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第12話 襲撃と告白と会ってはイケない人達
第12-6話 あ~あ会っちゃった
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○城の中
さすがに城の中では対応が良くなりました。
城の中では侍従らしき女性達に誘導されて個室に案内されました。応接の椅子には私を中心にモーラとアンジーが両隣に座り、ユーリとエルフィは武器を手に持ったまま私達の後ろに立っています。メアは扉の所に立って外の様子を窺っているようです。
「さすが優秀な国は違いますね」アンジーが一応フォローしています。どこの国と比べていますか?もしかしてハイランディス?
「そうじゃのう。治安も格段に良さそうじゃ」
「よろしいのでしょうか?相手の陣地に無防備に入っておりますが」メアが気にしています。
「いやその方がよいぞ。その代わりに全員一緒でいなければならんがな」
「そうありたいですが、私だけ分断されるかもしれません。なんせ侮辱しましたからね」今になって自分の放った言葉を思い出して、自分でビビっています。言わなきゃ良かったー。
「しかも相手は王女ですしねえ」アンジーが意地悪そうに言います。ええ反省していますよ。
「そこよのう。ちなみにアンジー、さっきの平民の子ってお主の探している子なのか?」
「違うと思いますよ。年齢があわないですから。もっと年齢も若いし身長も小さいと思うんですよね」
「そうか。違うのか。さてこの部屋。おぬしはどう感じる」モーラが嬉しそうに私に尋ねます。
「今のところ魔法の遮断はしていませんね。でも、ところどころにマーカーらしきものがあります。何のためのマーカーか調べてみたいですけどいいですか?」私は立ち上がろうとする。
「今はやめておけ。ただでさえ怪しまれているのじゃ。あまりこちらの手の内をさらすな」すかさずモーラが私の行動を制しました。
「んー、この世界のハイレベルの技術に触れて勉強しないとスキルがあがらないんですよ」と私は言い訳をします。
「技術バカめ」もちろんモーラはあきれて言いました。
「そろそろおいでですよ」扉の近くに立っていたメアが言いました。コンコンとノックの音とともにドアが開かれます。あれ?どうぞって言っていないけど。そういうものなのですか?
そうして、さきほどの鎧やら魔法具を持ったメンバーが全員入ってくる。中央に王女様、そして横に長い杖を持った小柄な女性。たぶん魔法使いなのでしょう。反対には先ほど叫んでいた女騎士。その後ろにも魔法使いと武器を持った女の人がいるようです。全員女性でしたか。
私は、椅子に座り膝に肘をついて顎をのせてじっと見ます。
「貴様!王女様がきたのだぞ、立って挨拶せぬか」
「そうですね。挨拶は大事です」そう言って私は、立ち上がりたくなさそうな態度でゆっくり立ってから軽く頭を下げる。
「それが王女に対する挨拶か」
「よいおまえはさがれ」
「しかし」
「私は、ロスティア国王女イオン・ロスティアと申します」
「私は旅の魔法使い、名はありません。お見知りおきを」
「貴様!名乗らんと申すか」
「ええ、信用できない人には名前は教えられません。呪われたら困りますから」
「貴様、姫様が信用できないというのか」
「ごめんなさい。最初の印象が悪すぎるのです。たとえ王女だとしても私からは信頼できる状況にはありません。逆に考えてください。あなたが路上で民衆の中で剣を突きつけられ、奴隷商人制裁してやると言われたら。少なくとも私は怒りを抑えましたが、あなたならどうしましたか?剣を抜いて戦闘になっていたでしょう。周りの人を巻き添えにしてね。いったい何人あそこで死んでいますかね」
「きさま重ね重ね・・・」
「ああ、そこのあなた。名前は知りませんが、私とこの場で一対一でやりますか?それだけの口を聞くのです。それなりにできるのでしょうね」
「おぬしも引け。どうしたんだいつものおぬしらしくないぞ」
「私は謙虚な人が好きなんですよ。逆にこういう場をわきまえない、自分と相手の技量の差も考えない無礼な人が大嫌いなんですよ。威嚇したり恫喝したりすれば怯える人ばかり相手にしてきたのでしょうけど、本当に強い人は決してそういう所作はしないんですよ。むしろ自分の力にコンプレックスを持ち、常に相手との力の差を気にして、相手が王女の権威にかしこまっているだけなのに、さも自分の力でそうなっているかのように振る舞い、常に暴力を振るおうとする。愚劣で下銭な者は大嫌いです」私はその女をにらみつけながら言いました。
「それ以上私の部下を愚弄しないでもらいたい」
「そうですね、部下への愚弄はあなたへの愚弄ですよね、では、先ほどからその方が私に対して何度も剣を抜こうとしているのをあなたは止めていますか?」
「そ、それは」
「そういうことですよ。あなたは王女という立場が当たり前になって相手が誰であろうとひれ伏す、下手に出ることを理解している。経験的にそれが当たり前になっているんですよ。それをおかしいと思わないところがダメなんですが。わかりますか?」
「・・・い、いや」
「おぬし本当にどうした。なにを怒っている。もうやめよ」
「いいからその方に剣を抜かせなさい。私はここに座ったままでいいですから」私は膝に乗せている手の人差し指を動かして彼女を挑発する。
「きえええええ」その女は私の言葉が終わる前に斬りかかった。
私はパチリと指を鳴らしました。彼女の両腕は振りかざした剣とともに後ろに落ちる。
