【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水

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第16話 DTモフる事を覚える

第16-1話 DTご相談を受ける

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○夜明けと共に起こされる。
「あんたねえ、いつまで寝ているつもり。早く起きなさいよ」私は、怒られているにもかかわらず、心地よく響くその可愛い声は、誰でしたっけ?とか考えていました。
「まったく!ここで寝起きするようになってから、自分で起きられなくなっているわよ。しっかりしなさい!」 
 アンジーが起こしに来ていました。ここは地下の研究室です。窓もなく明かりがないので、昼か夜かわからない真っ暗な部屋なのです。
「この部屋は、なんかこうしっくりくるんですよ。こんな誰もいない薄暗い部屋だと、ついつい大規模な実験をしたい衝動にかられてしまいます。もっともそんなことして失敗したら、地下倉庫共々爆散してしまいますのでさすがにできませんが。机に向かってぼーっとしているだけで、いろいろな発想が次から次に浮かんできて、寝ていられないのです」そうなのです。言い訳になりますが、理論を組み立てて、思考を重ねて頭の中で試行錯誤いているうちに夜が明けてしまっているのです。それでもさすがに睡眠不足になるので、週に2日ほどは2階の部屋で寝ていますが。
「そろそろみんな一緒に寝たいって言っていたわよ」私の寝ぼけ顔に、アンジーは、腰に手を当てて指を指しながら言いました。おお、お姉ちゃんっぽい。
「そうですか。そろそろ切り替えますか」私はそう言いながら首をコキコキと回しながら遠い目をして言いました。皆さんには、家が出来てからしばらくの間は研究させてくれと一人にさせてもらっていましたが、私自身も無精になってしまっています。確かにこれではいけません。
「今日は薬草の納品でしたね」私は今日の予定を口にしました。
「そうよ。乾燥状態を確認して少量だけね、成分の補正も気をつけてやらないと駄目なんでしょ?」アンジーが冷たい目で私を見ながら言いました。確かに慎重な作業が求められる仕事です。アンジーはそう言って、私の目覚めの状況を確認してから、先に部屋を出ました。
「そうですね」私は独り言を言ってから着替え始めました。そして、私が1階に昇る階段をあがって居間に行くと、大きく楕円形のテーブルが待っています。これは、メアさんとエルフィの自慢の作だ。折りたたんだ状態だと10人用になっていて、広げると14人まで座れるそうです。ただしその場合は、部屋の大半がテーブルになってしまいますが。
「おはようございます」私は居間に入って来て頭を下げて挨拶をしました。
「おはようございます」すでに皆さんは席に座っていて、すでに食卓には食事が用意されていました。手伝いもしないで食べるのが少し心苦しいです。
 アンジーのお祈りが終わり「いただきます」の合図と共に私は今日のスケジュールを話しました。
「今日の予定は、薬草の納品くらいですぐ終わりそうですねえ」
「私たちは食肉の調達に行ってきます」パムとユーリとエルフィは、すでに戦闘準備して食事をしていました。すでにその格好をしているのはどうしてなのでしょうか。
「そうですか。後で馬車で迎えに行きましょうか?」私は、後ろめたさから何か手伝う事がないかと話しかけました。
「いえ~大丈夫だと思いますよ~あとでアとウンに来るように言ってありますから~」エルフィが当たり前のように言いました。
「言う事聞きますか?」私は念のため確認します。
「とても賢い良い子達ですから」ユーリが平然と食事の手を止めず言いました。
「いつ頃来いと言って理解できるものなのですか?」私は疑問をさらにぶつけます。
「それは。まあ慣れでしょうか。そういえばどうやってタイミングを計っているのでしょうか?確かに不思議ですね」パムが首をかしげている。
「そういえば、2頭とも何かに気付いたような感じで、適当に厩舎を出て馬車を引いて後を追っていますね」メアが思い出したように言いました。
「馬車を引いてですか?」パムが反応した。
「はい」メアが答えを返す。
「はみとか馬具はどうしているのですか。誰かがつけなければなりませんよねえ。ああ、出かける前につけておくんですね」パムが念のため確認しています。
「いいえ、ご主人様が考案した仕掛けで馬車に向かって後ずさりすると勝手に装着されます」メアがニッコリ笑って言います。
「そんな仕掛けがあるのですか?」パムが驚いて私を見る。
「つけるだけで外すのはこちらでやることになりますが」私はそう答える。外すのは技術的に無理だったのですよねえ。
