【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水

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第31話 DT独りでお出かけ

第31-4話 帰還

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○家出は帰りづらいもの
 私はあの街を後にして、しばらく、ひとりで旅をしました。不可視化のローブのおかげで、魔獣にも襲われることなく旅をすることができました。もっとも匂いは消してていなかったので、あくまで偶然だったのかもしれません。
 私は、セリカリナの街から、天使の恩恵を失った国、スペイパル王国に立ち寄りました。別に立ち寄るつもりもなかったのですが、あくまで通過点として通るつもりでした。しかし、私は、あの土地の地下に眠る魔鉱石の誘惑には勝てず、いろいろと探索をしてしまいました。まだ掘り進めば魔鉱石が手に入ることを突き止めて、その準備を数日かけて整えた日の夜のことです。
「おや、もしかしてあなたは」
 酒場で食事をしていると、見知った顔が声をかけてきました。
「おやあなたは、この国の王子のマクダネルさんではありませんか」
「憶えていてくれましたか。このたびはどうしてここへ?」
「色々ありまして、ひとりで旅をしたくなったのです。まあ気まぐれですね」
「確かに、勇者会議もありましたからねえ。もしかしてあの会議に関わられていたのですか?」
「そういえば、あの勇者会議にあなたのところの魔法使いさんが現れたそうですよ」
 私はあくまで噂話として話をしました。
「ええっ?というか、彼女を勇者と一緒に旅をさせたのはあなたではありませんか」
 おや、そっちの方に突っ込みますか。
「私は、彼女が旅をしたいといったので、ひとり旅は危ないから誰か一緒に旅をする人を見つけなさいとしか言っていませんよ。それが、勇者とともに旅を始めていたとは、やはりすごい魔法使いさんだったんですねえ」
 おとぼけにはおとぼけで返します。
「あくまでしらを切りますか。まあそういうことにしておきましょう。それで、この国には何用でお見えになられましたか」
 まあ、普通にそう思いますよねえ。もっとも魔鉱石採掘の件は知らないはずなので、何かあるのではないかと探っているだけだと思います。ああ、人気者はつらいです。ああ、不審者ですか?そうですね。
「本当に旅の途中ですよ。まあ、以前来たときには、周囲を見て回る余裕もありませんでしたから、今回は、少し長逗留していますけどね」
「ここは、見るものも食べるものもあまり良質とは思えませんが」
 疑り深いですねえ。まあ、疑いたくなるのもそうだとは思いますが。
「ここのお城はすごいではありませんか。他の国では見られない造りをしていますねえ」
「明日にでも中をご覧になりますか?」
「いいえ、城内はあの時に充分堪能していますから結構です。それに、中に入って牢屋に入れられても困りますからねえ」
「これは手厳しい。でも、そんなことをしたら色々と壊されそうですね。そんなことはしませんよ。それと、あの勇者会議の時の噂を聞いたのですが、実は3勇者の他にもう一組、マジシャンズセブンが会議に参加していたらしいと。そして、我々の知らぬ敵がいるのではという噂が立っていました。まあ、今では、そんな他国の話は忘れ去られていますが、私は気になりますね」
 なるほど、そっちを気にしていますか。
「そうでしょうか。最近の噂では、マジシャンズセブンは、魔族だったと聞いていますよ?魔族が勇者の会議に出席するはずもないですし、聞いた事はありませんねえ。もっとも私は、あまり出歩かないので、噂を聞く機会もありませんから私の言葉などあてにされても困りますがね」