「ぎゃああああああ」その女は、腕がなくなった痛みでそこらじゅうを転げ回る。
「やかましい」もう一度パチンと指を鳴らす。
転げ回っていたその女の腕は元に戻っていて、転がろうとする動きを止める。剣も傍らに落ちている。
「なっ」
「剣を抜いたことをわびなさい」呆然と尻餅をついているその女
「あなたに言っているのですよ王女。あなたの部下が私にしたことに対して非礼をわびなさい。何をわびれば良いかわかりますか?」
「このたびは私の部下が無礼をはたらきすまなかった」
「すまなかったですか?」
「すいませんでした」
「私が謝れといったこととは違いますよ」
「ち、違うのか」
「先ほど私はあなたは部下を止めていますか?と聞いているんですよわかりませんか」
「あ、部下を御しきれずすいませんでした」
「さすが王女様、すぐ理解されましたね。それに比べてそちらの方。謙虚さが足りません。いい加減にしないと本当に死にますよ」私は王女には拍手を転がっている女には指を指して言いました。
「貴様!!」その女は倒れたまま私をにらみつけて言った。
「もういい、おまえは下がれ、話にならん」王女は倒れている女を見下ろしながらそう言った。
「でも」起き上がりながら王女を卑屈な目で見上げる女。
「いいからさがれ。さがれないと申すなら仲間から・・・」王女はそこで言葉を止める。
「わかりました。さがります」その女はペコペコ首を下げながら立ち上がり私を睨んでから部屋を出て行った。つまらない女です。
「ありがとうございます。あの方がいると恐くて話が進まないと思ったものですから、助かりました」
「こちらこそすまん。いやすみません」そうして頭を下げてから王女は向かい側の椅子に座りました。
「さて、何をお聞きになりたいですか?」私は居住まいを正して座り直して王女を見ながら言いました。やっとお顔を直視できました。怯えていますが顔に出さないようにしていますね。端整な顔立ちとしか言いようがないです。可愛らしいと言うよりはキリリとした切れ長な青い目にすらっと高い鼻。髪もややウェーブのかかった金髪で昭和の少女マンガの主人公という感じです。確かに美しいです。もっともストライクゾーンではありません何かが足りない。そう心の中で言っておかないと皆さんの視線が怖いです。美人を美人と言って何が悪い~~。
「単刀直入に聞きます。あなたは奴隷商人ですか?」真剣な目でそう聞かれました。いや単刀直入にしてもそう聞かれてそうですと言う人はいませんでしょう。ある意味ダメな子かもしれません。
「違います。そんな噂に惑わされて私に剣を向けたのですか?証拠もなしに」私は単刀直入に切り返します。
「さる貴族からそういう注進があったのだ。信頼できる臣下の者だ」言い訳しますか。へ~
「なるほど、信頼のおける臣下の言葉なら証拠が無くても犯罪者だと。相手の言葉を聞く前に殺しても良いと言われるのですね」ちょっと意地悪したくなりました。なんか可愛くなってきました。おや、背後から怒りのオーラが。
「すまん、それ以上責めないでくれ」目を伏せてそう言いました。ああ、やっぱり可愛いかも。隣に座ったアンジーからすねを蹴られました。痛い
「いえ、ここで責めておかないと、平民が無残に虐殺されてしまいそうですから」
「そんなことはしない。いやしていない」
「まあ、王女様ですから王様ではないのでしていないのかも知れませんが。王様はしていませんか?」
「当たり前だ。私の父は賢王と呼ばれているのだぞ。そんなことがあるわけないだろ・・もしかしてあるのか」
「それはご自身でお調べください。王女様。これからの時代、何が真実で何が嘘かは自分の目でお確かめください。せっかく魔族討伐に各地方を回っているのですから。嘘を見抜くことも賢王としての資質です。あと、優秀な側近、それを暴走させない側近、多数の信頼できる臣下をお持ちください。もちろん裏切りに備えて間者もお持ちになりますように」
「そこまでしなければなりませんか」目を見開いています。まあそう言いますよね。
「そこまで猜疑心にかられると心を病みます。裏切られたときにお前に裏切られたらしようが無いくらいのあきらめられるぐらい信頼できる者を臣下に持つことも必要です。そうお考えください」適当な事をべらべらとしゃべっていますよ。面倒になってきましたので。
「言っていることがごちゃごちゃだが」モーラがあきれています。
「人の心はいかようにも動きます。ですが真に信頼してついてくる者もいるでしょう。見極めてください。そう後ろの方のように」私は先ほど平民の出と言っていた魔法使いの子を見て言いました。
「この者が何か?」王女は振り向いてその子を見ました。
「たぶんですが、私の怒りに王女の身代わりになって死のうとしていたようにも見えましたよ」
「そうなのか?」
「はい、いざとなれば姫様の代わりにこの身をと思っておりました」
「そのようなことはするな」
「いえ、この国のためならこの身など」
「ありがとう。だがそれはやりすぎだ。その気持ちだけはありがたいが」
「いいえ、姫様のために死ねるなら本望です」
「ありがとう」
「はい」そう言って二人は見つめ合った。一方的に魔法使いの子が王女様を崇拝している感じですね。
「改めて謝罪する。いやさせてください。これまでの件すいませんでした」
「いいえ、こちらこそ知らなかったとはいえ一国の王女に対し非礼の数々、すいませんでした」
「お名前を教えてもらえないのであれば、賢者様と呼ばせてもらって良いだろうか。いえ、良いでしょうか」
「え?」私はポカーンと口を開けて答えました。王女の言葉は想定外だったのです。はあっ?
