して魔法使いを城内にいれろと。馬鹿馬鹿しい。それだけの人数なら簡単に城を制圧できるであろう。」
「城を制圧して何になりますか?国を奪ったところで無駄な争いが起きるだけです。そのようなことを魔法使いの里は、考えておりません。」
「口では何とでも言える。」
「父上、ここはひとつ私を信じてもらえませんか。」
「信じろと。」
「はい、これまで私は、各国を回り知見を得てきました。さすがに魔法使いの里までは、見つけておりません。それは、逆に、魔法使いの里は、この国をわざわざ征服する必要など無いことの証左であります。」
「ああ、そういう考え方もあるか。まあ、魔法使いが城内に入るのは認めよう。しかし、市民を城塞から3ヶ月も外に出しておいたら他国のつけいる隙を与えてしまうだろう。」
「そうでしょうねえ。それでも、この方が、3千人の兵士と戦った魔法使いがこの国にいると示すだけで、誰も手を出してこないでしょう。」
「なるほど、そういうことか。確かにしばらくは、攻めては来ないな。」
「その間は、この国への入国を一部遮断しましょう。」
「息子よ。今回の件については、お前が指揮を取れ。」
「ありがたきお言葉ですが、それは兄におまかせします。」
「何を言っておる。」
「残念ながら、私は、市民達の避難の誘導に回らねばなりません。王子が先頭に立ち市民と共に避難するこれこそ市民が求めていることなのです。」
「まあ、わかった隙にするが良い」
「ありがたきお言葉。」
「ご了解が得られたようですので、私達は、臣下の方とこれからの段取りの打ち合わせを行いたいと思います。よろしいでしょうか。」
「わかった好きにするが良い。ただし、城の中では困るので、城の外にある場所を提供しよう。それでよいか。」
「ありがとうございます。それでは、準備が整い次第再びこちらへ参ります。」
「よろしく頼む。」
そうして、その場を辞して、地下に降りていく。
「天使様。こんにちは。」
私は、徐々に待遇が良くなっていく牢獄の中を見回した。
「あら、魔法使いさんこんにちは。」
「ここも住みやすくはなってきましたねえ。」
「そうですね。どうしてかはしりませんが、明るくそしてベッドも新しくなりました。しかも娘の分まで」
「よかったですね。でも、悲しいお知らせもあります。」
「天に還されるのですね。」
「はい、住民の避難と並行して、この地下を土で塞ぎます。」
「私も埋められるのでしょうか。」
「いいえ、下の階層から徐々に埋めていき、最後にこの洞窟を埋めます。ですから、これから騒がしくなりますので、その事をお知らせに参りました。」
「それは仕方ないのですね。いつ頃までですが。」
「期限は3ヶ月と考えていますが、できるだけ早く終わらせたいと考えています。」
「そうですか。そうなると私が還るのも早まりますか。」
「あなたの体調を考えるとできるだけ急ぎたいのです。」
「わかりました。そうしないとこの子に会うことも出来なくなりますからね」
「はい、消えてしまったらそれまでです。それに何かの弾みで予想よりも早くなる場合も考えていますから。」
「フェイ、それでいい?」
「はい、お母様、」
「それでは、お願いします。どうか。私の夫とこの子のためになるように。」
「できるだけ最善を尽くします。」
私はそう言ってそこを出る。誰も言葉を発しないまま、階段を上り城の出口まで来た。そこには、数名の文官らしき者達が立っていて私達を待っていた。
「私達は、今回の事を無事行うために国王より仰せつかった者です。よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「わしから一つだけ言っておくことがある。」そう言ってモーラが前に出る。
「あの国王の事じゃ、わしらが失敗した時のことも何か言い含めているじゃろうなあ。まさかとは思うが、失敗した時のことまで考えてはおらんじゃろうな。」
「そ、それは」
「よいか。わしらは手をださん。魔法使いの力は借りるが、作業はそちらの責任じゃ。それで失敗しようとわしらは何もしておらん。わかるな。失敗したとして責任をこちらに押しかけようとしても無駄じゃ。まあ、失敗したらおぬしらの首が飛ぶくらいで済むだろうから。せいぜい頑張るが良い。」
「モーラ、おどしちゃだめでしょ。今このドラゴンが言ったことにビビってはダメよ。でも、少しでも失敗させようとする者がいるなら私達に告げ口しなさい。その者は私達の方で始末してあげるから。だから必ず貴方たちの手でこの作業を完遂するのよ。いいわね。」
「まあまあ、そのくらいにしてください。一応人選には私も関わっていて、この国のことを真剣に考えている者だけを厳選しています。」
「王子は、まだ甘いと思うわよ。」
「なぜですか。」
