一億回の転生者

きのっぴー♪

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第一章「『魔法少女☆マジカラ』編」

第1話(Aパート)

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《ぐれーとマジ☆カラ!!》

ー【第1話『選ばれし四人、マジ☆カラ!!』】ー





…此処はとある一つの世界
多少の未来ではあるものの、コレを読んでいる我々読者が居る世界の2018年代ごろの現代とほぼ同じ発展を成した世界である
変わった事は殆ど無い、ビルやマンションが街に多く建っていてその下では数々の人や車が行き交う、私達からすればなんてことの無い普通の光景である
勿論ファンタジーの様な魔法と剣による戦争も無ければゾンビらしき汚染も無く、まして奇妙な異能力バトルなんてのもありはしない
そんな極々普通の、平和な世界だ

まぁ、少なくとも…





「ZZZ…」
真っ昼間の授業中に、呑気に寝ている学生も居る位には
「起きろ!」
「あ痛っ!何ナニなんなのなの!」
寝惚けてるのかわざとなのか、少女は起き上がるやいなや必死な形相で、口から涎を垂らしながら辺りをキョロキョロと顔を振っている
おそらくただ辺りの様子を確認しているのだろうが、その慌てようはどうみても挙動不審のそれ
「どうした!火事か地震か、それともテロリストか!」
そう騒ぎ立てては辺りを呆然とさせる彼女の前に立っていたのは
「…テロリスト以前に、今は何の時間か分かりますか?」
鬼のような形相をした教師だった
「………あっ」
「…………」
「…て、てへっ?」
「勧善懲悪ッ!」
「でべそっ!」
教師が勢い良く振り下ろした授業の資料を思い切り脳天に直撃させ地面にのたうち回り悶絶する少女
「おおお…脳天に響く一撃…!!」
「目は冷めたか、じゃ授業続けるぞ」
当然ながらこんな恥ずかしい事を見て思わず笑ってしまうクラスメート,クスクスと漏れ出る笑い声が教室内に木霊する
「ってオラァ誰だ今笑ったの!」
「授業に集中しなさいって言ってんだろーがァ!!」
「三回目ッ!」
叱られた女の子がそれを聞いて勢い良く立ち上がり教室で咆哮する、がそのせいでさらにキレた教師が即座に投げたチョークが顔面に直撃
コントの様なやり取りに思わず教室中の学生も吹き出してしまう

「痛っててて、容赦無く殴ってきやがって…」
そんな叱られて痛そうに頭を抱えている彼女の名は【赤井あかい かない】
先程までの様な多少…というかかなりお馬鹿なところと面倒臭がりな性格を除けば、極々普通に生活し過ごしているただの女子中学生である
家庭も父も母も他界し独り暮らしである事さえ除けば、辺り触る様なものは見当らない、そんな人間だ
「はー寝てるだけで怒られるとは嫌な時代に生まれたモンだねー、おねぇさん悲しいよーホント」
そう言いながらペンを咥え始めるもノートすら全く開かく気配もなく、意味のない文句を捏ねだす始末
そこに最早勉強する気など一欠片も見当らなかった
「いっそ本当にテロリストでも来ないかなー…」
しかしそんな都合の良い出来事が起きる筈も無く、今はただ時計の針をゆっくりと待つ事しか出来ないのが現実だった
「はぁ…本当にさぁ





何かあれば、にでも変身して抜け出せるのになぁ」
とはいえそれも、勿論ただの普通の世界だったらの話なのだが
『…な…、か…ぃさ……』
「…うん?」
上の空で退屈していたかないの脳内に突然、色々なモノが混ざったノイズの様な雑音が直接聞こえてくる
その音は段々と大きく鮮明になり、また次第に人の声になっていった
『…なぃさん、かないさん!!』
「っ!、この声はもしや!」
耳障りなノイズが止んだ頃には正しく声が頭の中に響いてきて、かないの名前を何度も呼んでいた
『良かった、やっと繋がったッス
今怪人がまた街に出て来て暴れているんスよ!』
その声は何処か幼い声色だがそれとは正反対に何故か後輩キャラの様な口調
かないはそんな声を聞いた途端に目を輝かせニヤリと笑った
『差し支えなければ退治に…」
「アイリス、ナイスタイミング!」
『はっ?』
謎の声をアイリスと呼び、かないは待っていたと言わんばかりの勢いですぐ様机を叩き椅子から飛び上がり
「先生、丁度今もの凄く私のお腹が痛くなろうとしているのでトイレ行ってきます!」
「えっちょ、待っ」
そして先生の言葉も聞かないまま、そそくさと脚早に教室を出ては廊下を全力疾走で走って行った
一目散に向かった先は、外への小窓が窓がついている女子の個室トイレ
「よーし誰も居ないなっと…」
如何にも怪しげに女子トイレの中を一人キョロキョロと辺りを見渡しながらも、個室トイレにコッソリと入っていくかない
「よーし、授業中だし誰も居ないわよね…

それじゃよっこい…しょっと!!」
『!?』
そして、誰にも見られる事の無いまま悪びれもせず窓から出ていった
『ちょっ学校を勝手に抜け出して良いんスか!?』
「良いの良いの、それに今は緊急自体だし!
よぉーし待ってろ怪人、助かったぞありがとう怪人!」
『…大丈夫なんスかね』