「馬が自発的に馬具を装着するなんて聞いたことがありません」パムは重ねて言った。
「うちの子達は嫌がりませんよ~」エルフィが嬉しそうに答える。
「そうですか」パムが頭を抱えています。まあそうなりますよねえ。
「はい。良い子達です。話も言って聞かせると理解しているようですし」私も重ねて言いました。
「話せる馬ですか」パムが頭を上げてそう尋ねてきます。
「まあ、あの2頭が細かい話をしたい時は、エルフィを呼んで欲しいと首を振ります」メアさんが話を続けます。
「首をですか?」パムはメアを目を見開いて言った。
「はい、2頭揃ってこうぶるんぶるんと」その真似をメアさんがしてみせる。
「なるほど」こう、胸の揺れる動きを真似しているんですかねえ。
「こちらからの簡単なお願いは~だいたいわかってくれます~」エルフィが得意そうです。
「それはすごい。ちゃんと挨拶しないとダメですね」パムがそう言いました。
「ありがとうと頭をなでてあげてください」
 そうして朝の食事は終わった。
「村に行くのは、私とアンジーとメアさんとモーラと言う事になりますね」
「では、エルフィ、ユーリ、パムさん、ケガに気をつけていってらっしゃいませ」メアが送り出します。
「行ってきます」全員が揃って敬礼をしています。そこで敬礼しないように。パムさんもそのネタ理解してしまったのですか。
 私達は薬草の倉庫に行って、乾燥棚の一番上の段にある薬草を確認して、作業場のテーブルの上に上げて、ちょっとした調整を行い、その分をまとめて袋に入れて背負いました。そして、3人で歩いて村に向かっています。うちの村では、魔法使いさんご一行ではなくてアンジー様ご一行というイメージになっています。ええ天使様のお付きの者達なのです。
「アンジー様こんにちは」高齢の女性が頭を下げて挨拶をして通り過ぎる。
「あ、アンジー様だー。こんにちはー」母親に連れられた子どもが手を振って挨拶してくる。アンジーも手を振り返す。そうして道すがら会う人たちに頭を下げられる。ここは、アンジー教の総本山な訳です。
「神様には悪いのだけれど、本当に教会作ろうかしら」愛想良く村の人に挨拶をしながら、アンジーがつぶやきました。
「おや、連絡係に降格になった途端、随分と欲が出てきましたねえ」私は薬草の入った加護を背負って一番後ろを歩いている。しかしアンジーは、私の言葉をスルーしています。
「そういえば、堕天したのは今の時代での事なんですよねえ」私はついつい尋ねます。
「そうよ。代替わりする前のね」
「そうなのですか?モーラの話では神は普遍だとも言っていましたが」神の定義がいまいち定まっていない気がするのでついつい尋ねます。
「神は不変よ。でもその都度、人間が勝手に信仰を作って歪めていくだけのことなのよね。そして、今代はまだ神が動いていないの。存在も明かしてはいないのよ。私は、今代の神が動いたら教義が違えば静観するし、教義が合えば手伝うつもりだったのだけれどね」そう言いながらアンジーは、天を見上げている。
「そうですか。それと天使ってかなりの人数がいると言っていましたよね」ついでなので何でも聞いてみようと思いました。
「教義の数だけいるわよ。生まれては消え、消えては生まれる」アンジーの背中はなぜか少しだけ悲しそうです。
「死ぬことはないと言いませんでしたっけ?」あの時アンジーは確かにそう言いました。
「あの時はそう言ったけど、神を信じられなくなった時、自分の生き方に絶望した時に天使は消えるのよ。私は、前代の神には失望したけど絶望していないから生きているわ」前を歩いているアンジーは、そう言った。
「難しいですねえ。つまり本人の意思の力だと」
「突き詰めればそう。信じる力ね。だから神に対して絶大な信仰心を持つ者、教義を歪めてそれを頑なに信じる者ほど生きているわよ。周りをすべて自分色に染めようとしてね」アンジーは何かを思い出したのかそう言った。
「怖いですね」
「ええ。天使の力を持って攻撃的になる者が一番恐ろしいのよ。私達をも敵だと認識するから。まあ、天界も広いから、そうそう変なのにも遭わないけどね。ああ、そういう輩は、たいがい人界に降りてきてやらかし続けて、しばらくして討伐されるのよ。やらかし続ける期間は、人間界にするとかなり長くてね。討伐される頃には、人間に多大な犠牲を強いた後で手遅れになった頃なのだけれどね」
「なんか、魔族とあまり変わりませんねえ」
「天界はそんなひどいのはそうそういないわよ。魔族は人に対してはひどいわよねえ。天界にとっては魔族も人間もたいした変わりはないのよね」
「そうでしたか」
「つまらない話だわ。あんた本当に話をそらすのがうまいわね。教会の話をしていなかったかしら」
「そうでしたね」私のせいですか?