「あなたは魔法使いとおっしゃられました。たぶん名を問うてもはぐらかされるでしょう。でしたら賢者様と呼ばせて欲しいのですが、いかがですか」いやそのキラキラした目で言われましても。
「ええ、普通に魔法使いで良いのですが」
「いえ、此度の賢者様の言葉心にささりました。どうかこれからも私に対しては忌憚のないお言葉を。むしろ、その、きつく叱ってくれませんでしょうか」いや、あなたMですか?まあ怒られ慣れていないのでしょうねえ。その気持ちも判らないではありませんが、それは王女としてダメでしょう。
「うーんそうですね。そこまで言ってくれるのであれば、こちらも正直に話しましょう。私は、あの時、猛烈に怒っていただけなのです。怒っていた理由は、私と一緒にいてくれるこの方達が奴隷と見られたからなのです」と見当違いの話題を持ち出します。
「はあ」いきなり見当違いの事を話されて今度は王女はポカーンとしています。
「奴隷制度についてどうこう言うつもりはありませんが、このように普通に笑いながら歩いている者達を見て奴隷にされていると思われたというところに怒っていたのです」
「どういう意味ですか」
「私は、確かに怪しい噂が立つほどに彼女たちに囲まれ、恵まれた状態で旅をしています。でも私は強要はしていません。それは彼女らの様子を見てもらえばわかることです。様子をちゃんと見てもらえていれば、奴隷商人だという誤解も解けているはずなのです。ですが、彼女らの様子を見ても奴隷商人と見られたのがくやしかったんですね」
「おぬしはよくやっておる。それはわしらがよくわかっている。それでいいではないか。誤解は解けたのじゃから」
「ですがくやしいです」
「ご主人様、悩む必要などありません。私たちが気にしていないのですから」
「そうです。でもそう感じてくれてうれしいです」
「私はなぐさめてあげたいです」
「まったく、あんたは、そんなことで怒っていたのですか?やれやれ私たちより子どもですね?しかもむだに相手を脅すなんて。強者にあるまじき行為です」
「えー、みんなで非難するんですか?とほほ」私は演技とはいえそう言いました。
「王女よ、水に流してくれんか。この者の非礼は、国王に知られればたぶん斬首になるじゃろう。それを拒む我らとたぶん争うことになり無用な血が流れる。それはお互い本意とするところではないであろう?幸いな事に、ここにいる者しか知らぬ事じゃ。まあ、先ほど一人出て行ったあの者の気持ちはおさまらんとは思うが、ここでなんとか収めてくれんかのう」モーラが一番見た目年齢が低いくせに何か語りましたよ。
「私の父は、賢王と呼ばれている者です。そんなことはしないと思いますが」見た目は子どものモーラの言葉に動揺しながらもちゃんと対応している王女様は偉いです。
「普通の家臣に起きたことであれば、そう扱うじゃろう。じゃが、娘となるとそうもいかぬのが父親じゃ。それは賢王とてかわらん。もちろん王女様には今はわからんじゃろうが、子を持つ親の心とはそういうものだと思うてくれ」モーラは、さきほどの魔法使いの女の子に目をやる。つられて王女も彼女を見る。彼女はうなずいて答えを返した。
「わかりました。それでもあなたに剣を向けたことについては・・・」
「あの後誤解を解いて野に返したとして欲しい。どうじゃ良き王女様じゃろう」
「はあ、賢者様がよいのでしたら」
「かまいません」
「ではそのように」王女様がそう言ったとたん。私たち全員が、はーーっと息を吐く。
「き、緊張した」ユーリが胸をなで下ろす。エルフィは胸をなでようとして引っかかりましたが。
「ユーリまだ接見は終わっておらぬ。このあと誰かが粗相をしたら打ち首じゃぞ」モーラが後ろを見ずに王女を見ながら言った。
「しまった」思わず両手で口を押さえるユーリ。それを見て王女がクスクスと笑っている。
「冗談じゃ。さすがにこの後そのようなことにはならんと思うが」モーラが王女を見た。王女は笑いながら頷いている。
「王女様よろしいですか」
「どうした」魔法使いらしいいでたちの女の子が前に出る
「さきほど賢者様が見せたあの魔法がどういうものか知りたいのですが」この子も目をキラキラさせながら尋ねる。
「ふふ。おまえらしいな。新しい魔法を見ると目をキラキラさせておる。賢者様差し支えなければ教えてもらえまいか」その子がペコペコと何度もお辞儀して顔を上げると目がキラキラしている。
「あー教えたいのですが、原理がよくわかっていないのです。ごめんなさい。でも私ができるという事は、あなたもできるという事です。見たことを思い出してどんな魔法なのか想像して考えて試してみてください」私は教えたくないのでそう言いました。ええ、企業秘密なのです。
「はい!勉強します」元気でいいですね。好感が持てます。
「賢者様は相当の術者なんですね」
「いえ若輩者です」私の言葉に隣に座ったモーラがドンと肘鉄を食らわす。息がつまる。
「では転生者ということですか」
「そう推察できますね」私は肘鉄のために息が苦しいのをこらえてそう言いました。その言葉を聞いて王女は怪訝そうな顔をして私にさらに尋ねた。
「この世界では、その年齢で若輩はありえないのです。転生者ですか?」慎重に言葉を選んでもう一度王女が尋ねる。私はその姿を見てつい嬉しくなってしまいました。
「そこは冷静になってください。すべての可能性を考えてください。まず固定観念を捨てることです」私はきっと薄笑いを浮かべてそう言ったのでしょう。王女の表情が微妙に引きつっています。
「どういうことですか?」それでも興味をそそられて王女は質問する。
「一つは魔力量が年齢があがるほどに増えていったパターン。あとは、魔力量を隠して市井で暮らしていたけどばれてしまったパターン。そして、若返りをして年齢を偽っているパターン」私は知っている知識を使ってそう言いました。
「なるほど」王女は頷いている。
「でも私は転生者ですけどね」私の言葉に全員がずっこける。そうです。そのリアクションこそ欲しかったのです。
「驚かさないでください」王女は苦笑いをしながらそう言った。
「でもですね、先入観ほど恐ろしいものは無いと、先程痛感したばかりじゃないですか。現に私の暮らしていた街には、魔法を使える子がいましたよ。もっとも使い方を勉強していないので使い方がわからず最後には問題を起こしてしまいましたが」私は説明をするようにそう言いました。
「なるほど勉強になります。ですが本当に転生者なのですね」王女様は私に尋ねる。
「本当はごまかして隠して逃げるつもりでしたが面倒になりましたので」みんながまたずっこけます。
「幻術使いなのですか?だとすれば先ほどの魔法も納得いきますが」
「いいえ、実際彼女は腕がなくなっています」