一方、怪人というものが出たという場所では当然の如く荒れ始めていた
その光景は非常にも言い難く、正に地獄絵図とも言える様な禍々しさである
「「「「ドロ…ドロロ……」」」」
というのも黒いスライムの様なモンスターが無数の群れとなって街を片っ端から這いずり回り、辺りを段々と侵食してしまっているからである
そう、このモンスターこそが街を襲っている怪人というものなのだ
「「「「…ドロォ…ドロドロ」」」」
モンスターはビルや店等に張り付いては段々と侵食していき街を黒く染めていった、そして染められた建物は絵の具の様に真っ黒になってしまっていく
まして大軍のモンスターだ、街全体が真っ黒になるのも時間の問題だろう

「きゃっ!?」
そして、そんな最悪とも言える状況はより更に悪くなっていく
「…ドロ?」
突如として幼い少女が建物の影からモンスター達の目の前に出てしまった
恐らく様子を見ようとしてコケてしまったのだろうか
「っ痛…早く逃げない、と…!!」
幼き少女は擦りむき血が流れ出る膝の痛みを涙ながらも必死に我慢しながらもゆっくりと立ち上がり、一生懸命にその場から逃げようと歩き出した
しかし思わず転んでしまった時の微かな音に反応してしまったのか、大きな集団となったモンスター達が次々と目を揃えて少女視線を向けていく
「「「「ドロドロ…ドロ……!!」」」」
「ひっ…!?」
その恐ろしい無数の視線は容赦無く少女に襲いかかっていく
大人ですら震え上がりそうなその威圧感に、少女はすくみ上がり最早歩く事どころか尻餅を再びついて立つこともままならなくなってしまっていた
「あ、うあ…ぅ……!!」
恐怖のあまり正常な言葉すらも発する事が出来なくなる少女
しかしモンスター達は容赦一つ無くただロボットの様にジリジリと距離を詰めていき、そして獲物を逃がすまいとじわじわと確実に追い詰めていく
「「「「ドロォオォォ…!!
……ドォロオオォーーーーッッ!!!!」」」」
そして次の瞬間、一気に無数のモンスター達が少女に襲いかかってきた
少女に迫る絶体絶命の危機に反射的に目を瞑る
「ッ……!!」

「ちょっと待ったぁーーーーっ!!」
その時、声高々に大きな叫び声が何やら上から響いてきた
「…ドロ?」
「…へ?」
突如響き渡るその声に思わず怪人達も少女もピタリと動きを止める
そして声が聞こえた上の方へと全員が一斉に見上げ始めた
…そのビルには、堂々と立っているかないが見下ろしている姿があった
「アンタが街で暴れているって怪人ね、この私が成敗してあげるわ!!」
何やら街で暴れている怪人共を退治しようと躍起になっているのか、かないは少女に襲いかかろうとしていたスライムの先頭を指さして言い放つ
何とも無謀というか無知というか、勇気というべきか馬鹿と見捨てるべきか
旗から見たらただの痛い子か下手したら自殺願望者と間違われるだろう
「…さてっと!!
えーっとコレ…は間違ったシャーペンだ、えとえと…っとあったあった!!」
『自分の持ち物位把握しておいて下さいッスよ、締まらないッスね…』
変身一つする時にすら手際の悪過ぎる事この上無い
モタモタしながらも懐から取り出したのは、子供の玩具の様なロッドだ
「それじゃあやられる覚悟は良い?いくわよ!!」
そしてそのロッドについていた三つのボタンを上から順に押して天に掲げた

「…マジカラ、変身メタモルフォーゼ!!」
すると突如かないの体を真っ赤に輝く光が包み込み始めた
突如として何処からか湧き出た炎はかないの着ている学生服に纏わり、燃え広がっていくに連れて赤く派手なドレスや手袋に早変わり
目も髪も烈火の如き赤色になり、瞬く間にその姿は変わっていった
「燃える炎、真っ赤な情熱!!」
そして手に持つロッドを大きく振りかざし、交わる炎と光を振り払い
「赤い太陽の様に皆を照らす!!」
そして、堂々と現れたその姿はまるで




「…マジカルレッド、ぐれーと☆マジカラッ!!」
正しくテレビに映っているような【魔法少女】だった
マジカルレッドと名乗る魔法少女の様な風貌の少女は建物の遥か上でモンスターの注目を引き付け、幸か不幸か少女を結果的に助けられた
「ま、まほー…しょーじょ…?」
竦んだままの少女はただただその女を、如何にも不思議そうな目で見ていた