 実際にあまり出歩いてはいませんよ、今回久しぶりの旅行です。ああ、ワームの移送はしましたか。
「まあ、敵などいない方が私達にとっては助かります。そうですよねえ」
「そう願いたいです」
「では、何かお困りでしたら、この酒場か、薬屋の魔法使いにでも声をかけてください」
「ご親切にありがとうございます」
 王子は、そう言って席を立って他の客のところに行った。
「今回は本当に遊びですからねえ。そう言っても信じないでしょうけど」
 私は、食事の途中で話しかけられ、冷たくなった肉を再び食べ始める。筋が多くて食べづらいですねえ。すじ肉は、できるだけ叩いて柔らかくして欲しいものです。
「さて、そろそろ帰りますかね」
 一応翌日、この国の農作物の様子を確認して宿に戻り、次の日にその国を出ました。
 その時には、すでに魔力量も十分になっていましたので、移動も楽になっていました。

○連絡あり
「エリスの式神が連絡をくれたぞ、DTは、スペイパル王国にいるそうじゃ」
「それはおかしいわ。行方がわからなくなって10日くらいしか経っていないわよねえ。ハイランディスからスペイパル王国まで、人の足だと到底無理よ。どこかに飛んでからさらにそこに足で移動したと言うところかしら」
 アンジーはちょっとだけ考えている。
「まあ想像できるのは、セリカリナじゃろうなあ」モーラはそう答える。
「そうなるわねえ」
「反対側のカロリンター古王国の線はありませんか」パムが聞いた。
「あやつは慎重だからなあ。空間転移も必ず一度行ったことのある場所を使うのではないか。だから行ったことのない場所には転移せんと思うぞ」
「ああ、確かにそうですね。ぬし様が単独で行ったことがある可能性の所になりますか」
「単独行動したのなんて、アンジーの親書の時くらいしかないからのう。あの時は、ビギナギルとは、逆の方に行ったからカロリンター古王国の線はないのう」
「モーラ。紫さんが今どこにいるかわかる?」
「いやここにはおらんぞ。確かセリカリナに行くといっておったなあ」
「そうなのね。まあ、あいつの生存も確認できたし・・・ってあなた達、どこに行く気なの?」
「迎えに行きます」ユーリが部屋に戻ろうとする。
「はい、迎えに行ってきます」キャロルも同じ行動を取ろうとしています。
「旦那様の~♪顔を~♪早く見たい~♪」どうしてエルフィは最近踊るのでしょうか。レイも踊っています。最近はエーネもなんか知りませんが一緒に踊っています。しかも恥ずかしそうに。
「本当におぬしらときたら。あやつを愛しすぎではないか?少しは親離れならぬ、あやつ離れせんか」
 モーラがあきれている。
「そんなことばかりしていると嫌われますよ」
 メアがそう言うと、全員の動きが止まる。
「嫌われますか」
 ユーリが振り返りながら失敗したかなあという感じでメアを見る。
「エルフィ、おぬしのやっていることは、おぬしにまとわりついていた男の行動とあまり変わらんと思うがどうじゃ」
「違う~全然違う~」エルフィはそう言って両手を振る。
「声にあせりを感じるぞ。じゃからみんなおとなしく待っておれ」
「本当にあなた達、恋愛初心者ねえ。もっとも私も対して変わらないけど、あなた達の醜態のおかげで冷静でいられて助かっているわ」
 アンジーが冷ややかな目でみんなを見ている。パムでさえ立ち上がろうとしていました。
「それはひどすぎませんか。確かに私達は冷静ではありませんが、ぬし様を思う気持ちは誰にも負けません」
 パムが言った。
「気持ちはよろしいのですが、行動にしてしまうのはやはりまずいかと」
 メアが冷静に諭している。
「難しいですね」
 ユーリがそう言うとレイやパム、エルフィ、キャロルそしてエーネがため息をつく。
 そうしてみんなが私の元には駆けつけず、私はだらだらと家路をたどり、隣町ベリアルに到着する。