「なんと」王女はびっくりして魔法使いの子を見る。同じようにびっくりしています。
「さ、種明かしはしました。こちらからは、一つだけ教えて欲しいことがあります」私はもう飽きたのです。はい。ついでにアンジーの懸案事項を片付けようと思い、言いました。
「なんなりと。答えられることであれば」
「実は転生者を探しています。ですが、その体のまま来た訳では無く、誰かの体に転移したようなのですよ」
「それは探しようがないですね」王女は困った顔をしています。
「そうなんですよ探しようがないのです。お願いに変えてもいいですか?」
「何を願われますか?」
「王が主催するか、もしくは誰かが主催するパーティーに招待して欲しいのです」
「どうしてですか?」
「どうやら転移した先が貴族の娘さんらしいのです。小さいお子さんで急に性格が変わったり魔法が急に使えるようになった娘さんがいないか探したいのです。だめですか?」私は嫌らしい笑いをしていたと思います。
「そうですか。探してどうされるのですか?」私の顔つきを見て嫌そうに王女が尋ねます。
「いえ何もするつもりはありません。無事に生きていることを確認したいだけです」
「それであればかまわないと思います。でも全員が出席する会などありませんので、かなりの回数参加することになりますよ」
「たぶんあなたは知っていますね」私はそう言って魔法使いの子を見る。先ほどまで元気だったその子が、今は青ざめています。
「そうなのか?」
「頭をぶつけて性格が変わり、それまでたいした魔法も使えなかったのに突然魔力量が飛び抜けて増えてしまった娘さんがいます」その子はそう答えた。
「貴族の子弟でか?」
「はい」
「学校には行っていないのか?」
「まだ8つですから」
「王女と魔法使いの方。いいですか。たった今知り合った私のことを信用してはいけません。いいですね。仮に私がその子を狙っていたとして、情報を渡したのがあなたと知れたとき王女の立場に傷が付きます。しかも私に対してのアドバンテージをむざむざ捨てているのです。そう言う時は表情に出してはいけません」
「今日のおぬしは変じゃ。おかしいぞ。どうしたのじゃ、なんかスイッチが入ったのか?」モーラが動揺しています。
「どうしてなんですかねえ。王族とそれに従う信頼できる臣下というものに幻想を抱いていて、少し失望しているのかもしれません。ただそれだけではなく、鍛え上げがいのある生徒がいるとついいろいろ教えてみたくなるみたいな感じ。そんなところですかねえ」また私は適当な事を言います。
「なるほどのう。教え甲斐のある生徒か。ところでその生徒達はついてきておるのか?」モーラがそう言って私を見ます。
「大丈夫じゃない?目がキラキラしているから」アンジーまで言い始めますか。
「話を戻しましょうか。こういう時は私に話をさせておいて、別室に行って情報を整理して保留にするか判断するのが正しいですよ。それが交渉というものです」私はうんちくなのか適当にごまかしてそう言いました。
「勉強になります」「うんうん」
「では、そのお知り合いの子の出席するパーティーに招待してください。念を押しておきますが、こちらとしては本当に見るだけで良いのです。変に解釈して無理に会わせようと画策したりしないでください。実際、会っても相手は何も知らないし、こちらも何も知らないのですから」私は丁寧に説明しました。
「わかりました。連絡先はどちらになりますか」
「誤解が解けていれば、近くの宿屋に泊まっているでしょう」
「魔法使いよ。賢者様を宿屋へ」
「はい」
「宿屋を紹介していただければ良いですよ。そこまでしてもらうと逆に宿屋の方に変に気を使われてしまいそうですので」
「そこまで市民に配慮されますか」
「私は市井をひっそりと旅しております。ゆえに民衆の前で王女様から剣を向けられるなど、噂になり目立つことが嫌いなのです。ご容赦ください」私は立ち上がって丁寧にお辞儀をしました。
「おぬしもたいがい卑屈じゃのう」モーラも立ち上がって私を下僕を見るような目をしました。だって皆さんの下僕ですよ。
「私は謙虚なつもりですけど」
「何事も度が過ぎると問題になりますよ」アンジーに言われました。まるではたから見たら子どもにたしなめられている大人ですね。
「そうですね日々勉強です」
「面白い関係ですね」王女は困惑しながらもそう言いました。
「楽しい関係です。ではよろしくお願いします」再び私は丁寧にお辞儀をします。
「わかりました。あの賢者様」王女も立ち上がりました。
「賢者ではありません。ただの魔法使いで良いですよ。そうですね、旅の魔法使いとお呼びください」
「では、旅の魔法使い様。私とともに冒険をしていただけませんか」そのお願いって目は可愛いですが、さすがにごめんなさいですねえ。
「残念ですが難しいです。この子達はいろいろと問題を抱えておりまして、それを片付ける旅をしております」私は両脇のモーラとアンジーの頭を撫でました。
「ならばその後ならばどうですか」
「それはその時になってみないとわかりません。その時まで私が生きながらえていたなら、またお目にかかれるかも知れません」私は自分で言っておいて、そんなに危険な旅をしているのか?とびっくりしています。そんなことはありませんけどね。
「そんなに大変な問題なのですか?」
「わかりません。そもそも問題ですらないかもしれません。もし仮にこちらの王国に関わることであれば、その時にはあなたにご助力いただくかも知れません」
「そんな大事なのですか?」
「大事なのかはわかりません。ですが旅というものも同じです。いつ何が起こるかわかりません。ですから生きている保証などどこにもないのです。あともう一つ。ともに旅をしようなどと思ってはいけませんよ。あなたにはやらなければならないことがあるはずです。それを優先しなければならないはずです。そちらを考えてください」
「わかりました。残念ですが」
「それでは、またお会いしましょう」私は再度お辞儀をしてその部屋を出ました。
「おぬしテンションが少しおかしかったぞ」
「私はきっと。王女様に会えてちょっと嬉しかったんですねえ」
「そんな訳ないでしょ」アンジーにすねを蹴られました。痛い。
そうしてその城を出ました。今度は兵士達に囲まれずに出る事が出来ました。良かった良かった。
続く
さすがに城の中では対応が良くなりました。
城の中では侍従らしき女性達に誘導されて個室に案内されました。応接の椅子には私を中心にモーラとアンジーが両隣に座り、ユーリとエルフィは武器を手に持ったまま私達の後ろに立っています。メアは扉の所に立って外の様子を窺っているようです。
「さすが優秀な国は違いますね」アンジーが一応フォローしています。どこの国と比べていますか?もしかしてハイランディス?