「「「「ドロォ…!」」」」
だがいくら目立っても敵である怪人にはただ標的が変わっただけ
すぐに敵意を向ける相手を少女から魔法少女へと変え、全ての個体がおぞましい視線を浴びせまた睨みつけていた
『あの怪人は…ドロドローン!!』
「知っているのか〇電!!」
するとアイリスが知っているかの様な言い草でその名称を言い出し、それにノリノリで便乗し開幕からボケるマジカルレッドと名乗った魔法少女
『それ危ないネタだから、私雷〇じゃねぇッスから
というかかないさんいつも戦ってるでしょう、あの黒いスライムみたいで何かやたらと数が多いあのモンスターッスよ』
「あー、あのやたら辺りを汚す面倒臭い奴か…」
どうやらあのモンスター達はドロドローンという個体の多い、いわばエンカウントするレベルのザコ敵の様な魔怪人らしい
禍々しい風貌に対しては如何にも安直な名前と似合わない戦闘力だが
「「「「ドロ…ドロドロッ……
ドロロォオオオオンッッ!!!!」」」」
と、そうこうしているうちにもドロドローン達がすぐにでも襲いかかりそうな威圧感を放ちいつの間にか立っているビルの下の周りを取り囲んでいた
そしてこれまたおぞましい声を吠えながら、少しずつ這い上がってくる
勿論、逃げ場と言える様な道は既に無い
『って、来るッスよかないさん!!』
「見れば分かるわよそれ位…さぁて」
だが魔法少女は如何にも余裕そうな表情を見せた後その手に持ったロッドを腰に収め、這い上がるスライム共を見下ろしながらビルの先に立つ
そして徐々に、徐々に力を抜いて落ちていき
「それじゃ、行くとしますか…

ッしゃあぁあああ!!」
一気にビルの側面を走り出し、人間業とは掛け離れた勢いで駆け下りる
勿論その勢いは止まるどころか加速の留まる事を知らぬと言わんばかりに怪人の群れに向かって突っ込んでいき、そのまま拳を振りかぶって
「おッ……りゃぁあ!!」
「ドロォオッ!?」
突き出したその拳一発でドロドローンの身体をブチ抜いた、その常識外れな行動は周りの敵の思考を一瞬だが停止させていく
そして魔法少女は止まった怪人をひたすらに殲滅せんと無双の如き力と速さで突き進みながら吹き飛ばしていった
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃあッ!!」
それに漬け込んでか、マジカルレッドはその勢いのままに次々と鋭い速さでドロドローン達に拳を叩き込んでは倒している
「ッドロォオオ!!」
そこにそそくさと背後を取り、こっそりと攻撃を仕掛ける一匹
「…ふっ!!」
「ド、ドロドロォオ……ドッ!?」
いち早く気づいたマジカルレッドはすぐに振り向きざまに肘を繰り出し、モンスターの攻撃を慣れた手つきで軽々と弾き返し
「せぇいやッ!!」
そのまま引いた手を突き出してモンスターの体を吹き飛ばす
「「ドロドロォーーッ!!」」
「!!」
すると今度はそれを見た二匹が敵討ちとばかりに群れから飛び出し、魔法少女の左と右から急襲し挟み撃ちを仕掛けだした
「…よォいしょッ!!」
「ドロッ……!?」
それでも、それはそれぞれ片手のみで受け止められ
「「ドロドロォ!!」」
「そんな手が通用する訳…無いでしょっ!!」
両腕を伸ばし鋭い突きでカウンターをし二体同時に撃破した
数こそ多いものの個体一つ一つはやはり弱い様でその魔法少女の人外地味た力には到底及ばず、正にマジカルレッドの無双状態
その圧倒的な強さに段々とドロドローンの数を確実に減らしていった
「ドロォ……!!

ドロドロドロォオオオ!!!!」
すると突然群れの中央に居た一匹のドロドローンが突如大きな声で叫びだす
「「「「…ッドロォーーーー!!!!」」」」
そしてそれに続いて他の怪人達も同じ様に叫びだし街に響かせる
恐らく全員で一気に仕留めるとでも言ったのだろか、叫びながらジリジリとマジカルレッドをまた囲い始め襲いかからんと近づいてきた
「「「「オオオオオオオオオオ!!!!」」」」
『ま、また囲まれたッス…!?』
数を減らしたとはいえまだ数十はいるだろう、それらのスライムが一箇所に集まれば例え雑魚だろうととてつもない威圧感になっていくものだ
その光景に声を伝えているだけのアイリスも弱気な声になる
「…………なら、このまま飛んで…」
…が、それを見てもマジカルレッドは全く持って怯まずにまた構えだした
いやそれどころかほんの少しだけだが口元をニヤリと笑わせたのだ
そして一呼吸置いて、その場にしゃがみだし
「…っとぉおおう!!」
真上へ思い切りジャンプし飛び上がった
ただのジャンプ…と言っても魔法少女として莫大な力を持っている今、普通に飛んだとしてもその高さは低いビルならゆうに超えてしまう程
「ふぅ、それで…地面に向かってぇ…」
空高く飛び頂点にまで達した時にマジカルレッドは目標を見定めるかの様な目で敵を睨み、また片方の拳を引きながら握りしめる
「この燃える拳で一気にぃ…ッ!!」
すると握りしめた拳に若干火が灯る、コレも魔法少女の力なのか
そして宙を蹴り出すと同時に一気に落下し
「どっせぇええええいッ!!」
地面に向かって全力を込めた一撃を放った
すると拳に纏った真っ赤な炎が一気に膨張し、地響きと同時を怪人達を巻き込んだ大きな爆発を起こし全てを消し飛ばす
「「「「ドロロ…ロロ…ロ……ッッ!!!!」」」」
周囲のドロドローンは爆炎をまともに食らい、破裂するどころか液体状の体ごと消し飛ばし次々と塵へと化していった
街こそ多大な被害に見舞われたが、やはり魔法少女には叶わなかった様だ