「実際には、教会よりも孤児院を作りたいんだけど。今のところそういう子はいないみたいだし。先に教会を作った方が孤児院作る時に楽かと思ったけどやっぱり止めておこうかしら」
「ここの風土が子供はみんなで世話をするというスタンスですからねえ」
「世話とは言っても、食事とかだけであとは面倒見ていないわよ。安心して住めるところが欲しいのよ。あなたの言っていた寮みたいなものね」
「私達が元住んでいた家はだめですか」
「少し小さいし、あそこは村から遠すぎるのよ。村に行くまでに人さらいに遭いそうだもの」
「そうですか。メアさん何か良い案はありますか?」
「であれば、エリス様に頼りましょうか」
「あやつも新参者であろうが」おや、話に入っていなかったモーラが急に会話に入って来ましたねえ。
「潜在的な魔法能力を持った子供を扱っていましたから、ノウハウは私たちよりあると思います」メアがそう答える。
「なるほどな。それなりのネットワークがあるか」そうですねえ、魔法使い人攫いネットワークですねえ。
「物騒なことを考えるでない。確かに魔法使い候補を里に連れて行っている人攫いなのじゃがな」
「そんなことはありませんよ」私達の前に急に人影が現れて、その人が言いました。おやエリスさんです。
「おや?そうこうしているうちに薬屋の前って噂をすれば影がさすですねえ」
「私の噂をしていたの?まあいいわ。実はね、相談事があるのよ」自分の所の薬屋さんの前で話すのもなんだと思いますが。中に入りませんか?
「やっかいそうじゃな」モーラがエリスさんの顔を見ながら言いました。
「ついでに言うと、ここの村の話ではないのよ」エリスさんもちょっと困った感じです。
「これはまた旅かな?」モーラが私を見て言いました。
「そうなるわね。私の知り合いの知り合いのそのまた知り合いの人から連絡があってね」エリスさんが構わず話を続ける。
「それはお主の知り合いではないだろうが」モーラがあきれて言いました。
「ところがねえ、その託された人達全員が何とかしてやって欲しいと言っているのよ」そう言ったエリスさんが本当に困った顔をしています。
「難儀そうな話じゃな」
「聞いてくれるの?」
「聞かせたいのじゃろう。そして、手を貸してやって欲しいのじゃろう」
「まあそうなんだけど」
「とりあえずわしらの用事を終わらせてからになるがそれでも良いか」
「ええ、終わったら声をかけて欲しいのだけれど」
「ああ、どこで話す?」
「貴方達の家が良いかしら。一度お邪魔したいと思っていたし」
「そうか。ならば夕方に来るが良い。おお、家主の許可を取っておらなかったな。おぬし良いか?」モーラが私を見ました。
「ええ。メアさんどうですか?今日は新鮮な肉も手に入りそうですし、食事を一緒にしていってください」私がメアを見たら頷いているので、エリスさんに言いました。
「いつも悪いわね」
 そうして、薬を少しだけ納品して、買い物をして家に戻りました。
 家には、パム、ユーリ、エルフィがすでに戻っていて、作業場に獣肉がつるされていて、血抜きを行っていたようです。
「皮は剥いで加工するのでこちらでやりますが、血抜きの後の保存はメアさんの指示が必要でしたので」パムが手際よく皮を剥いでいます。さすがドワーフさんです。
「ありがとうございます。今日はエリス様が来ますので、新鮮な肉で料理を作ります。あとは、冷凍庫に保存する分と保存食用に燻製にします」メアがそう言ってうれしそうに肉をさばこうとしている。皆さんいろいろなスキルをお持ちでいいですねえ。
 夕方近くになってエリスさんが到着しましたが、どうもそわそわしています。メアさんは、食事の用意をしているので、お茶は出せなさそうです。エルフィが気を利かせてお茶を出してくれました。
「どうしますか。先に話をしてしまった方が良いですか」