「そうじゃのう。治安も格段に良さそうじゃ」
「よろしいのでしょうか?相手の陣地に無防備に入っておりますが」メアが気にしています。
「いやその方がよいぞ。その代わりに全員一緒でいなければならんがな」
「そうありたいですが、私だけ分断されるかもしれません。なんせ侮辱しましたからね」今になって自分の放った言葉を思い出して、自分でビビっています。言わなきゃ良かったー。
「しかも相手は王女ですしねえ」アンジーが意地悪そうに言います。ええ反省していますよ。
「そこよのう。ちなみにアンジー、さっきの平民の子ってお主の探している子なのか?」
「違うと思いますよ。年齢があわないですから。もっと年齢も若いし身長も小さいと思うんですよね」
「そうか。違うのか。さてこの部屋。おぬしはどう感じる」モーラが嬉しそうに私に尋ねます。
「今のところ魔法の遮断はしていませんね。でも、ところどころにマーカーらしきものがあります。何のためのマーカーか調べてみたいですけどいいですか?」私は立ち上がろうとする。
「今はやめておけ。ただでさえ怪しまれているのじゃ。あまりこちらの手の内をさらすな」すかさずモーラが私の行動を制しました。
「んー、この世界のハイレベルの技術に触れて勉強しないとスキルがあがらないんですよ」と私は言い訳をします。
「技術バカめ」もちろんモーラはあきれて言いました。
「そろそろおいでですよ」扉の近くに立っていたメアが言いました。コンコンとノックの音とともにドアが開かれます。あれ?どうぞって言っていないけど。そういうものなのですか?
そうして、さきほどの鎧やら魔法具を持ったメンバーが全員入ってくる。中央に王女様、そして横に長い杖を持った小柄な女性。たぶん魔法使いなのでしょう。反対には先ほど叫んでいた女騎士。その後ろにも魔法使いと武器を持った女の人がいるようです。全員女性でしたか。
私は、椅子に座り膝に肘をついて顎をのせてじっと見ます。
「貴様!王女様がきたのだぞ、立って挨拶せぬか」
「そうですね。挨拶は大事です」そう言って私は、立ち上がりたくなさそうな態度でゆっくり立ってから軽く頭を下げる。
「それが王女に対する挨拶か」
「よいおまえはさがれ」
「しかし」
「私は、ロスティア国王女イオン・ロスティアと申します」
「私は旅の魔法使い、名はありません。お見知りおきを」
「貴様!名乗らんと申すか」
「ええ、信用できない人には名前は教えられません。呪われたら困りますから」
「貴様、姫様が信用できないというのか」
「ごめんなさい。最初の印象が悪すぎるのです。たとえ王女だとしても私からは信頼できる状況にはありません。逆に考えてください。あなたが路上で民衆の中で剣を突きつけられ、奴隷商人制裁してやると言われたら。少なくとも私は怒りを抑えましたが、あなたならどうしましたか?剣を抜いて戦闘になっていたでしょう。周りの人を巻き添えにしてね。いったい何人あそこで死んでいますかね」
「きさま重ね重ね・・・」
「ああ、そこのあなた。名前は知りませんが、私とこの場で一対一でやりますか?それだけの口を聞くのです。それなりにできるのでしょうね」
「おぬしも引け。どうしたんだいつものおぬしらしくないぞ」
「私は謙虚な人が好きなんですよ。逆にこういう場をわきまえない、自分と相手の技量の差も考えない無礼な人が大嫌いなんですよ。威嚇したり恫喝したりすれば怯える人ばかり相手にしてきたのでしょうけど、本当に強い人は決してそういう所作はしないんですよ。むしろ自分の力にコンプレックスを持ち、常に相手との力の差を気にして、相手が王女の権威にかしこまっているだけなのに、さも自分の力でそうなっているかのように振る舞い、常に暴力を振るおうとする。愚劣で下銭な者は大嫌いです」私はその女をにらみつけながら言いました。
「それ以上私の部下を愚弄しないでもらいたい」
「そうですね、部下への愚弄はあなたへの愚弄ですよね、では、先ほどからその方が私に対して何度も剣を抜こうとしているのをあなたは止めていますか?」
「そ、それは」
「そういうことですよ。あなたは王女という立場が当たり前になって相手が誰であろうとひれ伏す、下手に出ることを理解している。経験的にそれが当たり前になっているんですよ。それをおかしいと思わないところがダメなんですが。わかりますか?」
「・・・い、いや」
「おぬし本当にどうした。なにを怒っている。もうやめよ」
「いいからその方に剣を抜かせなさい。私はここに座ったままでいいですから」私は膝に乗せている手の人差し指を動かして彼女を挑発する。
「きえええええ」その女は私の言葉が終わる前に斬りかかった。
私はパチリと指を鳴らしました。彼女の両腕は振りかざした剣とともに後ろに落ちる。
「ぎゃああああああ」その女は、腕がなくなった痛みでそこらじゅうを転げ回る。
「やかましい」もう一度パチンと指を鳴らす。
転げ回っていたその女の腕は元に戻っていて、転がろうとする動きを止める。剣も傍らに落ちている。
「なっ」
「剣を抜いたことをわびなさい」呆然と尻餅をついているその女
「あなたに言っているのですよ王女。あなたの部下が私にしたことに対して非礼をわびなさい。何をわびれば良いかわかりますか?」