「ふぅ、ふぅ…」
とはいえ無数の敵相手に疲労も溜まったのか、少しだが息を切らす魔法少女
『だ、大丈夫ッスかかないさん…?』
「ちょっと暴れて息が切れただけよ、大袈裟な」
声だけだがそれでも心配そうな声色で労わろうとする謎の声ことアイリス
それにマジカルレッドは一言だけ素っ気なく返し、一息だけついた
「さって…
もうあのスライム共居ないから、出てきておいでー!!」
そしてもう一度踏ん張ると言わんばかりに立ち上がり大声で少女を呼ぶ
実は襲われていた少女はかないが登場した時、こっそりと物陰に隠れたのだ
「……ホント?」
その言葉を聞いて安心したのか少女はビルの裏からそろそろと現れる
恐らく小学生五年生位だろうか、かなり小柄で大人しそうな子だ
「ホントホント!!だからコッチにおいで
で…何でこんなところで一人で居たのさ、家族とかはどうしたの?」
「…………その、あの」
何かを怖がっているのか震えながら口篭り始める少女、まぁさっきまで大勢の怪人に襲われる直前の最中にいたのだから仕方ないと言えば仕方ないのだが
それでも何かを伝えようと、少女はゆっくりと何かを指さした
「あそこの奥に…人が、居て…」
「へっ、人?」
そう言って指さしたのはレッドすぐ真後ろ、そこには少女がさっきまで隠れていた何処にでもある様なビルの一角であった
しかし、良く見てみると何か違和感がある
「ん、んん~…?」
レッドはそれに気づいたのかじっくりと目を凝らし始める
『ッかないさん、あそこあそこ!!!!』
「ちょっ頭に直接大声あげるな!!」
すると突然頭の中でアイリスの大声が耳鳴りそうな程に響いた、余程五月蝿かったのかついつい耳を塞いでしまう魔法少女
「で、一体何よ…」
『あの建物の裏、影を良く見て下さいッス!!』
「そんなに驚いて何があるって…!?」
ため息をつきながら仕方なさそうに魔法少女は見る、がその顔色は段々と油断から焦りに変わっていくのが手に取る様に分かる
それもその筈そこには人の手がひっそりと影からはみ出していた
「あ、あんな所に人影!?しかも何か倒れてるっぽいし…」
『早く病院とかに連れて行かないと不味いかもッスよ!!』
「分かってるわよ、取り敢えず一回何処かの建物で様子を見て…!!」
そう言いながら慌てた様子でマジカルレッドは走って近づく