「この国のことを真に考えている人にすれば、たとえこの城が崩れようともその失敗の責任でこの魔法使いを縛り付けた方が良いと考える馬鹿がでるのよ。」
「まさか。そんなことを・・・」
「今回の件では、地盤が安定して、天使が還されて終わることになるから、豊穣の恩恵が消えただけとなるからマイナスだ考える人も出る訳よ。一般市民はそう思うのよね。それでは国益にならない。ならば、使えない土地を崩落させてその代わりに有能な魔法士を確保した方がと思う馬鹿も現れるのよ。そしてそれに賛同する者もね。甘くは無いわよ」
「そこまで深読みしますか。」
「それが人間という者よ。そして、盲信して盲進するからたちが悪いの。私はこれまで散々見てきているから。」
「わかりました。心してかかります。」
そうして、城の外の大きな小屋に対策本部がおかれて、そこで、まず顔合わせをして、各部門の代表者を決めて指示系統を確立した。主に、広報部門、避難部門、避難先の管理部門、そして土木作業部門(土確保)、地下作業部門(おもに魔法使い)、最後に他国の牽制部門である。
「それでは、役割分担にあわせて作業スケジュールを組みます。3ヶ月とは見込んでいますが、できるだけ急がないと間に合わないかもしれません。ですから1ヶ月半をめどとします。」
そうしてそれぞれが作業を開始したのですが、最初に問題が発生したのは、当然のことですが避難民です。土地の崩落の理由が天使様であることは、噂が流れてしまい、どうしても説明が必要になりました。市民達が集まってきて暴徒化を始めそうだったので、王子と私が対応に出ました。
「ふざけるな、天使をそのまま置いておけばいいじゃないか。」
「だからあと3ヶ月で光になって消えてしまうんです。そしたらこの一帯が崩落するのです。わかりませんか。」
「それをなんとかするのが国王だろう。」
「国王は何も出来ませんよ。だからこうして一時的に避難させて土地を安全にしたのち、皆さんを元の家に帰すと言っているのです。わかりませんか。」
「その家に住んだまま作業は出来ないのか」
「いや、どんな作業だって手違いが起こるかもしれないんですよ。そうなって死んでも良いならそのまま暮らしてください。そのかわり、その周辺の市場や店も移動するのですから食べ物にも困りますよ。」
「避難しても作業が失敗したら家は無くなるのだろう」
「それは、申し訳ありませんが、作業をしなければ崩落するんです。そのままにしておきますか?」
「それは・・・」
「死にたいならそのまま暮らしてください。止めはしません。生活もままならないでしょうけどね。」
暴動にはならず、それぞれの意見をひとりずつ文官が聞き取り、市民は少しずつ帰って行った。
「ありがとうございます。」文官から礼を言われた。
「それでも残ると言った人もいるでしょう?」
「そうですね。でも、食べ物の心配があるので諦めたようです。」
「補償金も何も出ませんからねえ」
「なんの保証ですか?」
「いえ、独り言です。」
「はあ」
「あなた様はやはり賢者様であられますね。」王子が言った。
「だから違いますよ。もしあの人達が暴れ出したら、私は魔法を使って威嚇しましたよ。だって、野蛮な人たちには一番それが効果的だから。そうならなかったのは、この国の人がちゃんと教育を受けて善悪の区別がついているということです。」
「教育ですか」
「というよりは、しつけですかねえ。あとは、避難先での監視も必要になります。」
「それは・・・わかりました。気をつけます。」
そうして、大規模な市民の避難計画は始まった。建物を建てるわけにも行かず、テント暮らしになるため、場所の区分けや何かもいざこざがあったが、ちゃんと調整されている。実のところそこが一番問題になりそうだったのだが、文官達が事前に作っていた計画書ではそこまで練られていて何とかなったようだ。
避難が開始され、城の周囲の住民から避難を開始していたので、周囲の避難が完了した段階で、平行して、土木作業を開始した。作業用の足場、移動経路の確保など、事前のシミュレーションを行いながら、最下層まで設置を行った。避難民の退去が確認された後、本格的に作業が開始される。
まず土の搬入だ。なにぶん地盤が軟らかいので、大きな穴を開けてそこから土を降ろすこともできず、今ある階段にスロープを設置して、土を流し入れることになった。階段は、洞窟で一度とまり、違う場所から下の階層の階段があるので、洞窟にある程度ためることになり、そこから次の階層に土を移動することになるため非常に面倒くさい。しかも各階層ともに潰れないように移動する土の重量を制限しなければならず、これが一番の問題だった。
これから本格的な作業にかかることになり、魔法使いの里から大量の魔法使いがやってきた。エリスさんも一緒にやってきた。