「このたびは私の部下が無礼をはたらきすまなかった」
「すまなかったですか?」
「すいませんでした」
「私が謝れといったこととは違いますよ」
「ち、違うのか」
「先ほど私はあなたは部下を止めていますか?と聞いているんですよわかりませんか」
「あ、部下を御しきれずすいませんでした」
「さすが王女様、すぐ理解されましたね。それに比べてそちらの方。謙虚さが足りません。いい加減にしないと本当に死にますよ」私は王女には拍手を転がっている女には指を指して言いました。
「貴様!!」その女は倒れたまま私をにらみつけて言った。
「もういい、おまえは下がれ、話にならん」王女は倒れている女を見下ろしながらそう言った。
「でも」起き上がりながら王女を卑屈な目で見上げる女。
「いいからさがれ。さがれないと申すなら仲間から・・・」王女はそこで言葉を止める。
「わかりました。さがります」その女はペコペコ首を下げながら立ち上がり私を睨んでから部屋を出て行った。つまらない女です。
「ありがとうございます。あの方がいると恐くて話が進まないと思ったものですから、助かりました」
「こちらこそすまん。いやすみません」そうして頭を下げてから王女は向かい側の椅子に座りました。
「さて、何をお聞きになりたいですか?」私は居住まいを正して座り直して王女を見ながら言いました。やっとお顔を直視できました。怯えていますが顔に出さないようにしていますね。端整な顔立ちとしか言いようがないです。可愛らしいと言うよりはキリリとした切れ長な青い目にすらっと高い鼻。髪もややウェーブのかかった金髪で昭和の少女マンガの主人公という感じです。確かに美しいです。もっともストライクゾーンではありません何かが足りない。そう心の中で言っておかないと皆さんの視線が怖いです。美人を美人と言って何が悪い~~。
「単刀直入に聞きます。あなたは奴隷商人ですか?」真剣な目でそう聞かれました。いや単刀直入にしてもそう聞かれてそうですと言う人はいませんでしょう。ある意味ダメな子かもしれません。
「違います。そんな噂に惑わされて私に剣を向けたのですか?証拠もなしに」私は単刀直入に切り返します。
「さる貴族からそういう注進があったのだ。信頼できる臣下の者だ」言い訳しますか。へ~
「なるほど、信頼のおける臣下の言葉なら証拠が無くても犯罪者だと。相手の言葉を聞く前に殺しても良いと言われるのですね」ちょっと意地悪したくなりました。なんか可愛くなってきました。おや、背後から怒りのオーラが。
「すまん、それ以上責めないでくれ」目を伏せてそう言いました。ああ、やっぱり可愛いかも。隣に座ったアンジーからすねを蹴られました。痛い
「いえ、ここで責めておかないと、平民が無残に虐殺されてしまいそうですから」
「そんなことはしない。いやしていない」
「まあ、王女様ですから王様ではないのでしていないのかも知れませんが。王様はしていませんか?」
「当たり前だ。私の父は賢王と呼ばれているのだぞ。そんなことがあるわけないだろ・・もしかしてあるのか」
「それはご自身でお調べください。王女様。これからの時代、何が真実で何が嘘かは自分の目でお確かめください。せっかく魔族討伐に各地方を回っているのですから。嘘を見抜くことも賢王としての資質です。あと、優秀な側近、それを暴走させない側近、多数の信頼できる臣下をお持ちください。もちろん裏切りに備えて間者もお持ちになりますように」
「そこまでしなければなりませんか」目を見開いています。まあそう言いますよね。
「そこまで猜疑心にかられると心を病みます。裏切られたときにお前に裏切られたらしようが無いくらいのあきらめられるぐらい信頼できる者を臣下に持つことも必要です。そうお考えください」適当な事をべらべらとしゃべっていますよ。面倒になってきましたので。
「言っていることがごちゃごちゃだが」モーラがあきれています。
「人の心はいかようにも動きます。ですが真に信頼してついてくる者もいるでしょう。見極めてください。そう後ろの方のように」私は先ほど平民の出と言っていた魔法使いの子を見て言いました。
「この者が何か?」王女は振り向いてその子を見ました。
「たぶんですが、私の怒りに王女の身代わりになって死のうとしていたようにも見えましたよ」
「そうなのか?」
「はい、いざとなれば姫様の代わりにこの身をと思っておりました」
「そのようなことはするな」
「いえ、この国のためならこの身など」
「ありがとう。だがそれはやりすぎだ。その気持ちだけはありがたいが」
「いいえ、姫様のために死ねるなら本望です」
「ありがとう」
「はい」そう言って二人は見つめ合った。一方的に魔法使いの子が王女様を崇拝している感じですね。
「改めて謝罪する。いやさせてください。これまでの件すいませんでした」
「いいえ、こちらこそ知らなかったとはいえ一国の王女に対し非礼の数々、すいませんでした」
「お名前を教えてもらえないのであれば、賢者様と呼ばせてもらって良いだろうか。いえ、良いでしょうか」
「え?」私はポカーンと口を開けて答えました。王女の言葉は想定外だったのです。はあっ?