「あんた。みんな心配しているわよ。早く帰ってあげなさいよ」とは、トラマリことシンカさんです。
「一度、独りで旅すると、今度は帰りづらくなるのですよ。なんて言って帰れば良いのか妙に気まずくて」
「ばっかじゃないの。ほら早く帰りな。私に声をかけた時のあの図々しさを思い出しなさい」
 シンカさんはそう言って本当に私の尻を蹴り上げました。
 トボトボと家路を進みます。そう言えばこちらから自分の家に行くことがあまりないので、新鮮な気持ちで歩いています。歩きというのは本当に景色が違いますねえ。というかいつまで歩いても一向に到着しません。

 家の扉の前に行き、2、3度深呼吸をしてから扉を開けました。
「ただいま帰りました」
 私は扉を開けて深々とお辞儀をしてから入ります。
「お帰りなさい」全員が立ち上がって私を迎えてくれました。
「これはお土産です」
 私は全員に細工した石を手渡していきます。
「単なる魔鉱石ではないか」
「これを持っていると魔力が自然に充電されていきます。そして、自分の魔力が少なくなった時に自動的に補充してくれます。自分の体の魔力量が減らないのですよ」
「なるほどな。相変わらずおぬしは、面白い物を作るなあ」
「スペイパルで魔鉱石を手に入れるために、色々調べて歩き回っていて、夜は宿屋で暇でしたので」
「それとは別にお土産も買ってきました。あの国でも上質な農作物がとれるようになりましたので、パンとか色々買ってきました」
 私は、家に帰ってこられた安心感でついつい明るいテンションで話をしていましたが、皆さんのテンションが下がっています。また何かやらかしましたか?
「突然消えたことには謝ります。それにしても冷たい目で私を見ていますが、どうしたんですか?」
 やっぱり何かまずかったでしょうか?
「あのー、知らない女の人の匂いがします。誰ですか?」
 レイが冷たい目で私を見ます。おやそういう顔もできるのですねえ。
「そうでしたか、しばらくお風呂に入れませんでしたから。服にでもついていたのですかねえ」
 私はクンクンと自分の体のにおいを嗅いでみます。一向にわかりません。
「誰ですか」
 ユーリらしからぬ強いお声です。
「だ~れ~で~す~か~」とは、エルフィ。
「ここは正直にお話下さい。誰でしょうか」
 メアさん妙に丁寧ですね。
「そうです。言ってください」
 パムさんそんな目で見ないで。
 まあ、嘘をつくつもりはありません。しかたがないですねえ。
「わかりました。出会ったのは、エースのジョーさんです」
「はーーーーー」
 全員がため息をつく。
「言ったでしょう?こいつは嘘をつけないって」
 アンジーが私を冷ややかな目で見ながら言いました。あきれているとも言いますが。
「てっきりごまかすのかと思っていました」
 キャロルが私をジッと見て言いました。
「うやむやにするかも~」
 エルフィがそう言って疑いの目で見ています。いや隠していないですよ。
「正直に話してくれるとは思っていました」
 ユーリが言ってエーネも頷いています。
「私もそう思っていました。しかし、あの人は、魔法使いの里に保護されたはずではありませんか。いったいどこでどうやって会ったのですか?」
 パムが怪しいものを見る目で私を探っています。
「私に戦いを挑んできました」
「記憶を封印されていたはずですよねえ。それでも戦ったのですか?」
 メアが首をかしげています。
「彼女は、里で記憶を封印されたあと、あのホムンクルスの男に封印を解除されて、記憶が戻っていました。それで襲われました」
「倒したのですか」
 ユーリが私を見てちょっと悲しそうです。
「引き分けです。そして、あの子が記憶をなくした時の師匠である紫さんのところに預かってもらっています」
「ぬし様の一方的な勝利ではなく、引き分けですか?」パムが私をジッと見ています。
「はい」
「では、今後も襲われる可能性もありますか?」