 私は、内容によっては、楽しくない食事になるかもしれないので、食事の後の方がいいのかと思っていますが、念のため聞きました。
「私は話してしまった方が楽になれるので良いのだけれど。聞いてくれるのかしら。実はね、獣人さん達の話なのよ」お茶を入れてきたエルフィからティーカップを受け取りながらエリスさんが言った。
「ほう獣人とな」
「ええ。獣人とはそんなに付き合いなんてないのだけれど、たまたま知り合いにいてね。最初にちょっと説明するけど、獣人は、獣化というのができるのね。それを機能させているのが魔法な訳なのよ」エリスさんが話し始める。
「ほうドワーフと一緒か」モーラの言葉に私も思い出しました。ドワーフは、筋肉量アップのため代謝を魔力で加速させますからねえ。
「あら知っていたの?ああ、今回ドワーフさんが仲間になっていますものね」
「初めましてドワーフのパムです」
「魔女のエリスよ。よろしくね」魔法使いと名乗るのをやめたのですか。
「挨拶もまだだったとは、けっこう性急じゃな」
「なるほど。獣化も魔法なのですか」私は俄然興味が出てきました。一緒に聞いていた他の皆さんは、私を見てげんなりしていますけれど。
「最近わかったのだけれど、獣化と獣人化と相互に魔法で切り替えているのよ。それで、まれに魔力量が多い子が生まれるのね」
「人と同じか」モーラが相づちを打っている。
「そうね。でも決定的に違うのが知能の問題なのね」
「知能?」私はちょっとびっくりしています。
「魔法の行使は、脳が発達していないとできないのよ。脳の中で獣化、獣人化、人化を本能的に制御しているの。本能だからそれとは別にね」
「なるほど」私は頷きながら聞いています。
「だから、まれに魔力量の膨大な天才的な魔法使いの獣人が誕生するわけね。もっとも制御がうまくできないので、魔力を持て余す場合もあるのだけれど」
「そういう事か」
「そうなのよ。今回獣人族で生まれた子が、魔力量が膨大なのに魔法の制御が出来ていない子だったのよ」
「その場合は、おぬし達が仲立ちして、魔法使いの里で教育すれば大丈夫なのでは無いか?」
「いつもならそうなのよ。でも今回は一族が手離さないのよ」
「ふむ。族長の子かなにかじゃな。あとは巫女とかかのう」
「そうなの。そして満月の夜に獣化するのよ。それ以外は「人」の子のままなのよ。で、魔力が使えるのは獣化した後だけなのね」
「それはおかしいであろう。そもそも獣人族が獣人でなく人の姿になっているのも変だし、獣化した時には、魔法は使えないのではなかったか?」モーラが首をかしげている。
「そこがおかしい点なのよ。何か魔法の回路がおかしくなっているのかも知れないのね」モーラの方を見てエリスさんは言った。
「なるほど。その回路を直して欲しいと言うところかのう」モーラは私の方を見た。
「そうなのよ。さすがに体内の回路まで分析はできないと断ろうと思ったのだけれど、あなたを思い出してね」
「獣化した後はどうなるんですか?」私はちょっと興味津々で聞いてしまいます。
「暴れるのよ。魔力量が膨大にあるのに、それを放出し続けて枯れるまで止まらないらしいのよ」エリスさんがあきれたように言いました。
「どうやって放出させているのですか」私はそんなに多量の魔力量を放出させる事ができるのか知りたいですねえ。
「祖父も同じ体質だったらしくて、その時には、祖父の親が魔力の放出の手助けをして、すぐ獣人化も獣化もできるようになったそうなのよ。しかし、祖父がその子の相手をしていたのだけれど、この子は全然できなくてね。毎月満月の夜に付き合って戦っているらしいのよ。でもその子がまだ若いからどんどん魔力が増えてきていて、祖父も付き合えなくなってきたのよね。ああ、残念だけどその子の親は死んでいるので手伝う事は出来ないわよ」そうなのですか。それは大変ですねえ。