作業の指示をロジーが到着した魔法使い達にしている時に、私達のところにエリスさんがやって来て、モーラを連れ出し周囲を見回した後小さい声で言った。
「ちょっといい、あんたやばいわよ。」
「ほうわしがか。」
「ええ、たぶん崩落の原因をあなたにするつもりよ。」
「里がか?」
「協力する魔法使いの全部ではないと思いたいけど、一部の者達は間違いないわね。そして、今回のことをごまかすために作業中に崩落させてその中からあなたが現れる。真実は、隠蔽されて、嘘が報じられる。そして里がつじつまを合わせる。あんたが崩落の原因だということにしてね」
「ふふ、エリスよ、ありがとうな。おぬしの立場が悪くなることも厭わずすまないのう。」
「そんなことはいいのよ。あんたとは長い付き合いだし。今回の件、魔法使いの派遣といい何か隠している感じの里には、ちょっとねえ。」
「わしらは、大丈夫じゃ。それは聞かなかったことにする。」
「ああ、そうか想定済みなのね。」
「わしらのことを考えてくれてありがとうな。」
「さすが最果ての3賢者というところね。」
「ほう、そんな名まで付けてよいのか。あとで困るぞ。」
「私が付けたわけじゃ無いからね。」
「ああ、そういうことか。まあ、3人寄ればこの世界で10本の指くらいには入りそうじゃな。」
「だから、この世界にとって問題なんじゃない。それとね、地下にあったはずの土の行き場がわかったのよ。」
「大量の土砂をどうしたのじゃ。」
「ああ、当時の魔法使い達と国王が、約定を結んだそうよ。城の地下の採掘権と交換にこの城を構築とをね」
「エリス、どこでそれを」
「まあ、昔話の好きな老人からね。それでも何を掘ったのかまでは教えてくれなかったわ。かなり貴重な鉱物だったみたい。」
「それで、この立派な城ができたのですね。」
「そうらしいわ。だから、あなたを使って昔の話をもみ消したい魔法使いがいるのではないかしらね」
「そういうことか。そんなにまずいのかのう」
「では、私は知らなかったことで失礼するわ。」
「ありがとうな。」
そうしてエリスは帰って行った。
説明をしているロジーの所にモーラは歩いて行き、説明を中断させて魔法使い達に言った。
「のう、ここにいる魔法使い達よ。何を言われてきているがわからぬが、ここに暮らす者達に危害が加わるようなことは起こすなよ。その段階で、わしではなくこの名も無き魔法使いの恨みを買うぞ。わしはドラゴンじゃから人の生き死になぞ気にせんし、今回の事は、草木のやつの代理としてお主らが変なことをしないかを監視しているだけじゃ。だがこやつはそうかいかんぞ。崩落なんぞ起きたら原因と理由を徹底的に調べ上げ、この土地の人々に代わって復讐するからな。それを肝に銘じて最新の注意を払って作業をするがいい。
あと、知らない魔法を教えてもらって来ているならさきに見せてもらうからな。指示に従わず勝手に魔法を使った者も迷わず殺すからな。あと、作業をしているのはお主らなので、責任も魔法使いの里になるから注意してあたれよ」
「脅して、ビビらせて、萎縮して間違ったらどうするのよ。」
「それでもやる奴も出るのじゃよ」
そうして作業は開始され、一番下の階層は、無事に終わったが、次の階層で事件は起きた。ひとりの魔法使いが、勝手に魔法を使おうとしたのだ。私は、その子に向かってこう言った。
「やめておきなさい。それが魔法使いの里の言いつけだとしても、あなたはここで死にたくはないでしょう?」
「どうしてわかったのですか。」青ざめるその子。
「あなたひとりだけ、詠唱内容と作られた魔方陣が違っていたのですよ。気をつけなさい。里を裏切るのと殺されるのとどちらをとりますか?大丈夫、見破られたと正直に報告すれば里からのおとがめはありませんから。」
私の言葉にうなずいて、以後は、普通の魔法を使っている。
「なるほど、最下層で何か仕掛けるかと思わせて、次の階層でやるか。姑息なことじゃ。」
「こうなると、各階層ごとに丁寧に監視するしかないですけどね。」
そうして、8階層の一番上の最後の階層も無事に終わり、あとは洞窟を残すだけとなった。
また、国民が暴動を起こしかけている。
「天使の恩恵の話がどこからか噂になって広まっているぞ。暴動が起きています。」
「国王がリークしたのですかねえ。」
「わからんが、どうしても天使をあそこに閉じ込めておきたい奴がいるのであろうなあ。」
「確かにいてもらえば豊作は間違いないですからねえ。でもあと3ヶ月しか持たないのですよ。誤解があるのでしょうか。」
そうして、王子と共に場外に出て、暴徒と対峙する。まるで一揆のように農具を抱えている。そして、危険範囲にあらかじめ作られた柵を囲んでいる。今にも柵を壊して入ってきて作業を妨害しそうだ。