 キャロルが不安げに私を見ている。
「それは、ないと思いたいですね」
「そうですか~」エルフィが私をジッと見てそう言った。
『ああ、堕ちたわね』とアンジー
『たぶんそうじゃな』とモーラ
『堕としたんですか?』とキャロル
『たぶん堕ちたのでしょう』とメアとパム
『僕には意味がわかりません』とレイ
「皆さん何を心の中で思っているのですか。そんなことはありませんよ」
「ふむ、言葉に説得力がないのう」
 モーラが笑っている。
「まあいいじゃない。夕食にしない?生還祝いに居酒屋でも」
「最近、よく町に行きたがるのう」
「いや、こいつが帰ってくるまではずっと家にいたわよ。何が起きるかわからないじゃない。瀕死の状態でこの家の前に転移してくるかもしれないし」
「こやつのことだから何してくるかわからんからのう」
「闇の魔法に汚染された子どもとか連れ帰りそうじゃない?」
「あ~ありますねえ~」エルフィが笑っている。
「あるあるです」エーネが笑っている。 
「「ある~♪ある~♪」」そこであるある踊りを勝手に作って踊らないでくださいレイの他にエーネとキャロルまで付き合わされて踊っています。
 このあと、家を出るときに厩舎に寄りました。
「ごめんね、途中で戻らせて」
 そう言ってカイを撫でたら、カイに頭をぱっくり食べられました。かんだりはしませんでしたけどね。その後、すりすりしてくるのでなで回してようやく解放されました。
 居酒屋に到着すると、またも指定席ができていました。そこには、エリスさんとシンカさんがいらっしゃいました。
「やっときたわね。待ってたわよ」
 エリスはすでに木の杯を持ち上げて赤ら顔です。それを見てシンカのほうがげんなりしています。
「よく居酒屋に来るとわかりましたねえ」
「アンジーさんにお願いしてたからね」
 不機嫌そうなシンカ、横で飲んだくれているエリスとは対照的です。
「アンジーさん、ありがとうございます~」
 エリスが酔っ払ってなにやらはしゃいでいます。
「何を突然言い出すのやら」
 アンジーが何やらあわてています。
「無事の帰還おめでとう」
 シンカが私にそう言った。ちょっと不気味です。
「無事に帰ってきてくれてありがとう。これでファーンもベリアルも安泰だわ」
 エリスがすでに酔っ払って大きな声で言った。
「ちょっとエリス、声が大きい。すいません飲み過ぎてしまって」
「なによう、あんたは猫かぶりすぎじゃない?昔のあんたはもっと飲んでたでしょう?」
「わかったから静かにして。すいません、ご迷惑でしょう?すぐに引き上げますから」
「宴会のホストが先に帰るのもねえ。少し酔いをさまさせましょうか。ああ、眠ってもらった方が良いわね」
 アンジーがエリスの横に行って席に寝かせる。
「それでは、生還を祝してカンパーイ」
 モーラの発声で宴会が再開される。しかし、すぐ周りの飲んべえ達が待ちきれなかったのか、家族それぞれにお声がかかり、散っていった。
「大げさですねえ」
 私は宴会の中にいるのは好きですが、主役はしたくないタイプです。
「まったく、あんたはわかっていないのねえ」
「町長も気にしておったようじゃ。最近姿を見かけぬとエリスに尋ねておったとよ」
「ベリアルでさえ、その噂が立っていたのよ」
「いなかったのは、10日間くらいですよねえ。まあ通信機切っていましたからねえ。不安だったですか?」
「はあ?何を言っているの?あんたの事だから通信機は受信モードにしていたのでしょう?」
「おぬしが自分のいない間の事を心配しないわけがないと思っていたしなあ」
 私はレイをなで回し、満足したのか私の膝から降りたところで、メアにメイド服を着せられ、給仕をしにカウンターの方に向かっていった。ようやく服に慣れてきたようです。
 レイをカウンターに向かわせた後、メアが私に向かってこう言った。