「あなたは魔法使いとおっしゃられました。たぶん名を問うてもはぐらかされるでしょう。でしたら賢者様と呼ばせて欲しいのですが、いかがですか」いやそのキラキラした目で言われましても。
「ええ、普通に魔法使いで良いのですが」
「いえ、此度の賢者様の言葉心にささりました。どうかこれからも私に対しては忌憚のないお言葉を。むしろ、その、きつく叱ってくれませんでしょうか」いや、あなたMですか?まあ怒られ慣れていないのでしょうねえ。その気持ちも判らないではありませんが、それは王女としてダメでしょう。
「うーんそうですね。そこまで言ってくれるのであれば、こちらも正直に話しましょう。私は、あの時、猛烈に怒っていただけなのです。怒っていた理由は、私と一緒にいてくれるこの方達が奴隷と見られたからなのです」と見当違いの話題を持ち出します。
「はあ」いきなり見当違いの事を話されて今度は王女はポカーンとしています。
「奴隷制度についてどうこう言うつもりはありませんが、このように普通に笑いながら歩いている者達を見て奴隷にされていると思われたというところに怒っていたのです」
「どういう意味ですか」
「私は、確かに怪しい噂が立つほどに彼女たちに囲まれ、恵まれた状態で旅をしています。でも私は強要はしていません。それは彼女らの様子を見てもらえばわかることです。様子をちゃんと見てもらえていれば、奴隷商人だという誤解も解けているはずなのです。ですが、彼女らの様子を見ても奴隷商人と見られたのがくやしかったんですね」
「おぬしはよくやっておる。それはわしらがよくわかっている。それでいいではないか。誤解は解けたのじゃから」
「ですがくやしいです」
「ご主人様、悩む必要などありません。私たちが気にしていないのですから」
「そうです。でもそう感じてくれてうれしいです」
「私はなぐさめてあげたいです」
「まったく、あんたは、そんなことで怒っていたのですか?やれやれ私たちより子どもですね?しかもむだに相手を脅すなんて。強者にあるまじき行為です」
「えー、みんなで非難するんですか?とほほ」私は演技とはいえそう言いました。
「王女よ、水に流してくれんか。この者の非礼は、国王に知られればたぶん斬首になるじゃろう。それを拒む我らとたぶん争うことになり無用な血が流れる。それはお互い本意とするところではないであろう?幸いな事に、ここにいる者しか知らぬ事じゃ。まあ、先ほど一人出て行ったあの者の気持ちはおさまらんとは思うが、ここでなんとか収めてくれんかのう」モーラが一番見た目年齢が低いくせに何か語りましたよ。
「私の父は、賢王と呼ばれている者です。そんなことはしないと思いますが」見た目は子どものモーラの言葉に動揺しながらもちゃんと対応している王女様は偉いです。
「普通の家臣に起きたことであれば、そう扱うじゃろう。じゃが、娘となるとそうもいかぬのが父親じゃ。それは賢王とてかわらん。もちろん王女様には今はわからんじゃろうが、子を持つ親の心とはそういうものだと思うてくれ」モーラは、さきほどの魔法使いの女の子に目をやる。つられて王女も彼女を見る。彼女はうなずいて答えを返した。
「わかりました。それでもあなたに剣を向けたことについては・・・」
「あの後誤解を解いて野に返したとして欲しい。どうじゃ良き王女様じゃろう」
「はあ、賢者様がよいのでしたら」
「かまいません」
「ではそのように」王女様がそう言ったとたん。私たち全員が、はーーっと息を吐く。
「き、緊張した」ユーリが胸をなで下ろす。エルフィは胸をなでようとして引っかかりましたが。
「ユーリまだ接見は終わっておらぬ。このあと誰かが粗相をしたら打ち首じゃぞ」モーラが後ろを見ずに王女を見ながら言った。
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「冗談じゃ。さすがにこの後そのようなことにはならんと思うが」モーラが王女を見た。王女は笑いながら頷いている。
「王女様よろしいですか」
「どうした」魔法使いらしいいでたちの女の子が前に出る
「さきほど賢者様が見せたあの魔法がどういうものか知りたいのですが」この子も目をキラキラさせながら尋ねる。
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「あー教えたいのですが、原理がよくわかっていないのです。ごめんなさい。でも私ができるという事は、あなたもできるという事です。見たことを思い出してどんな魔法なのか想像して考えて試してみてください」私は教えたくないのでそう言いました。ええ、企業秘密なのです。
「はい!勉強します」元気でいいですね。好感が持てます。
「賢者様は相当の術者なんですね」
「いえ若輩者です」私の言葉に隣に座ったモーラがドンと肘鉄を食らわす。息がつまる。
「では転生者ということですか」
「そう推察できますね」私は肘鉄のために息が苦しいのをこらえてそう言いました。その言葉を聞いて王女は怪訝そうな顔をして私にさらに尋ねた。
「この世界では、その年齢で若輩はありえないのです。転生者ですか?」慎重に言葉を選んでもう一度王女が尋ねる。私はその姿を見てつい嬉しくなってしまいました。
「そこは冷静になってください。すべての可能性を考えてください。まず固定観念を捨てることです」私はきっと薄笑いを浮かべてそう言ったのでしょう。王女の表情が微妙に引きつっています。
「どういうことですか?」それでも興味をそそられて王女は質問する。
「一つは魔力量が年齢があがるほどに増えていったパターン。あとは、魔力量を隠して市井で暮らしていたけどばれてしまったパターン。そして、若返りをして年齢を偽っているパターン」私は知っている知識を使ってそう言いました。
「なるほど」王女は頷いている。
「でも私は転生者ですけどね」私の言葉に全員がずっこける。そうです。そのリアクションこそ欲しかったのです。
「驚かさないでください」王女は苦笑いをしながらそう言った。
「でもですね、先入観ほど恐ろしいものは無いと、先程痛感したばかりじゃないですか。現に私の暮らしていた街には、魔法を使える子がいましたよ。もっとも使い方を勉強していないので使い方がわからず最後には問題を起こしてしまいましたが」私は説明をするようにそう言いました。
「なるほど勉強になります。ですが本当に転生者なのですね」王女様は私に尋ねる。
「本当はごまかして隠して逃げるつもりでしたが面倒になりましたので」みんながまたずっこけます。