「わしたちの恩恵を返せ」
「だから、その策を壊したりしないでください。危ないですから。」
私は、その柵を乗り越えようとしている人たちに声を掛ける。しかし、その柵を越えてしまう。その先には、土の山が作ってあり、地面の強度がギリギリで数十人なら大丈夫とは思いますが、牽制のため、一筋の炎を放つ。炎は、地面を這うようにその人たちに近づき、手前に盛大な炎の壁を作る。さすがにそれを越えては動けない。私は、風を起こし、その人達を巻き上げ、暴徒のいる方にゆっくりと放り投げた。それを見てさすがに暴徒化した市民は静かになった。
「恩恵を返せと言っていますが、最初の避難の時に、恩恵は3ヶ月しか持たないと話して納得したはずではありませんか。あなた達は聞いていないのですか。」
「いや、そんな話しは聞いていない。ちゃんと説明してくれ。」
「どちらからお越しですか。」
「西の町だが」
「そうですか、そこまでまだ話しが行っていなかったみたいですね。では、そちらに事務所がありますので、それぞれの集落の代表の方がそこにいる文官さんから話を聞いてくださいね。」
「あ、ああ。」
「暴れるなら、先ほどの人たちのようになりますよ。」
そうして、他の地域から集まった暴動は収まった。
「どうなんだ今回のは、」
「国からの説明不足とも取れますねえ。誰かに煽動されたようにも見えますけど。」
「微妙じゃのう」
そして、他国への牽制も平行して行われていた。
最初に行ったのは、情報遮断。あと、流通商品主に食料品の量を減らした。もちろん避難民に必要だからだが、少しだけは、流していた。
情報遮断と言っても、流通がある以上情報も流れる。しかし、こちらの国の商売人のみ流通を許可していて、当然情報も流さず、間者については、通行を不許可としていた。それでも、境界線に鉄条網を張っているわけではないので、侵入してくる者もいるが、兵士を巡回させてできるだけ制限をしていた。
意外だったのが国王だ。国王は、臣下の者と共に城に残り作業の進捗を見守っている。その辺は王として腹をくくっているのだろう、しきりに他国の動静をうかがい、適時特使を送っていた。
私達も念のためと、パムとエルフィ、メアがそれぞれ他国に入り、城内に侵入してその動向を逐一報告してくれていた。
「ぬし様、そちらの国の国王は、たいした方です。外交については、ものすごい手腕を持っていますね。たぶん数ヶ月以上も侵攻はありません。」
「今のところ兵士も緊張感がなく、街中でのんびり飲んでいますから、侵攻の可能性はありませんよ~」
「はい、こちらも食料の備蓄、武器装備の買い付けなどが行われていませんので、しばらく侵攻はありません。」
それぞれがそれぞれの方法で諜報活動を行っています。さて、ユーリですが、もちろん避難民のところで、けんかの仲裁兵士間のけんかの仲裁など、市民を守っていました。
レイは、ユーリと共に市民のところでも行動していましたが、どちらかというと、作業現場にいて火薬等の持ち込みを懸念して土の搬入などに当たって、検査を行っていました。皆さんそれぞれ大活躍です。
「なんじゃわしらが何もしていないみたいじゃないか。」
「まあ、魔法使いの監視くらいですしねえ。」
「一応、搬入された土や砂の地ならしとか、硬質化とかしているであろう。」
「確かにやっちゃダメなことしてますねえ。」
そうして、1ヶ月半ほどで作業は終わり、残すは、天使様が捕らえられていた洞窟を残すのみとなった。ここは、自然にできた鍾乳洞で天井が異様に高い。
「草木の地脈を分断することになるからなあ。それが気がかりじゃ。」
「地脈をもう少し上の方に移動しないと本当に死んだ土地になりそうですね。」
「これまでかなりの期間放置されたままだから。地脈自体が枯れかけているのじゃ。うまく伸びてくれるのか。」
「では、草木の人を呼びましょう。」
「いや、あいつは今回の件には手を出さないと言っておったぞ。」
「何か言っていませんでしたか。」
「確か、何かあったら勝手に駆けつけるとか言っておったが。」
「そこにいらっしゃいますよ。」
「ああ、いたのか・・・てわしが気付かんはずがなかろうどうして気付かなかったのじゃ。」
「のりつっこみうまいですねえ」
「まったく気配を消しよって。そこでみていないでこの地脈どうにかしろ。おぬしのものであろう草木の。」
「確かにそうだな。これは、わたしのものだ。少しだけ上にあげるか。」
「できるのか。」
「ああ、ただ、全部が終わってから手を掛けるよ。だから埋めてしまってくれ。」
そうして、ついに洞窟が封鎖されることになり、親子は光のあたる地上に出てきた。
続く
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