「ご主人様、いいえDT様。私の父をお救いいただきありがとうございました」そしてお辞儀をする。
 そこにいたアンジー、モーラ、シンカ、そして目を覚ましたエリスが私を見る。
「もうバレていましたか。秘密にするように話していたのですがねえ」
 私は言いながら頭をかいて天井を見る。
「なんでひとりで行ったのじゃ」
「だから秘密にするつもりだったんですよ。メアさんにもお伝えするつもりはありませんでした。こちらの世界にあの人を連れて来る事は、もしかしたら彼を殺すことになるかもしれないからです。それでも私には、彼の協力が必要だったのです」
「はい。私も偶然に知ったのです。父はこの事を知りません。そして、マダムパープルが私に母だと、私がマダムパープルの娘であることを知らされました」
「私のいなかった間にずいぶん色々な事がありましたね。それはすいませんでした」
「おぬし。すべて計算のうちだったのではないのか?だからあえて家に戻るのを遅らしたのか?」
「私にはそんな計算できませんよ。私の事で今は精一杯です。むしろ秘密にしてと言ったのになぜ話してしまったのかと。私はあの夫婦にちょっと失望しています」
「おぬし、親子の情愛をなんだと」
「私には、その辺の経験値がありませんので想定外でした」
「それでも、DT様ありがとうございます。私は、父には会うつもりはありませんし、父も同様だと思います。母に対してもそうです。家族としての記憶が無いせいなのかもしれません。ただ、両親が生きていたと言うことだけで感謝しています」
「本当にいびつな家族ばかりねえ」
「ああそうじゃな」
「いびつな家族ですか」
「そうよ、この人達は、家族を持たない者達の集まりなのよ。以前そう言っていたわよね」
 と言ったのはエリスだった。
「はて?おぬしにも話しておったか。わしらは確かにそうじゃな」
 モーラはチラリとアンジーを見る。アンジーはニコリと頷いた。
「まあ、家族としてどこまでが愛情でどこまでがやり過ぎなのかが手探りなのじゃ」
「そうですねえ。私もわかりませんからねえ。記憶もありませんし」
「そうだな」
「ぬし様、皆さんが旅先の話を聞きたいと・・・」
「そうですね、たいした話はありませんがお話ししましょう」
 私は、急に呼ばれて反対側のテーブルに向かった。
 空いた椅子には、入れ違いに女の子達が座って来た。
「エリス様お久しぶりです」
「あら、あんた達まだここにいたの」
「はい、孤児院の手伝いが仕事になってしまって。ここに住むことにしました」
「ああそうだったの。魔法使いはやめたの?」
「それは諦めていません。ここにはお二人も高名な魔法使いがいらっしゃいますし」
「高名な魔法使いですって」
 エリスはトラマリを見てしまう。
「高名ねえ、悪名の間違いでしょ?」
 シニカルな笑いでトラマリが返す。
「確かに。まあ弟子にはしないけど、私の店に遊びに来たときくらいは、何か教えてあげるわよ」
「ありがとうございます。あの」
「まあ、隣町だからね。来たときにでも寄って・・」
「実は、アンジー様からベリアルにも孤児院を作る事になったからと言われまして、その・・・」
「私がそのお手伝いに行くことになっています。よろしくお願いします。」
 もう一人の魔法使いがすまなそうに言った。
「ああそうなの。まあよろしく」
「あ の トラマリが弟子をねえ」
 エリスがちょっと冷やかし気味に言った。
「確かにな。俺がねえ。長く生きていると色々面白いことが起きるわ」
 なぜか遠い目をするシンカさん。
「お嫌でしたか」
「いや、そうじゃないんだよ。うれしいと思っている自分になあ。まったくあの魔法使いと出遭ってからこんなことばかりだ」
「あら、そんな前からなの」
「ああ、あいつはなあ。ファーンに水路を作ったときにベリアルにも声をかけたのさ。その時を境にいつの間にかうさんくさい魔法使いから町の名誉市民に格上げさ。こっちはひっそりと暮らしていたのにね。嫌われない程度に気を使って生きていたのになあ」