「幻術使いなのですか?だとすれば先ほどの魔法も納得いきますが」
「いいえ、実際彼女は腕がなくなっています」
「なんと」王女はびっくりして魔法使いの子を見る。同じようにびっくりしています。
「さ、種明かしはしました。こちらからは、一つだけ教えて欲しいことがあります」私はもう飽きたのです。はい。ついでにアンジーの懸案事項を片付けようと思い、言いました。
「なんなりと。答えられることであれば」
「実は転生者を探しています。ですが、その体のまま来た訳では無く、誰かの体に転移したようなのですよ」
「それは探しようがないですね」王女は困った顔をしています。
「そうなんですよ探しようがないのです。お願いに変えてもいいですか?」
「何を願われますか?」
「王が主催するか、もしくは誰かが主催するパーティーに招待して欲しいのです」
「どうしてですか?」
「どうやら転移した先が貴族の娘さんらしいのです。小さいお子さんで急に性格が変わったり魔法が急に使えるようになった娘さんがいないか探したいのです。だめですか?」私は嫌らしい笑いをしていたと思います。
「そうですか。探してどうされるのですか?」私の顔つきを見て嫌そうに王女が尋ねます。
「いえ何もするつもりはありません。無事に生きていることを確認したいだけです」
「それであればかまわないと思います。でも全員が出席する会などありませんので、かなりの回数参加することになりますよ」
「たぶんあなたは知っていますね」私はそう言って魔法使いの子を見る。先ほどまで元気だったその子が、今は青ざめています。
「そうなのか?」
「頭をぶつけて性格が変わり、それまでたいした魔法も使えなかったのに突然魔力量が飛び抜けて増えてしまった娘さんがいます」その子はそう答えた。
「貴族の子弟でか?」
「はい」
「学校には行っていないのか?」
「まだ8つですから」
「王女と魔法使いの方。いいですか。たった今知り合った私のことを信用してはいけません。いいですね。仮に私がその子を狙っていたとして、情報を渡したのがあなたと知れたとき王女の立場に傷が付きます。しかも私に対してのアドバンテージをむざむざ捨てているのです。そう言う時は表情に出してはいけません」
「今日のおぬしは変じゃ。おかしいぞ。どうしたのじゃ、なんかスイッチが入ったのか?」モーラが動揺しています。
「どうしてなんですかねえ。王族とそれに従う信頼できる臣下というものに幻想を抱いていて、少し失望しているのかもしれません。ただそれだけではなく、鍛え上げがいのある生徒がいるとついいろいろ教えてみたくなるみたいな感じ。そんなところですかねえ」また私は適当な事を言います。
「なるほどのう。教え甲斐のある生徒か。ところでその生徒達はついてきておるのか?」モーラがそう言って私を見ます。
「大丈夫じゃない?目がキラキラしているから」アンジーまで言い始めますか。
「話を戻しましょうか。こういう時は私に話をさせておいて、別室に行って情報を整理して保留にするか判断するのが正しいですよ。それが交渉というものです」私はうんちくなのか適当にごまかしてそう言いました。
「勉強になります」「うんうん」
「では、そのお知り合いの子の出席するパーティーに招待してください。念を押しておきますが、こちらとしては本当に見るだけで良いのです。変に解釈して無理に会わせようと画策したりしないでください。実際、会っても相手は何も知らないし、こちらも何も知らないのですから」私は丁寧に説明しました。
「わかりました。連絡先はどちらになりますか」
「誤解が解けていれば、近くの宿屋に泊まっているでしょう」
「魔法使いよ。賢者様を宿屋へ」
「はい」
「宿屋を紹介していただければ良いですよ。そこまでしてもらうと逆に宿屋の方に変に気を使われてしまいそうですので」
「そこまで市民に配慮されますか」
「私は市井をひっそりと旅しております。ゆえに民衆の前で王女様から剣を向けられるなど、噂になり目立つことが嫌いなのです。ご容赦ください」私は立ち上がって丁寧にお辞儀をしました。
「おぬしもたいがい卑屈じゃのう」モーラも立ち上がって私を下僕を見るような目をしました。だって皆さんの下僕ですよ。
「私は謙虚なつもりですけど」
「何事も度が過ぎると問題になりますよ」アンジーに言われました。まるではたから見たら子どもにたしなめられている大人ですね。
「そうですね日々勉強です」
「面白い関係ですね」王女は困惑しながらもそう言いました。
「楽しい関係です。ではよろしくお願いします」再び私は丁寧にお辞儀をします。
「わかりました。あの賢者様」王女も立ち上がりました。
「賢者ではありません。ただの魔法使いで良いですよ。そうですね、旅の魔法使いとお呼びください」
「では、旅の魔法使い様。私とともに冒険をしていただけませんか」そのお願いって目は可愛いですが、さすがにごめんなさいですねえ。
「残念ですが難しいです。この子達はいろいろと問題を抱えておりまして、それを片付ける旅をしております」私は両脇のモーラとアンジーの頭を撫でました。
「ならばその後ならばどうですか」
「それはその時になってみないとわかりません。その時まで私が生きながらえていたなら、またお目にかかれるかも知れません」私は自分で言っておいて、そんなに危険な旅をしているのか?とびっくりしています。そんなことはありませんけどね。
「そんなに大変な問題なのですか?」
「わかりません。そもそも問題ですらないかもしれません。もし仮にこちらの王国に関わることであれば、その時にはあなたにご助力いただくかも知れません」
「そんな大事なのですか?」
「大事なのかはわかりません。ですが旅というものも同じです。いつ何が起こるかわかりません。ですから生きている保証などどこにもないのです。あともう一つ。ともに旅をしようなどと思ってはいけませんよ。あなたにはやらなければならないことがあるはずです。それを優先しなければならないはずです。そちらを考えてください」
「わかりました。残念ですが」
「それでは、またお会いしましょう」私は再度お辞儀をしてその部屋を出ました。
「おぬしテンションが少しおかしかったぞ」
「私はきっと。王女様に会えてちょっと嬉しかったんですねえ」
「そんな訳ないでしょ」アンジーにすねを蹴られました。痛い。
そうしてその城を出ました。今度は兵士達に囲まれずに出る事が出来ました。良かった良かった。
続く
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