その瞬間だった
走りだした直後に魔法少女の視界が段々と不自然に薄暗くなっていく、まるで何か大きなモノが真上に覆い被さったかの様に
「……?なんか急に暗く…」
『ッ…かないさん、上!!』
「上…?」
アイリスに言われるがままに後ろを振り向き上を見てみる、するとそこには
「ドロドロオォォオン……!!」
まるで突然壁が出来たと錯覚する位に巨大なドロドローンが、突如何の前触れもなく魔法少女のすぐ目の前に出現したのだった
「なっ……!?」
「ォオオオオォォ…!!」
小さなビルなら軽々と追い越す様な大きさとまるで人の形を模したような形をとった姿は、まさにお伽噺に出てくる巨人の様
「何アレ…新しい怪人!?」
『恐らくさっき倒したドロドローン達が融合した姿ノ様ッスね…』
すると巨人のドロドローンは魔法少女を見つけたのか、ギロリと睨んだ
「ドロ…ドロォオ………ッ!!」
そして天高く拳を上げて握りしめ始め
「オォオオッッ!!!!」
レッドに目掛けて、そのまま一気に腕を振り下ろした
「きゃッ……!?」
「危ない!!」
何とか間一髪のところで少女を抱きかかえ即座に攻撃を回避出来た魔法少女、がさっきまで立っていた場所は一瞬で既に抉れていた
地面を転がり回りながら距離をとり、何とか無事に済んだレッドと少女
「っつつ…大丈夫?」
「な、何とか…」
「兎に角また来るから早く何処かに隠れてて、急いで!!」
「は…はいっ!!」
レッドはそう逃げる様に言い放ちすぐに目の前にいる敵の方へと顔を向ける、そして魔法少女が巨人の注意を逸らしているうちに少女もまた物陰にそそくさと隠れていった
そしてすぐ様臨戦体制を取り直そうとしたその時
「さってそれじゃあ早速第二ラウンドといこうか…」
「ドオォオオ!!」
言い終わる時間すらも与えず、また街を削りながら狙い殴る巨人の魔怪人
「ぐっ少しくらい休憩させなさいよっ…!!」
「ロォオオッ!!」
文句を愚痴りながらも紙一重で何とか避けるレッド、がそれに対し圧倒的な体格差…と言うよりも巨大さに防御に徹する他無い
「こんのぉっ…調子にぃ、乗るなぁああッ!!」
何とか攻撃を掻い潜り先程の様に炎を宿した拳を敵の土手っ腹にぶち込み、真っ赤な爆炎を伴う大爆発を思いっ切り食らわせた
「…ドロロオォ?」
「っ…マジで、ちょっとタフ過ぎじゃ無いかしら」
だが、当の本人はさっきのスライムの様な柔い体質等では無くまるで鋼の如くガッチガチに硬質で、レッドの渾身の攻撃を食らいつつも微動だにすらしない
「ドロドロォオオオンッ!!」
「危なっ!?」
そして、また巨人の一振りが呆然とする魔法少女に襲いかかる
流石に大き過ぎる巨体からか動きはレッド自身よりは早くない為に攻撃を当てられず全て回避する事は実際に出来ている模様
「とっとと…きゃっ!?」
しかしさっきのパンチの直後に攻撃をされたからか
反射的に敵の攻撃を避けるも足元がフラつき、おぼつかないまま盛大に転び地に思い切り尻餅をついてしまった
それを、目の前の敵が逃す訳が無い
「あっ、ヤバいコレちょっと不味…ッ!!」
「ッォオオ!!!!」
巨大な拳が真正面からレッドの身体を確実に捉え直撃、一気に腕を振りぬきそのまま一直線に遠い向かいのビルへと激しく音を立てて突っ込んでいった
「…かはッ……!!」
レッドは建物の中へと勢い良く吹っ飛び、磔の様な状態で壁に倒れていた
『ッかないさん!!』
「痛つつ…やったなこんにゃろめ…!!」
『あっ思ったより大丈夫そうだったッス』
腰痛めた表情で壁から余裕そうに抜け出すマジカルレッド、普通は周りの見た目からしてそんな軽い感じで流して良いレベルじゃないです絶対
しかしまともに受けたからか多少のダメージは入っているのか若干足元がおぼつかず出た直後は片膝を一瞬つく始末
『ほ、本当に大丈夫なんスよね?痩せ我慢とかじゃなく』
「当たり前でしょ、全く…でも」
『でも?』
「…今のは痛かった、痛かったぞォーーッ!!」
『ちょっそれ流石にヤバい危ない危ないやめてやめてやめて!!』
と、半ばふざけながらもレッドは腰に収めていたロッドをすぐに取り出した
「こうなったら奥の手よ、カラフルロッド!!」
そう言って手に持ち始めたロッドにある三つのボタンを今度はまた別の順に押し、そして軽く振り回しそして鋭く構える
「セット…ファイヤー!!」
するとロッドの先から炎が噴出しやがて剣の刃の様な形に変わっていく、それはまるで見るからに猛る炎を纏った勇ましい剣だった
「さて、そろそろ一気に行かせて貰うわよ…てやぁあああッ!!」
そして、ビルの壁を蹴り壊しながらビルから空中に飛び込んだと同時にロッドの炎を後ろに放ち、逆噴射によって魔怪人へ向かっていった
その勢いと様はまるでミサイル、炎と共に一直線に巨人に向かって飛んでいく
「…ドロ?」
だがそれに気づかない程敵は鈍感では無く、飛び出した瞬間にゆっくりとコチラを向いてまたあの大きな拳をこれみよがしに引き始め
『気付かれたッス!?』
「………ッ!!」
「ドォロォオオオオッ!!!!」
真正面から迎え撃つかの如く正拳突きの様にパンチを繰り出した
それに対しレッドはパンチに突っ込んだままの状態でただ両手で剣もといロッドを強く握りしめ、そして振りかぶった後に