「それは災難ねえ」
「魔法が有用だと感謝されたよ。俺の生活は変わらなかったが、町の人の俺を見る目は変わったのさ」
 器を灯りにかざしてそれを眺めているシンカさんです。
「あたしもそうだしねえ。魔法使いの里の使い走りにされたのが一番問題なのだけれど、あなたはそういうのはないのかしら」
「居場所がバレてからも魔法使いの里からは、なにもなしさ。土のドラゴンのおかげなのだろうが、どうも不気味だよ」
「ああ、あんた達、正式に弟子にはならない方が良いわよ。なったら豪炎の魔女みたいに魔法使いの里にいいように使われることになるわよ」
 エリスがそう魔法使い達に言った。
「なんで弟子になると魔法使いの里に使われるんだ?」
「里は、姉弟子のやらかしたことの償いを弟子にやらせようとしてくるのよ」
「そりゃあ理不尽だ」
 シンカが笑っている。
「それでも豪炎の魔女さんは、弟子をやめたりしていませんよね」
 一人の魔法使いが聞いた。
「一度弟子になると元弟子でも因縁つけるのよ。困ったものだわ」
 エリスがため息をついた。
「まあそういうことだ、弟子になるときには覚悟が必要だそうだ。よく考えな」
「はい」
「まあ、楽しい話をしようじゃない?何か聞きたいことはないの」
「これまでのマジシャンズセブンの話を他の角度から聞きたいのです」
「あの人たちは、本当のことを何もなかったかのように言うからねえ。どんなにすごいか話してあげる」
「ついでにエリスがいじめられた話もしてやると良い」
 シンカがそう言って笑っている。
「そうねえ、そこだけは、私の気持ちが入るけどね」
 いつの間にかと言うか、魔法使いの子達が来たときにモーラとアンジーは、その席を離れていた。
「あいつは、相変わらず抜けているのう」
「そうね、まあ聞かなかったことにしておいてあげるけど、あの頃はまだ結界も十分でなかったしねえ」
「いや、それでも浴室の結界は特別じゃったはず。どこで聞いていたのやら」
「今ではそれも無理だしねえ」
「あやつまた消えたな」
「本当に謎ね。エルフィは?」
「相変わらずオロオロし始めよったわ。いいかげん慣れろよ」
「しばらくいなかったしねえ」

 私は、ひとしきりスペイパルの城や農作物についてお話をした後、トイレに行くフリをして外に出ました。そしていつもの店を探します。
 今度も同じ場所に薄ぼんやりと光っていた。
「こんばんはー」私はそう言って、その店の扉をゆっくりと開ける。それでもドアベルが少しだけ鳴った。
「いらっしゃい。今晩も宴会だったのかい?」
「まあ、やっと戻ってこられましたからねえ。帰還のお祝いだそうです」
「よかったじゃないか。帰ってくるのを祝ってもらえて」
「不安にさせてしまいましたかねえ」
「まあ、その旅はひとりで行くしか無かったのだろう?」
「これから、そういうのが頻繁になりそうなのです。しかも説明もできませんからねえ」
「まあ、それで嫌うような家族でもないんだろう」
「そう、思いたいですが、こちらがそう思っていてもなかなか伝わるものでもありませんしねえ」
「わかっているじゃないか」そう言って彼は、私にコーヒーを出してくれる。
「豆を変えましたか?」
「わかるようになったじゃないか。ああ、新しい豆になった。最近の豆は、あまりできが良くないな」
「そうでしたか。うれしいですけど少し寂しいですね」
「味がわかるようになったり、以前の味を覚えているとな」
「ええ、仕方が無いことなのでしょうけど」
「豆の収穫量も少ないし、色々とな。苦労しているよ」
「そうでしたか」
「おや」
「ええ、少し長居しましたか」
「いつもどおりだがなあ、しばらく会えなくて寂しかったんだろう。早く戻ってやれ」