「あなた。前に獣人を治療したことがあるそうじゃない?その時に獣化の仕組みを理解したと聞いたけど。どうなの?」エリスさんは真剣な顔で私にそう尋ねました。
「確かに魔法の流れは見ましたけど、傷の治療をしただけですから。獣化の魔法なんて見てもいないのです」
「それでもいいから、一度見てもらえないかしら」
「皆さんいいですか?」
「あの~獣人族は~他種族と交流をあまりしないと聞いています~なんの種族ですか~」エルフィが顎に人差し指を当てて考えながら尋ねました。
「聞きたい?」エリスさんが嫌な事を聞かれたという顔をしています。
「はい~興味があります~」
「孤狼族よ」エリスさんはボソリと呟いた。
「それって、一番交流をしない獣人族じゃないですか」珍しくパムが声を荒げる。
「そうよ。逆にそれくらい切迫しているということなの」
「ふむ、腑に落ちん」
「えーとモーラ。それはどういうことかしら」アンジーが目を見ながら言った。
「おぬしのところまで話がきた経過がじゃ」
「ふ~ん。まあそう言われてみればそうよね」
「すまんがもう少し探ってはくれないか」モーラは首をかしげながら言った。
「まあ、モーラがそう言うのならしかたがないわね」エリスさんがなぜか渋々そう答える。
「こやつが受ける気満々なのも問題なのでな」モーラのほかに全員が私を見ました。
「そんなことはありませんよ」私は一応否定します。
「その言葉の裏にあるわくわく感がわしらに伝わっておる。自重せんか」モーラはため息交じりです。
「すいません」いや、こういう時、感情が伝わるのは確かにまずいですねえ。
「とりあえず伝えたことだけは話しても良いかしら」気まずそうにエリスさんが言いました。
「いや断られたと言ってくれぬか。それでも来て欲しいなら説得するから、もう少し詳しい情報が欲しいとな。おぬしもそれでよいか?」モーラが私を見る。
「私もそれでかまいません。私は所詮異世界の者ですので、この世界の考え方に従うまでです」
「じゃあエリス。頼んだ」
「はいはい。あ、食事は・・・すぐに連絡をしたいので、また今度にしてちょうだい」エリスさんは、そう言ってバタバタと席を立つ。
「それは残念です」
 そうしてエリスさんは帰っていった。食事の後に話をすれば良かったですねえ。メアさんがションボリしています。そうですエリスさん分を後で届けましょう。
 そうして私達は、アンジーのお祈りと私の合図で食事を始めました。
「良かったんでしょうか。エリス様のお話をお断りして」メアがすまなそうに尋ねる。
「よいか。そもそもこちらから積極的に関わるべき問題では無いとは思うぞ」モーラがメアに言った。
「私もそう思いますよ。うさんくさすぎます」アンジーは相変わらず辛辣です。
「でも困っているのですよね?」ユーリはいつもやさしいですね。おっとアンジーがジロリと私を見ました。
「一族の内部の話に~部外者が混じってはいけないんですよ~」エルフィがぽややんと言う。
「エルフィ。ポイントはまさにそこじゃ」
「ああ、私も引っかかっていたのはそこですね」パムも賛同しています。
「なるほど。種族間の壁は厚いのですね」メアさんが納得しています。
「でも、オオカミなんですよね、もふもふしてみたいですねえ」私はつい想像しています。
「あほか、毛並みは意外にしっとりじゃぞ」
「そうなんですか。がっかりです」
 その日は、食事後にメアさんがエリスさんの分の食事を届けに行き、うれしそうに受け取ってくれたようです。よかった。


Appendix
わしはもうだめかもしれぬ。この子の体力についてゆけぬ。
誰かわしとこの子を殺してくれぬか。お願いだ。
そうなれば、この里も絶滅かもしれぬがな。

Appendix
そうなの。断られたのね。それは仕方がないわ


続く




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