「…せぇいやぁあああッ!!」
巨人の腕を思いっきり、衝撃ごと炎の刃でぶった斬った
「ドロォッ…!?」
『やった、パワーで押し勝ったッス!!』
巨人の大きな腕は第二関節から真っ二つになっており拳そのものが切り落とされた状態、幾らスライムとはいえ暫くは機能しないだろう
見事競り勝ったレッドは側に着地しまた剣をキチンと構え直した
「ドロ…ドロロォオーーーーン!!!!」
そしてそれに激昴したのか、巨人は大きな雄叫びの様な声を街に響かせながらもう片方の拳でレッド目掛けて何度も殴り掛かる
「よっ、ほいっ、よっこいしょっと
そんなノロマな攻撃がもう私に通用するワケ無いでしょ!!」
『ちょっそんな挑発をしちゃうと…』
さっき痛い目にあったばかりなのに敵に挑発しながら軽々と躱すレッド
「……ッドォオオゥロォオオオオ!!!!」
『ほら怒ってまた来たあああああ!!!?』
勿論の事巨人は激昴しながら地面を揺らして踏み出し、さっきよりも破壊力と圧力の篭った拳の一撃が魔法少女に迫っていく
「ッ……んの、りゃぁあああ!!今のはマジで超危なかったァ!!」
『おお、何とか紙一重で避けたッス!?』
しかしレッドはそれを何とか死に物狂いで必死に避け、かなりギリギリではあったもののあの怒りの一撃から逃れられた
攻撃された地面は最早さっきの様に抉れる、と言うレベルですらもう無く既に地面が完全に沈没してしまってすらいる程
とはいえ魔法少女は煙に巻かれてはいるが無傷
「…ド、ドロ?ドロッ!?」
「そして…かかったな!!よっこいしょお!!」
そして、術中に見事嵌める事が出来た
強力な一撃だったが故に地面に打ち込まれた拳は埋まり巨人は身動きがとれなくなっていた、何ともまぁ間抜けなものだろう
そしてレッドはその隙を狙っていち早く大きな腕に飛び乗り一気に巨人の腕を伝う様にして、素早く全力で走っていった
『な、成程…さっきのはコレを狙ってたんスね』
「アイリス早くアレの弱点を教えて!!」
『えっあ、はいえっと…頭の部分にある核ッス!!』
目を凝らして良く見てみると半透明である巨人の頭の中に微かにだが、濃い紫色のビー玉の様な真ん丸の核らしきものが見える
レッドはそれを見つけるや否やひたすら真っ直ぐに顔に向かっていく
「ロォオオーーーー!!」
しかし巨人は顔を登ってくるレッドの方へと顔を向け、必死に抵抗せんと目の様な黒い穴二つから突如ビーム的な何かが飛んできた
「うおぉおおおお!!」
だがそれでも魔法少女の勢いは止まる事を知らぬが如き勢いで走り続け、ビームを避けては炎で弾くとその攻撃をものともしない
そして顔のすぐ目の前にまで来たところでレッドは真上に高く飛び上がる
「一気に決着をつけてやる!!」
「ドロロォ…!!」
最後の抵抗と言わんばかりに遥か高く頭上に上がった魔法少女を睨みつけ、拳をまたさっきの様にゆっくりと引き出す巨人
「…ォォオオオオーーーーッッ!!!!」
そしてさっきの一撃と同じく、いや更にそれ以上の殴打を振りかぶり放った
その僅かな瞬間の衝撃でさえまるで台風の様に周囲を巻き込み、突風を巻き起こしながら渾身の一撃を脇目も振ら魔法少女に繰り出す
「そっちも覚悟アリって事ね…上等!!」
だがそれと同時に魔法少女もまたロッドを天高く構える、すると炎が一気に強まり巨人の腕…いやそれよりも大きな刃が出来ていた
かないはそのままそのデカい剣を力いっぱい体ごと振りかぶり、敵の殴打に合わせて思い切り振り下ろしぶった斬った
「…マジカラぁ、レッドォ…スラッシューーーーッッ!!!!」
レッドは刃を振り下ろし急降下で巨人を通り抜ける様に地面に降り立つ
その後魔法少女と巨人の魔怪人の間に暫く乾いた空気と静かな風の音だけが街に鳴り響き極度の緊張感だけがそこにあった
そしてその静けさの中、漸く最初に動き始めたのは…

「ド、ロォォォォ……ッッ!!」
「…魔法少女マジ☆カラ、悪討ち完了っ!!」
ただゆっくりと前倒しに膝をつき、やがて体ごと塵へと化す怪人だった
魔怪人は地に大きくもたれかかるかと思いきや体そのものを震えさせていき、やがてドス黒い光が全身を包んだ後に一瞬にして消えていった
つまりコレはほぼ完全と言っても良い程に、魔法少女の完全勝利という事だ
『よっし、無事に勝ったッス!!』
「あったりまえでしょ?このかないちゃんが負ける訳無いでしょ
まっさに、マジカラレッド大勝利ぃ!!」
『そーらまたすーぐそうやって調子に乗る…』
そして勿論その勝利を手にしたのはそれらを倒しきった魔法少女こと、そこでいかにもなキメ顔で仁王立ちをしていたレッドだった
「べっつに良いじゃん良いじゃん、実際に街を救ったのはこの私よ!?」
『そうッスけど街のヒーローならもっと謙虚に正義感を持つッス、それにそもそもかないさん学校抜け出したい為の理由でやったんでしょうが…』
「さーてさっさと帰ってド〇クエの続きやりませう!!」
『聞いちゃいねえ』
その有頂天っぷりに相方の立場らしきアイリスもため息を吐かざるを得ない
と、そんな時に突如さっきの出来事を思い出す
『…あっそうだ!!かないさんさっきの倒れてる人!!』
「あ、やっべすっかり忘れてた」
『おいコラ街のヒーロー!!』
まるでニチアサの魔法少女ヒーローとは思えない言動と行動の一つ一つ、がこの際どうでも良いのでとさっさと回収させようとする
「じょ、冗談よ冗談…さっさと連れて此処をトンズラしないとね」
『そんな盗人みたいな…』
「街を救ったヒーローに失礼な…まぁ良いわ」
そう言いながらレッドは倒れている人の前まで走り姿を確認する
その姿は、かないと同じ位の歳の女の子だった
「っとこの子ね、大丈夫ですかー!?
…返事は無いなぁ、息してるから死んだって事は無いと思うけど」
『恐らくさっきのアレの騒ぎで倒れたってだけところッスかね…?』
「何にせよこのままじゃ可哀想だと思うよ?」
『取り敢えず近くの建物で寝かせながら少し様子を見るッス』
「了解っと」
そう言ってレッドはそっとしゃがみ込っmで害の無い様に抱きかかえようとし、同時に辺りを見回しながら休めそうな建物を探す