「そうします。ごちそうさまでした。またきます」私は、硬貨をカウンターに残して席を立った。
「ああ、またな」
「では失礼します」私は扉を開けて外に出た。
『ああ、やっと見つかった。今回は急げ、エルフィが号泣している』
『あ~~~~~~~~~やっどみでぅがっだ~~~~~~だんだざまぁ~~~~~~~大丈夫です・・・ヒック。さあ飲みませう』
『大丈夫なようだ。涙顔で飲み始めたわ。他の客がドン引きだがな。笑い始めおった』
『すぐ戻りますから』
『行くときは言っておけと前も言っただろう』
『言ってから行くとたぶん見つからないような気がするんですよねえ』
『まあよい、そろそろ帰るぞ。戻ってこんか』
『はいはい』
 そして居酒屋の裏口からこっそり戻り・・・ましたが、いるのがわかると冷たい視線を投げられました。とほほ
 それからしばらくして、エルフィとメアの一連のバトルをみんなが見た後。エルフィが立ち上がり、私の方に来て
「だっこ~~~~」と言って私の首にぶら下がる。私は、周囲の嫉妬の視線を浴びながら、お姫様抱っこをして居酒屋から出ました。扉の向こうからは、怒号が聞こえている。すいません本当にすいません。
「なんでおぬしが謝るのじゃ。胸をはらぬか」
「そうなんですけどねえ」
 私は、一度膝をついてエルフィを背中に背負う。うわマジでよだれ垂らして幸せそうに寝ていらっしゃいます。
「得な性格よねえ」アンジーは、エルフィを見ながら言った。
「そうですね。本当にいい子すぎて・・・」
「家でもいい子でいて欲しいのですが」とは、メアです。
「意外にさぼるんですよねえ。家のこと。でも憎めないんですよ」
「そうやっていじられているのも魅力なんですよねえ」
「レイは、あまりエルフィを見習わないように」
「でも、エルフィさんは「なんでも人の言うことを聞いていたら疲れちゃうよ」と言っています。どうなんでしょうか」それを聞いてエーネが頷いて、エーネにキャロルが叱りつけています。
「レイも頑張っていますからねえ、でも、レイの能力ならもう少しできると思います。できるようになるとそれが自分の中でも当たり前になりますから」

 そうして、エルフィを除いた皆さんでお風呂を入ろうとしたら、エルフィがいつもどおりちゃっかり起きてきました。
「私を置いてけぼりですか~」
 そう言ってエルフィが日本の幽霊のように両手を前に出して手首だけぶらぶらさせています。こらレイ真似しないように。あとパムさん。こうですかねえとエルフィを見ながら真似するのもやめてください。萌え死にしそうです。
 私は、洗い場で一生懸命体をこすっています。ええ、文字通り旅の垢を落としています。
「なんじゃ道中風呂に入らなかったのか」
「ええ、隠密ローブを着て移動しているのに風呂だけ盛大に入っていたら意味ありませんでしょう」
「確かになあ」
「背中こすります」ユーリがさっと飛び出して私の背中をこすり出す。
「ユーリありがとう、いい子ですねえ」私は少しだけ後ろを向いて頭を撫でる。
「私も~」
「僕も~」次々と飛び出すエルフィとレイ。
「エルフィ、レイ、ステイ」メアの声に条件反射でお座りをする2人。私は、思わず振り向いてしまい、2人の裸を見てしまう。いや、恥ずかしいと言うことを思い出してください。
「旦那様のえっちー」
「親方様のエッチー」2人でくねくねしています。残念ながら可愛くないです。
「おぬしら風呂に戻らんか。おぬしらでは、こやつの背中の皮を剥がしそうではないか」
「手加減しますよ~」
「あ、やばかったかも」レイが何やら不穏なことを言っています。メアさんのステイに感謝です。
「ユーリありがとう。背中にシャワーをかけてください」
「はい」そう言ってシャワーをかけた後、なにやら背中に柔らかいものの感触が。
「ユーリ」
「はい、寂しかったです」
「あー協定違反」キャロルの声がします。同時にお湯の音がしました。ああ、立ち上がりましたね。