この様にある時は怪人という害を成そうとする敵から街を守りある時は街の人々を守るヒーロー、それがこの街のヒーロー【魔法少女マジ☆カラ】である
魔法少女は人々の夢と未来を守り、世界を希望へと導く存在であるのだ
そして今日もまた街を救い人々の平和を守ったのだった

助けた少女という、不安を残しながら…




それがこの世界の【正規ルート】である、筈だった
「…………っ!!」
「んあ?ってさっきの女の子じゃん、無事だったのね」
襲われていた少女の無事も確認出来た事で安心も深まりホッとするレッド、だが少女の様子が何かおかしく慌てている様だ
良く見るとコチラに指をさして何かがある素振りに見える
『…何かこっちを指さしてるッスが何スかね、かないさん何かした?』
「何で私がやったの前提なのよ!?んなわきゃないでしょ
でも本当に何なのかしら…?」
しかし少女が一体何に気づいてコチラに指を向けているのか検討もつかない
「…う…うぅ」
『あ、何か言ってるっぽいッスよ』
「ちょっと聞こえないアイリス静かに!!何々…?」
距離も結構離れている上に少女の声が小さいのかあまり聞き取れない、レッドはアイリスを黙らせて耳をよーく済ませた
「う、う……!!」
「う…何?」





「後ろぉーーーーッ!!」
「後ろ?一体何…がぁッ!?」
少女が必死にやっと出した叫び声にレッドが反射的に振り返る
が、時既に遅くレッドの顔に何かによるとてつもない衝撃が命中し、そのまま弾き飛ばされる様に地面を跳ねていった
「っ…ぁあ!!くっそいったい…!!」
レッドはすぐに体制を立て直し顔を抑えながら訳も分からぬまま見上げる
『かないさん大丈夫ッスか!?』
「これくらい何て事無いわ、それより一体何が…!?」
アイリスの声に口癖の様に平気と白々しく返し顔の傷を軽く腕で拭いながらロッドの炎をまた大きく滾らせて警戒する
それもその筈、かないの目の前に居たのはついさっきまで戦っていた相手
「……ドロ」
ドロドローンだったからだ
そいつはさっきの巨人と同じく人の形ではあるもののさっきよりは大きくは無く魔法少女と同じ位の背丈、恐らくさっきレッドが倒した時の弊害だろうか
「アレは…さっきのヤツか
アイリス!!アンタ完全に終わったって言ってたじゃない、どういう事!?」
『わ、私にも分からないッスよ!!妖精である私の探知する力であのドロドローンが消滅したのも確認済みッス、なのに何で…!?』
二人はついさっきまで完全に倒した筈の敵が現れて混乱と警戒が渦巻き混沌と仕掛けている、だがもっと問題なのはそこでは無い
「いや、それもだけど…」
(さっきとまるで雰囲気が違う…もっと何か、恐ろしい様な…)
その魔怪人は妙な違和感を醸し出し、まるで立ちはだかる様にそこに立つ
が、しかしまた妙な事にその怪人は別段と何をする訳でも無い、ただ魔法少女をじっと見つめる様に静かにこちらを向いているだけ
ただ闇雲に街を荒々しく汚染していったさっきの魔怪人達とはまるで正反対のものに、魔怪人としては益々不気味さが目立つばかりであった
「…………」
『…にしても、全く動かないッスね』
「な、何が目的なんだ…!?」
と、二人がそう言った途端にその怪人はその場で振り向き、後ろに身体を向けて魔法少女には目もくれずに歩きだす
「って言った傍から動き出した」
『一体何処に行こうと…ッ!?』
だが問題にもその先に居たのは、ビクビクと怯えている小さな少女だった
怪人の意図自体はまだ良く分かっては居ない、がこのままではまたあの少女が襲われるのは明白に近く危険なんて言うまでも無い
「ドロ…ォ…」
掠れた声で敵意があるかも不明な位に無感情のまま近づいていくモンスター
「ッその娘から、離れろォオーーーーッ!!!!」
『かないさん!?』
それを街の人々を守るヒーローである魔法少女がただ黙って見ていられる訳も無く、レッドはその衝動に身を任せ炎の刃ごとロッドを振りかざしながらモンスターに飛び出した
「……!!」
飛び込んでくるレッドに気づいた怪人は顔だけコチラに向かせる
本当にただ普通に歩いている様にしか見えない位に人から見れば隙だらけで、最早倒してくれと言わんばかりにしか思えない程無防備
しかし何故かその怪人はその状況を…笑っている様にすら見える
(コッチを向いた…!!でももう遅い、このまま一気に斬…ッ!!)
それすら見て見ぬふりをして勢いのままに突っ込んで剣を構え切るレッド
そして必殺の一閃がーー

「…え?」
ーー届かなかった
レッドの視界にはさっきまで目の前に居た筈の怪人は存在していなかった
…いや、視界から
「い、一体何処に」
「…ドロ」
「っ!?」
怪人はまるで全く動かなかったと言わんばかりに淡々としながらさっきまで攻撃を仕掛けていた筈のレッドにすら気付かれずに視覚に居た
「こ、こんのォッ!!」
すぐ様レッドはロッドを剣の様に切り返しまた魔怪人に向かって一気に鋭く斬りを放つ、反射的ではあるもののその斬りはさっきと同等のものだ
「…………ッ」
「………はっ…!?」
だがその攻撃は直撃したのにも関わらず当の本人である怪人は全くの無傷、それどころか固定された銅像みたく一ミリも動かなかった
(なんて硬さだ、ビクともしない…!!)
「………ド…」
そして怪人は炎をその身で止めたまま一瞬にしてレッドの背後へ、まるで音の如き速さで周り込みながらレッドの服を掴み姿勢を崩した
その速さに混乱する暇も無くレッドは隙だらけの身体をさらけ出してしまう
「っ速…!?」
「ッドロォオ!!」
「ッッ…………か、ハぁ…!?!?」
『かないさん!!』
そして立て直す暇も無く容赦の無い強烈な一撃が背後からレッドを遅い、風を切り裂きながら真っ直ぐにぶっ飛んでいった
その衝撃にビル一つぶつかった程度では勢いが止まる事は無く、数戸先まで貫いていった後に地面に身体を擦られながら漸く止まった
が、今のレッドには身体を動かす余裕すら無いだろう
「ゴフぅっ…あぉ、おぇええッ…!!」
(変身…解け、不味、痛、苦し、助けっ……)
『かないさん、しっかりしてくださいかないさん!!
不味い…モロに大きなダメージを受けて変身も溶けてる!!』
そのダメージは尋常では無く、魔法少女であるマジカラレッドから姿から一般人であるかないの姿に戻ってしまい力も底を尽きた
加えて身体の至る所から血を大量に垂れ流し意識は朦朧としていて虫の息である、そこにはさっきまでの様な余裕と自身に満ちた姿は一欠片も無い
『くっ…他の魔法少女の二人を今から呼ぶにも間に合いそうにない、かと言って他に良い方法なんてこの状況じゃ…!?』
アイリスはもうどうして良いかも分からずオロオロするだけ、仕方ないとしか言えないがこの状態では到底今の状況を打破する事は適わない
「……オォ」
「う…あぁ……」
そして、トドメを刺さんと言わんばかりに素早くかないの目の前に立つ化け物
この世界の主役である魔法少女の変身は解けて重症の上に相棒らしき謎の声の主も混乱状態、片や敵は仮に冗談だったとしても序盤で出る様なものでは絶対に無い位の圧倒的な力を持つ化け物
これだけの要素がこの状況にあって逆転等、不可能に限りなく近いだろう
「…………ォオォォ…」
「ひぃっ…!!」
不幸中の幸いなのか少女には目もくれずにかないの方にばかり敵意を集中をしている、とはいえそれも時間の問題で少女はまだ動けぬままである
「…く、そぉ…っ」
『かないさん、頼むから避けて!!死んじゃうッス!!』
(身体が、うごかな…!!)
そして、怪人の拳が傷だらけのかないに向かって振り下ろされた

…筈、だったのだ…が
「………ぅあ…?」
何故か何も起きない、目をつぶっていただけのかないには
いやそれどころか何かが当たった感覚すらも全く無い、意識がまだあるという事は一応まだ生きているという事ではあると思うのだが…
ふとそう思いかないが恐る恐る目をそっと開けて見ると
「グ、ウゥ……!!」
「…嘘」
襲ってきた筈のモンスターの腕が根こそぎ無くなっていた
『な、何!?何が起きたんスか!?』
(どういう…事…!?)
命からがらである当の本人達は何が起きたかも分からずに混乱するばかり、すると怪人の横の少し遠くから誰かが歩いてコチラに向かってくる
「…………っと」
「だ、誰…?」
肩を回しながらふてぶてしく現れたのは金髪の天然パーマとヘッドホンにいかにも半開きの目と隈、どう見ても寝不足な一般人の青年だ
発言からして、どうやらかないを窮地から救ったのはこの男の様だ
「ドォ…ドロォ…ッ!!」
怪人は切断された切り口を手で抑えながら男を最大限に警戒する
が、それに気づいていないのかその男は呑気そうな顔で辺りを見回している
『あの男の人は一体…?』
「…さて、と」
オーラ等のそれも今の男には全く見受けられず見れば見る程に一般人、だが怪人が出た街で平然の歩いている男だ
恐らく何かあるかに違いない、そう思いながらアイリスが見守っていると…
「……っ!!」




「あのさ、ちょっといい加減にしろよお前ら
何ニチアサじみたあっかるいテンションの魔法少女ものなのに幹部すら出てないレベルの初期段階でいきなり主役死にかけてんだ
お前らコレ視聴者の子供どころか横で見てる親すらドン引きだよ」
『』
「」
何か、すっごい聴き逃しちゃいけないメタ発言がその口から放たれた

《【Bパート】へ続く》
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