「ほう、キャロルもやるなあ。振り向かれたどうするんじゃ」モーラの指摘に
「あ」と言う声とザブンという水の音が聞こえました。
 どうやらキャロルが立ち上がってユーリを指さして、ハッと気付いてすぐ湯船に潜ったようです。
「そうですか、それではしかたありませんね。でも、私の方がすこし我慢できませんので、できれば素肌は勘弁してくださいね」
「いやです離れません」
「だからー協定違反ーーー」おや言葉の語尾にゆとりがありませんよエルフィ
「これまでです。しかたがありません戦線離脱します」
 そう言ってユーリは立ち上がり湯船に戻っていった・・・ようだ。私は椅子に座ったまま動けないでいる。そう、般若心経を唱えながら。わからなくなったので寿限無に切り替える。
「親方様は、どうして動かないのですか?」
「あれはねえ、動かないのではなくて動けないのよ」レイの素直な疑問にメアが優しく答える。
「近づくなよ、またメアにステイと叫ばれるぞ」
「は~い」
 それでもなんとか理性を取り戻し、私は立ち上がって浴槽にもどる。
「ユーリありがとう」
 私は、ユーリの頭を撫でてからお湯の中に体を沈めた。
「ユーリもやるようになったわねえ」アンジーが感心している。
「そうじゃなあ、どこでそんなことを憶えたのやら」
「町の女の子達に教えてもらいました。男の人ならこれでイチコロだと言っていました。しかし、あるじ様はすごいです。全く動じていませんでした」
「あれを動じてないとは言いませんよ」とめずらしくパムが言った。
「そうでしょうか、男なら理性が欲望に負けてその場ですぐ押し倒してくるだろうと言っていました。違うのでしょうか」ユーリが首をかしげる。
「それは、話の前提が違うぞ。1対1の場合じゃ。まあ、一緒に風呂に入っている段階で両方ともほとんど押し倒すつもりと押し倒される前提じゃから、単なるきっかけになるだけじゃがのう」
「そうでしたか。勉強になります」
 ユーリが頷いています。おや皆さん頷いていますが、それってどうなんでしょう。
「いや、エルフィまで納得しないでくださいね」
「さて風呂から上がって寝ようか」
 モーラの声にメアが素早くシャワーを浴びて体を拭いて浴室を出て行った。
 私より先に皆さんが浴室を出て行くのはいつもの事です。私は残ってお湯の水を入れ替えたり、洗い場の掃除をしたりします。私は自分が丹精込めて作った風呂なので愛着もあり、率先して風呂場を掃除しています。
 私が上がると、全員の姿が消えていて、みんな自室に戻ったようです。牛乳も飲まずにですか。めずらしいですねえ。私は、歯を磨いてから自室に戻りました。おや、部屋の様子が少し違いますね。ベッドは片側に立てかけられていて、床に家族全員で座っています。もちろん持ち込まれた毛布や枕があります。
「さて、おぬしは真ん中じゃ。寝るが良い」モーラがバンバンと床を叩く。
「は、はあ」私は指示されたとおり真ん中に寝る。すると両側は、エルフィとユーリが、両腕は、アンジーとモーラ頭にパム、おなかにレイが乗った。そして、メアが明かりを消して。わたしの股間に枕を置き、
「おやすみなさい」メアの言葉に全員が安心したように寝息を立て始める。
 私は久しぶりに感じる人肌のぬくもりと腕に感じる人の重さそして、頭に添えられた手に涙が出る。
「幸せですねえ」私は、そうつぶやいた後、まぶたを閉じた。それでも、風呂上がりの熱がまだ残っていて、眠れないでいる。ああいけない。意識を遮断して、これまでの事これからの事を考えてみる。まあ、なるようにしかならないのは自分でもわかっているのだけれど。
 そうして、私はやっと眠れた。久しぶりに何も気にせずに眠ることができた。


続く

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